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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

変わる旅行のかたち、地域・地方のアイデアは【オンラインのある暮らし2021まとめ】

2021年も終盤を迎えようとしている。昨年度に引き続き、コロナ禍等によって働き方・住まい方に関する意識の変化が多い1年であった。そんな中、官公庁は「第2のふるさとづくりプロジェクト」を立ち上げる。これは、都心部の密を避け、自然あふれる旅先へのニーズが高まったことや、ふるさとを持たない都心部の若者が田舎に憧れを持つことが増えてきたためだ。一度きりの訪問ではなく、第2のふるさととして、「何度も通う旅、その地に帰る旅」というスタイルを推奨している。ENILNOでも2021年には多くの地域・地方のアイデアをご紹介してきた。その動きをあらためて振り返る。

三浦市に移住した夫婦が営む出版社「アタシ社」

人口減少が続く三浦市が2021発行したのが、移住・定住促進冊子『MIURA』。企画・編集は、実際に同市に移住した夫婦が営む出版社「アタシ社」。ミネシンゴさんと妻の三根かよこさんだ。自らの経験を踏まえ、三浦の魅力を伝えている。

 

三浦市は古くからマグロ水揚げで知られていた。一時、賑わいを見せていた時期もあったが、今は商店街に築100年を迎える古民家が並ぶ街だ。夫婦の出版社「本と屯」は、この商店街にある。

「港まで徒歩30秒の場所にある商店街が、古い看板建築なども残る良い雰囲気で。そこで、かつては船具店だったという木造の空き家に一目惚れしました。家賃は1棟で3万円でした」

 

出版社の2階には美容室を構える。ミネさんは元美容師だ。こうして新たにやってきた2人による出版社・美容室は、その機能を持ち合わせたまま地域の社交の場として活用されている。古本屋と勘違いして、地元の人たちがどんどん入って来るようになったのだ。

 

「おじいちゃんから小学生まで、色々な人が自然と集まるんです。『ここはなんの店?』と言われつづけて3年経ちますが、無目的な場所としか言いようがありません。だからこそ、こうして人が集まるのかもしれません。昔から、そういう“隙間”には面白みを感じてきました」

多くの人と関わることで、「オンラインには、小さな繋がりを作ったり、細くなった縁をもう一回太くする役割がある」と、ミネさんは気づいたよう。

 

きっかけは知人の骨折。カフェとドーナツ屋を経営するおじさんが怪我によりお店を3ヶ月も閉めることに。そこの穴埋めをするため、「記事を1,000円で購入してくれた人には、カフェ再開時にコーヒーをサービス」と投稿。すると約120人からの賛同を得て、補填にまわすことができた。

 

「オンラインが普及する一方で、日本全体を見渡せば、特に高齢者ほどネットが日常的でない人はまだまだ多いです。これからはオンラインに慣れ親しんだ若い世代が、そういった人たちと繋がった時に、オンラインの可能性が発揮されるように思います」

三浦市にやってきたミネさんらは、多くの仕掛けをこの街で実施している。彼らと話しに行くついでに髪を切ったり、ドーナツを頬張りながら漁港を散歩したり、イタリアンでワインも。何度も訪れることで形成できる人との繋がりを堪能しつつ、旅を楽しむのも良いだろう。そんな土壌が三浦市にはできている。

 

地域住民と交流し「暮らしながら宿泊」するNIPPONIA

「郷(さと)にいること」というコンセプトで、日本の原風景を体感する滞在施設を運営しているのが、NIPPONIAだ。地域活性のために古民家を活用したまちづくりを全国で実施している。立派な古民家の宿は決して安価な部類には入らない。むしろ高額といえるだろう。しかしながら、NIPPONIAが取り組むのは宿泊体験だけではない。その街に訪れることに価値が得られるような総合的な体験を提供しているのだ。

 

訪れたのは、2020年11月に熊本県甲佐町にオープンした「NIPPONIA 甲佐 疏水の郷」。商店街入り口のたばこ屋だった築130年超の旧松永邸を改修した古民家ホテルだ。主屋と離れの2棟で展開しており、客室は3つ。同施設のコンセプトは、「地域とゆるやかにつながる縁側(えんがわ)」だ。宿で過ごすこともさることながら、滞在者が地域の方とのゆるやかな交流ができる“きっかけ”を提供している。

きっかけとは。このホテルに関わる全ての人が地元・甲佐町の住人で形成されている。施設の支配人はじめ、朝食提供店、体験提供事業者、施設の施工会社まで。そのことから、滞在者は必然的に甲佐町の日常に取り込まれ、1人の住人として過ごすこととなる。また、美濃和紙を使い活版印刷で1枚1枚丁寧に制作した周遊パスで、地元商店街で様々なサービスが得られるのも嬉しい。サービスをきっかけに様々な交流がうまれる仕組みだ。地元の人たちと交流した旅人がSNSで発信する。すると、「こういう場所で過ごしてみたい」「普段会うことのない人と交流したい」と、新たな需要を生み出すサイクルをつくっている。

NIPPONIAではお客さんをファン化させることが非常にうまい。地元の職人やホテルスタッフとの交流で宿泊者は、暮らすような宿泊体験が得られる。すると、次の年も、また、その次の年もと「帰るように旅」を楽しむようになるのだ。我々はコロナを経験して、自らの暮らしに目を向けるシーンが増えた。会社や学校にいる時間よりも、自宅にいる時間が多い人もいるだろう。丁寧に毎日を過ごせているかどうか、日々の暮らしの充実がいま見直されている。

 

緑あふれる三重県のど真ん中に誕生したVISON

今年オープンして一気に話題を集めたのが、三重県多気町のVISONだ。三重県のほぼ真ん中に位置し、伊勢神宮や熊野古道にも通じるこの街に、面積119ヘクタール、東京ドーム24個分の商業リゾート施設が誕生したのだ。大型商業施設と一言に括れば聞き慣れた言葉でもある。しかしながら、その充実した内容を知れば、足繁く通う理由ができるだろう。

 

まず、施設には多くの木材が使用されており、心落ち着く仕組みがある。式年遷宮で伊勢神宮が新しい社殿を建てるように、VISONでも20年ごとの修繕が行われるという。派手に木材をつかった演出ではなく、40年後、60年後、120年後も継続する施設であることがメッセージされている。

また、パリの一つ星シェフ手島竜司監修による産直市場「マルシェ ヴィソン」と、辻󠄀口博啓による「スウィーツ ヴィレッジ」を皮切りに、薬草を活用した「本草湯」と木と森の体験施設「kiond」が、そして、くるみの木やミナ ペルホネン、D&DEPARTMENTが出店する「サンセバスチャン通り」、さらに「HOTEL VISON」が順を追ってオープンした。

 

さらには、VISONは未来に残る商業リゾート施設として、スーパーシティ特区としての役割も担う。これは内閣府が進める国家戦略特区施策で、地域の困りごとを最先端の「J-Tech(日本が世界に誇る技術力)」を活用し、地域・事業者・国が一体で解決する取り組みだ。住民参加型の「One-ID」を展開し、オープンAPIでデータ連携基盤を有効活用。地域住民や観光客がIDを使って各種サービスの体験が可能だ。さらには、車両を活用したオンライン診療などを展開し、高齢化が進む地域の利便性向上につなげる。

「モビリティを走らせたり、ドローンを飛ばしたり、VISONは私有地のため、色々と試したいと思っています。キャッシュレス決済も行いますし、One-IDの採用で顔決済も目指します。One-IDを使うことで、今度オープンするお風呂を町民が安価で利用できたり、また、町民の健康データを蓄積することができるでしょう。このデータを用いて、町民の健康維持や病気の早期発見に生かすことを考えています」

 

こう語るのは、ヴィソン多気株式会社代表取締役の立花哲也さんだ。過ごしやすさを重視した木材による施設環境から、充実したショップの数々、そして、オンラインを駆使した最新技術の搭載。大型施設の日帰り旅行では収まらないコンテンツが、このVISONにはある。古来より「多くの気(いのち)を育む場所」と言われてきた三重県多気町。宿泊しながらこの“気の流れ”を堪能してみるのもいいだろう。

 

渋谷パルコで中高生向けのクリエイティブスクール

旅のかたちではないが、都心部で構成される特異なコミュニティについても触れておきたい。10代の若者たちが、クリエイティヴの原点に出会うことができる「学び」の集積地「GAKU」だ。場所は、渋谷パルコ、2020年9月に開校して以来、ファッション、アート、音楽、デザイン、建築、映像など、様々なクリエイターと連携したクラスを展開。クラスの空き時間には、10代専用の自習室として無料開放し、様々な交流が生まれる。その他、podcast「ガクジン」も配信中だ。

 

何よりもの特徴は、大人も羨ましくなる講師陣の贅沢さ。都市計画の授業では海法圭氏が、ファッションの授業ではANREALAGEのデザイナー・森永邦彦氏が登場。他にも菅付雅信(編集者/株式会社グーテンベルクオーケストラ代表取締役)、山縣良和(writtenafterwards デザイナー/coconogacco代表)らも揃う。

昨今、小学生や未就学児向けのアートスクールや私塾は増えているが、中高生向けのクリエイティブスクールは珍しい。部活動や受験勉強に追われて忙しい年代ではあるが、これからの時代において、クリエイティブの素養は欠かせない。

 

「僕たちが見られるのは、あくまでも教育の一部だと思っています。義務教育はもちろん必要ですから。ただ、中高生のうちに将来の仕事を思い描く子どもは結構多くて。特にクリエイティブな業界だと、大抵の人が10代のうちに仕事を決めているんです。例えば、多くの人が音楽を最も聴いていた時期が中高生の頃だったように、活躍中のクリエイターたちも、その時期に心を大きく動かされた人や作品があったはずです。そんなきっかけをGAKUのなかでどれだけ作り出せるかが、僕の目標です」

 

こう話すのは、GAKUを運営するLOGS代表・武田悠太さんだ。著名な講師陣とガチンコで向き合う学生たち。有名なクリエイターに刺激を受けながらも、自分と同世代が頑張っている姿にも、同様に刺激を受けているという。GAKUを通じて10代同士が繋がっていく姿が確認できる。

 

「GAKUには不登校の子もいて、GAKUでは友達をたくさん作っているんです。とある子はデザインと映像制作が得意だったため、プロジェクトの映像を作るよう講師から指名され、チームに一気に溶け込みました。本来なら家と学校の往復になりがちな年頃ですが、そのように新たな可能性を生み出せるのも第3の場所が持つ力かと思います」

地方に出ていくことだけが旅のかたちではない。こうやって都心部であっても自分達の居場所から越境して集う若者がいるのだ。多様な時代において、旅のかたち、コミュニティのかたちに正解はない。この選択肢は2022年、ますます広がることが期待できる。

 

 

地域・地方では、アナログとデジタルをかけ合わせたアイデアが誕生し、また、それを運用している。昨今はアフターデジタル(リアルがデジタルの中にある)と言われて久しいが、十分な活用はこれからであり、また、十分な可能性を秘めていることが、エニルノの取材でもわかってきた。2022年も引き続き、柔軟な対応で時代の先をいく地域・地方を追いかけたい。

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