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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

続々クローズする企業のオウンドメディア。いま必要な生存戦略とは?

企業が自社サービスや商品について記事コンテンツを介して発信するのが「オウンドメディア」だ。広義ではメルマガや企業ブログ、コーポレートサイトなどもここに含まれる。このようなオウンドメディアは何度かブームを繰り返してきた。

 

その変遷の中で、メディアそのものが良くも悪くも注目されたのは2016年の「WELQ」事件であろう。2010年代、オウンドメディアに続く形で、第三者が情報をまとめるキュレーションメディアが登場。ユーザー自身がコンテンツを作っていくUGC(ユーザージェネレートコンテンツ)により爆発的に記事が増え、メディアとして一気に勢力を増した。

 

しかし2016年、医療情報キュレーションメディア「WELQ」がエビデンスもなく信憑性に欠ける情報を発信していたことが発覚。それが発端となり、女性向けキュレーションメディア「MERY」では著作権や盗用問題なども明るみになり、メディア全体に対する信頼性が失墜。メディアのあり方が問われるようになった。

 

こうして第三者メディアはいったん終焉を迎え、老舗メディアも相次いでクローズ。Googleの上位表示が「NAVERまとめ」を占めていた時代も、いつしか終わりを告げた。そこから何度かのオウンドメディアブームを繰り返し、2022年現在はブームとしては沈静化しつつあるが、企業が運営するメディアではさまざまな取り組みが行われている。ユーザーの見る目も肥え、シビアに見られることが増えたインターネットの世界。期待通りの成果を上げることが難しく苦戦しがちなオウンドメディアが、今後のインターネットをサバイブしていくにはどのような戦略が必要なのだろうか。

 

2016年、当時女性起業家として最年少、最短期間、最高の売却額で株式譲渡を果たし、さまざまな企業のオウンドメディアを手がけてきたスマートメディアの代表取締役・成井五久実氏に、今求められているオウンドメディアについて話を聞いた。

オウンドメディアの入口はSEO。まずは集客戦略から始めよう

「第三者メディアの終焉を経て、今求められているのは一次情報のオウンドメディア」と語る成井氏は、オウンドメディアが取り組む課題について次のように話す。

 

「オウンドメディアへの最初の入り口は“検索”。第三者メディアが検索上位に上がってこない現状に加え、この情報過多の時代、せっかくの一次情報でもSEO対策をしていなければ埋もれてしまいます。オウンドメディアをはじめ、SNSやレビューなどのシェアードメディア、広報PR領域のアーンドメディアなどメディアの細分化が進む中で、いかにして検索エンジンで上位表示してもらい、ユーザーに見つけてもらうかが大切です」(成井氏)

 

情報の海から企業のオウンドメディアを見つけてもらう工夫として成井氏が手がけていることは、大きく3つある。1つめは「集客戦略」、2つめは「トレンド」、3つめは「オリジナリティ」だ。

 

「まずは集客戦略をしっかり立てること。いきなり直感的に記事を書いても見つけてもらいづらいので、情報にリーチするためのSEO記事制作は欠かせません。これまでの経験から、SEO記事10本、それ以外のブランディング記事2本の計12本を毎月掲載すると、どのようなジャンルでもこの記事数を掲載し続ければ1年後には月間10万PV、月間8万UUは自然流入だけで見込める可能性があります。あとはSNSの活用やRSSとの連携も集客の観点では重要です」(成井氏)

成井氏が手がけた企業のオウンドメディアは月間30万PVが平均で、そこにはジャンルの他にドメインパワーも大きく影響するという。新規ドメインの場合はこの実現までのスピード感が5分の1まで落ちるそうだ。

 

「2つめの工夫はトレンドを捉えること。コンテンツマーケティングの観点を忘れずに、世間で今何が注目されているのか、何が流行っているのかをしっかり把握した上で、人々が今何を読みたいのかを突き詰めたニーズのある記事を制作することが大切だと思います。

 

3つめはオリジナリティ。一次情報が重要視される時代、サービスを利用したりモノを購入したりする際に、その企業が歩んできたストーリーを調べるユーザーが増えてきています。オウンドメディアでその企業ならではの特性や開発背景、エピソードなどをきちんと発信していくことで、オリジナリティが光り、数あるオウンドメディアのなかで優勢が取れていくと思います」(成井氏)

 

これら3つの工夫がオウンドメディアの成長には欠かせないが、ほかにも成井氏が大切にしていることがある。それは「愛を感じられる記事かどうか」という制作側の情熱だ。

 

「そのオウンドメディアに携わっている担当者やライターが、そのオウンドメディアの一番のファンであることが、オウンドメディアを継続・発展していく上で最も大切にしていることです。それがたとえSEO記事だとしてもです。どんな読者にどんな気持ちになってほしいのか、楽しみながら書いているのか。それは言葉尻に宿っています。そういった制作側の熱意を大事にしています」(成井氏)

企業のオウンドメディアで重要視すべき指標は?

オウンドメディアの役割や目的をどこに置くかによって、成果は大きく異なるが、多くのオウンドメディアはコンバージョンを見据えた“集客=PV”に指標を置いている。成井氏が考えるオウンドメディアの重要視すべき指標は、フェーズによって異なるという。

 

「ローンチ一年目は集客に振り切ります。とにかく一年目は、まずは見つけてもらうための施策にパワーを注ぐことが大切で、そのためにSEO記事の制作に集中します。ある程度集客ができてくる二年目からはコンバージョン率や回遊率、訪問率、再訪問率など、ブランド認知拡大の施策に移行していくとよいと思います」(成井氏)

 

また、情報伝搬設計においては「オウンドメディアで作った記事の二次活用をすることが有効」だと話す。昨今はInstagramも画像にもテキストで情報を詰め込んで発信するものが増えたが、そのテキストの情報源は元記事にある。作ったコンテンツは各SNSのプラットフォームにカスタマイズして有効活用すると少ないコストで最大限のパフォーマンスを発揮することができる。

 

その際のKPIとして成井氏は次のように話す。

 

「SNSではフォロワー数をKPIに置くオウンドメディアも少なくないですが、昨今はアカウント単位より投稿単位でアクションが発生するもの。例えば保存数やいいね数など投稿を見たアクションが多いのであれば、ブランドを認知してもらえたことにはなるので、必ずしもフォロワー数が全てではありませんよね。そのようなアクション自体をKPIとしてみてもいいのかもしれません」(成井氏)

 

オウンドメディアの目的を明確にしないと、費用対効果をシビアに見られてクローズへの一途を辿ることになる。まずはどんな目的で、そのために何を指標に掲げるのか、オウンドメディア担当者は今一度振り返る必要がありそうだ。

オウンドメディア担当者へ伝えたいこと

奇をてらった施策で差別化を図ろうとするのではなく、自社愛を持った人員で集客設計から地道にグロースしていくことが重要なオウンドメディア。成井氏は次のようにアドバイスする。

 

「まずは集客戦略、トレンド、オリジナリティの3つを押さえて運用すれば右肩上がりに伸びていきます。その上でオウンドメディアを楽しんで運営いただきたい。その楽しさはユーザーに伝搬します。それと、読み手の読みたいものと企業の主張のマッチングが大事。企業では当たり前だと思っていた点が、ユーザーにとって必要なこともあるので、第三者視点も忘れないでください」と成井氏。

 

現在成井氏は、メディア事業に加え時代の変遷に合わせたサービスとして、ノーコードでオウンドメディアを立ち上げられるCMSサービスなどSaaS型事業も手がけている。

 

今後について成井氏は「ESG(環境、社会、コーポレート ガバナンス)領域でオウンドメディアを強化していきたい」と話す。昨今のSDGs文脈からカーボンニュートラルや人的資産の開示など企業のスタンスがシビアに見られていく中で、オウンドメディアはサービスやモノの良さをアピールするだけでなく、その背景を伝えることが重要なようだ。

 

その上で成井氏が今注目しているオウンドメディアはESG系の「 ITOCHU/equallybeautiful.」だという。企業のESG発信の場としてオウンドメディアを活用しており、編集者による高いクオリティのコンテンツが揃っている。

 

オウンドメディア担当者は、これから先求められていることや時代の流れなどを汲んで自社のオリジナリティや強みを活かした情報発信を心がけたい。

成井 五久実

Ikumi Narui

スマートメディアCEO

1987年福島県生まれ。東京女子大学文理学部心理学科卒。 在学中に東大の起業サークルに入部し、フリーペーパーを創刊したことが起業家を志すきっかけとなる。卒業後、DeNAに入社し、デジタル広告営業を経験。その後、トレンダーズに転職し、100社以上のPR・女性マーケティングを担当。2016年、28歳でJIONを設立し、情報サイトを運営。会社設立から1年後、当時の女性起業家として最年少、最短期間、最高額で事業売却。現在は、ベクトルグループ傘下のスマートメディア社長を務める傍ら、女性起業家を支援する活動にも従事。著書:『ダメOLの私が起業して1年で3億円手に入れた方法』(講談社)

  • 公式Facebookページ

取材:藤田佳奈美

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