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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

外国人労働者・受け入れ側の関係をwin-winにさせる「伝わる発音」トレーニング

2022年11月1日から11日にかけて開催された、日本唯一のオンライン教育・eラーニング総合フォーラムのレポートをお届けする連載企画。今回は外国人労働者や留学生向けの日本語学習がテーマ。学習者本人はもちろん、受け入れ側となる学校や受入機関、受入企業が抱える課題解決の最新ソリューションとは。

伝わる発音習得にこだわった「トレパJ」開発背景

1995年の創立以来、eラーニングシステムの開発や導入を手がけてきた株式会社デジタル・ナレッジ。2021年度にeラーニングアワード AI・人工知能特別部門賞を受賞した「トレパ」をベースに開発した、言語学習教材「トレパJ」を紹介した。

 

デジタル・ナレッジが2016年にリリースした「トレパ」は、先生と生徒のための英語4技能対応授業実現AIツールとして開発され、英語学習者や英語を指導する教師や講師をサポートするツールとして注目を集めた。この「トレパ」をベースに開発されたのが、日本語学習者と指導者をサポートする「トレパJ」だ。

 

「外国人労働者の場合、入社前の書類審査ではN2レベルの日本語能力があるということで採用されたけれど、実際に現場に入ると意外と話せないということがあります。日常生活の会話から業務に至る専門用語などを含む、日本語の発話に特化したサービスやコンテンツがあまりないというのが現状です。このような課題から『トレパJ』を開発しました」(三堀氏)

 

「トレパJ」が実現するソリューションは、学習者が“伝わる発音”を身に付けること。さらに「トレパJ」が先生にとってのアシスタントとなるような、教師支援システムであることもコンセプトに含まれている。

 

本ツールを使用して日本語学習を行う場合、まず教師(指導者側)が教材を作成する。エディター機能を用いると、日本語のリスニング教材やスピーキング教材を簡単に作成可能。既存の教材やテキストをAI教材へ変換して活用することができる。テキストで入力した問題文や解答例は、AIが識別して音声再生してくれるという仕組みだ。

学習者はAI教材に従ってマイクに向かって回答(発話)。すると録音された発話音声がサーバーに送信され、AIが発話音声を文字化する。AIが品詞単位で信頼度診断を行い、モデルアンサーと比較。学習者の発話レベルが可視化されるため、日本語の発話の習熟度を把握しやすくなる。

「信頼度診断はパーセンテージで診断されます。ひとりカラオケで採点が出た際の点数だと考えるとイメージが近いです。点数が高く出る箇所もあれば低い箇所もあります」(三堀氏)

 

信頼度診断によって、ネイティブスピーカーに対してどの程度の割合で発話が伝わるかが可視化される。モデルアンサー(正解文)は複数登録可能。登録されたモデルアンサーを参考に、発話した内容の単語一致度が簡易判定されるほか、キーワードの類似度も判定される。

 

日本語学習においてAIを活用するメリットとして、教師では手が行き届かない細かい発音の修正や繰り返しの発話トレーニングが実践しやすくなることが挙げられる。

学習者と受け入れ側をwin-winにする実用的な日本語教材

「トレパJ」を使用して作成できるコンテンツ例として、外国人従業員の接客トレーニングが紹介された。学習者は日本語はもちろん、接客の質を上げる接遇や発話のタイミングも学習できる。

 

「どういうタイミングで声をかけるかなどについて、お手本を見た上でそのシーンを追体験できます。何を学ばなければいけないか、実際にどういうシーンで使われているか覚えてから、『トレパJ』に発話します」(三堀氏)

学習の事前準備としては、教師または受け入れ企業などがテキストや映像をツールにインプットする必要がある。映像を使用する場合、あらかじめ撮影した動画をYouTubeにアップロードし、限定公開のURLを登録することが必要だ。

 

「トレパJ」のためにゼロから教材を作成する必要はなく、既存のテキストやマニュアルなどをAI教材に変換し、業界の専門フレーズや企業内部で使われる独自フレーズをデータ登録することも可能。実用性の高いセミオーダー教材やスターターコンテンツの作成ができる。

 

日本語学校での「トレパJ」実証事例としては、アルバイトの面接トレーニングの例が紹介された。従来の授業では先生が用意したレジュメを配布し、先生が面接官を演じて面接における敬語の使い方を学習していた。「トレパJ」を使用した授業では、先生が「トレパJ」で教材を作成し、生徒はスマホやタブレットなどのデバイスを用意する。

「教室の中で生徒それぞれがデバイスにログインし、『トレパJ』の発話トレーニングができる状態で授業を実施。生徒はそれぞれのデバイスに向かって発話し、AIが診断します」(三堀氏)

 

「トレパJ」を授業と連携させることで、教師ひとりで全ての生徒の発音をチェックすることが難しいという課題の解決につながる。発話トレーニングをクラスメイトと協力して進めることも可能になる。「トレパJ」は授業で活用することもできるが、自宅学習におけるメリットも大きい。

 

「自信のない学生は、みんなの前でたどたどしい日本語を話すのが恥ずかしいこともあります。自宅や自己学習で何度も発話にトライすることで、発話の補助につながります」(三堀氏)

実証実験で「トレパJ」を使用した講師からは、「一定の効果が見られた」「学生の反応は非常に良かった」というフィードバックを得られたという。

 

「事前事後の予習もそうですし、練習から成果につながるとモチベーションアップにつながります。真剣にスマホに向かってトレーニングをしている学生が見られたようです」(三堀氏)

 

一方で、講師の事前準備や学習者の自主練習の必要性、教材の存在の周知徹底、教える側がファシリテーターに徹する必要性もあるのではないか、というフィードバックもあった。

 

「トレパJ」は月額500円/人(税別)で利用可能。学校や法人、送り出し機関などの企業・団体アカウントのほか、私用アカウントも発行している。デジタル・ナレッジは、幅広い業界の企業や団体、学校、出版社、日本語教育・教材に精通したコンテンツベンダーを対象に、コンテンツ作成パートナーを募集中。実証実験で得たフィードバックを活かしつつ、「トレパJ」をさらに使いやすいツールへとブラッシュアップさせることを目指している。

 

「(『トレパJ』で教材を)一度作ってしまえば先生のアシスタントになり、学習者のパートナーとして何度も(発話を)聞いてくれる存在になる」(三堀氏)

 

飲食業界や小売り業界など、外国人労働者が活躍する業界は実に幅広い。外国人留学生もアルバイトをすることが少なくない。「トレパJ」の教材作成機能を活用することで、実用的な日本語の発話トレーニングのバリエーションが広がるだろう。「トレパJ」は実地教育だけでなく、スキマ時間を使った事前事後の学習をサポートできるツールとして、今後ますますの機能充実が期待される。

三堀 将寛

Masahiro Mitsubori

株式会社デジタル・ナレッジ 文教ソリューション事業部リーダシニアコーディネータ

大学卒業後、2002年株式会社デジタル・ナレッジ入社。2004年開学の八洲学園大学の文科省への開学設置認可前よりプロジェクト参画 認可後、同学学生支援センター長として4年間常駐。以降、主に高等教育機関の通学学部、通信教育部に導入のLMS構築およびシステム運用、授業コンテンツの設計・著作権許諾申請、授業収録等の制作業務に従事。2006年より初等中等教育機関の公教育における遠隔ライブ授業配信およびLMSを活用した問題演習システムの構築および運用プロジェクトにも参画し、福島県南会津地域内六中学校の「地域を担う人材育成のための学習サポート事業」の企画、システム構築および運用プロジェクトなど、文教市場案件に多数参画。2015年より2年間は、Z会提供の学校向け次世代型学習支援サービス「StudyLinkz」構想企画時より参画(一時、(株)デジタル・ナレッジより(株)Z会ラーニング・テクノロジに出向)、NEW TREASUREのDigital TextBook化プロジェクト参画、NEW TREASUREのeラーニング化プロジェクト参画、TestEditorPLUSのシステム構築化プロジェクト参画、StudyLinkzのポータル・生徒カルテ機能、生徒情報管理、校内定期試験、校内実力試験、模擬試験成績管理システムの設計・構築プロジェクトなどにも参画し、広く教育分野に係る案件に従事。

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