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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

デザイン性の高い防災グッズに込められた『あなたの無事がいちばん大事』

1月17日、3月11日、4月14日。これらの日付は、平成に日本が体験した大きな災害の日にちである。災害の多い国として、防災は日常的なテーマ。また、毎年9月1日は「防災の日」と設定されており、防災への意識を高める日となっている。しかしながら、すべての人が具体的に準備できているのだろうか。満足のいく準備ができていると答えられるのは、ほんの一握りかもしれない。新型コロナウイルス感染症も一種の災害と捉える人もいる。日常と非日常はいつも紙一重。改めて非日常への準備は必要である。

 

そんな中、「プレゼントを贈る」という日常の習慣から防災意識の醸成を目指している会社がある。2020年に設立されたばかりの株式会社KOKUAだ。同社では、「検討機会の提供」「分かりやすい情報提供」「費用の軽減」が個人の防災意識を高める要素と分析しており、防災グッズ専門カタログギフト「LIFEGIFT」を展開している。取り扱う商品は、デザイン性の高い防災グッズ。どれも家に置いても馴染むようなものばかり。日常と非日常を越境するような商品で、突発的な災害に対応してもらおうという取り組みだ。「KOKUA」代表の泉勇作さんにその考えを聞いた。

株式会社 KOKUA

KOKUAは、2019年にスタートをした防災・災害関連を中心としたサービスを提供するベンチャー企業。元々被災地でのボランティア活動を7年間続けてきた4人のメンバーで発足しており、2019年から精力的に活動開始。現在は、防災×社内イベント、防災×研修、SDG“s×研修等の提案を様々な外部団体との連携によって実現。少しでも多くの組織が、防災や災害に目を向けてほしいと思い立ち上がっており、日本を代表する社会企業の創出に向け、日々サービス開発等奔走している。

事なかれ主義になりがちなギフトの課題

モノトーンカラーの住宅用消火器や持ち運べる高性能浄水器、自動点灯する非常用ライト、1~2人対応のコンパクトテントなど、デザイン性の高い防災アイテムが揃うのが、防災グッズ専門カタログギフト「LIFEGIFT」(14,300円 税込)だ。全16アイテムの中から一つを選ぶことができる。

「防災には“やらなければならない”という、やや強制的な印象を持つ方は少なからずいると思います。我々は防災という意識を広く伝えていきたいのですが、抵抗感を持たれてしまうと、なかなか行き届きません。ですので、全面的に押し出しすぎないコントロールも必要だと考えました。試行錯誤するなかでたどり着いたのが、防災とギフトの掛け合わせです」(泉氏)

 

サービス立ち上げ前に市場調査を行うと、“ギフトの課題感”が見えてきた。ギフトを贈る側には、「何を渡せばいいかわからない」、一方で貰う側も「もらって困らないものが欲しい」という声があった。両者が噛み合わないケースが散見されたのだ。防災グッズは誰がもらっても困ることはないし、贈り手の気持ちも伝わりやすい。実際に泉氏が大切な人に防災グッズを贈った際に大変喜ばれたという原体験があり、それも後押しした。「大切な人の命を守る」「大切な人への無事を願う」、そのための贈り物として防災グッズを贈るのだ。2020年12月にはじまったばかりの同サービスではあるが、先行して実施したクラウドファンディングで約360万円を集め注目された。

「『あなたの無事がいちばん大事』という想いを届け、『自分のことをこれだけ大切に思ってくれている』という体験を感じられることがLIFEGIFTの特徴。ギフトを贈るという行為を通じて、防災へ関心が広がることを目指しています。そのためには、機能性はもちろん、防災グッズのデザイン性や、カタログギフトそのもののデザイン性も大事。カタログギフトは、貰い手が好きなものを選べるという実用性の高いギフト。ですが、『何を贈っていいかわからないから、とりあえず相手が困らないものを』と、贈り手の想いが届きにくい構造がありました。『あなたのことを考えて最適なものを贈る』とは、ギフトにおいて最も大事な部分。これをLIFEGIFTが担えればと思います」(泉氏)

2020年12月からスタートしたLIFEGIFTの販売。労働組合での活用、自動車・不動産業界の返礼品としての活用、大手小売店での取り扱いなど活用の範囲が広がっていると言う。内閣官房が取りまとめる国土強靭化に向けた民間の取組事例集にも掲載された。「防災」「ギフト」の掛け合わせに対して、想定以上の反響を得た。

 

「一般のお客様からの反響も多いです。77歳のお客様からお言葉をいただきました。福島の原発避難地域にお住まいだった方で、震災によりご実家を失い、命の大切さを実感したそうです。そんななか、大切なご友人のお子様が結婚されることを知り、結婚祝いの贈り物として、私たちの商品をご購入いただきました。結婚後の生活を無事に過ごしてほしい、いつかできる子供にも命を守る大切さを感じてほしい、という思いがあったそうです。その他にも、コロナ禍で会えないからこそ相手の無事を願い購入した方や、商品に込められた想いや日常に馴染むデザインという部分を評価していただく方などもいらっしゃいます」(泉氏)

ボランティアを通じた仲間の存在

泉氏の出身は神戸市灘区。幼いころに阪神大震災で被災しており、半壊した家を出て祖父母の元で生活することとなった。近くの知人を失うという体験もあった。大学生になった泉氏は、被災地ボランティアとして活動するように。そこで起こったのが東日本大震災。現地に足を運び活動を行っていくなかで、今のメンバーと知り合ったという。

災害が起これば全国各地に向かってボランティア活動を行う。10年間、その活動は続いており、多くの被災地を訪れた。現地で皆、口を揃えて言うのが、「まさか自分が被災するなんて」。改めて誰もが被災する可能性があることを実感した。こういった社会問題に何かアクションはできないか。被災地ボランティアの仲間とともに、課題解決の方法を探るようになった。泉氏は大学卒業後に、人材・広告業界での営業や新規事業の立ち上げの経験を得ていた。共同代表の疋田氏もまた、IT業界でのプロジェクトマネージャーや新規サービスの立ち上げの経験があった。他にも、WEBマーケティングやSNSでの広報経験のあるメンバーらがおり、これまで積み上げた経験を持ち寄ることでKOKUAの事業が始まった。

オンラインが可能にした遠方者へのギフト

「LIFEGIFTにおいてオンラインは重要です。ギフトを渡すという行為は、目の前で直接渡すことで、相手の喜びや感情がわかるかけがえの無い行為だと思います。一方で、オンライン環境が整ったことで、今までプレゼント贈りにくかった遠方の両親や友人、お世話になった方々に対しても、感謝の想いを届けることができるように。また、防災訓練や研修といった学びの場は、これまで限定的な空間で実施されていましたが、オンラインで対応できることで、時間や距離の制約が無くなったかと思います。

 

防災の準備を一段上にもっていくには、防災意識の啓蒙というソフト面、防災グッズの準備や耐震化というハード面、この両軸でのアプローチが必要。その中でオンラインは、これまで防災の意識がなかった層に対して情報・価値を届けることができます。気軽に防災情報を受け取れるようTikTokで発信したり、オンラインを活用しています」(泉氏)

 

防災の意識を醸成していく。同社の挑戦はLIFEGIFTにとどまらない。現在は備蓄品の開発も進めているという。すでにカンパンやアルファ米など、備蓄品は多く存在するが、災害時にどんな立場の人でも安定して摂取できる備蓄品を目指している。また、防災ECアプリの開発に着手。生活者はAmazonや楽天などを通して、防災グッズを購入することはできる。だが、個々人にとって何が最適な防災グッズなのか、それを知る術が少なく、購入が進んでいない人もいる。LIFEGIFTを通して防災に関心を持った人を対象に、ストレスなく準備ができるような仕組みをアプリで実現したいと泉氏は語った。

 

「これまで災害援助を行ってきて、自分の無力さに気づくことがありました。1週間かけてできることと言えば、瓦礫を移動させるくらい。でも、こういった事前の準備が整うことで、多くの人の“毎日”が“維持”できるのではと思います。『あなたの無事が、いちばん大事。』、そういった思いをカタログギフトにメッセージとしても記しています」(泉氏)

  • 公式Facebookページ

取材:上沼祐樹

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