ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

ウッドショック、原材料価格、住宅展示場への来客減少…。住宅購入の消費者行動はどう変わったか

「人生で最も大切な買い物の1つであるにもかかわらず、顧客の購買体験を上げようという動きが少ない業界なんです」

 

こう語るのは、オンラインを通じた注文住宅購入のための相談サービス「auka(アウカ)」を統括する藤田秀平氏だ。いわゆるマイホームは、ほとんどの人が“一生に一度”という大切な買い物である一方で、その購買体験を高めようという機運は生まれてこなかった。

 

その理由について藤田氏は、「この住宅業界は産業規模こそ年間50万棟・16兆円という大きな市場であるものの、地方ローカル市場に分散している約1万社が75%ほどのシェアを握っています。そのほとんどが年間20棟ほど、いわゆる売上が5億円以下の小さな会社ばかりなので、IT化やDXなどを通じて変わっていこうという動きが出づらい構造になっているため」と説明する。

 

いわば、地方の小さな工務店が主要プレーヤーであるため、時代のニーズに合わせた自己変革が生まれてこなかったということ。そうしたなか、デジタル化・IT化を通じて業界全体を変えようと奮励するのが、2017年創業のアウカを提供するギバーテイクオール株式会社である。

家を建てるときの着眼点を“プロ”から無料で教えてもらえる

アウカはどういったサービスなのか。端的にいえば、住宅を購入したいと考えるエンドユーザー(購入検討者)と、工務店をマッチングさせるオンライン上の住宅相談カウンターである。購入検討者1人1人に、専属アドバイザーが、主にLINE(ライン)などのオンラインを通じて工務店との成約までパーソナルサポートを実施していくのが特徴だ。

 

アウカの専門アドバイザーは、同社がネットワークを築いている全国370社・450ブランド(※2022年9月現在)のなかから購入検討者のニーズに合った工務店を紹介し、他方の工務店側に対しても綿密なヒアリングを通じて捉えた要望を伝えるなどのサポートも行っていく。

結果的に、購入検討者は「家を建てる際の着眼点を無料でプロから指南してもらえる」「住宅展示場にわざわざ足を運ばなくても複数社の比較検討が可能になる」といったメリットがあり、工務店としても「効率的に集客できる」「自社の特徴に合った見込み客が得られ、成約率が高まる」などの利点が享受できる。

 

売り手と買い手が「ウィン=ウィンの関係になれる」というのがアウカの特徴であるとするならば、ここで1つの疑問も出てくる。なぜ購入検討者は“無料”でプロに相談できるのかという点だ。藤田氏はこう説明する。

 

「弊社としては、エンドユーザーの費用を無料とするかわりに、工務店さんから成約課金として3.5%を一律で頂戴しています。そもそも住宅業界は、折り込みチラシやポスティングなどでイベント会場や住宅展示場に集客し、そこでつながったお客様と商談し、成約までもっていくのが基本的なやり方です。そのなかで、業界では来場単価と呼ばれますが、『1人の集客に5万円かかる』というのが相場でした。さらに成約率は10%程度。ですから1つの契約に対して50万円のコストがかかる計算になる。つまり、従来発生していた集客コスト(の一部)を我々が頂戴しているという形になるわけです」

コロナ禍で「住宅購入の消費者行動」は大きく変わった

実はコロナ禍において、アウカは成約課金を2.5%から3.5%に上げている。それは、この数年で起きている住宅業界での急激な変化に合わせたものだという。

 

「先ほど来場単価が5万、成約率が10%と言いましたが、コロナ禍における消費者ニーズの変化によって、どちらの数字も大きく変化してきています。具体的には来場単価が10〜15万に、成約率も10%から20〜25%に上がってきています。さらに、この数年に起きたウッドショックと呼ばれる建材の需給逼迫や様々な原材料価格の高騰などの影響で、平均住宅価格も2〜3割ほど上昇しています」

そうした著しい変化が起きているゆえ、成約課金を1%上げることに対しては、ほとんどすべての工務店が理解を示してくれたという。

 

ちなみに3.5%という成約課金(いわゆる手数料)は業界のスタンダードからすると、低い部類に入るという。綿密なアドバイスを行う一方で、手数料を低く抑えられているのは、「オンラインだからこそ」と藤田氏は強調する。

 

「弊社は完全リモート業務なので、リアル店舗で相談窓口を設ける必要がなく、そのぶん経費をかけずに済みます。さらにオンラインでは優秀な人材を全国から募集することもできるため、成約課金は低く抑えたまま、よりよいサービスの提供が実現できています」

 

実際、住宅業界での豊かな経験を持つ同社アドバイザーたちは、北は北海道から南は九州に点在しているという。

 

また、アウカの報酬が成約課金に応じて上下するならば、アドバイザーたちは建築費が1円でも高くなる可能性のある工務店を紹介しようとするのではないか、という疑念も出てくる。この点は、アドバイザーのKPI(重要業績評価指標)に工夫を凝らすことでうまく調整しているという。

 

「成約の金額をKPIに据えてしまうと、どうしてもエンドユーザーにとって割高なものを紹介する恐れが出てきてしまいます。ですから弊社ではアドバイザーのKPIとしては成約の数だけを見るようにしています。割高なものを紹介すれば成約率は下がることが想像できるので、無理に成約金額を追いかけるインセンティブは働かなくなります」

 

このように、コロナ禍で住宅業界全体に変化が見られているなか、アウカというサービス自体も成長曲線を描いてきた。藤田氏は続ける。

 

「結果的にみれば、コロナ禍による生活様式の変化はアウカの追い風要因になりました。というのも従来は、『10社の住宅展示場を見て回る』という消費者行動があたりまえのようにあったのですが、コロナ禍によって住宅展示場に行きづらくなったことで、オンラインで様々な情報を調べあげ、対面で比較検討する工務店を2〜3社に絞るというのが一般的になったからです」

 

いわば、「住宅という高い買い物をオンラインで相談するなんて、ちょっと怖いかも」という心理的な障壁が下がったということ。アウカを通じた請負流通総額はコロナ禍で大きく伸長し、2021年8月〜2022年9月の13ヵ月で50億円に達している。2025年までに、流通総額1,000億円、年間5,000棟という目標に向け、道筋が見えてきたという。

工務店向けSaaS「来店プラス+」を開発した理由

成長曲線を描いているアウカであるが、他方で同サービスを提供するギバーテイクオールのなかでは、別の課題も生まれてきた。冒頭に記した藤田氏のコメントにもある「購買体験を高める」がなかなか実現できていない点だ。

 

「購買体験を変えたいというのは、より良い家選びの実現だったり、工務店を選択する際の様々な労力を減らしたりすることを意味しているのですが、残念ながらアウカというサービスを4年ほどやってきたなかで、これを実現するのは難しいと考えるようになってきました。考えてみればあたりまえで、我々が彼らの業務負担を肩代わりしているだけであるからです」

業界全体の購買体験を高めるためには、工務店自身の自己変革が不可欠であるということ。もちろんアウカのアドバイザーが間に入った顧客に限れば購買体験が改善している。だからといって業界全体のデジタル化が進み、それによってお客様の購買体験が変わる、というインパクトをもたらすのは容易ではないということ。そのことに気がついたのは、取引のあった工務店からの声がきっかけだった。

 

「『コロナ禍の影響で思うように集客できなくなった。アウカでは、どうやって集客しているのか』というような質問を立て続けにいただきました。その都度、オンラインを通じてこんな風な手法を取っていると、蓄積してきたノウハウを伝えてきました」

 

そんなあるとき、「これはサービスとして提供すれば、各々の工務店が自己変革できるのはないか」と思い至ったのだと藤田氏は言う。そんな経緯で生まれたのが、同社がSaaSと位置づける集客をサポートする「来店プラス+」というサービスだ。

 

来店プラス+は、LINEを用いて顧客との接点を強化し、効率的に集客・商談を進めるためのデジタルツール。営業担当のなかに閉ざされてしまいがちだった顧客管理データや顧客とのコミュニケーションを見える化し、会社全体でマーケティングやセールスの精度を高めることも可能になる。

 

「結局、アウカでできるのは人力でサポートし続けることだけで、それでは影響を与えられる範囲も限られてしまいます。でも、アウカで培ったノウハウを来店プラス+に応用して使うことで、業界全体のデジタル化に貢献し、結果的にエンドユーザーの購買体験を高めることに寄与できると考えています」

「効率よく儲ける」よりも大切にしていること

そもそも2017年にギバーテイクオールを立ちあげた代表取締役の河野清博氏は、前職において住宅業界のコンサルティング業務に携わるなか起業するに至った原体験があるのだと藤田氏は語る。

代表取締役の河野清博氏

「弊社代表の河野が30歳になって、まわりの友人が家を購入するようになるなか、住宅業界でコンサルをしていた彼のところに『家を建てたんだけど、どう思う?』という相談が来た。そのときに、『もっと早く相談してくれれば、より良い家づくりができたのに』『間取りのアドバイスができたのに』と後悔したそうです」

 

家は一生に一度しか買わないようなものなのに、よくわからないまま家を買って後悔していたり、これでよかったのかと何となくモヤモヤしたりしている友人たちの姿を目の当たりにしたことが、起業の原動力となったということ。だからこそ、アウカを通じた契約件数を上げることだけに執着するのではなく、「顧客の購買体験を高める」というところに強いこだわりを持っているのだろう。

 

そうした同社のこだわりは、エンドユーザー1人に対する平均紹介数にも表れていると藤田氏は言う。

 

「一般的に、エンドユーザーと工務店をつなげるマッチングサービスを利用すると、1人の顧客につき5社とか10社とかを紹介することが珍しくないようです。紹介している事業者からすれば、どこかで1つでもマッチングすればいいので当然のことだと思いますが、弊社では最大で紹介するのは3社までと決めており、平均だと1.8社程度です。やはり紹介する数が増えるほど、エンドユーザーも工務店も疲弊してしまう、すなわち購買体験が悪化するからです。きちんとヒアリングをすれば、エンドユーザー側と工務店側の双方にとって相性の良い相手をマッチングできると考えています」

藤田 秀平

Shuhei Fujita

ギバーテイクオール株式会社 アウカ事業統括

業務委託を経て2021年10月に、「人生の決断コストをゼロにする」をミッションに掲げるギバーテイクオール株式会社へ入社。auka(アウカ)事業統括として幅広い業務を担当。6歳の娘と1歳の息子を育てる二児の父。

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  • 公式Facebookページ

取材:遠藤由次郎

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