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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

アナログな業界にデジタルで変革を!町工場を救った「バーチャル展示会」

飲食店をはじめ多くの業界が苦境に立たされている今、新型コロナウイルスの影響を逆手にとって顧客との接点を増やすことに成功した事例が注目されている。

 

戦略コンサルティングを手掛けるMP-Strategyが、東大阪の町工場内をGoogleストリートビューのようにバーチャルで見学できる展示会「OSAKA町工場EXPO2020」を開催し、話題を呼んだ。同展示会では、工場のバーチャルツアーと経営者によるオンラインプレゼンなどのプログラムを用意。新型コロナウイルス感染拡大の影響で工場見学や展示会などリアルな接点が減少する中、リアルでもなかなか見ることができない工場の細部を、オンライン上で公開した。

 

これにより、同展示会に参加した工場が新規案件を受注するなど、コロナ禍でも目に見える成果があったという。仕掛け人のMP-Strategy代表取締役の目黒充明氏に、オンラインを介して逆境に立ち向かう“生存戦略”について話を聞いた。

目黒 充明

MITSUAKI MEGURO

MP-Strategy 代表取締役

1964年大阪生まれ。三菱電機系の商社にてエンジニア、営業を経験。外資IT企業に転職し、日本市場へ新サービス展開。その後ライブドアで新規事業立上げやベンチャー企業立上など、数々の事業を立上げた経験生かし、新たな事業展開される企業様のコーディネータとして、MP-Strategyを起業、現在に至る。

ITコンサルの知見をアナログな製造業界で発揮するまで

目黒氏は三菱電機系商社でエンジニアや営業を経験した後、いくつものヘッドハンティングを受け、外資系ITやライブドア黎明期を渡り歩き、東京で数々の事業立ち上げに邁進してきた。

 

ところが、この華麗なキャリアを持ってしても、明確にやりたいことが見つけられず、模索する日々が続いたという。目黒氏は当時を「自分の夢ややりたいことより、金を稼いで家族を支えなきゃという思いが強かった」と振り返る。

 

このままでいいのか、そう迷いながらもはっきりとわかったことは「自分が何をやりたいかが明確にないと仕事をやっていけない」ということだった。自分の使命を見つけられないまま、生まれ故郷の東大阪に戻り、2013年に個人事業主としてスタート。もともと得意としていた営業支援で社会に貢献していこうと決めた矢先、東大阪の製造業の実態を目の当たりにした。

 

リーマンショック、アジア諸外国の躍進により、東大阪の製造業は衰退の一途を辿っていった。東大阪の工場にはたしかな技術力があるのに、製造単価は長年変化がない。さらには大阪特有の義理人情によって、不景気で注文がもらえなくなっても、お世話になった会社のためにスケジュールをあけておくという非効率さもあった。

「すばらしい伝統と技術があるのに、製造業が将来的にどう展開していくのか心配になりました。営業は、社長がやり、販促費・マーケティングも積極的ではなく、ホームページも会社紹介だけで、発信力が少ないとずっと8年前から考えておられていた。こんな時こそ、自分が培ってきたITコンサルティングの経験がいかせるのではないかと思い、必死にDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を提案し続けました」

 

ここにきてようやく、目黒氏は社会における自分の役割を実感したのだった。ここでの想いが、後のバーチャル展示会を生み出す起点となる。

デジタル化には人を巻き込む技術が必要

アナログな業界にテコ入れし、認知拡大と活性化につながれば思い、その一心で色んな提案をするも、現実はそう甘くはなかった。新しいものを取り入れるのに理解していただけるのは大変だった。

 

そんな中、気づいたことは、良い提案ではなく、自分を理解してもらい、信用を取るということが大事なのかと気づいたのだ。まずは自分を理解してもらうため、マーケティングセミナーを実施したり、自社製品を作る勉強会や実際に商品を開発し、クラウドファインディングで開発費用を捻出し新たな展開を生み出した。

 

また、経営者の団体で経営理念や社員をいかす経営を勉強し、たくさんの経営者と叱咤激励を行ってきた。その後、支部長に任命され2年間、大変な思いをした。目黒氏は自分の時間を削りながらも、常に相手の意見をフラットに受け止め、地域経済を盛り上げるために、粉骨砕身した。飲みに誘われれば、絶対に断らなかった。飲食を介すコミュニケーションにこそ、本音が宿るからだ。

そして苦労はしたが、自分の意識も“支部長をやらされている”から“支部長に任命していただいた”と変化していったという。信頼関係を築けたのは、それから4年経った頃だった。

 

デジタル化の下準備として、まずはアナログで泥臭い、だけどとても重要な人間関係の構築が必要不可欠だったのだ。

バーチャル展示会で伝えたかった想い

町工場の信頼を獲得した目黒氏は、コロナ禍でバーチャル展示会を通し、中小企業ならではの悩みを解消することに成功した。

 

「これまでのリアルな展示会では、大企業は広々としたブースで情報を多く伝えることができるのに対し、小さい町工場はブースが狭く、一部の機能面しか伝えられなかったんです。だけど、バーチャル展示会なら、中小企業でも工場の内部を全て開示できる。機械の動作などは、動画のリンクを貼って情報を補足しています。そうすると、工場の全体像を立体的に見ることができるから理解が深まるんです」

 

知ることができるのは工場の内観や機能面だけではない。

「どんな人がどんな思いで働いているのか、素を見せることを大切に撮影しました。というのも、就職先を選ぶ上で重要視していることを大学生にリサーチすると、1位が“職場の雰囲気”なんですよね。そういう背景もあって、単に機能面を伝えるのは違うと思い、経営者によるzoom上の6分間スピーチも用意したんです」

 

会社の理念を経営者の顔を見ながら聞くことができる貴重な機会。その時発した言葉だけでなく、話し方や表情から想いは漏れ伝わってくるのだろう。リアルタイムの視聴者は40人ほどでしたが、展示会には1ヶ月で2,000人の視聴があり、より多くの集客が実現した。

よりオンラインを有効活用するには

目黒氏は「バーチャル展示会のフォーマットを、もっと日常的に横展開していきたい」と話す。

 

「展示会などのしっかり作り込んだイベントで使う以外にも、思いついたときに会社説明をバーチャルを介して、クイックに展開できるといいんじゃないかなと。5Gも出てきてネット回線が向上しているので、そんな使い方ができそうですよね。あとは、食品加工業界にも導入したいです。普段はなかなか立ち入れられないエリアの見学もバーチャルなら実現できる。技術が盗まれるから見せたくないという課題もありますが、そこは伝える側と受け取る側の交わるところを探していきたいです」

リアルに出向かなくても、遠くの場所から瞬時にアクセスできるのは、これまで接点を持てなかった人たちも取り込むことができる。つまり、より多くの可能性を見出しているのだ。最後に目黒氏は夢を語ってくれた。

 

「2025年の大阪万博です。大手企業は、広告費を出してPRできる。しかし、町工場は大手企業の万博ブースの一部を製作で携わるだけでPRできない。次のVRエキスポは、英語版も掲載される。従って、これから世界に発信し、大阪万博までは、VRエキスポで見ていただき、『大阪万博へ来た時に合わせて、大阪の町工場をリアル見学にいただき商談をひろげる』というVRエキスポを作っていきます」

 

数年前までやりたいことがわからなかった目黒氏が、アナログな町工場の課題と自身のITに関する知見、そしてオンラインの可能性のマッチングにより、使命感を持って今、活動している。コロナ禍にこそ真価を発揮した、バーチャル展示会の今後も見逃せない。

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  • 公式Facebookページ

取材:藤田佳奈美

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