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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

人流データを市民の命を守る情報に! 定点人流観測サービス「Papilio」

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人がどこからどこへ動いているのか。人の流れを把握する人流データが、これほど注目された時代は今までないかもしれない。周知の通り、コロナの感染拡大防止の肝は、密を避けること。連日、各都道府県の動向が報道されたように、人がいつ、どこに、どれほど居るかを把握し適切な対策をとることが、各自治体に求められた。そうした行政の切なるニーズに応えるサービスが株式会社Agoopの提供する「Papilio」だ。感染拡大が深刻化し始めた頃から広く利用され始め、2021年現在では行政機関になくてはならないツールになった。同サービスが支持される理由はどこにあるのか? 運営会社の株式会社Agoop営業企画部部長藤井幹氏と同部でPapilioを担当する卞諒一氏に、開発現場の裏側を伺った。

藤井 幹

motoki fujii

ジオロケーション事業統括 営業企画部長

Agoopの営業企画組織を統括。人流事業における営業戦略立案や推進を実施。

卞 諒一

ryouichi ben

Agoop営業企画本部

主に行政機関や学術機関のお客様を担当。「Papilio」を始めとしたプロダクトの企画・開発を担当。

人の移動の軌跡もわかる

Papilioは、特定の場所の時間帯ごとの人流の推移を把握できるオンラインサービス。見たいエリアと期間・時間を選ぶだけで、どれほどの人口がどう推移したかが一目でわかる。選べる場所は、日本全国の駅と市区町村、またAgoop社で設定した観光地や繁華街のあわせて約2万ヶ所。データは2019年1月1日まで遡ることができ、最新で前日のデータを翌日の午前中には見ることができる。驚くのが、そこにいた人がどこから来ているのかもわかることだ。東京駅の人流を例に藤井氏は説明する。

 

「東京駅から半径500mを設定してみます。左端の2021年1月1日から右端の10月13日まで、日ごと時間ごとの滞在人口の推移が表示されます。さらには、エリア内に住んでいる人・エリア外からきている人、それぞれの割合が一目でわかるようになっています。ここでは、都内に住んでいる方を赤とオレンジ、県外から来られている方が青で表示されています。平日はやはり県外からの流入が多い。おそらく大半が仕事で、神奈川や埼玉から東京駅を経由されている方や、出張の方など。反対に、土日は東京駅を使う人はさほど多くないことがわかります」

緊急事態宣言やまん延防止措置中には、特に「都道府県をまたぐ移動」はより慎重になることが呼びかけられた。人の動きをできるだけ抑えたい行政にとっては、願っても無い機能と言える。だが、一体なぜこのような振り分けが一瞬にして可能なのか? まずは同社の成り立ちから見ていきたい。

 

同社は通信会社の子会社として、携帯の接続率解析を行ってきた歴史がある。過去に携帯がどこでどう繋がったかを調べるために、通信可否や速度、緯度経度、移動方向、移動速度などの位置情報データを、個々のスマホから取得する。これらは、基地局を新たに立てる際の場所の検討材料になる。その経験を発展させて、人の流れを把握する「人流データ」を生成、人がどう移動したか、またその方の居住エリアを推測している。

 

同社はそうした位置情報を人流データに変換し、観光事業者や小売業者向けに長年提供してきた。観光地にどこからどれほどの人がきているか? 新店舗の出店に最適の場所は? そうした目的に合わせて、データをカスタマイズして提供する。ここ1年で、行政からの引き合いが急増したと卞氏は話す。

 

「市民を守るために、自治体や観光局は市民の移動把握や行動制限に力を入れるようになりました。Papilioは以前から存在していましたが、2020年1回目の緊急事態宣言中に、行政から寄せられたリクエストに応える形で改良を繰り返し今の形になりました」

ネットリテラシーの低い人にも使いやすく

Papilioの特徴を一言で表すなら、とにかく操作が簡単なこと。ユーザーは、あらかじめ設定してあるエリアと期間をプルダウンで選択するだけでOK、というシンプルな作り。表示された人流集計データは、エクセルやPDFなど用途に合わせた形式でダウンロードできるので、資料作成にも役立つ。また毎朝、前日分のデータが更新されるスピード感もありがたい。こうした細かな工夫が使い勝手の良さにつながっているのだが、きっかけは行政から寄せられたこんな意見だったと卞氏は振り返る。

 

「担当者の方に『膨大なデータだけいただいても仕方ないです』と言われたことがありまして。そこから、わかりやすく・使いやすく、を目指すようになりました。集計データはどんな場面で? 何を目的に? どう使われるのか? を想定しながら、アップデートを繰り返してきました」

国勢調査のように行政が所有しているデータはあるが、人流データやリアルタイムデータとなると大半はもっていない。加えて、行政の現場ではデータに明るくない人も多い。普段からオンラインで仕事が完結する卞氏からすると、最初は想像しにくいことも多かったと言う。

 

「コロナの感染対策で重要なのはやはり、外から来る人がどれほど増減したのか? という情報。それが一目でわかるので、タイムリーな対策を立てやすくなった、といった感謝の声を多くいただいています」

コロナ収束後の人流データのゆくえ

日本経済新聞によると、2021年10月末時点で、総人口の72%が2回のワクチン接種を完了している。100%安全が保障されたわけではないが、国内においてワクチン接種はある程度普及したと言える。では、感染が収束した今後、人流データのニーズはどうなっていくのだろう? 藤井氏は推測する。

「コロナ感染対策の用途は徐々に落ち着いていくでしょう。一方で、観光業や飲食業が再び盛り上がっていく時代に、またコロナ前とは人の動きが変わってしまったなかで、人流データの新たなニーズが生まれています。これまでは位置情報ビッグデータに基づく分析結果を提供する『データプロバイダー』としてサービス展開をしていましたが、今後は位置情報以外のデータやAIなどと組み合わせた上で、結果が分かるだけではなく、お客さまの次のアクションにつながるサービスを展開していければと思います」

例えば、新店舗の出店場所を決めたいという相談が入れば、競合店の顧客をエリア別に見たり、エリアごとにどの店舗に行っている人が多いのかを見たり。それらのデータを踏まえ、精度の高い提案ができる。卞氏は今後10年間で「事業の軸が変わる」と話す。

 

「現在、Papilioの軸はデータですが、今後はお客さまごとの課題を軸に人流だけではなくあらゆるデータを根拠に、どう課題を解決していくのかを導き出していく。アプローチの仕方は時代に沿って変わっていきますが、そうしたニーズはこの先もずっとあり続けると思います」

 

携帯の繋がりやすさのために取得されたデータが、まさか市民の命を守るために活用されることになろうとは、当時は誰も思わなかったかもしれない。データはニーズに合わせて最適化することで、最大限に活用できる。Papilioはそれを証明した好事例だ。

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取材:池尾優

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