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富士通が推進するDXプロジェクトの三本柱「経営のリーダーシップ」「現場が主役 全員参加」「カルチャー変革」

2022年11月1日から11日にかけて開催された、日本唯一のオンライン教育・eラーニング総合フォーラムのレポートをお届けする連載企画。今回は富士通グループが全社で挑むDXプロジェクト「Fujitsu Transformation(フジトラ)」がテーマ。

 

2020年10月から本格始動したフジトラを牽引するのは、経営トップ陣とCDXO補佐を務める福田譲氏。DXで成果を出すためには、部門やグループ、リージョンを横断したカルチャー変革が必須だという。フジトラの主軸となる留意点や2022年現在における変革の手応えについて、福田氏が「オンラインラーニングフォーラム」で語った。

富士通が推進するDXプロジェクト「フジトラ」とは

デジタル技術によって変容をもたらすDX。DXを成功させると、製品やサービスの向上、業務プロセスの改善などを実現できる。ところが世界中の企業がDXに取り組む中、成果が出ないという課題に直面する企業は多い。マッキンゼーが実施した調査によると、デジタルに限らない企業変革の成功率は30%程度で、DXの場合は16%程にまで落ち込む。

「DXというとデジタル改善になりがちですが、DXはそうではありません。デジタルやデータ、テクノロジーが従来の業界の構造や定義、範囲、戦い方を大きく変える時代に、私たちはどう変わるのか。(富士通では)組織の在り方、業務プロセス、企業の文化・カルチャーなどについて、CEOをはじめとする経営トップ層がリードして変えていくものとしてDXを位置付けました」(福田氏)

2020年10月から富士通全社を挙げて本格始動したフジトラ。DXを成功させるための研究を重ねた結果、「経営のリーダーシップ」「現場が主役 全員参加」「カルチャー変革」という3つの留意点が設置された。

「一度限り時代に追いつけばよいという話ではなく、今までよりさらにスケールや速度が増すであろう今後の変化に対して、『自分たち自身を変え続けることが得意な企業カルチャーに変わろう』ということに留意しています」(福田氏)

 

まず「経営のリーダーシップ」を推進するために、カルチャーを変えるプロジェクト体制として、CEOである時田隆仁氏がCDXOを兼務。2020年4月にSAPジャパン株式会社から入社した執行役員 EVP、CIOの福田氏がCDXO補佐を務めている。

「経営会議メンバーから10人がフジトラのステコミ(ステアリングコミッティ)に入り、『自分たち自身が汗をかいて取り組んでいこう』という進め方をしています。トップ直下のCEO室には、物事を変革する知見をマスターしたDX Designer約30人を配置しました」(福田氏)

 

さらに「現場が主役 全員参加」を実現するために、DXに関するリーダーや責任者となるDX Officerを部門ごとにアサイン(約40名)。国内の本社やグループ会社、海外リージョンを横断し、DX Officerが横で繋がることにより、部門や組織を横断した改革、全社規模での施策浸透と実行、グローバル視点でのDX推進を目指す。

 

「『全員参加』という意味では社内のソーシャルネットワーク(SNS)に、変革マインドに富んだ有志のDXコミュニティを立ち上げています。現在約8千人の社員が、フジトラパークと呼ばれるDXコミュニティ上で常に繋がった状態で意見を交換しています」(福田氏)

個人のパーパスの発見をカルチャー変革の原動力に

「カルチャー変革」の留意点に関して、フジトラではグループすべての社員一人ひとりに焦点を当てた。特に次の4つのポイントを軸として位置付けている。

 

①変革の動機付け(パーパス)
②人事制度改革
③働き方・働きがいの改革
④デザイン思考

 

「①変革の動機付け(パーパス)」を軸にした理由は、前述したDXに関する3つの留意点のうち「現場が主役 全員参加」を強化する側面もあるようだ。

 

「変革のエンジンとなるのは、企業と個人のパーパスです。(カルチャーの変革について)なぜ変わらなくてはいけないのか、自分はどうなりたいか、現状と自分たちがなりたい姿との間にどんなギャップがあるのか、どのように変えていくのか。こういうことについて社員が腹落ちしないと進みません」(福田氏)

約2年前に富士通は企業のパーパスを「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」と定義した。80年以上に及ぶ富士通の歴史の中でも、「イノベーション・信頼・持続可能」は、富士通のDNAに通ずるキーワードだという。

 

「ただし社員からしてみると、企業のパーパスと日々行っている自分との仕事との間には大きなギャップがあります。自分の仕事が企業のパーパスにどうつながっているのかは、なかなか体感できない。そこで今進めているのが、一人ひとりの個人のパーパスに注目すること。日頃は忙しくてつい忘れがちな各個人のパーパスを、対話を通じてカーブし(掘り起こして)、言葉にしていく取組を始めました」(福田氏)

 

そうしてスタートしたのが、TOP FIRSTプログラム(Transformation from TOP FIRST)。パーパス・カービングと呼ばれる対話では、次のような個人のパーパスを掘り起こしていく。

 

・なぜIT業界で働いているのか
・なぜ富士通に入社したか
・出社初日に何を思っていたか
・富士通で何を成し遂げたいと思っているか

この取組は全社員が対象であり、経営トップをスターターとして、たすきリレー型で進めており、既に10万人規模で完了している。

 

「(個人のパーパスに)今一度光を当てて腹落ちすることによって、『(富士通のパーパスの)ここを変えていかないと自分のパーパスを実現できない』という繋がりを持ってもらうようにしました。パーパス・カービングを進めていくと、内省と対話を通じて多くの割合で社員の自覚が強くなります。自覚が進むと覚悟が定まってきます」(福田氏)

「個人のパーパスと富士通のパーパスを並べると、そんなに違っていないことが多い。一人ひとりの言葉は違うけれど、大きくは異なっていません。個人に違いがあることは多様性であり、それが変革の推進力になることも実感しています。個人のパーパスと富士通のパーパスの重なりに気が付くことを変革の原動力にするわけです」(福田氏)

カルチャー変革を支える新制度とデザイン思考

DX実現に向けて、フジトラでは「②人事制度改革」「③働き方・働きがいの改革」「④デザイン思考」も掲げている。

 

「②人事制度改革」の中核については、フジトラが本格始動した当時、CHROである平松浩樹氏が「社員と会社の関係性を大きく変えよう」というメッセージを全社員に向けて表明。「自律」「信頼」をキーワードに、社員と会社の関係の再構築を進めている。

 

「会社が社員を管理する、あるいは指示をするという方法ではなく、会社は社員を信頼します。社員も会社に縋るのではなく、自律的に自分のキャリアや仕事を進めていく形に変えていこうとしています」(福田氏)

具体的には、ジョブ型人材マネジメントのフルモデルチェンジを実施。スキルアップや社員教育を一律型研修で強いるのではなく、社員がキャリアプランと現状とのギャップを自分のペースで埋めていくことを推奨している。

人材育成の鍵となるのはポスティングだ。導入当時は戸惑う社員が多数だったが、現在では数千人規模の社員が自ら手を挙げ、組織やリージョン、職種を超えたポスティングが実施されているという。

さらに新たな評価制度「Connect」も導入された。従来の数字中心の評価とは異なる視点で、ビジョンの浸透や社員一人ひとりの挑戦、成長の度合いを含めて評価する。

 

「③働き方・働きがいの改革」では「Work life shift」をコンセプトに、ボーダレスオフィスやワーケーション制度を取り入れた。ボーダレスオフィスはオフィスの在り方を見直すところからスタートし、多様な働き方をサポートすることを目指している。

 

「過去2年半ほどにわたり、富士通の社員12.4万人の出勤率が2割を超えたことは一度もありません。オフィスとはコラボレーションや人と人とが接点を作るための場所だとみなし、カフェのようなオフィス環境へと変えています。世界中のすべての富士通のオフィスについて、この2年半で全面的改装を進めてきました」(福田氏)

 

地方移住を含むワーケーション制度は、社員が自分らしい人生の環境を作りながら仕事を継続することをサポートする取り組みだという。

 

「④デザイン思考」とは、適切に仕事のサイクルを回すためのフレームワーク。従来のPDCAサイクルでは対応できない業務が存在することに着目し、富士通では「OODAループ」を積極的に採用した。

ところが組織レベルでOODAループを回すことは難しいという問題が発生。デザイン思考を解決の糸口として取り入れた。観察(Observe)→仮説構築(Orient)→意思決定(Decide)→行動(Act)のループを素早く回し、修正のアジャイルへと展開させることを重視している。

 

「PDCAが駄目というわけではありません。今までと同様のバイオリズムのものや正解がわかっているものはPDCAの方が合っているかもしれない。けれども正解がわからないものや変化が激しいものはOODAの方がいいかもしれない。PDCAとOODAを適宜適切に使いこなす個人であろう、組織であろうということを目指しています」(福田氏)

 

現在、社員のデザイン思考の浸透には課題が見られるという。一方で福田氏はまた、社員の間に生まれたデザイン思考の大きなうねりを感じている。

「社内有志が立ち上げたSNS『やわデザ・コミュニティ』は、デザイン思考を実践していこうという目的で作られました。瞬く間に3千人を超える社員が参加し、デザイン思考の実践や部門を超えた活動について、活発に活動しています」(福田氏)

 

まさに全員参加でのカルチャー変革への挑戦真っ只中にある富士通。フジトラが近い将来、DXを成功に導くひとつのロールモデルとなるかもしれない。

福田 譲

Yuzuru Fukuda

富士通株式会社 執行役員 EVP、CIO(兼)CDXO補佐

1997年に新卒でSAPジャパンに入社後、大手化学・石油メーカー担当の法人営業。バイスプレジデント ビジネスプラットフォーム本部長、プロセス・ディスクリートインダストリーセクター本部長、営業統括本部長を経て、2014年に代表取締役社長に就任。様々な業界のデジタル変革に取り組んできた知見を活かし、2020年に富士通に入社、以降現職。

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取材:鈴木舞

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