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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

オーダーメイドウェアはオンラインで可能か? 完全無人・非接触で届くオーダーメイドデニム「STAMP」

オーダーメイドウェアはオンラインで可能か?オンラインショッピングがどれほど浸透しても、採寸や細かいフィット感が欠かせないオーダーメイドは、リアル店舗でないと成立しないと思われていた。それを、プロの仕立て屋はおろかスタッフのいる店舗へ行かずとも完結できるのが、オーダーメイドデニムの「STAMP」だ。無人のスキャンボックスで採寸し、ネットで注文するだけで、3~4週間後には100%身体にフィットする自分だけのデニムが届く。「STAMP」の商品開発の裏側やサービスへの想いについて、ブランドマネージャーの竹内智代氏に伺った。

竹内 智代

Takeuchi Tomoyo

新卒で大手アパレルメーカーに就職。2018年、IT領域とアパレルを掛け合わせたFABRIC TOKYOに興味を持ち転職。サプライチェーンの構築、改善担当として従事したのちに新規事業企画室に異動し『STAMP』の立ち上げを担当。リリース後はブランドマネージャーとして事業を牽引。

共同開発の3Dスキャンで高いフィット感を実現

重厚感ある店内で、プロに相談しながら最高の一着を……。オーダーメイドというと、そんなイメージ。時間や料金のコストがかかるのも当然とされてきた。2019年9月にリリースされた「STAMP」は、そんなオーダーメイド界の法則を軽やかにアップデートしている。

ユーザーは無人の3Dスキャンボックスに出向き、自分で採寸し、ネットで注文。1ヶ月後にはオーダーメイドデニムが手元に届く。完全無人での採寸でありながら「フィット感はかなり高い評価をいただいている」と竹内氏は言う。

 

「オンラインで完結するオーダーメイドウェアのサービスは他にもありましたが、スマホを使って採寸するのが主流でした。皆さんプロではないですし、やはり採寸中に動いてしまって誤差が出ることがよくありました。私たちが海外の企業と共同開発した3Dスキャンボックスでは、お客様が静止した状態で機械が0コンマ数秒で計測するので、高い精度で採寸が可能です」

スキャンボックス内での操作はとても簡単だ。ユーザーがiPadの音声ガイダンスに従い、下着姿で適切な姿勢(仁王立ちで両手を上げる)をとると、赤外線センサーが身体の外形を計る。1度の採寸は10分足らずで完了。採寸は無料で何度でもでき、事前予約も可能。スキャンボックスは新宿「マルイ」と「b8ta」有楽町の2拠点に展開中だ。計測が終わるとともに、データはクラウド上に自動保存。後はウェブサイトから、シルエット(3パターン)と長さ(2パターン)、またポケットの位置(4パターン)など好きなカスタマイズを選んでオーダーするだけだ。

こうした精度の高い採寸のシステムと今までにない購入体験が注目されるSTAMPだが、竹内氏曰く「高いフィット感を再現するにはもう一つ大事なことがある」という。

 

「採寸データを個々に合った製品に落とし込む、その工程が最も難易度が高いです。身体に対するゆとりや動きやすさ、またシルエットなどの様々な要因がウェアの仕上がりに関わってくるためです」

 

ここで生きてくるのが、STAMPを運営するFABRIC TOKYOが長年培ってきたノウハウだ。同社は同名のブランド名で、D2Cのビジネスモデルによりオーダーメイドスーツを7年に渡って提供してきた。1人ひとりの体型はもちろん、ライフスタイルに徹底的に向き合ってきた結果得たユーザーからの意見や要望を、STAMPのブランド設計や製品づくりに生かしている。

オーダーメイドが多様化するニーズにマッチ

「フィット感が全然違う!」「ほしい時に自宅からオーダーできてラク」「今まで諦めていたスキニーに挑戦できる」「裾上げを待つ必要がない」などが、ユーザーからよく寄せられる声。これまで既製品では合わなかった人はもちろん、既製品で満足していた人からも、高く評価されているという。ところで、なぜデニムだったのか?竹内氏に投げかけてみた。

 

「スーツを着ずに、カジュアルな服で働く人が増えています。特にIT業界やスタートアップ、またデザインの領域などでは、オンとオフの垣根のない格好で働いている方がとても多い。そういった人たちのことを私たちは『クリエイティブ・ワーカー』と呼んでいて、彼らの正解になるスタイルを探してきました。彼らの特徴はPCを頻繁に使ったり、合理的な思考・選択をしたり。かつ、デニムを頻繁に履いている、というのがヒアリングや市場調査から分かりました」

デニムといえば定番アイテムでありながら、ブランドによってサイズ感やフィット感が違うことも多く、サイズ選びが難しい。カジュアルシーンならともかく、ビジネスで着るなら、カジュアルアイテムだけに、そんなフィット感やシルエットも気になるところ。長時間のオフィスワークでも疲れにくいストレッチ素材であったり、カジュアルになりすぎないよう色落ちしない染料を使用していること、などもありがたい。

 

そんな「クリエイティブ・ワーカー」層に加えて、コロナ禍ではユーザーの幅も広がっている。ライフスタイルやオフィスウェアのニーズが多様化しているためだ。それを象徴するのが、STAMPのデニムに付いている「スマホポケット」だと竹内氏は言う。オーダー時に、つける位置(前・後・左・右)と大きさ(スマホの大きさに合わせて3パターン)を選ぶことができる。

 

「スマホって、普段から無意識に携帯しているかと思うんですが、実はその方法は人それぞれで。右利きと左利き、また長時間座っている人とよく自転車に乗る人では、スマホを入れるポケットも違います。そういった個々の好みやライフスタイルに合ったディテールを実現できるのも、オンラインカスタムオーダーの魅力です」

 

オーダーメイドなのに低価格の理由

STAMPのコアユーザーである「クリエイティブ・ワーカー」は、これまでオーダーメイドとは縁のなかった層ともいえる。そこで重要になってくるのが、彼らに合わせた価格設定だ。STAMPでは1本¥16,500〜という値段で販売しているが、これはそこそこ良いブランドの既成品デニムでも大いにあり得る値段。オーダーメイドでありながら、ここまでの低価格をどう成立させているのか?

 

「無人店舗でお店にかかる経費が抑えられているのに加えて、製造過程のデジタル化によるコストカットがポイントです。既存のオーダーメイドは毎回ゼロからパターンを起こすため、手間と時間が相当かかりました。それをSTAMPのデニム工場では、ベースとなる型紙データに採寸データを掛け合わせることで、自動で型紙が最適化される。それらの製品情報が管理されたチップをコンピュータミシンに通すだけで、適切な型紙や縫い方が提示されるので、製造の手間を大幅に省くことができる。これにより人件費を抑えられ、手に取りやすい価格で提供することができます」(竹内氏)

大量生産のアパレルでは、商品には、廃棄分も上乗せした値段がつけられているのが一般的だ。対して、必要分だけを造るオーダーメイドなら、無駄なコストが生まれず、地球環境にもやさしい。SDGsや環境配慮がトレンドの今、オーダーメイドのニーズはこんな側面からも広がりそうだ。

一対一のコミュニケーションで生の声を聞く

採寸やオーダーが瞬時にできるとはいえ、オーダーメイドゆえ、STAMPでも完成には1ヶ月ほど時間がかかる。この間の顧客の不安を解消してくれるのが、LINE上での気軽なやりとりだ。最初のスキャンボックスでの採寸予約もLINEで行う。注文後の通知から、1ヶ月間の制作状況の進捗、また到着時にフィット感のチェックを促す案内も必ず届く。マメに連絡が入るので、顧客からの問い合わせもしやすい。

 

加えて、ユーザー限定のSlackコミュニティも存在する。一度オーダーした人なら誰でも参加が可能だ。ユーザーは、新商品のお知らせや試作品を試せるモニター募集などの情報が得られ、ブランド運営の裏側を知ることができる。一方STAMP側は、ユーザーから生のフィードバックをもらい製品開発に生かせるのがメリットだ。これら顧客との1対1のコミュニケーションが、ユーザーのリピート率の高さに繋がっていると竹内氏は推測する。

 

「個々にフィットするオーダーメイドという点でも、無人店舗やオンラインで完結する無機質のサービスという点でも、ユーザーさん1人1人の生の声をすごく重視していて。ヒアリングやリアルイベントの開催などを通して、一対一のコミュニケーションの場を積極的に設けるようにしています」

 

今後はデニム以外にも様々なアイテムをオーダーメイドでオーダーできるようにしていく予定だと、竹内氏は言う。さらには、3Dスキャンのボックスをオフィスビルや駅の構内、またジムなどにも増やし、様々なシーンで気軽に身体の採寸ができるような世界を構想中だ。

 

「将来的に、STAMPは3D採寸ができるプラットフォーム的な立ち位置に。採寸データをもとに、ブランドの枠を超えて様々なブランドやスタイリングをオーダーメイドできるような仕組みができればと思います。また、お客様の身体のデータを預かるというところから、今後はヘルスケアでの活用やアバターを使ったゲームとのコラボレーションなど、異分野との連携も可能性があると思います」

 

オーダーメイドウェアがより身近になるのはもちろん、身体データの活用で、思いも寄らないサービスが生まれる未来にも期待したい。

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