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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

視覚・聴覚の次は嗅覚でのコミュニケーション!?香り付き動画の時代へ

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人類のコミュニケーションはテキストから写真・動画へと移り変わり、近年では音声コンテンツのベンチャー企業が世界で台頭。視覚・聴覚コンテンツが充実しつつある中、株式会社アロマジョインが目指すのは嗅覚でのコミュニケーションだ。香りによる情報通信サービスとは、どんな効果が見込めるのだろうか?“香りテック”として業界を牽引する株式会社アロマジョイン代表取締役社長の金東煜(ドンウク)氏に、事業の進捗・展望を伺った。

金 東煜

KIM Dong Wook

株式会社アロマジョイン 代表取締役社長

大学院で「香りの出るテレビ」を研究後、国立研究機関である情報通信研究機構において、五感情報通信の一環として「香り制御装置」の研究開発に従事。香りの実用化を目指して2012年に株式会社アロマジョインを京都にて設立。

Aroma Shooter®(アロマシューター)設置でバナナの売上が2倍に

ドンウク氏が取り扱うのは、アロマシューターだ。ハードウェア・ソフトウェア・カートリッジの3分野で展開しており、日本や米国、英国、韓国など7カ国で特許を取得。サービスの展開はエンターテイメント、デジタルサイネージ、空間ソリューションと多岐に渡る。

その仕組みはシンプル。固形の香り素材が封入されたカートリッジから、空気を噴射。固形であることから、香りを残したり混ぜたりすることはない。6個の香りカートリッジはデジタル的に制御できる構成となっており、スクリーン上の画像やスピーカーの音の切り替えのようにスムーズに香り切り替えができ、クリエイティブなシーンを豊かにする。

 

エンターテイメント事業として活用が進んでいるのが、VRシネマ。映画館やアミューズメントパークで映像と共に香りが出てくるという話を聞いたことのある方も多いのではないだろうか。米国Positron社のモーションチェアVoyager®(ボイジャー)にAroma Shooter®が搭載され、VR映像、音響、触覚・振動、香りの総合体験が実現した。

「今秋、ヨセミテ国立公園の玄関口にあるヨセミテ映画館で常設展示が決定。VR環境との掛け合わせにより、超臨場感・高没入感を提供します」

 

デジタルサイネージとしては、嗅覚を利用したプロモーションの効果が見え始めている。東京・田町駅のコンビニで実施された実証実験では、コーヒーを抽出する待ち時間の間に画面をタッチするとバナナの香りがする仕掛けを展開。香りの影響からバナナの売上が2倍になったのだとか。嗅覚への刺激は、購買意欲に変化する可能性もあるのだ。

消臭剤・芳香剤のファブリーズで行われたプロモーションでは、Aroma Shooter®を設置することで、消費者が香りを購入前に試すことができる。一方、企業はどの香りがどの時間、どのくらいタッチされたかといった香りのログを取得。マーケティング活用が見込め、今後全国に拡大していく予定だ。

さらに、空間ソリューションとして香りがリラックス効果をもたらすのは容易に想像ができるだろう。これを活用し、シェアオフィスでの集中空間を提供するサービスも始まっているという。

「映像・音・香りをリンクさせ、五感を刺激することで集中力を高めることができます。凸版印刷との協同で空間演出ソリューションYour Space™️の提供を開始しています」

嗅覚が与える心理的・生理的効果

香りによるリラックス効果は想像がつきやすいが、実は香りは、位置情報や生理的な行動にも寄与しているのだとドンウク氏は語る。

 

「香りにより思い出がフラッシュバックした経験は、誰もがあるのではないでしょうか。香りは位置情報に繋がっており、実在感を増す効果がある。だからVRにおいてもより没入感を高めてくれるのです」

 

感覚への作用も大きく、例えば同じ柔軟剤でもバラの香りを加えるとなめらか感が増加したように感じる。そのほかにも、映画を見ている時にレモンの香りを嗅ぐとスピードが遅くなり、バニラの香りを嗅ぐと速くなるという研究データもあるという。(関連リンク参照)

 

更に注目したいのは、視覚・聴覚が年齢により衰えていく一方で、唯一トレーニングで活性化可能なのが嗅覚ということだ。

 

「たとえば2種類の香りを調合し、何の香りなのか当てるゲームを行うとします。すると、嗅覚を刺激するだけでなく、脳の刺激にも繋がります。これにより認知症予防への効果も期待されています」

 

細胞を活性化させることで血流を早め、考える力を養う。香りを使うことで、総合的に細胞活性化へのアプローチを実行することができる。

始まりは、香りの出るテレビの研究

ドンウク氏の故郷・韓国で、白黒テレビがカラーテレビになったのは1980年代。その時に母が発した言葉が強く残っているという。テレビに色がつくなら、いつかテレビから匂いが出る時代が来るかも……。ドンウク氏は香りの出るテレビについて、大学院や情報通信研究機構で学んだのち、起業へと至った。

 

“香りの出るテレビ”を実現するためにネックとなったのは、香りは残るということ。アロマオイルのような液体香料は、香りの拡散スピードが遅い上、香りが残りやすい。そのため、動画や音楽との連動は適さない。そこでドンウク氏が着目したのは、カートリッジから香りの気体が出る固体香料の開発だった。

 

「映像や音響に合わせて香りを変化するには、ピンポイントで香りを出す必要があります。固体香料で香りの気体を出すことで、残らず早い香りを生み出すことができました。また液体香料では2gで100回以下の香り提示回数なのに対して、固体香料では3,000回以上出すことができます」

 

短時間で、明確に香りを出す。そして香りを残さない。固体香料の開発により、映像や音楽によって香りを変化させることが可能になった。

香りのシェアで新次元の情報提供体験を

「香りの出るテレビ」から始まった事業だが、現在、ドンウク氏が着目しているのは動画配信市場だ。アプリとアロマシューター、香りの再生信号を埋め込んだ映像があればいつでもどこでも香りのある動画を視聴することができる。YouTubeやNetflix、zoomなどの動画配信機能に連動することで、ネット上で「香りをシェアする」概念が生まれる。

「アイドル1人1人に専用の香りを作ったり、国・地域の独自の香りを作ったりすることで映像のリアル感・没入感が圧倒的に変わります。トラベル体験に進化させれば、なかなか旅行できない方が、よりリアルに旅行体験をすることが可能に。ストレス解消・メンタルケアになることで、結果的にヘルスケアにも繋げていくことができます」

 

また、会議の15分前に香りで知らせる、といった未来も想定できる。視覚・聴覚に加え、嗅覚で情報通信を行う。そこには臨場感、実在感、没入感、季節感や空間認識など様々な効果が見込めるのだ。

 

「香りコミュニケーションで世界を変える。理念やビジョンではなく信じ切る信念(belief)があるから、挑戦し続けられています」

 

ウェアラブルかつ新次元のコミュニケーション体験は、もうすぐそこまで来ている。

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取材:齋藤優里花

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