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ニューノーマルライフの先

ニューノーマルライフが当たり前の時代。その中で生き抜いていくための解はどこにある? 時代の半歩先を行く書籍著者のインタビューからそのヒントを探る。

あえて口をなくしたロボット「BOCCO」、それでも子供が言うことを聞く理由

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AIの目覚ましい進化により、目的別に機能が発達したロボットが数多く登場した。お掃除ロボット・ルンバなどを自宅に導入している人も多いだろう。

 

ほかにもタブレット搭載の人型ロボット・ペッパーくんや、分身ロボットOriHime、ペットや家族のようなLOVOTにaiboなど、我々の生活を便利で豊かにするものから、コミュニケーションをメインとするものまで、ロボットの役割は実にさまざまだ。

 

コロナ禍によって人と人とのリアルな接点が減った今、ロボットは人間同士のコミュニケーションを円滑にする橋渡し的存在になり得るのだろうか。

 

家族をつなぐコミュニケーションロボット『BOCCO(ボッコ)』シリーズや、しっぽのついたクッション型セラピーロボット『Qoobo(クーボ)』シリーズを展開する、ユカイ工学の代表取締役・青木俊介氏に、ロボットの未来について話を聞いた。

青木 俊介

SHUNSUKE AOKI

ユカイ工学株式会社CEO

1978年神奈川県生まれ。東京大学在学中に、チームラボ株式会社を設立し、CTOに就任。その後、ピクシブ株式会社のCTOを務めた後、「ユカイ工学」を設立。家族をつなぐコミュニケーションロボット「BOCCO」で2015年度グッドデザイン賞受賞。しっぽのついたクッション型セラピーロボット「Qoobo」が世界中で話題となる。

日常生活に溶け込む、ユカイ工学のロボット『BOCCO emo』

ロボットと家電の決定的な違いは“愛らしさ”

青木氏は「ロボットは、必ずしも家事や生活の効率化を図るためだけの機械ではない」と話す。

 

「たとえば洗濯機は家電ですけど、自動で乾燥までしてくれて、機能としては限りなくロボットと言っても差し支えないですよね。だけど、名前をつけて可愛がるような存在ではない。そこが家電とロボットの違いだと思います。ロボットには、ドラえもんやアラレちゃんのように、愛らしい存在としての期待があるんです」

青木氏が抱きしめているのは、しっぽのついたクッション型セラピーロボット『Qoobo(クーボ)』

 

Qooboを愛おしそうに撫でながら、そう話す青木氏。Qooboは一見、人の役に立つ機能を持ち合わせていないように感じるが、無邪気に尻尾を振る様子や思わず抱きしめたくなるフォルムなど、随所に愛らしさが散りばめられており、ロボット特有の無機質さがない。実は“シンプルなデザイン”にその秘密があった。

 

「表情の要素をシンプルにして、ユーザーが想像する余白を残しています。Qooboの場合、顔がないことによって、顔の好みが各ユーザーに委ねられる。好きなイメージを膨らませられる。BOCCOも口を無くして、断定的な表現を排除しています」

 

また、スマホと連動してメッセージを読み上げるBOCCOは、見た目の愛らしさだけでなく、人と人とのコミュニケーションを円滑にする役割があるという。

 

「たとえば、親が子どもに薬を飲むよう直接言っても、なかなか受け入れてくれないのに、BOCCOを介して伝えてもらうと素直に薬を飲んでくれるんです。これは小さなお子様だけに有効なわけではなく、アドバイスを小言のように捉えてしまいがちな大人にも有効です」

 

このような工夫により、ロボットは単に役立つツールや機械などに留まらず、人を癒したり感情を揺さぶったりするような存在になった。人はロボットに愛着を求めているのかもしれない。

左からBOCCO、BOCCO emo

ロボットは人間の代わりになる? ロボットが目指す役割

人間と心が通った相互コミュニケーションの精度が高くなれば、ロボットに対してより深く愛着を持つことができそうだ。だが、青木氏は、「ロボットがなんでもできるようになることを目指していない」と話す。

 

「スマホにしても家電にしても、モノに対して一台で何役もこなす多機能性を求められていますが、ロボットにそのような汎用性は不要。なぜならマルチに活躍できるロボットは、サイズも大きくて場所を取るし、価格も高いから普及しないと思うんです。高い割にこちらが望む反応をしてくれないこともあって、期待値調整が難しいですし」

 

では、ロボットに何が求められているのだろうか。このコロナ禍において、コミュニケーションに飢えている人も少なくなく、雑談スキルの高いロボットのニーズがあるのではないだろうか。青木氏は、これからニーズが高まるロボットについて、次のように話してくれた。

 

「確かに何気ない会話が仕事のヒントになることも多いですよね。雑談のニーズは高いと思いますが、ロボットに雑談スキルを搭載しようとはあまり思ってなくて。僕は、ロボットが人間の代わりになるように作ることを目指していません」

BOCCO emoが頬を赤らめている様子

 

青木氏が目指すのは、言語を介したコミュニケーションより、言語を介さないコミュニケーションがとれるロボット。

 

「人間同士の雑談ですら相手を選ぶし、いつも話が盛り上がるわけじゃない。だから、言語を介したコミュニケーションをロボットで再現するのは難しいと思います。それよりも、ロボットにしかない、ロボット特有の動きやリアクションでコミュニケーションをとる方がロボットに求められていることだと思っています」

 

人間とロボットは違う。だからこそ、ロボットらしさを生かしたやりとりが求められているのかもしれない。

10年後のロボットの未来

ロボットに限らず、世の中がどんどん便利になっていくが、人間そのものの機能は変わらない。自分で自分を管理することすら困難で、特に面倒なことに対してのモチベーションの維持は、なかなかできるものではない。

 

「英語を学習したいとかダイエットしたいとか、達成したいことがあったときに、目標に対してコツコツ行動するのは至難の業。環境に影響されたり、心が折れたり、継続的に努力することは難しいんです。ですから、ロボットが行動管理やモチベーション管理の役割も担っていけるといいのかなと。ロボットは機能面の優秀さだけじゃなくて、人の心を動かすことが大事だと思います」

 

ロボットが、人間のWell-being(ウェルビーイング)の向上にも一役買う未来が見えてきた。

「ほかにも、家庭用ロボットに関しては、なるべく視覚に頼らないように工夫していて。スマホやITの発展により、人間が液晶の画面を見ている時間が増えました。視覚に頼っていると、同じ空間に家族がいるのに、誰も目を見て会話をしなくなる。BOCCOのようにロボットが話せばみんな聞こえるし、視覚特有の問題が起こりにくいのではないでしょうか」

 

どんなにオンラインが発達しても、リアルなコミュニケーションにはかなわない。これからのロボットは、人間同士のコミュニケーションをこれ以上失わないように、人と人とをつなぐ役割も担っていきそうだ。

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取材:藤田佳奈美

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