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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

1日1万件の電話をどう処理する? 多様化の時代に求められる電話応対の効率化

電話を使わなくなった、という人は多いだろう。オンライン通話にチャットにメール……など、デジタルツールが溢れる今、コミュニケーション方法としての電話は、特に都市部や若年層の間では存在感が薄まっている。しかしそんな今、電話にまつわるあるツールが注目を集めている。IVRサービスを提供する「IVRy(アイブリー)」だ。IVRとはInteractive Voice Response=自動音声応答の略で、かかってきた電話にコンピューターが自動で応対し、適切なオペレーターや部署に電話を転送するシステムのこと。これを1日100円、最短5分で簡単に設定できるサービスだという。電話応対のニーズはどれほどあるのか? サービスを安価で提供できる理由は? 株式会社IVRy代表取締役の奥西亮賀氏に話を聞いた。

電話応対の現実

IVRyは1日100円、最短5分で導入できる電話自動応答サービス。まずは、コールセンターへの電話を想像するとわかりやすい。「○○の場合は1を、△△の場合は2を、□□の場合は3を押してください」などと音声ガイダンスが流れ、かけ手が対応する番号を押すことで、対応が“分岐”していく。IVRyでは、この分岐のルールを、自由にカスタムすることができる。

例えば、音声案内で自動対応させたり、担当者に電話を取り次いだり、受電元の電話番号に定型テキストをSMSで自動送信したり、音声を録音したり、顧客の管理をしたり……など、その機能は幅広い。

 

IVRyは2020年7月のベータ版ローンチから2年で累計受電件数は200万件を突破。47都道府県、25以上の業界で使われるなど、全国的に認知が広がっているが、サービス開発のきっかけは自らが経験した電話の“落とし穴”だったと奥西氏は言う。

 

「元々会社の代表電話を、僕個人の携帯電話番号にしていました。ですが、かかってくる電話のほとんどは営業電話だったので、着電があっても無視することにしていたんです。そんななか、融資の申請をしていた銀行から本人確認の電話がかかってきましたが、いつも通り無視してしまい……。『本人確認できずに融資を落としました』という通知が届き、愕然としたことがありました」

この後、融資は別で決まり事なきを得たものの、場合によっては会社存続の危機にもなりかねない事態だったと言える。もともとエンジニアやUI/UXデザイナーとして働いてきた奥西氏の場合、仕事上のやりとりはオンラインで完結し、電話の重要性を感じることはなかった。が、この時気付いたのが「10%くらいの確率で重要な電話がかかってくる(法人番号の場合)」という現実だ。

 

「電話に出なかったことで、大きな機会損失やリスクに繋がることがある。だからといって、全ての電話に出る世界では、電話を受ける側にとって健全ではない。もっと受け手にとってコントローラブルに電話を受けられる世界になったら良いのに、と思ったことが開発に繋がりました」

 

さまざまなデジタルツールが溢れる今、業界問わず、電話をほとんど使わなくなった、という人は多いだろう。近年では、「電話をいきなりかけるのは失礼であり、時間の搾取である」と感じる人が増えていると、コミュニケーションの専門家は指摘している。そんななか、IVRyのトラフィックが衝撃の事実を表している。2022年8月、新型コロナの第7派の流行とともに発熱外来に人が押し寄せ医療機関がパンクした、というニュースは記憶に新しい。

 

「トラフィックを見ると、1箇所のクリニックに対し、1時間に数千、1日に数万件の電話がかかってきていたんです。そんななか、とあるクリニックで社内SEをやっている方が挨拶に来てくれて、こう言ったんです。『今までは電話が途切れることがなく病院から出られなかったが、IVRyを導入したことで病院から出られるようになったので挨拶に来ました』と……。我々のように電話をかける側としては、さほど電話をかけていないのでイメージしにくいですが、受ける側からしたら日々大量の電話を受けていて、大きな問題なんです」

 

電話は、実はまだまだ使われている。というのが、トラフィックを常に追っている奥西氏から見た電話応対の現状だ。

1日100円〜提供できるわけ

大手企業や銀行、またはコールセンターなどへの電話では、これまでもIVRシステムは当然存在していた。それを踏まえた上でIVRyがすごいのは、IVRシステムを誰もが簡単に使えるサービスにしたこと。導入時の相談も無料で行っているため、ユーザーはイニシャルコストがかからない。その上、使用量も月額3,000円〜と、格安携帯ほどの価格帯だ。

その背景には、業界の慣習的なものがある。IVRシステムはSIerが顧客の要望を聞いて開発するのが長らく一般的だったため、イニシャルコストは数百〜数千万、ランニングコストは月数十万かかるのが常識だった。ここ数年でコールセンター向けのクラウドサービスが少しずつ登場するも、それでも初期費用に数十万、ランニングコストに月数十万程度が必要だった。IVRyの登場が、いかに革新的だったかが分かる。

 

「例えば、個人経営の飲食店さんでも、電話応対が発生するとオペレーションが止まってしまう、なんてことは実際多い。ラーメンを秒単位で作りたかったんだけど、電話がかかってきたのでちょっとだけ伸びちゃいました、みたいなのは良くあるケースです」

 

スモールビジネスのエンドユーザーが使える価格帯と使いやすい機能を実現したIVRy。だが通常、導入に数十〜数千万かかるシステムをこれほど安価で提供できるのはなぜか。

 

「これまでお金がかかっていたのはやはりシステム開発の部分で、SIerさんなどが顧客ごとにヒアリングし、修正を重ねて、開発していたので費用が跳ね上がっていました。僕らは先に販売価格を決め、そのなかでできる仕組みを作っています。サービスの使いやすさにはかなりこだわっています。お客さんにとって使いやすいということは、問い合わせや相談も少なく、僕らの人的コストもかからない。お客さんが自らカスタマイズして自ら改善していく流れができているので、結果的に安価で提供しても利益が出るんです」

実際、設定方法や機能についての問い合わせはほとんどないのだという。前職ではリクルートで、UI/UXディレクターを務めていたこともある奥西氏。使いやすさを生むための、人の行動動線や心理学などの法則は大抵把握している。それらをベースに、ユーザーにヒアリングを重ねながら、機能の改善・拡張を繰り返してきた。

社会動向が大きくニーズを左右する

2022年2月時点(2022年9月現在の数字は先述の通り)でIVRyのユーザーは病院クリニックが30%、 残りがECサイトや飲食という結果が自社アンケートから出ているが、これは随時変化している。とりわけ、2021年の5月には医療機関からのトラフィックが急激に増えたと奥西氏は話す。

 

「医療業界からのトラフィックが急増し、昨月対600%でトラフィックが増えました。新型コロナのワクチン接種が始まり、ワクチンの予約電話が鳴りやまず、電話がパンクする医療機関が続出していた時期でした」

 

2022年においては、新型コロナの影響で過去2年間、さほど営業できなかった飲食や宿泊業が再開したことで、同業界からのトラフィックが増えているという。電話応対のトラブルが発生したときに、そこにサービスのニーズが生まれる。その意味では、世の中の動向がニーズに大きく反映するサービスといえる。

チャネル多様化の時代に求められる電話応対の効率化

ビジネスでは重要な電話が一定の割合でかかってくる、という考えに続き、今後も「電話番号自体がなくなることはない」というのが奥西氏の予想だ。日本では法人として仕事をする上で、会社登記やオフィスを借りる際に電話番号は必須だからだ。電話でのコミュニケーションは全体的には減っているものの、やはり今後も一定の割合で重要な電話はかかってくる。緊急の時、イレギュラーなことが発生した時、文字情報では伝わりにくいことを確認したい時などには「とりあえず電話」となるし、それは今後も変わらない。

 

「企業や店舗はHPやSNSなどの様々な窓口をもっていますが、そもそも電話とは、それらの窓口ではわからないことを解決するためのツールです。HPやSNS上に常時全ての情報を公開し続けることはできません。例えば、お店を当日予約したい時、当日予約の人数に変更があった時、などはどうでしょうか? そういった確認できないことがあった時に、電話から適したチャネルに橋渡ししていく。多くの電話がそうなれば、社会全体の効率が上がると思います」

 

電話がかかってきた時、受け手はその番号を見て直接受信するか否かを選択できる。受信した場合も、内容によって「残りはこのチャットでやりましょう」などと橋渡しができれば、コミュニケーションは効率化し、様々なコストもカットできる。それは受け手にとってだけでなく、かけ手にとっても同様だ。

 

チャットやメールなどのコミュニケーションツールが、多様化する今。その先端の窓口となる電話を含め、複数のチャネルをどうマネジメントしていくかが企業側には求められる。

奥西 亮賀

Ryoga Okunishi

株式会社IVRy代表取締役

1991年生まれ。2015年、同志社大学大学院理工学研究科情報工学専攻(博士課程・前期)修了。同年、株式会社リクルートホールディングス(現:株式会社リクルート)に新卒入社。保険事業のUI/UXディレクタ〜プロダクトマネージャー、EC事業のプロダクトマネージャーとして、新規事業の立ち上げ〜グロース戦略の策定および実行を担当。その後、2019年3月に株式会社IVRy(旧Peoplytics)を創業し、2020年11月電話自動応答サービス「IVRy」を正式リリース。

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