ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

感動を呼んだBEAMS動画【ファッション業界を左右する人の存在】

  • オンラインと今。

近年、仕事の現場でますます欠かせなくなったオンライン。そんななかで、ユニークな取り組みを行う企業に着目。そもそもの課題から取り組みの反響、そして今後の展望までを追いながら、オンラインが時代にもたらす価値を探る。

コロナの影響が各方面に及ぶなか、大打撃を受けたのがファッション業界。大手セレクトショップ〈BEAMS〉は「#KEEP FASHION ALIVE」のメッセージを自粛期間中に発信し、この危機を脱しようと動きました。2021年で創業45周年を迎える同社は、かねてよりオンラインの取り組みに注力。入社して16年目、メンズのプレスチーフを務める安武俊宏さんに、業界における同社のオンライン展開について伺った。

安武 俊宏

TOSHIHIRO YASUTAKE

株式会社BEAMS CREATIVE INC.
宣伝販促部 販促課 プレスチーフ

2021年で創業45周年を迎える株式会社BEAMS入社16年目、メンズのプレスチーフとして活躍。ライブショッピングや「#KEEP FASHION ALIVE」、J-WAVEとのコラボなど、オンラインを使った企画を仕掛ける。

安武 俊宏

強みはスタッフの顔が見えるコンテンツ

〈BEAMS〉といえば国内で約170店舗、海外では4都市での展開を含め世界各国にオフィスをもつ大手セレクトショップの代表格。店舗では、センスの良い個性的なスタッフが迎えてくれ、公式サイトを覗けば、スタッフの顔が見えるコンテンツがたちまち目に飛び込んでくる。

スタッフ投稿コンテンツ

「公式サイトではスタッフによる日々の全身コーデをはじめ、ブログや写真や動画が見られますが、これらの“スタッフ投稿コンテンツ”は、2016年より本格スタートし、かなりのファンを獲得しました。ECサイトで商品を購入する人の6割が、これら何かしらのスタッフ投稿コンテンツを経由しているんです」


オムニスタイルコンサルタント

同コンテンツはコロナ禍でさらに注力され、5月には人気スタッフを約10名選出し「オムニスタイルコンサルタント」というチームを結成。彼らのほとんどは、全国の店舗に所属するスタッフだ。

「オン/オフライン共に接客をするのが狙いです。彼らのなかには、バイヤーの経験があり商品背景に詳しい人や、カルチャーに強い人などもいて、顧客がたくさんついている人も多いんですよ」

また今年3月から始めたライブショッピングでも、人の強さを改めて感じたと安武氏は言う。ライブショッピングとは、ナビゲーターと視聴者がリアルタイムでコミュニケーションを取りながら商品を販売・購入できるシステムのこと。

「第一弾はメンズのスーツやジャケットを扱うレーベル〈BEMAS F〉から、レーベルのディレクターとBEAMSのクリエイティブディレクターがナビゲーターになり行いました。結果的に1時間で6000人以上が視聴、およそ100万の売り上げに繋がりました」

ライブショッピングという新しい取り組みゆえ、安武さんも「正直そこまでは予想していなかった」と驚きの表情。もともとこの2人の得意分野はビジネスウエアを中心とした大人の男性向けの洋服。SNSでのフォロワーも多かったという(うち1人はインスタのフォロワーが10万人以上)から、顧客との信頼関係がオンラインのハードルを低くすることが証明された。以来、ライブショッピングは様々なレーベルで継続している。

オンライン購入のハードルはますます低く

オンラインコンテンツは今や同社には欠かせない存在だ。ここ数年のファッション界でのオンラインの存在について、安武さんは振り返る。

「僕がプレスに異動した9年前はまだ雑誌やテレビが全盛期で、ネット上ではブログがよく見られていました。それがここ数年でオンラインに本格的にシフトし、コロナで一気に定着した印象です」

今年4月には、同社でもほとんどの店舗を休業。約1ヶ月後に再開するも、入客が前年より少ない状況が続いた。反対に、その分、ECサイトは入客も売り上げも急増したと言う。

「ここ数年、ECサイトは右肩上がりで、オンラインでの買い物のハードルがだいぶ下がったのを感じていましたが、この時に一気に加速。小売業としてお客様の利便性を追求していくと、やはりオンラインに辿り着きました」

数年前から、ファッション界でもデジタルシフトが避けられなくなっているのを感じていたという安武さん。2020年秋冬には、それを象徴する出来事が起こる。

「長年続けてきた紙のシーズンカタログを初めて廃止し、オンラインに集約したんです。より多くのお客様に見てもらえることを目的にした結果です。プレスとしては大きな変化でしたね」

ファッションへの熱量が社会を前向きにする

ここで、自粛期間中に生まれた同社ならではのユニークな活動を紹介したい。「#KEEP FASHION ALIVE」だ。

「〈BEAMS〉として社会にポジティブなメッセージを発信できないかといった声が社内各所から上がりました。そこで「#KEEP FASHION ALIVE」をテーマに、ステイホーム下でもファッションを楽しもう!という思いを込めた動画を作り発信したんです。合わせてオンラインセールも行いました」

「〈BEAMS〉として社会にポジティブなメッセージを発信できないかといった声が社内各所から上がりました。そこで「#KEEP FASHION ALIVE」をテーマに、ステイホーム下でもファッションを楽しもう!という思いを込めた動画を作り発信したんです。合わせてオンラインセールも行いました」


国内外のスタッフが自撮りした映像を繋ぎ、全てリモートで作り上げたというこの動画。国内外のスタッフが自邸から各地の状況を伝えながらも、ファッションのポリシーや家時間の楽しみ方のアイデアを発信。自宅にいながらもそれぞれに暮らしを楽しむ様子がストレートに伝わり、観るだけで気持ちが前向きになる。全体から放たれるのは、ファッションに対するスタッフの熱量だ。


「もともと皆ファッションが大好きなので、ストレスが溜まっていたのかも(笑)。おしゃれして街を歩きたいのに家にいなきゃいけないという、どうしようもない感情をまさに動画にぶつけてくれたのが良かった。 “感動した!”という声を多方面からいただいています」

また、壊滅状態に追い込まれたアーティストやライブハウスといった音楽業界も、同社は放っておけなかった。〈BEAMS RECORDS〉はJ-WAVEと共同で「音楽を止めるな」をテーマに製作したコラボTシャツをリリース。経費を差し引いた全額を、都内各地のライブハウスへ寄付した。第1弾は全て完売。売り上げ総数約1027万のうち、約716万を支援金として寄付した。現在第二弾が販売中だ。

「これまでも、音楽イベントや若いアーティスト支援などにはかなり力を入れてきました。そもそも音楽は、ファンションに通ずるところがかなりあると思います」

ファッションも音楽もジャンルは違えど、ライフスタイルや生き方という意味では同じ。それは、同社のスタッフを見れば一目瞭然だ。

オン/オフラインとも、キーワードは人

昨今の変化を踏まえて、ファッション業界は今後どうなるのか。安武さんの考えは「2軸化する」というものだ。

「オンラインが加速する一方、実店舗の意味がますます問われる時代になると思います。お店もスタッフも、洋服への情熱や個性がないと生き残れない時代に」

確かに、早い、安い、スムーズな購入ならオンラインで十分だ。実店舗に求められるのは、スタッフとの会話や情報収集、新しい発見、またセンスの良い空間での高揚感などといった全てを内包する、魅力的な購入体験。ともなると、販売スタッフは、今まで以上に個性や人間味が求められてくる。安武さん曰く、そここそが〈BEAMS〉らしさでもあるという。

 

「洋服のことを四六時中考えているような、いい意味で“洋服馬鹿”の集まりなんです(笑)。本物思考というのに加えて、職業柄、人に勧める前に自分で使いたいという意識もあったりして。特に今40代以上の先輩は、洋服を買いまくっていた世代ですね。僕も彼らに苦労話を聞きながら育ったところがあります。そういった熱量が後輩に受け継がれていくのも、BEAMSの良さの一つだと思います」

様々な事情に合わせて、買い物はオン/オフライン選べる時代に。だからこそ、揺るぎない“人間らしさ”がより一層重要になる。

取材:池尾優

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