ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「地域のために」とインフラ企業が「よかよか」精神で異業種挑戦! コンテンツを持つことで変化したこと

電力の自由化が定着し、自分の意向やライフスタイルに沿った電力会社を選べる今。そんななか、ユニークな存在として注目されているのが、九州電力グループの通信会社で、福岡を拠点にする「QTnet」だ。光回線のサービス提供やモバイル事業、データセンター等々を行っているが、「YOKAプロ部」という名の新規事業部では、eスポーツ施設の運営や無人店舗の実証実験をはじめ、個性的な事業を展開している。電力会社として、異業種でのチャレンジを続ける理由はどこに? eスポーツ事業グループの小橋勝之氏とAI事業プロジェクトの佐伯和広氏に話を聞いた。

「よかよか」精神の新規事業部

「YOKAプロ部」は社内公募によりメンバーを選出し、2019年に新設された新規事業部だ。現在は約20名が所属し、時にはオープンイノベーションなどで外部の知見も取り入れながら、新規事業の立ち上げや14件の出資も行なっている(2022年12月時点)。挑戦する姿勢を大事にしたいとの想いから、YES!OK!AGREE!を意味する博多弁「よかよか」をネーミングに採用。外部のベンチャー企業との取り組みも多いことから、大事にしているのはスピード感。経営戦略本部という位置付けではあるが「社長と直接話すなかで物事が決まっていくことも多い」というから、ほとんど社長直轄のような部署と言える。

そのうち業界内外からの注目を集めているのがeスポーツ事業だ。YOKAプロ部では、2019年にプロeスポーツチーム「Sengoku Gaming」とスポンサー契約をしたのを皮切りに、翌年にはそのチームを子会社化し、2021年には西日本最大級のeスポーツ総合施設「チャレンジャーズパーク(略称:チャレパ)」を福岡にオープン。このようにチームと施設の2つを運営するのは全国的にも珍しい、と小橋氏。

 

「日本では2018年がeスポーツ元年と言われており、当時は成長事業として注目され始めた頃。そもそもeスポーツには通信回線が不可欠です。我々としてはこれまで高品質の光回線を提供してきたノウハウを生かせる事業として大きな親和性を感じ、早い段階で参入を決めました」

 

2022年度の来場者数は前年度比の50%増を記録。プレイルームやスタジアムの貸し出しだけ行うこともあれば、eスポーツイベントを委託で企画・運営することもある。特に、eスポーツを絡めたイベントは忘年会や新年会などで人気がでており、これまでeスポーツに馴染みのなかった層にも好評だという。

eスポーツに加えてもう一つ斬新な取り組みが、3年前から九州工業大学と共同で行なっているAI技術を使った無人店舗「con-tech(コンテック)」の実証実験だ。画像認識AIや人の動きを解析した導線データなどを元に、事業化に向けて、技術レベルを上げていると佐伯氏は話す。

 

「小売さんの課題に対して、大学さんと一緒に解決法を探っています。人手不足やコスト削減が避けられない時代、いかに効率よく店舗を運営できるか、という、品質とコストのバランスを探っています」

こうした異業種間での展開やコラボレーションには様々な可能性が感じられるが、実際には「できないことが多く悩みを抱えていた」時期も長かったと小橋氏は言う。親会社である九州電力でも新規事業部に在籍していた同氏は当時を振り返る。

 

「既存事業に加えて、次なる事業の柱となる新規事業を見出すためにも、これまでも地域に入り込んだ活動はしてきました。どんな時も『地域のみなさまのお役に立つことなら何でもします!』という姿勢ではいるものの、実際にはやれることの限界を感じることも多々ありました」

インフラ+コンテンツの強み

これまで電気や回線などのインフラを提供してきた同社。「今回、インフラに乗せる親和性の高いコンテンツをもったことで、できることの幅が広がっている」と小橋氏。もちろんeスポーツやAI単体で全てを解決できるわけはないが、地域や企業からの相談に対して、具体的に提案できることはかなり増えた。

 

「eスポーツのコア層は10〜20代。いわゆるZ世代がメインターゲットですが、どの企業さんもやはりこの層にリーチしたいと思っていらっしゃる。eスポーツをうまく活用して顧客接点を作りたい、という相談はよく受けますね」

例えば、ある会社からは、Z世代との顧客接点を作るべくeスポーツのイベント企画をしてほしいとの依頼で、イベントの企画から運営までを行った。また、無人店舗を作ったことで、小売業者との接点も増え、課題のヒアリングなどにもつながっている。

 

会社の次なる柱となる成長事業を、と親和性の高い事業を選び始まった挑戦。そこから地域住民や企業との新たな接点が生まれ、結果それぞれの課題解決に繋がっていく。“一人勝ち”ではないのが、やはりインフラ企業らしい展開だ。

逆境のなか届くワクワク感

2021年は、エネルギーの高騰や円安など昨今の世界情勢で、電力会社はどこも苦戦を強いられた。そんななか、YOKAプロ部にはこんな役割もあるというのが小橋氏の想いだ。

 

「単純に、eスポーツや無人店舗って、未来を感じさせるワクワク感のある領域だと思うんです。どの電力会社さんも今年度は非常に苦しい決算になることが予想されます。暗いニュースが多い今、こうした我々の取り組みが世の中に上向きな要素を届けられていると良いなと思います」

 

チャレンジャーズパークができてからは、QTnetでも学生向けのリクルートイベントや忘年会や新年会をここで行うようになった。オンライン・オフラインのハイブリッド型で、場所を問わず参加でき、また男女や年齢による力差も問わず楽しめる。eスポーツは多様化の時代に合ったコンテンツでもある。

「電力会社というと、堅実なイメージが強いです。現在、九州電力グループには3万人ほどの社員がいるなかで、実際に真面目な方も多い。そこに一つ違う要素が入ってきたことによって、これから入社してくれる学生や社員に対して、“新しいことをやっている魅力ある企業”という印象付けにもなっていると思います」(小橋氏)

 

どの企業も人材不足に直面する今、いかに学生層に企業の魅力をアピールできるかは重要課題だ。佐伯氏も同じ想いを抱いている。

 

「新規事業に着手するようになり、これまで関わりのなかったジャンルの会社さんから『QTさんどうですか?』と提案をいただくようになったんです。通信以外の方と様々な交流ができるようになったのは良かったことです」

どんな時代も「お役に立てる」存在であるために

2021年現在、日本のeスポーツ市場はまだ100億に満たない規模感だ。チャレンジャーズパークについても「正直eスポーツだけの収益化はまだまだ難しい状況」という。しかし、2022年には日本の市場に記念すべき出来事があったと小橋氏は言う。2022年4月に開催されたeスポーツの世界大会「VALORANT Champions Tour(VCT)」で日本のチームZETA DIVISION(ZETA)が世界3位という偉業を成し遂げた。Twitterでは「ZETAWIN」のハッシュタグが世界のトレンドの1位に。また、さいたまスーパーアリーナで6月末に行われた日本大会の決勝戦(2022 VALORANT Champions Tour Challengers Japan)では、1万数千人の観客で会場は賑わった。

 

「これまでeスポーツの大会は、秋葉原の小さな店舗でやって配信している、といった規模感が一般的でした。日本でも興業イベントとしていよいよ成立し始めているのを実感しました」

この流れに遅れまいと、YOKAプロでも新たな動きにのり出している。2022年6月にはライブ配信のプラットフォーム「SHOWROOM」と戦略的資本業務提携を締結。eスポーツと配信を掛け合わせることで、チャレンジャーズパークでのライブコマース配信などの周辺事業を展開していく予定だ。また、YOKAプロ主催のオープンイノベーションプログラムにも進展があった。2021年に受賞した台湾のベンチャー企業によるAI音声の翻訳サービスが、福岡市の実証実験事業に採択され、QTnetの地元・博多駅構内で実証実験を行なった。

 

インフラ企業の新規事業が受け皿となり、地域や企業の新たな課題解決に繋がっていく。時代が変わっても、有事の際にも「お役に立てる」存在であり続けるために。同社の施策には、持続可能な事業のヒントが詰まっている。

小橋 勝之

Katsuyuki Kohashi

経営戦略本部 YOKAプロ部 eスポーツ事業グループ グループ長

2021年11月より九州電力㈱から出向し、eスポーツ施設「チャレパ」の施設運営を担当。eスポーツ大会のパブリックビューイングや企業レクリエーションなど「esports together!」の輪を拡大中。

佐伯 和広

Kazuhiro Saeki

経営戦略本部 YOKAプロ部 AI事業プロジェクト プロジェクトリーダー

2020年から新規事業部門に所属し、無人店舗の実証やeスポーツ施設の新設など様々なプロジェクトを担当。今年度からAI事業のプロジェクトリーダーとしてAIを活用した新規事業の創出に従事。

更新

  • 公式Facebookページ

取材:池尾優

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