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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
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「街じゅうを駅前化」、電動マイクロモビリティのシェアサービス「LUUP」がつくる新しい交通インフラ

明るいエメラルドグリーンの乗り物が、街中をさっそうと駆け抜ける。最近、そんな光景を目にしたことはないだろうか? その仕掛け人は、東京や大阪、横浜、京都、仙台を中心に電動キックボードと小型電動アシスト自転車などの電動マイクロモビリティのシェアリングサービスを展開する「Luup」。駅から離れた場所の数キロメートルなど、ちょっとした移動に便利なモビリティは人気を博し、ユーザー数は増加、エリアも拡大中だ。その反面、電動キックボードという新しい乗り物に対する批判や危険性の声も耳にするようになった。このモビリティサービスはどんな未来を目指しているのだろう? 株式会社Luupの広報担当である松本実沙音氏にお話を伺った。

目指すのは“街じゅうを「駅前化」する”こと

日本の街の特徴として、鉄道社会だということがひとつ挙げられる。駅を中心に街が賑わっており、駅の近くに住めば便利だが、駅近の物件は人気で家賃も高い。駅から遠ければ、徒歩もしくは自転車やバスなどを使って駅までたどり着かなくてはならない。そこに、電動で一人乗りの小型モビリティがあればどうだろう。

 

「LUUPというシェアリングサービスが街のいたるところにあり、乗り降りできるポートが増えていくと、駅から遠い場所でも駅近・駅前かのようにアクセスできるようになります」。

 

“街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる”。これはLuupが掲げるミッションだ。

「既存の公共交通機関を代替するというよりは、それと補完し合うような移動手段の提供をしたいと思っています。Luupの代表である岡井がよく言うのは『鉄道が動脈だとすると、LUUPのようなマイクロモビリティのシェアリングサービスは毛細血管のように張り巡らされているべきだ』ということ。駅から離れた場所のアクセスが向上すれば、駅遠の不動産、さらにはその街自体の価値向上につながります」

 

例えば通勤の場合、自宅から直接会社へモビリティを利用する場合もあるだろうが、自宅から駅、または駅から会社の移動など、ちょっとしたアクセスにも手軽に利用できるのがポイントだ。

ポートを設置することで不動産の価値が上がる

LUUPの大きな特徴は、モビリティに乗り降りできる「ポート」の密度の高さ。「例えばちょっと歩けばコンビニがあるように、どこにでもLUUPのポートがあるという信頼感が得られれば」と松本氏は言う。東京では都内に1,250ヵ所以上、大阪には370ヵ所以上のポートを設置。類似サービスのなかでも最高密度を誇る。

サービスが普及している秘訣はユーザーの使いやすさはもちろん、ポートオーナーがポートを設置するメリットやハードルの低さにある。車両をできる限りコンパクトに設計し、ポートの大きさは最小限に抑えられているため、不動産オーナーはLUUPを導入しやすい。

たとえば、マンションのエントランス前や空きスペースにLUUPを設置するケースが増えている。物件入居者の満足度向上のために導入し、物件情報でセールスポイントにすることも。最近では、新築マンションに最初から入居者専用のポートを設置する場合もある。また、店舗前での導入も進んでいる。

 

「LUUPがマンションや店舗の認知の獲得に寄与しているというお話をポートオーナーさんからよくいただいています。例えば大通りから一本入った道など、ふだんは行かないような場所でも、ポートがあることで足を運ぶきっかけになります。カフェ前のポートに停めた時、そこでコーヒーを飲んで行くというようなことも起こりやすいです。店舗だけではリーチできないようなユーザーに知ってもらう機会をつくるというのは、ひとつの価値提供かもしれません」(松本氏)

 

ポートオーナーは、ポートの面積等の条件に応じて一定の収入が得られる仕組みになっている。さらに設置も簡単で、看板を置き、地面にテープを貼るのみ。器具を埋め込むなど現場を傷つけることもなく、現状復帰も簡単なのでお試し的に始めてみるハードルも低い。

街なかのシェアリングは迷惑? サービス事業者に課せられた課題

「街中にポートを置かせていただいたうえでサービスを提供するので、街への配慮もしっかり行うアプリ設計・サービス設計を大切にしています」と松本氏は話す。モビリティサービスは、街やそこに住むユーザー以外の人の立場にも配慮する必要がある。

LUUPの場合、ポートから車両があふれてしまって歩行者の邪魔になったり、ほかのお店やサービスを妨げるなど問題が生じないように、アプリには様々な機能が搭載されている。たとえば、ライドを開始するためには必ず目的地のポートを予約しなければならず、満車のポートには予約ができない。さらに返却時にはモビリティを枠線内に停めた様子を撮影しなければライド終了ができない仕組みになっている。これにより周りの車両が乱れていないか、ゴミなどが落ちていないか、ポートのテープが剥がれていないかなど、メンテナンスの必要性も合わせて確認する。

また、電動キックボードに関しては、政府がもつ実証実験制度の認可を受けてサービスを提供している。この実証実験に参加し、シェアリングサービスとして電動キックボードを提供する事業者には、利用者への交通ルールテスト(満点合格が必須)の実施と運転免許証の登録の義務付けが課せられている。LUUPのアプリでは、テストに連続して正解する必要があり、さらに回答後に背景知識を一問ずつ表示して学べるようなアップデートも直近に行った。

 

「電動キックボードを扱う業界全体の課題として、保安基準を守らない車両がルールの整備より先に普及してしまったことが挙げられます。個人所有のものでナンバーやミラーを付けずに走行している様子が見られますが、それは違法です。しかも交通ルールを守らない人も。『(電動キックボードは)全体的に違法な乗り物』という印象で認識されてしまうことが多いなか、この新しい乗り物の正しいルールと、意義を理解してもらうため、仕組みづくりに力を入れています」(松本氏)

協議会をつくり、誰もが自由に、安全に移動できる環境を整備

2019年5月にはLuupのCEOである岡井大輝氏が中心となり「マイクロモビリティ推進協議会」という業界団体を設立した。岡井氏が会長を務めるが、LimeやBirdといった国内外の電動キックボードのシェアサービスの社会実装を目指す複数の事業者が参画している。いわば競合他社同士だが、「日本で電動キックボードを安全、便利に提供したい」という思いは共通している。

 

「電動キックボードは新しい乗り物なので、そもそもそれに特化したルールが日本にありませんでした。そんななか2020年から全国でたくさんの実証実験を積み重ねながら協議会と関係省庁とで協議を重ね、2022年4月には道路交通法が改正。施行はこれからですが、電動キックボードのためのルール整備が行われました」(松本氏)

4月の道路交通法改正により、最高速度が20km/h以下など、一定要件を満たす電動キックボードが「特定小型原動機付自転車」という新しい車両区分に位置付けられた。16歳以上であれば運転免許は不要、ヘルメットの着用は任意となり、施行後はより気軽に電動キックボードに乗れるようになった。およそ2年以内に改正道路交通法が施行される見込みだ。

 

「改正道路交通法が施行されると、実証実験中のシェアリング事業者以外のサービスでも気軽に利用できるようになるでしょう。個人で購入した電動キックボードも、シェアリングの車両も、同じルールで乗ることができるようになります。外資企業の参入なども活発になっており、市場が大きく変化して電動キックボードがより身近なものになる可能性も。そんななか、電動キックボードの安全水準をいかに上げていくかが、今後の業界全体の課題になるはずです」(松本氏)

 

協議会は事業者の声をまとめる役割を果たしつつ、業界全体の安全性を保つという存在意義が強くなりつつある。

 

Luupの目指す将来像は、高齢者を含め誰もが自由に、安全に移動することができる世界だ。「人口が減少していく日本の今の社会において、乗り手は増える一方で運び手は減り、とくに高齢者の足の不足がより深刻になっていくと予想されます。そうなったときに、少しの移動なら自分で安全にできるということが重要になると考えられます。今後、電動で小型の一人乗りモビリティは更に必要とされるようになると思っています」と松本氏は語る。いずれは高齢者も含めて誰でも乗れるような3〜4輪のユニバーサルなモビリティを導入していくことも視野に入れているという。

 

また、例えばUberEATSといった配達系のサービスや、人が人のもとへ行って提供するサービスなどが普及するにあたって、LUUPのような短距離移動手段がより必要になってくることが予想される。

 

「ミッションにも掲げているように、Luupは『インフラ』になりたいと考えている会社です。一定の層の人たちが乗って楽しいだけではなく、むしろ『なくては困る存在』になっていきたいです。そうなれたときには駅やバス停から遠い場所や地方など、どんな場所に住んでいても、便利に暮らすことができるようになるはず。さらには街の活力の維持や発展にもつながることを目指しています」(松本氏)

松本 実沙音

Misato Matsumoto

株式会社Luup 広報

小中高とオーストラリアで過ごし、卒業後に帰国し東京大学に進学。新卒で株式会社Speeeに入社し、CIとVI刷新のプロジェクトアシスタントやデジタル広告の運用コンサル、採用人事などを経験。2019年6月、広報一人目としてLuupにジョイン。危機管理広報なども含む広報業務全般を担当。

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取材:橋本安奈

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