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アナログとデジタルのあいだ

丁寧な生活を優先し、てまひまかけて仕事に向きあう人たち。オフラインを充実させながら、実用的にオンラインを取り入れてるリアルな姿とこだわりを学ぶ。

「なつかしい日本の暮らし」を今の時代に再現するNIPPONIAのプロジェクト

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丹波篠山のまちに暮らすように泊まる体験−−。兵庫県丹波篠山市に溶け込むように佇む「篠山城下町ホテル NIPPONIA」。江戸から明治時代に建築された古民家4軒を改装し2015年にオープンすると、瞬く間に感度の高い旅行者の関心を奪った。建築物の歴史性や地域の食文化、生活文化を堪能しながら、地域で暮らすことの豊かさを再確認できるという。こういった地域の開発に携わっているのが、株式会社NOTEだ。「古民家運営の会社かと理解されがちだが、実はエリア開発をしている会社なんです」と、広報の小栗瑞紀さんは教えてくれる。同社の目指す観光への取り組みや、全国で活躍する離れたメンバーとのオンラインの連携について聞いた。

株式会社 NOTE

NIPPONIAの理念に沿ってグループ全体の事業化領域を担い、持続可能なビジネスとエリアマネジメントを実践していく組織。物件の発掘と改修から事業者マッチングまで、エリア開発事業を一貫して展開している。主な施設は「篠山城下町ホテルNIPPONIA」「竹田城城下町ホテルEN」「NIPPONIA美濃 商家町」など。

地域とゆるやかにつながる縁側を提案する「NIPPONIA 甲佐 疏水の郷」

「篠山城下町ホテル NIPPONIA」だけでなく、全国の地域で開発を実施するNOTE。2020年11月に熊本県甲佐町にオープンした「NIPPONIA 甲佐 疏水の郷」も、手掛けたプロジェクトの一つである。商店街入り口のたばこ屋だった築130年超の旧松永邸を改修した古民家ホテルだ。主屋と離れの2棟で展開しており、客室は3つ用意されている。コンセプトは、「地域とゆるやかにつながる縁側(えんがわ)」で、宿で過ごすこともさることながら、滞在者が地域の方とのゆるやかな交流ができる“きっかけ”を提供している。

その“きっかけ”は細部に散りばめられている。関わる全ての人が地元・甲佐町の住人なのだ。施設の支配人はじめ、朝食提供店、体験提供事業者、施設の施工会社まで、すべてが甲佐町に住む人が携わっている。そのことから、滞在者は必然的に甲佐町の日常に取り込まれ、1人の住人として過ごすこととなる。また、自然にあふれた甲佐町の魅力に浸かるため、「みどりかわSUP」「山の手仕事体験(藍染・草木染め)」「地元農家さんと楽しむ収穫体験」などの体験が用意されている。さらに、商店街を回遊し、地域と繋がる特別なパス「KOSA PASS with NIPPONIA」を配布。これを握って商店街を散歩すると、様々な“おまけ”がもらえる仕組みとなっている。美濃和紙を使い活版印刷で1枚1枚丁寧に制作したパスも美しい。こういった仕掛けを地域と連携して提案しているのがNOTEだ。

「まず、その地域にどんな歴史や文化、暮らしがあるのか調査し、その価値を現代にも伝わるように再定義します。計画を立てた後には実際に建物を改修、そして、運営する事業者さんに入ってもらうところまで担当します。一般的なコンサルとの違いとして、計画だけでなく、『その計画を実現するからついてきてね!』みたいなところがあります(笑)。地域の方々の『自分たちの地域を変えていきたい』という思いをかたちにするんです。建物改修後も資金回収が必要なので、そこも並走。10年、15年とずっと地域とのつながりがあるんです」(小栗)

「なつかしい日本の暮らし」を現代に翻訳する

「NIPPONIA」とは、ホテルブランドではなく取り組みの総称となる。目指すのは「なつかしくて あたらしい 日本の暮らしをつくる」こと。元々その地域にあった「なつかしい日本の暮らし」である。その地域にある歴史的文化資産やローカルな思想を、現代でも通用する事業にかえて継続していく試みとなっている。

 

「私たちは観光をきっかけに、移住に繋がったり、何度も足を運んでくださるファンが醸成されることを目指しています。その時、新たに観光の目玉を作るのではなく、既にある暮らしや、地域の方々との交流を目的に来ていただきたい。そういう観光のあり方を提案したいのです」(小栗)

 

甲佐町の例をあげると、「KOSA PASS with NIPPONIA」がその一つだ。商店街を歩くだけで、コーヒーが1杯無料で飲めたり、ニラが沢山はいった「ニラメンコ」というメンチカツがもらえる。「このパスがあるから町を周遊した」「現地の方々と交流できた」という利用者の声が集まっているようだ。

また、地域との連携として、事業の全てをNOTEが担当するのはなく地元との連携を行う。今回でいうと、甲佐町のまちづくりを手がける一般社団法人パレットと組んだ。

 

「地域の仕事をしていると、人口減、高齢化、消滅可能など様々な課題が見えてきます。NOTEはそれらの課題に共感し、並走する仕事なのですが、その中で一番大事なのが、誰と一緒にやるかです。その地域に一緒にやれる現地の人がいないとプロジェクトの成功はありません。NIPPONIAのコンセプトに沿ってまちづくりをするのですが、理念だけあっても人がいないと何も動かないんですよね。覚悟を決めてその地域を変えていきたいという人がいることが大事です」(小栗)

パレットは、町の魅力的な暮らしを伝え、観光客や移住者が訪れるきっかけを創出する活動を甲佐町で続けていた。NOTEの事業では、0から新たな価値をつくるのではなく、既存の価値に“新たな命”を吹き込むかたちをとっているのが特徴だ。

 

今は宿やレストランづくりを中心に地域に人を呼び込む活動を行なっているが、今後は、ワーケーションへの対応も。仕事をもって地方部にいくという価値観が、コロナを機に一気に一般化された。また、パソコンひとつで仕事ができる人も増えてきたという背景もある。そういった需要の受け皿として、コワーキングスペースやサテライトオフィスといった環境の整備を行なっていく考えもあるという。しかし、NOTEはただ古民家を改修してコワーキングスペースにするだけではなく、地域との交流を前提とする。同社のフィルターを介することで、地域との触れ合いの“きっかけ”を創出していくのだ。仕事の合間に商店街をぶらぶら、河川敷をぶらぶら、そういった機会が得られることだろう。

地域の仕事のプロフェッショナルをつなぐオンライン

同社の本社は兵庫県丹波篠山市にある。しかし、このように地域の仕事が主軸となっているため、多くの社員が全国各地に住む。ここで不可欠なのがオンラインの存在だ。チャットツールのSlackを積極的に活用し、日々、全社員がコミュニケーションをとっているという。経費の申請ツールもkintoneを利用し、契約書の確認もオンラインで対応する。

 

「どこに住んでいても滞りなく業務を進めるために、オンラインツールは不可欠です。我々のこのスタイルは、コロナ前、2015年の会社設立時から体制に組み込まれています。普段の会議も全員がオフラインで会うのは月に1回程度。基本的にはオンラインで運用してきました。日ごろのスケジュールもGoogleカレンダーで共有。出勤記録も特にないので、一人ひとりのNOTEメンバーを結びつけているのがオンラインになるのです」(小栗)

 

NOTE代表取締役社長の藤原岳史は、篠山で生まれ育った。大学卒業後はITベンチャーに勤め、東京と大阪で働く。田舎がいやで篠山から出たものの、都市部で働くにつれて田舎の良さを知ってもらえる事業をやりたい気持ちが芽生えたと当時を振り返る。2007年に、勤めていたITベンチャーの上場をきっかけに、取引先企業を地域別で見た際に、そのほとんどが東京と大阪であったことを確認。どこでもできるはずのITの仕事なのに、都市部しか相手にしていないことに気づいたのだ。そこから、篠山にもどり独立へ。元々、ITへのリテラシーが高いことから、「社会性」と「継続するための収益性」のバランスを保つNOTEの事業を支えるのがオンラインとなった。

 

「オンラインで便利なのは、日常から気軽にやり取りできることです。例えばSlackに『なんでも相談』というチャンネルがあり、そこには各地から『ちょっとヘルプ!』が寄せられます。前にも『とある地域で暖簾を作りたいのだけど職人がいない!誰か作ってくれる地域の人いませんか?』という投げかけに対し『うちの地域に職人がいるので、繋ぎます!』といったやりとりが発生するんです。地域のメンバーはその土地にいなくてはなりません。ですので、組織として継続するには、オンラインでつなぎあっていくことが必要なのです」(小栗)

また、月に1度の全体会議では、代表からNOTEの成り立ちや、NIPPONIAのブランディングなどの共有があるという。

 

「メンバーは中途採用が多いのですが、前職もバラバラで更に普段過ごす地域が違うと、同じ言葉でも捉え方がズレることがあります。全体会議ではこの事業を進める上で、必要な目線合わせを行なっています。『NIPPONIAだからこのスタイルじゃなきゃダメ』といったカチッとしたものではないですが、みんなで共有しておくべき理念などを確認します。現状はオンラインツールを多数導入することでうまくまわっていますし、こういった理念を効果的に発信するための新しいツールも積極的に導入していくつもりです」(小栗)

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取材:上沼祐樹

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