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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

敷居が高い文化体験、身近にするには? イベントサブスクが促す消費者の行動変容

月額課金・定額制のビジネスモデルで消費者の行動変容を促してきたサブスクリプションサービス。NetflixやAmazonプライムが火付け役となり、花や洋服、音楽、食、車など、さまざまな商品やサービスで展開されている。秋葉原に平日限定の「サブスク喫煙所」ができたことも記憶に新しい。そんななか、音楽や芸術、スポーツなどさまざまなジャンルの垣根を超えた“文化体験”ができる定額制サブスクリプションサービス「Sonoligo(ソノリゴ)」が今、話題になっている。

オペラや能楽といった芸術領域から、地域に密着したJリーグ観戦などのスポーツまで守備範囲が広いのが特徴だ。東海エリアから始まった同サービスは、今夏からさまざまな鉄道会社と連携し関東展開を開始するなど、今急成長を遂げている。Sonoligoが目指す、消費者の新たな文化体験の行動変容について、同社代表取締役の遠山寛治氏に話を聞いた。

敷居が高い文化体験、もっと身近に感じさせるには?

文化はその国や地域の歴史や特色を表すもの。ただ、文化とはトラディショナルなもので、教養のために嗜むイメージが強い。遠山氏によると「ヨーロッパで文化は生活に馴染んだもの」と話す。

「学生時代、ドイツのミュンヘン工科大学に留学していたのですが、平日でも2,500席が満席になるオーケストラや、6万人が渦巻くサッカースタジアム、老若男女で溢れかえる美術展など、当たり前のように文化を楽しんでいる人たちを目の当たりにして、日本とのギャップに衝撃を受けました。

 

私自身、音楽活動をしていたこともあり、日本で音楽を生業にする難しさも痛感する中で、ヨーロッパの市民全体の文化に対する熱狂が文化活動をする人たちを支えているとも感じました。この体験をきっかけに、文化を生活の当たり前にすることを目標に掲げ、Sonoligoを立ち上げました」(遠山氏)

 

日本にもさまざまな文化が存在するが、いわゆる伝統文化は後継者不足や流行の移り変わりなどにより衰退の一途を辿ることも。なぜヨーロッパでは、文化が今もなお人々の生活に根付いたのだろうか。遠山氏は次のように仮説を立てる。

 

「日本ではエンタメがたくさんありますが、細分化されていて一つのカルチャーに人が集中しにくいのかもしれません。他方でヨーロッパは選択肢が限られている地域が多く、一つのカルチャーをみんなで楽しむところがある。

 

また、日本で言うところの大阪〜名古屋間の距離でも、ヨーロッパでは国境を跨ぐことが多いので、独自の国としてアイデンティティを保つために文化が発展したのかなと思います。

 

ほかにも、ヨーロッパでは日本の10倍以上文化に対する補助金が出ていることもあり、文化が活発化しやすい土壌がある。オーケストラやクラシックコンサートも日本では高額ですが、ヨーロッパでは気軽に鑑賞しやすい金額設定なので、ビギナーでも参入のハードルが低い。このように、ヨーロッパの文化は裾野が広いのが特徴です」(遠山氏)

 

このようなヨーロッパで文化が繁栄した背景を踏まえて、Sonoligoではどのような価値筋を見出したのだろうか。

 

「いろんなことに興味を持ちつつも踏み出しきれない人に使ってもらうことで、日本のさまざまな文化を盛り上げていきたい」と遠山氏は話す。

 

「新規参入のハードルになっている一つの要因として高額なチケット代があるかと思いますが、Sonoligoではプランの中の一つに、月額2,980円でどんなイベントでも自由に参加できるコースがあります。同伴者機能もあり最大3名まで一緒に参加できるので、1人では参加しづらくても誰かと一緒なら参加することができる。そうやって未知の領域を誰もが気軽に開拓できる未来を目指しています」(遠山氏)

このように文化へのハードルを低くしたことにより、Sonoligoを通じての新規顧客率が69.3%を達成したという。これはとあるJリーグのチームの1試合あたりの新規顧客率約0.3%に対して231倍もの数字だ。Sonoligoが普及することで、文化の存続や発展につながっていく可能性を感じざるをえない。

新規顧客を繋ぎ止めるには? リピーターやファンをつくる工夫

新規顧客が7割を占め、多ジャンルで300団体以上の展開をしているサブスクは他にはない。しかし、一度参加しただけで終わってしまっては文化の存続にはつながらない。いかにしてその文化のファンをつくるかが重要な課題だ。

 

「人生初のオーケストラ鑑賞でクオリティが低かったら、もう二度と訪れないと思います。Sonoligoでは、アマチュア団体は除外するなど参加団体の質は見定めております。文化は定義が広いので、その分しっかり精査することでSonoligoのブランドが確立していくと信じております。

 

また、継続して使ってもらうためにはコンテンツの質だけでなく量も重要です。ユーザーが何に興味を持つか自身でも把握できないなかで、Sonoligoでは良質なセレンディピティを用意したい。そのために毎月100くらいの新規イベントを追加するようにしています」(遠山氏)

 

昨今では口コミの盛り上がりが商品やサービスの勝敗を左右することも多いが、文化イベントにおいては意外にも口コミより“距離”が重要だという。

 

「未開拓の文化イベントに新規顧客が参入する動機として、口コミの盛り上がりよりも自宅から近いかどうかが重要視されていることが分かりました。自宅から近ければ、そこまで強い動機や興味がなくても、軽い気持ちで行ってみるユーザーが多いんです。逆に興味があるのに自宅から何度も電車を乗り継ぎ1時間以上かけて行くとなると、ユーザーの足は遠のきます」(遠山氏)

 

Sonoligoは関東全域にて鉄道会社との連携を実施。文化イベントに参加する際の移動手段として公共交通機関の新しい利用促進を生むだけでなく、沿線地域の活性化に貢献しているという。

 

「文化イベントに参加すると、その前後で食事を摂るタイミングや買い物をするタイミングなど、文化イベント開催地域周辺で経済が活発化します。沿線地域に1万人のユーザーがうまれると、毎月約900万円の新たな鉄道収入が見込まれることも分かりました」(遠山氏)

 

新規ユーザーが移動距離の短さでイベントに参加していることも踏まえると、マイクロツーリズムへの貢献が文化の存続に繋がっていると言えるかもしれない。

 

「文化が生活に根ざすと、自分のアイデンティティがはっきりしていくと思います。そして、自分の故郷や今住んでいる街の特徴に愛着がわいてくるはず。今後はよりコンテンツ量を増やして、関西の人が東京の文化イベントに足を運ぶような大きな移動を促していきたいです。移動自体を手軽に、そしてお得に利用できるSonoligoを使ってもらえたら」(遠山氏)

 

知らない文化だからと敬遠せず、積極的にさまざまなイベントに参加すると、未開拓の領域に自分の“好き”が眠っているかもしれない。

遠山 寛治

Kanji Toyama

株式会社Sonoligo 代表取締役

1994年 愛知県刈谷市出身。中学時からサックスをはじめ、ソロコンクールで全国大会優勝を含む、多数のコンクールで入賞。名古屋大学工学部を卒業し、同大学大学院情報学研究科に進学。大学時には、国際コンクールの本選にも出場した。
在学中、トビタテ日本代表プログラムに選出され、ドイツのミュンヘン工科大学に一年間の留学を経験。帰国後、株式会社Sonoligoを設立。

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  • 公式Facebookページ

取材:藤田佳奈美

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