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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

オンラインでスマートに本人確認。話題のeKYCのメリット・デメリット

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フリマアプリなどのCtoCサービスを利用するときや銀行口座を開設するとき、オンライン上で本人確認が行われる。最近では賃貸契約の手続きもオンラインで行うことも少なくない。

 

これまでの本人確認は、免許証などの公的身分証と住所がわかる書類を持って対面で確認するのが主流だった。非対面の場合でも、このような種類の写しを郵送するやりとりが発生した。この従来のアナログな本人確認をKYC(Know Your Customer)という。一方で、先述の非対面かつオンラインで完結する本人確認はeKYC(electronic Know Your Customer)と呼ばれる。

 

ユーザー目線で見たeKYCは、場所を選ばず自分のタイミングで手続きを進められるのがメリットである。他方で、本人が対面で身分証を提示すれば一瞬で確認が完了するKYCに比べて、eKYCだとたくさんの確認項目に入力していかねばならず、実は手間がかかるというデメリットもある。それでもユーザーはもちろん事業者サイドからもニーズが高いのが現状だ。

 

そこで、宅配収納サービスのサマリーポケットやシェアリングサービスのスペースマーケットなど、多くの企業にeKYCを提供している株式会社TRUSTDOCKの代表取締役・​​千葉孝浩氏に、eKYCの利便性や必要性、今後について話を聞いた。

千葉 孝浩

株式会社TRUSTDOCK 代表取締役

「KYC as a Service」として、eKYC対応したデジタル身分証アプリと、あらゆる法規制に対応可能なAML/CFTチェックなどの業務API群を提供している。経産省の委員や、金融庁イベント等での登壇ほか、KYC・デジタルアイデンティティ分野での登壇・講演活動多数。

eKYC提供の背景にはシェアリングサービスの台頭がキッカケ

シェアリングサービスの普及に伴う利用者の身元確認で不安の声が寄せられ、2017年にスタートしたTRUSTDOCK。メルカリやスペースマーケットなどをはじめとするシェアリングサービスは、商品を送る方も受け取る方も、場所を提供する方もされる方も、信用がないと行えない。面識のない利用者が互いにどんな人なのか、信用の担保を求める声が強まったことがきっかけだ。

 

「いざ確認業務全てを一貫して内製でやろうとすると、かなり骨が折れる業務です。顧客が増えれば増えるほど、確認業務の負荷は増えますし、その分時間もコストもかかるし、マンパワーがないとできません。

 

弊社は顧客確認のプロセス全てを巻き取ることが可能。本人確認ツールの提供だけでなく、反社チェックや情報処理、その後の情報管理も行っています。アプリでもブラウザでも対応でき、前者であれば公的身分証を動画で確認することもできるようにしました。必要な処理だけカスタマイズして提供することもできます。

 

立ち上げ当初は、この確認業務だけ切り出してアウトソーシングする必要性を理解してもらうのが大変でしたが、オンラインサービスの普及に伴い徐々に必要性が浸透していきました」

 

郵送で本人確認の手続きを行っていたサービスも、コロナ禍でリアルな手続きがやりづらくなり、eKYCに切り替え確認業務をアウトソーシングするケースも増えたようだ。

 

「また、2018年11月30日に犯罪収益移転防止法(通称:犯収法)という法律が改正されたこともeKYCの追い風になりました。

 

これまで金融機関で口座を開設するには、対面での本人確認か本人確認書類の郵送が義務付けられていました。しかし、改正犯収法施行により郵送が不要な手法が新たに規定。

 

〈本人確認書類の画像+本人の容貌の画像送信〉〈ICチップ情報+顧客の容貌の画像送信〉など、オンライン上で完結する確認方法が提案されました。これにより、eKYCによる本人確認が可能になったのです」

 

法律の改正とオンラインサービスの普及によって急速に需要を増したeKYC。TRUSTDOCKは各企業の業務フローに合わせて必要な処理をカスタマイズして提供を可能にしたことで、事業拡大に至ったようだ。とはいえ、取り扱うのは個人情報。カジュアルに本人確認ができるようになったからといって気は抜けない。

 

「個人情報をお預かりするので、常に緊張感が伴う業務。セキュリティも日進月歩なので、しっかりコストをかけて永続的に取り組んでまいります」

企業からの個人情報漏洩。eKYCは防げるのか?

マッチングアプリのOmiaiで不正アクセスによる個人情報の流出が発覚するなど、事件が後を絶たない。個人情報を自社で管理することに危機感を覚えた多くの企業が、個人情報管理を外部委託し、社内のセキュリティの負荷をかけることなくリスクを減らす動きに出ている。実際にeKYCのアウトソーシングでどこまで個人情報を守ることができるのだろうか。

「サイバー攻撃を防ぐことと、eKYCなどの本人確認を外部に委託することは別問題です。サイバー攻撃をされたときにどれだけ堅牢に守れるかは、個人情報に関係なく、各種のセキュリティの問題です。技術的な話もあれば、組織としてのコンプライアンスやガバナンスも含めた話が、まず大事だと考えています。

 

それら守りの強化は事業者側でしていただくとして、事業者が顧客確認で得た公的身分証などの画像を適切に管理・破棄、または外部の信頼できる専門業者に預けていれば、情報流出する範囲を狭められる可能性は高いです。ただ、法律上、事業者が一定の情報を保有していなければならないケースもありますし、そもそも画像だけではなく、ユーザーが自己申告で登録したテキスト情報も個人情報であるので、それを保持している場合は、画像の有無に関係なく個人情報が流出してしまう可能性もある。

 

ですから、自社の会員データベースに何の顧客情報を残し、何の顧客情報を破棄して、何を外部に預けるのか、全ては法規制と事業者側のポリシー次第なんです。自社のサイトに顧客情報を一切合切残さないということはあまりないと思いますが、当社では不必要な情報を事業者側も委託先である当社側も、どちらも保有しないという形が可能です。また、各企業からお預かりした個人情報を当社側で第三者提供したり、他の事業者から得た個人情報とまぜこぜに取り扱うこともありません」

 

ユーザー目線からしても、ログイン情報や住所などを毎回入力するのは手間がかかる。事業者が顧客情報を一切保有していないと、そういう手間を強いることになる。最低限のリスクは取らないといけないようだ。

アナログな本人確認も必要。オンライン確認との棲み分け

これから先、KYCではなくeKYCに完全シフトチェンジする未来が来るのだろうか? 

 

「アナログの本人確認も有効性は高いと思います。たとえばスマホどころかパソコンも持っていない人やデジタルに疎い人、お年寄りなどにとってはeKYCは物理的に難しい場合があります。その場合、対面や郵送などのKYCである必要がありますよね。どんな人もすべからく本人確認ができる手段を残しておくことは重要です。何事も、一つの手段に寄りかかってはいけません。

 

ただ、いずれにしても、そこで得た顧客情報はなるべくペーパーレスでデジタル化していくことが重要なのだと思います。個人情報が記載された膨大な資料を、厳重に金庫に保管しなきゃいけないなんて、場所も取るし管理も大変。火事になって燃えてしまう可能性だってあるわけです。そこで我々のソリューションをうまく活用して頂ければと思っております。

 

eKYCとは、顧客からの情報提出プロセスの入り口をオンラインにすることで、その後の工程も全てデジタルで流通させるということが実は本質だと考えています」

 

今後の展開について聞くと、「個人がいろいろな企業に身分証画像をバラ撒かなくても本人確認が出来るサービスも展開していきます。今は他の身元確認手段が少ないので、身分証を提出しないといけないケースが多いです。ですが、個人はプライバシーの問題もあり、身分証画像を沢山の企業に提出したくないですし、企業側だって、個人情報のカタマリである身分証画像を本当は受け取りたくないと考える企業が少なくないのです。個人と企業の間に立って、身元証明を担保できる“専門機関”のようになれれば、どちらも必要十分な情報を流通させるだけで済みます。適切な形で個人情報が流通する流通網を構築していきたいです」と千葉氏。

 

デジタルとアナログの共存する世界。誰も取りこぼさず、かつ効率的に情報を管理する仕組みを、様々な企業に検討していただきたい。

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取材:藤田佳奈美

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