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アナログとデジタルのあいだ

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「スノーピーク」がなぜITコンサル? アウトドアとテクノロジーの意外な関係性

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スノーピークといえば、ハイエンドなアウトドアメーカー。その性能の高さから、多くのキャンパーに愛されているブランドだ。しかしそれとは別に、ビジネスやテクノロジーの文脈から注目を浴びる“スノーピーク”が存在する。アウトドアとテクノロジーを使って組織の生産性向上やチームワーク強化を支援する、スノーピークビジネスソリューションズだ。一見対局にあるように思える両者が合わさることで、一体どういった価値が生まれているのか?スノーピークビジネスソリューションズのWIS事業部 部長で働き方改革エバンジェリストの清水崇弘氏に話を聞いた。

清水崇弘

株式会社スノーピークビジネスソリューションズ
WIS事業部 部長
働き方改革エバンジェリスト

岐阜県出身。2015年、スノーピークビジネスソリューションズの前身であるハーティスシステムアンドコンサルティングに入社して早々、日本マイクロソフトの業務従事者として抜擢される。1年間、クラウド販売パートナーの成果を上げるため、セミナー等のイベント支援、勉強会の開催、営業同行に奔走。出向後は日本マイクロソフトの実務経験を活かし、Microsoft365の導入支援コンサルタントとして中部市場のクラウド推進に邁進。現在では、ファシリテーションスキルを磨き、組織活性化コンサルティングの業務にも携わる。

アウトドアとビジネスで人間性の回復を

アウトドアとテクノロジー。このイメージを一致させるには、同社の成り立ちから紐解いていくのが良いかもしれない。スノーピークビジネスソリューションズは、60年以上続く総合アウトドアメーカーのスノーピークと、ITコンサルの実績20年以上のハーティスシステムアンドコンサルティング(HEARTIS)というシステム会社が共同出資をして、2016年に誕生した企業だ。もともとHEARTISに所属していた清水氏から見て、畑違いの両社が共に歩き出したのは「自然な流れだった」と話す。

「僕たちは20年以上に渡りITをお客様に導入してきましたが、組織力と人間関係の基盤があればどんなシステムでも上手く定着する、というのが最大の気づきでした。ですので、IT導入の前にいかに組織を良好にするか?IT導入を契機にいかに組織を良好にするか?といったコンサルティングに重きを置いてきました」

 

というのも、清水氏の経験上、ITツールを導入しても上手くいかないケースのほとんどは、組織の人間関係が原因なのだと言う。

 

「良好な関係性を築けていない組織がITツールを導入して結果ばかり求めていくと、必ずどこかで問題が起きます。テクノロジーは良好な人間関係があってこそ活きるものなんです」

 

実際の事例として、同社のサービスの一つ「インタラクティビジョン®」がある。インタラクティビジョン®は、80インチの巨大スクリーンを2つ90度の角度で配置し、お互い離れたオフィスの映像をより立体的に映し出すもの。常時接続することで、既存のWEB会議システムとは違って、オフィス空間がまるごと繋がっている感覚を得ることができる。

「このサービスで伝えたいのは声だけでなく生活音が伝わることが大切だと思っていて。人間は会話だけでなく、表情や姿勢や気配といった様々なものを通じて、五感を使ってコミュニケーションをとっている。他拠点のオフィスと、それらを共有していることが非常に大事です」

 

リアル空間をデジタルで再現したようなこのサービス。興味深いのは、導入した会社によって反応が変わるというのだ。

 

「人間関係の良好な組織では、インタラクティビジョンが繋がった瞬間に喜ばれて、遠隔で社員の誕生日パーティが行われたりしました。かたや普段からコミュニケーションが多くない会社では、繋がったことによって社員が会社に監視されているように感じるなどと、不満がでてきてしまうこともあるのです」

このように、導入する企業や使い方によっては期待していた効果が得られない、誤った方向に向かってしまう、というのはどんなITツールを導入する時にも起こりうることらしい。そのため、同社がITツールを導入する際には利用する人のケアを意識して行っているという。

 

「テクノロジーの進化につれ、僕らの人間性が低下しているように思えてきました。そこを本来の姿に戻さなければと思った時、辿り着いたのがアウトドアだったんです。日頃から自然に触れる『野外遊び』をしている人って、本質的なことに気がついているように思っています。焚き火を囲むと人との距離がぐっと縮まったり、キャンプ場で初対面の子ども同士が自然と仲良くなったり。本来、人と人との間に備わっていた健全なつながりをより戻してくれる力が、自然にはある」

テクノロジーの土台になる人間関係の作り方

同社では、先に上げた拠点間を常時接続するインタラクティビジョンや社内のコミュニケーションを円滑にするクラウドサービス「Microsoft365」などを用いた提案・コンサルを行なうと同時に、組織内の人間関係やコミュニケーション方法の改革も行なっている。具体的には、スノーピークのアイテムをオフィスに導入するキャンピングオフィスの提案や、屋外でテントやタープを設え自然を感じながら会議を行うアウトドア研修の実施などだ。

 

「自然に身を置くと五感が研ぎ澄まされるのはもちろん、キャンプアイテムを備えたオフィスで働くだけでも、従来のオフィスとは違い、創造性や新しい発想が生まれやすくなる。また、社員同士がテント設営などの単純な共同作業を主体的に行なうことで、チームの絆が生まれたりもします」

 

そういったアウトドアアイテムを活用した遊び心満載な働き方は一見キャッチーだが、一過性のサービスではなく実は「本質を貫いている」と清水氏は指摘する。

 

「そもそも持ち運ぶために作られているので、社員は自分の好きな場所で仕事ができますし、希望する社員には福利厚生として貸し出しもできる。日本のような災害国では有事の際にも役立ちます。アウトドアアイテムにはライフバリュー(人生価値)を上げてくれる要素がたくさんあります」

 

しかし、こうした提案には大きな壁もあるという。経営者にとってはその効果がデータで見えにくいため、なかなか投資に至らなかったり、導入してもルールばかりが先行してしまうケースも多いそう。

 

「デジタルが普及するなか、今目を向けるべきは、数値化できない情報や活用の価値です。これからは、一人一人の思考力や生きる力がますます必要になってきます。例えばテレワークを導入しようとした時にまずは規則やルールばかりを重視してしまうケースがある。もちろんルールも大切ですが、トップダウンでおりてきた方針に縛られてしまうと、自分で考えて行動する人間らしい働き方が損なわれてしまいます。ボトムアップでみんなでどうやったらうまく導入できるのかを考え、決めていくことが大切だと思うのです。規則で縛り付けるのは、思考させない人間を作っているのと同じです」

 

実際、日進月歩のテクノロジーの世界でITサービスは日々更新されている。今表示されている画面と1週間後の画面が全く違う、ということもザラにある。そんな世界で、ルールをその都度作り直していくのは非現実的と言える。

 

「大事なのは規則をガチガチに固めて“完成形”というものを作らないこと。常に変化に柔軟に対応できる体制で組織を作っていく方が健全ですし、これからの時代、成果を生みやすいです」

日本が得意とするバランス思考が時代の潮流に?

「自然の壮大なエネルギーと、テクノロジーの無限の可能性を健全に融合して、人間らしく働く人を増やすことで、真に豊かな世界を創る」を、使命として掲げる同社。アウトドアとIT畑でそれぞれ実績のある、同社ならではの存在意義とも言える。自然とテクノロジーの力を上手く取り入れるという点のみならず、これからは「バランス思考」がますます重要になる、というのが清水氏の推測だ。

 

「今の社会はテクノロジーに振り切りすぎていると思う。他にも、ケミカルとオーガニック、都市集中型と地方分散型、とあらゆることに言えるのですが、どれも行き過ぎると必ず反動が生まれる。これからは、シロクロはっきりさせるのではなく、グレーゾーンで両方とも、というバランス思想が大事。その意味では、曖昧さを良しとする日本人の感覚が、世界的に注目を浴びる時代がきているようにも思いますね」

同社では、提案するクラウドサービスを自社でも活用しながら、前身のHEARTIS時代よりリモートワークを開始し、10年が経過した。データの保管を他社に託すのは危険ではないか、といった当初多くの企業が抱いていた懸念は今や薄れるどころか、外部に委託する方が安全、という意識が定着している。こうしたITツールは、生活様式が更新される今、「働き方の選択肢を増やす手段」としてますます有効になると清水氏は話す。

 

「コロナ以降、生活と仕事の境界線が曖昧になり、全部ひっくるめて良くしたいという考え方が定着してきています。そんなライフバリューが日々の選択の基準になりつつある今後の社会では、組織と個人が相思相愛であることが不可欠です。組織は個人が働きやすい環境を整え、個人はそんな組織に貢献したいと思う。結局、仕事の一番の原動力は、好きとか貢献したいといった、心の内側から滲み出る想いなのではないでしょうか」

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取材:池尾優

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