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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
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リアルな世界を再現「デジタルツイン」で見えた自然災害大国・日本に迫る危機

海と山に囲まれ、四季折々の豊かな自然を楽しめる我が国・日本。一方で、自然がもたらす災害が多発しているのも現実だ。

 

近年では平成28年に熊本地震、平成30年7月豪雨、令和元年東日本台風、令和2年7月豪雨など、大規模な自然災害が後を立たない。命や家屋を守ることはもとより、インフラや社会経済活動を維持することなど課題は山積みだ。

 

アメリカに本社を構えるOne Concernは、このような自然災害や異常気象などによって引き起こされるビジネス環境への、さまざまなリスクをデジタルサイエンスで明らかにするレジリエンス分析テクノロジー企業だ。

 

今後の日本に迫り来る自然災害リスクの可能性と対策について、One Concernのシニアビジネスディベロップメントマネージャー鈴木俊也氏に話を聞いた。

リアルの世界を再現した「デジタルツイン」で自然災害リスクをシミュレーション

デジタルツインとは、現実世界をデジタルで復元した世界のこと。災害リスク分析を行う際に必要となる、現実世界と同じ情報をデジタル上にインプットし、リアルで起こりうるリスクモデルをデジタル上に構築、検証結果をフィードバックするという仕組みだ。

 

同社では、デジタルツインに基づく災害リスクモデルを開発し、そのモデルを過去に日本で起きた大規模な自然災害の被災データに基づいて効果検証している。

 

自然災害がもたらす実生活や、事業活動へのリスクは多岐に渡る。そのため、リスクの要因となり得る建物の構造や築年数をはじめ、地形、道路、電力網、空港など、さまざまなデータをデジタルツインに反映。そこに、浸水や地震の揺れの強さなどの自然条件を定量化する「ハザードモデル」、建物のダメージなどを計算する「ダメージモデル」、インフラが復旧するまでの時間を割り出す「リカバリーモデル」を掛け合わせてリスクを算出している。

 

「リスクを軽減するには、まずどのようなリスクがあるのかを知ることが重要です。具体的なリスクの傾向が分かれば、具体的にどのような対策が必要なのかが分かり、万が一に備えていただけます。地震による倒壊リスクが高いなら耐震補強を強化、洪水リスクがあるなら止水板の設置、停電リスクがあるならバックアップの電源を用意するなど、その場所で必要な軽減策が取れるはずです」(鈴木氏)

今後の日本における地震災害リスクは?

関東大震災や東日本大震災を経験している日本は、地震による二次災害(間接被害)への対策も強化しておきたいところ。「地震による影響の大小は、その地域の地震リスクの大きさに依存・比例する」と鈴木氏は話す。

 

「例えば、南海トラフの地震や首都直下地震など大規模な地震が想定されている地域は、建物への直接的な被害、及びインフラの寸断などによる間接的な影響を受けやすくなります。ただし、大規模な地震は発生確率が低いので、それを踏まえると、中長期的にビジネスに及ぼす影響が必ずしも大きいとは限りません。このため、地震の発生確率と影響の大きさの両方を考慮して、正しく地震リスクを評価することが重要となります」

 

その上で、地震による二次災害が発生しそうな地域の特徴について聞くと、電力や交通ネットワークなどライフラインの遮断により生じる二次災害は、日本中どこでも起こる可能性があるという。

 

「例えば洪水リスクについて、一般的に川や海の近くは危ないと言われていますが、たとえ川に近くても高台になっているならそこまで問題視する必要もないこともあります。一方で、電力インフラの観点で言えば、変電所が浸水しやすい場所にあると、事業所が安全な場所にあってもその周辺地域が停電するリスクはあります。同じように、地震によって建物は倒壊しなくても、停電や道路の通行止め、鉄道の運転見合わせ、水道管破裂などの間接被害は生じるでしょう」

 

地震による二次災害リスクを分解すると、一概にこの地域は危険・安全と判断することは難しく、複合的にリスクを捉えなければならない。二次災害リスクが発生することの想定はとても複雑なのだ。このような二次災害は、震度5強程度の揺れが生じると影響が出始めるという。

 

「2021年10月に起きた千葉県北西部の地震(M5.9)では、東京、埼玉で震度5強が観測され、首都高の通行止め、鉄道の運転見合わせ、停電、断水が起きたことが報告されています。これらはおおむね翌日には復旧するなど比較的短時間で回復しましたが、震度が大きくなればその影響は長期化します。弊社のプロダクトでは、一つひとつの地震イベントに対してではなく“再現期間”、言い換えると“発生確率”に基づく災害規模に基づいて、間接影響も含めたリスクをみていただけるよう開発を行っています」

 

ここで言う“再現期間”とは、災害規模を表す指標で、「100年に一度発生するレベルの規模の災害」などの意味を指す。数十〜数百年単位で設定ができ、再現期間が長ければ長いほど、災害による被害は大きくなるが発生確率は下がるというものだ。

日本は地震大国という印象が強いが、忘れてはならないのは台風による強風、大雨による洪水被害の方が、地震よりも各段に高頻度で発生している自然災害であるということだ。

より詳細に、さまざまな自然災害に対応していく未来へ

One Concernはとりわけ電力などのインフラの寸断リスク、それによる被害の影響を知ることに特化している。そのリスクを予測する精度はハザードマップよりもはるかに細かい解像度で分析しており、洪水に関して言えば、解像度は驚きの10メートル単位という細かい粒度だ。

 

ただし、デジタルツインにインプットさせる情報が少ない「豪雪」「火山」などの災害リスクへの対応は現状難しい。過去のデータの蓄積が地震や台風に比べて少ないため、その影響や発生確率についてはまだ研究途上だという。

 

「たとえば土砂崩れのリスクを考えた時、どこまでデータを拾ってモデル化するのが適切なのか、実現しようとすれば検討事項は多岐に渡ります。検討を重ね、今後は津波や土砂被害など災害の種別を増やし、よりさまざまな自然災害リスクに対応していけるように開発していきたいと思っています。

 

また、これらのリスク予測をフックに、サプライチェーン管理や総合リスク管理(ERM)などさまざまなビジネスモデルにおける問題や困難な状況にソリューションを提供していきたいです」

 

生まれ育った国から移動することは、そう多くの人が実現できるものではない。自然災害の発生を止めることはできなくても、リスクを知ればそれに対応する策を事前に講じておくことはできる。One Concernが今後の日本の未来を変えていくことに期待したい。

鈴木 俊也

Syunya Suzuki

One Concern株式会社 シニアビジネスディベロップメントマネージャー

東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。専門は土木工学。政府系金融機関にてM&Aアドバイザリー業務に従事した後、エネルギーテック企業を経て2020年4月から現職。

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  • 公式Facebookページ

取材:藤田佳奈美

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