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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

自らバズを狙わない。ユーザーが盛り上げてくれるInstagramのビジネス活用法

企業が自社のサービスや商品について情報を発信したり、オウンドメディアの流入経路の一つとして活用したりするなど、SNSはビジネスシーンでも欠かせない存在になった。なかでもInstagramは、ショッピング機能でシームレスな買い物体験ができるなどの機能拡張を続けており、情報発信ツールの域を超えてきている。

 

ところが、日々進化するInstagramのインプットに追いつけず、うまく活用ができていない企業も少なくない。そこで、『ゼロからわかるビジネスInstagram』の著者でSNSマーケティングを調査・研究している朝山高至氏に、いま企業SNS担当者が知るべきInstagram活用術を聞いた。

朝山 高至

Takashi Asayama

株式会社ホットリンク マーケティング部リーダー兼ホットリンク総研研究員

企業のInstagramマーケティング支援や、ソーシャルメディアマーケティングの研究機関「ホットリンク総研」の研究員としてInstagramマーケティングのメソッド開発に従事。Instagram世代の購買行動プロセス「UDSSAS(ウドサス)」を提唱。慶應義塾大学総合政策学部卒。

購買プロセス「UDSSAS(ウドサス)」の循環をつくるには

デジタルネイティブ世代は興味の対象について調べる際に、Googleやyahoo!などの検索エンジンではなく、SNSを利用して情報や口コミを調べる傾向にある。とりわけInstagramでは、商品購入の検討を目的とした使われ方も多く、購買に至るまでに「UDSSAS」といわれる行動プロセスが発生する。

 

まず、ユーザーが商品について投稿する(User-generated-content:ユーザー生成コンテンツ)。その投稿を別のユーザーが発見し(Discover)、気になったら後から見返せるように保存する(Save)。さらに商品詳細を検索し(Search)、実際に購入する(Action)。そして購入したものを写真や動画で投稿することで(Share)、新たなUGCを生み、また別の誰かがその投稿を発見するというサイクルが回りだすというプロセスだ。

 

ここでポイントなのが、ユーザーが起点になって消費行動が発生していること。

 

「企業がInstagramを運用すると、自分たちの投稿でどれくらいバズを狙えるかに目が行きがちですが、まずはユーザー個人が発信できる特性を生かすことが重要です。そのためには、自分たちでウケる投稿を狙うより、ユーザー一人ひとりが自社のサービスや商品について、発信してくれるような土壌づくりに注力すべきだと思います」

 

企業が投稿に力を入れることは重要だが、一方通行のコミュニケーションになってしまってはUDSSASの循環が発生しない。Instagramのシェア機能はTwitterのリツイート機能より拡散力も乏しく、ひとつの投稿がシェアによって広まることは、あまり現実的ではないと言えるだろう。UDSSASの循環を回すには、自分の投稿が虫眼鏡アイコンの“発見タブ”などに載り、まずは知ってもらうことが重要だという。

 

「発見タブは、Instagramが独自のアルゴリズムで投稿をまとめている一覧。フォロー外のアカウントの投稿やリールなどがパーソナライズされて並んでいます。実は、ここからの流入が多いんです。発見タブは、検索の目的を明確に持っていない人が見ることも多いので、より多くの人にリーチする可能性が高い」

 

この発見タブに自社の投稿を人為的に載せることはできないが、載りやすくする方法があるという。

 

「発見タブに表示されるプロセスは、まずアカウントの候補を決めるソーシングがあり、そこから抽出したアカウントにランキングをつけて、関連度が高い、またはエンゲージメントが高い順番に表示しています。たとえば、AさんがBさんの投稿に『いいね』をするなどアクションを起こしたら、Aさんの発見タブにBさんが出ますし、Bさんに似たアカウントもAさんの発見タブに出るようになるんです」

 

興味関心が似たアカウントは、フォローしていなくても発見タブに登場する。ここを狙っていくことが、UGCを発生させる大きな一歩といえそうだ。ここで気をつけたいポイントがもうひとつある。

 

「発見タブに載るかどうかの判断は、コンテンツ単位ではなくアカウント単位で決められています。つまり、ひとつの投稿の良し悪しではなく、そのアカウントのプロフィールや投稿内容、フォロワーとの関係性などからアカウントのテーマ性を割り出し、それに興味を持つ同じクラスターの発見タブに載るようになっています」

 

発見タブに載るには、アカウント全体の専門性や一貫性が重要なようだ。どのような情報を発信しているのか、明確に分かるようなアカウント設計を心がけたい。

UDSSASが回りやすい商材、回りにくい商材は?

UDSSASで好循環を生めば、大きなビジネスチャンスを手にすることができるかもしれない。とはいえ、Instagramにも向き不向きの商材がある。

 

「購買につながりやすいのは有形商材。他方で、なかなか難しいのがコンプレックス商材や無形商材。Instagramはビジュアルのプラットホームなので、有形商材は写真や動画などの投稿によるUGCが発生しやすいですが、たとえば人材紹介や金融などの無形商材、あるいは脱毛などのコンプレックス商材は、投稿する商品が形としてないのでUDSSASが循環しにくいですよね」

 

最近では無形商材でも、情報をテキストに起こし、画像に落とし込んだお役立ち情報の投稿も散見するが、ユーザーからの言及はなかなか出づらい。ただ、無形商材でも別の手法でユーザーにリーチすることができるという。

 

「クリエイティブに対して話題を作るように設計することです。たとえば、求人情報専用の検索エンジンであるIndeed(インディード)が、大人気アニメ『ONE PIECE』の実写のCMで話題を呼びました。そのCMのインパクトを語らずにはいられない多くのユーザーや、ONE PIECEファンがTwitterで感想をつぶやき、認知度が一気に拡大していきました」

 

ユーザーが商品を購入して投稿するようなUGCではないが、無形商材でも話題性を持たせることで知ってもらうきっかけをつくれるようだ。

UDSSASが回っているアカウント事例

ソーセージブランドのジョンソンヴィル(@johnsonville_japan)

 

「どのような瞬間にソーセージを思い出してもらえるかを考えて設計している、当社支援事例のアカウント。例えば、トレンドであるキャンプやアウトドアを意識してバーベキューシーンを想起させた投稿をするほか、晩酌のおつまみやお弁当のレシピなど、さまざまなソーセージの利用シーンの切り口をアカウントが発信しています。それを見たユーザーは、ジョンソンヴィルを使った調理のアイディアを得られますし、投稿をするイメージが湧きますよね。また、特定のハッシュタグをつけて投稿すれば、公式アカウントがリポストする仕組みをとっているため、公式アカウントに紹介されることで、承認欲求が満たされる体験をユーザーに提供しています。公式アカウントで掲載してほしいという動機で投稿するユーザーも増えるでしょう」

 

アカウントからどのような投稿をするか、どのようなUGCをピックアップして紹介するかも、ブランド戦略として想起を強化するカテゴリに基づいて一貫したコミュニケーションを行っており、その結果狙ったカテゴリでのInstagram上でのUGCが増加している好事例だと言えるでしょう。

 

#ジョンソンヴィルの投稿数は右肩上がり

 

 

子育て世代のママに向けた情報アカウントのママリ(@mamari_official)

 

「ママリは無形商材なのですが、『#ママ』より『#ママリ』のほうがハッシュタグ数が多いほど、ママのコミュニティとして醸成しています。ママの共感やあるあるなど、ママユーザーの声が思わず出てしまうような、ユーザーを巻き込むイベント的投稿も多いのが特徴です」

 

ほかにも、アパレルブランドやスイーツブランドのアカウントもUDSSASを生んでいるという。例えばライブ配信を活用し、商品のサイズ感や使用感を伝えるほか、ユーザーがリアルタイムで質問できることによって、スムーズな購入に至るケースが多いそうだ。

 

また、SNSの中だけでなく配送で商品が手に届いたときや店舗などにおいて、写真や動画を撮ってシェアしたくなるオフラインの工夫も大事だと言う。

 

Instagram施策というとInstagramの中で何をやるのかということにフォーカスしてしまいがちですが、お客様とブランドのすべての接点がUGCが発生するポイントになり得ます。写真と動画という投稿フォーマットによっても投稿してもらえやすいポイントは異なります。写真であれば切り取りたくなる完成しているものがシェアされやすいです。

 

例えば、お菓子のサブスクメーカーであれば商品がお家に届いたときのパッケージを思わず写真に撮ってしまいたくなるような工夫が考えられます。一方で動画は完成系よりも興味深い動きやサウンドがある『プロセス』をいかに見せるかがより重要です。たとえば飲食店であれば完成した料理をただ提供するだけでなく、お客様が思わず動画に収めたくなるプロセスを見せて楽しんでもらうことなどが考えられるでしょう

これからのSNSの使われ方はどうなっていく?

ここまでさまざまな事例を織り交ぜながら紹介したが、SNSは生き物と言っても過言ではないほどに、使われ方や仕様が日々変化している。さらにコロナの影響によって、オンラインに関わるもの全般のニーズが加速しているように思う。朝山氏は、今後のSNSの動向を次のように捉えている。

 

「コロナ禍で今までは当たり前だった同期的な対面のコミュニケーションの絶対量が減りました。しかし、人は根源的に何かに属したい欲求があると感じています。その欲求を満たす解決策として、気軽にコミュニケーションが取れるSNSが求められています。特に、今この瞬間つながっているという同期的コミュニケーションが求められているように感じていて、インスタライブはもちろん、Twitter、Clubhouseなども同期的にコンテンツを共有できる場所になっていますよね」

 

ビジネスの活用においても、企業が一方的に情報を発信するだけでなく、ユーザーとの接点を持ち、お互いが繋がっている感覚を持てるプラットフォームを目指して運用していくのがよさそうだ。

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