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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

オンライン×Z世代のダンスは最高の掛け合わせ? 右肩上がりに盛り上がる高校生ダンス部選手権

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全国の高校生ダンス部がパフォーマンスを競う「DANCE CLUB CHAMPIONSHIP(DCC)全国高等学校ダンス部選手権」。第5回の優勝を飾った登美丘高校の“バブリーダンス”が、一世を風靡したのも記憶に新しい。第9回となる2021年は、7月に行われる予選は全てオンラインで実施。8月の決勝大会はリアル会場で実施されるが、希望すればオンライン参加も可能だ。本来なら“一発勝負”が試されるのがダンス大会だが、それをオンラインでどう実現しているのか?その手法や反響などについて、第3回目から同大会に関わり現在はプロデューサーを務めるエイベックス株式会社の八幡氏に話を聞いた。

八幡 裕也

Yuya Yahata

エイベックス・マネジメント株式会社 アカデミー事業グループ/エイベックス株式会社 コーポレート戦略本部

1988年石川県金沢生まれ。関西学院大学大学院 理工学研究科 情報科学専攻卒。大学院卒業後エイベックスへ入社。学生時代のダンス経験を活かし、ダンスアニメの監修など様々なダンス事業に従事してきた。現在はDANCE CLUB CHAMPIONSHIP(通称DCC)のプロデューサーも担当。

リアル大会の経験価値を求めて

「DCC全国高等学校ダンス部選手権」は、音楽やマネジメント事業に加え、プロ養成スクールも運営するエイベックス社が主催するダンスの全国大会。予選については当初から、全国から募った映像データを審査する形をとってきたが、2020年は新型コロナウイルスの影響で、決勝大会も含め完全オンライン開催とした。各チームは、自ら撮影したダンス映像をデータで提出。集まった作品をリアル会場で審査し、その審査の様子を生中継で配信した。まずは八幡氏に、この大会を振り返ってもらった。

「ダンス大会が100%オンラインで成立するのが分かったのは大きな収穫でしたが、一方で、足りない部分も同時に見えて。終了後にとったアンケートでは、『このご時世で開催してくれたことには非常に感謝しているものの、来年はステージで踊ってみたい/部員を踊らせてあげたい』という意見が全体の9割にも上りました。やはりリアルなステージで踊る経験価値は、オンラインではなかなか差し替えられない部分だとわかりました」

 

この“経験価値”については、同社はライブ事業においても1年以上痛感している。オンラインは観客数の上限がないメリットがあるものの、やはりリアルライブでしか得られない価値がある。それも踏まえて、今年度大会では「リアルとオンラインの良い所取り」を目指すと八幡氏は言う。今年度は、予選は完全にオンライン、決勝はリアル開催だがオンライン参加も選べるルールだ。

 

「オンラインでは映像が審査対象になります。何度も撮り直しができるのはチームにとってはブラッシュアップを重ねられる反面、リアル大会のような緊張感には欠ける。そこで、昨年実験的に行った『無限時計』を用いる撮影方式を、今年も取り入れることにしました」

 

撮影は、各チームが大会スタッフとZoomで繋ぎながら行う。スタート時に、「無限時計」という時計アプリの時刻画面を映すことで、その時に撮影した映像というのが証明できる。スタッフと日時を合わせるなどの手間はかかるが、これによりオンラインでの「一発撮り」が可能になり、公平性を保ち、不正を防ぐこともできる。

 

「昨年、ある高校に撮影現場を見に行きましたが、もうステージの袖で見ているのと変わらなかったんです。撮影前には円陣を組むなどし、『この一発に欠ける』という意気込みや緊張感が漂っていて圧倒されましたね」

オンラインでも、できるだけリアル大会の経験価値に近づけたい。そんな思いから、今年度も審査会場の演出にこだわると同氏は意気込む。

 

「オンライン参加の作品についても、高画質・高音質な映像を巨大スクリーンで流すことで、できるだけステージ上で踊っているように見えるように。リアルとオンラインの境目をなくすのが、僕らの目指すところです」

世界が注目する日本のダンスシーン

2020年は239チームが出場。今年は、それを上回るペースでエントリーがきており、「年々エントリー数は劇的に増えている」と八幡氏。だが、過去には集客に苦戦していた時期もあった。

 

「DCCが始まった9年前はダンス部のない高校の方が多く、ストリートダンスは不良がやるものというイメージがまだ残っており、先生からの風当たりも強かった時代。僕がDCCに携わり始めた第3回大会などは、エントリーチームもまだまだ少なかった」

 

では、高校生ダンスがこれほど広まったのはなぜか。その理由は、日本のダンスカルチャーの特徴にあると同氏は指摘。

 

「ストリートダンスの世界大会で日本人が優勝することも多いように、日本は世界的に見て、アメリカ、韓国に並ぶダンス先進国です。さらに、日本ほどキッズ世代がダンスに親しんでいる国は他にありません。キッズダンスが流行り出したのは10年ほど前。今では未就学児から入れるダンススクールが全国各地にありますし、小学生で世界大会に出ている子もいる」

そういった流れを受け、2012年からは中学校の「体育」で男女ともダンスが必修化した。中学生までにほぼ100%がダンスに触れることになった今、実際、高校生ダンス部もその半数は経験者だ。それも、小学校からやっているのが標準装備となっていると八幡氏は言う。

コロナで浮き彫りになったZ世代の強さ

現在の高校生は、いわゆる“Z世代”。デジタルネイティブであり、SNSネイティブ、さらにスマホネイティブであるのが特徴だ。実際、大塚製薬が行った意識調査では、Z世代は上の世代に比べて、踊ることに対するハードルが低いという結果が出ている。それは「ダンスは特殊技能」「踊るなんて恥ずかしい」といった、日本の30代以上の世代がもつ感覚とは大きく異なる。

 

「高校生らと話すと、ダンスする子もしない子も皆TikTokを見ている。流行りの動画を見たり、自分が踊った動画を投稿したり。踊るという身体表現が生活に染み付いている。それがダンス部ともなると、割と目立つタイプで流行への感度が高い子が多いので、その傾向が強くなります」

 

SNSに慣れ親しんでいるのは想像しやすいが、八幡氏が驚いたというのが、彼らの動画編集力の高さだ。

「去年の大会前に行った学校紹介企画では、各チームに学校紹介の動画を提出してもらいましたが、テロップが入っていたりカット割りがされていたり、しっかり編集されたものを送ってくれたチームが多くて。聞けば、スマホで撮影したものをスマホで編集しちゃうっていうのを、普段からやっているみたいで。こんなことも普通にできちゃうんだなあ、とカルチャーショックでした」

 

生まれながらにしてデジタルに親しんできた世代。コロナ禍では、エンタメ業界に暗いニュースが続くなか、そんな彼らの姿に強く心を動かされたと八幡氏は話す。

 

「休校期間中どうしていたかを彼らに聞くと、大半のチームが、すぐにLINEに切り替えて活動していた、と答えたんです。部員のLINEグループに映像を送り合って自主練したり、LINE通話を繋ぎながら筋トレや合同練習を行ったり。さらには、コロナを結構ポジティブに捉えている子も多くて。これまでは特定の子としか連絡を取り合っていなかったのが、部員全員と様々なことをオンラインで話し合うようになり、部員同士がめちゃくちゃ仲良くなった、という事態があちこちで起きていたようで。去年の夏の時点で、彼らは前を向き、今できることをしっかりやっていた。有事における彼らの順応力は、すごく強いなと思いましたね」

時代に沿って広がるダンスのニーズ

TikTok、Instagram、YouTubeなどのSNSで消費され、楽しまれるダンス。もともとコミュニケーションツールでもあるというダンスの性質を考えれば、こうしたプラットフォームと相性が良いのは納得がいく。八幡氏はコロナ禍で「同じ空間に居なくてもできる、という点で、ダンスとオンラインの親和性の高さを改めて感じた」と言う。これまで若年層への普及に散々触れてきたので少し意外ではあるが、近年では年配層のニーズも広がっていると話す。

 

 

「外出できない・ジムに行けないといった時でも、ダンスは自宅で1人で踊ることができる。正しい踊り方さえ身につければ、激しい運動が難しい年配の方々でも無理なく楽しめます。実際に、TRFのSAMさんが誰もが無理なく踊れるように考案した『ダレデモダンス』というプロジェクトがあり、幅広い年代に人気があります。ダンスは健康のために一生涯続けられる全身運動でもあるのです」

 

ディープなカルチャーや特殊技能としてのダンスから、生涯スポーツとしてのそれへ。世代を越え、様々な目的で広がるダンスのニーズ。オンラインの普及や健康志向の高まりなど、今の時代を読み解くほどに、それは自然な流れに思える。

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取材:池尾優

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