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「“アナログ”にこそ地域DX推進のヒントあり」NOTE×シナジーマーケティング代表者対談

「地域のDX化」と言われはじめて久しい。大分県・姫島ITアイランドのような成功した自治体は話題になるが、いまだ結果が見えない自治体も多いことだろう。地域ごとに課題が異なることから、模範的なモデルケースを真似ることができないのが、地域DXの難しさだ。

 

今回、シナジーマーケティング代表取締役社長・田代氏と株式会社NOTE・藤原氏の対談から、「地域」と「DX」の本質に迫る。

 

2019年までヤフージャパンの子会社だったシナジーマーケティング株式会社は、クラウドシステムを使ったCRMソリューションを市場に啓発。2006年には上場し、注目を集めていた。そんな同社はビジョンとしている「人と企業が惹かれ合う」マーケティング事業の次の領域として、地域創生事業を11月に発表した。

 

藤原氏は、シナジーマーケティング出身。退職後、地域の空き家問題に早くから目をつけ、「古民家を活用したまちづくり」というかたちで株式会社NOTEでNIPPONIA事業を展開。その一つである「篠山城下町ホテルNIPPONIA」は、城下町に残る古民家9棟で構成され、滞在中に地域の魅力を堪能できる仕組みになっている。地域創生の最前線にいる二人からどんな話題が飛び出すのだろうか。

地域にあるDXの落とし穴

藤原岳史氏(以下、藤原):私はシナジーマーケティングを退職した後も、業務委託というかたちで契約していたんですよね。内容は、月に一度、日々の業務レポートを作成して田代さんに報告していました。その当時、僕の頭には地域でITをもっと使えるはずに、なぜ使っていないの?という疑問があったんです。その解を見つけるべく、同社を辞めて出身地の篠山に戻って事業を始めました。でも、その解はすぐに判明しました。地域にITが浸透しないのは、その地域にITを使いこなせる人がいないんですよね。そういった現場で見てきたものを田代さんに報告していました。

写真は藤原氏

田代正雄氏(以下、田代):藤原さんは、ボトムアップで地域のIT化をすることにしたようです。そこでかたちとなったのが、古民家を宿や店舗として再生するNIPPONIA事業。そのきっかけとなったのが、兵庫県丹波篠山市の限界集落にできた「集落丸山」(2009年11月)です。昔ながらの農村の暮らしを体験できると評判で、実際に僕も足を運んでみたんです。谷奥の小さな集落には絵に描いたような日本の原風景があり、村の散歩や薪割り、たけのこ掘りなど、様々な体験が待っていました。これは凄いなと感じたのを覚えています。こうやって村が盛り上がっていくんだなと。

写真は田代氏

藤原:古民家ホテルの宿泊に関しては、集客をちゃんとして収益を上げることさえできれば雇用が生まれるし、家賃として払うことで空き家も活用できるという見通しが立っていたので、予約や宣伝などITを使う業務を僕たちのような外部の存在が請け負うことでクリアできました。

 

田代:地域への集客は、ITの使いどころですね。アナログでの集客はコストがかかるうえ、費用対効果が悪い。

データの「見える化」で広がる可能性

田代:藤原さんから集落丸山の立ち上げ当時、ITを地域に落とし込むのを苦戦していると聞いていたので、シナジーマーケティングも一緒になってシステムを組んだことがありました。地域のファンを把握してみようということになり、丹波篠山の特産品にQRコードのシールを貼って、読み込んでもらうとポイントが貯まるという「ふるさとポイント」を作りました。


藤原:2009年あたりでしたね。ポイントは貯まるけれど一体何に使えるの?と、浸透しませんでした。ただの履歴だったので。ただ、そのあと東日本大震災があって、この履歴を地域への「貢献度」として機能させることができれば、この先の災害で物資を届けるようなことがあれば、地域のことを思ってくれている人から順に届けることもできるなって。10年経ってようやく今、地域通貨というかたちで、ファンポイントを可視化するという概念が認知されてきたことで可能性を感じています。

田代:データを把握して、常連さん扱いをするというのはCRMらしいよね。この考え方には共感していて、実は、私もヤフー時代にIDを使えば自分自身を表現できるんじゃないかと考えていました。IDには買ったものや検索したものなど、あらゆる履歴がひもづいているので、それを見ればその人が何に興味があるのか一目瞭然なんです。たとえば、応援するスポーツチームがあるとして、スタジアムに何回来て、どの試合を見ているかなどのデータを公開しておけば、同じ趣味を持つ者同士で「伝説の試合」について話すことができるんです。コンサートならば、第1回フジロックだとか(笑)。本人が理解してほしければ、データを自分自身の証明に使える時代がいつか来るはずだと思っていました。

 

ITで「見える化」するという思想は、観光庁に採択された当社の実証実験事業などでも適用しています。近年ではインバウンドの6割以上が訪日リピーターという中で、デジタルを使って海外から来る人に「おもてなし」をすることは、デジタル都市構想も含めて、行政がやらざるを得ない時期は間違いなく来ています。

 

私たちはこれまで20年にわたって、多くの企業がその資産である顧客データーベースを活用してマーケティングができるツールを開発してきました。それがひとたび「地域の関係人口・交流人口」という器になった時に、誰にとって使いやすいプラットフォームを作っていくべきなのか。行政のバックアップをベースにおもてなしを現場で行う地域企業やDMO、また地域を訪れる人達がデジタルをツールとして使いながら地域とのネットワークを濃くできるようにすればどうかなって。

デジタルは必須だが、最強ではない

藤原:海外にはスタジアムを作る街が多いですよね。スタジアムの中で物産を販売することができるし、観光にも来てもらえる。チームを応援するという文脈が成り立つので、民間の会社同士がフラットにつながれるところがいい。日本のDMO(観光地域づくりを行う法人)でも見られるようになりましたが、集客にフォーカスしすぎている印象があります。

 

ビジネスを作るまでがDMOの役目なので、地域を経営する強さを持ったDMOが現れることを期待しています。それに関していうと、経営ができる人材の確保にお金を使うことを視野に入れる必要があるかもしれません。

田代:これらの地域のコアには「人の心を動かすもの」があります。それが、地域DXの成功の鍵だと思います。人の心は人でしか動かすことはできませんが、感動した瞬間、SNSで誰かと共有したくなりますし、感動させることができれば、地域に寄り添う周りの存在も含めてものすごくポジティブに広がるものですから。

 

藤原:これまでは、お金がある地域は人を呼んで来られるけれど、そうでない地域は没落していくという潮流がありましたが、ここ数年、コンテンツを出せば届けてくれる人が出てきたと肌で感じています。

 

田代:ただ、私たちにできるのはITで座組みを組むまでで、その先は地域の中にいる人にしかできないってこと。サービスベンダーが提供するクラウドサービスは、みんなが使えるようにあえて汎用的に設計されたプラットフォームのようなもの。だからこそ、時間とコストを下げてやりたいことを実現することができるのだけれど、地域が競争を勝ち抜くためにはオリジナリティを付け足す必要がある。企業にも同じことが言えて、ICT利活用を国が推進していく中で、競争力を持たずに闘っていくのは難しいんじゃないかな。

地域から得たものをつなぐ未来

藤原:NIPPONIA事業でも結果的に、自分たちは何を持っていて何を訴求するべきか、その価値を見つけることにかなりの時間を費やすことになりました。ITを持ち込んでやろうと意気込んで来た僕に対して当初、地域の人は受け身でした。自分たちでビジョンを描かず、あなたたちがやってくれたほうが早い、受け入れたほうが早いというように「立ち位置」がズレていたので歩幅が合いませんでした。

田代:そもそもデータを持っていないところで、どうやったんですか?

 

藤原:シナジーマーケティング時代と基本的に変わりません。システムを開発するための設計図を作る時にデータベースが崩れるとその先全てが崩れるように、まずはコンサル的なことから始めました。地域創生ならではと言えば、時間に限りがあるということです。古民家は倒壊する前につなぎ止めなければならないし、人も同じ。戦前に生まれた方たちは80歳、90歳を超えていて、地域の古い記憶や資源を持っているのに、自分が知っていることを特別だと思っていないので、そのまま墓場まで持って行こうとするのです。もう少しで村の誰もが、村の祭りがどうやって始まったのか分からなくなるような状況でした。こういった地域の記憶はワークショップでも拾えなくなってきています。これらを集めてアーカイブを残してさえいれば、効率化を図ったり、他の地域を救ったり、ITで未来に貢献できるようになります。

田代:民俗学DXとか面白そうだよね。

 

藤原:この間、普段なら開かない『篠山町史』を読んでいたら縄文時代にまで遡る記述を見つけたんです。ワクワクしますよね。固い言葉で書かれていると魅力を感じないものも、噛み砕いて誰でもわかるようなコンテンツにすれば、興味を持ってくれる人が出てくるはずなんです。

 

田代:興味のある人に価値が届けば、同じように興味を持った人を連れてきてくれて、地域に深度のあるつながりが生まれる時代がくる。今はまだユーチューバーのような、動画編集のスキルに長けている一部の人に限られているけれど、近所のおばあちゃんや人間国宝級の人たちが自分らで情報を発信するくらいにまで、将来的な活用もありそうな気がします。

田代 正雄

Masao Tashiro

シナジーマーケティング代表取締役社長

1995年関西学院大学卒、同年コスモ石油株式会社に入社。2001年にインデックスデジタル(現シナジーマーケティング)に入社し、営業部長やCOOを歴任。米セールスフォースとの資本業務提携をはじめとするアライアンスを牽引し、2017年に代表取締役社長に就任(現任)。ヤフーからのグループアウトを経て、「人と企業が、惹かれ合う世の中へ。」をビジョンに、「Create Synergy with FAN」をミッションに掲げ、次の時代に必要とされるデジタルマーケティングを推進する。

藤原 岳史

Fujiwara Takeshi

株式会社NOTE代表取締役社長、一般社団法人ノオト代表理事

兵庫県丹波篠山市出身。外食企業での勤務を経て、アメリカのIT企業でインターンを経験。帰国後、IT企業勤務を数社経てシナジーマーケティング株式会社に入社し上場メンバーとして寄与。その後、故郷の丹波篠山市にUターンし、2010年に一般社団法人ノオト理事に就任、2016年5月に株式会社NOTEを設立し代表取締役に就任。現在は、古民家等の地域資源を活用した「NIPPONIA」事業を全国で展開している。著書「NIPPONIA 地域再生ビジネス 古民家委再生から始まる持続可能な暮らしと営み」(2022)。

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  • 公式Facebookページ

取材:堤直子

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