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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

大学・資格の“オンライン試験”の課題“不正”。AIが自動検知するサービスを富士通が開始

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教育分野のデジタル化が加速するなかで、これまで隠れた難所とされてきたのが「オンライン試験」の導入だ。欧米諸国に比べ日本では遅れをとってきた。そんな状況を一変させる存在として期待が高まるのが、オンライン試験でカンニングなどの怪しい行動をAI(人工知能)が検知する不審行動検知システムだ。現在、その提供準備を進める富士通ソーシャルデザイン事業本部・EDTECH事業部の柴田氏に話を伺った。

富士通ソーシャルデザイン事業本部・EDTECH事業部

DX企業としての富士通のビジネスを牽引するデジタルサービス&ソリューションビジネスグループ(DSSBG)において、生活者の視点から真の課題を発見し、より良い社会を実現するための新規事業を創出。社会課題のテーマ軸で市場及びお客様に対峙するフロント機能を集約し、社内外のステークホルダーと連携しながらDXビジネスを牽引する。具体的にはEdTech 教育分野におけるDX推進を含む様々な事業に取り組んでいる。

欧米を中心とした多くの大学で採用されている不審行動自動検知システム

オンラン授業やWEB会議を取り入れる等、教育分野のデジタル化が進んでいる。そんな遠隔による通信やコミュニケーションが当たり前になりつつあるなか、大学試験や資格試験のオンライン・自宅受験のニーズも増加している。一方で、公平性を担保できる監視体制が確立していないために、未だ多くの機関がオンライン試験導入に踏みとどまっている。そこで同社が注目したのが、AIによる不審行動の自動検知に注力する米国に本社を置くProctorio Inc(プロクトリオ)のサービスだった。

「コロナ禍では、会場で行う様々な試験が中止・延期になりました。そういった事態を受け、“学びを止めないように”との思いで、Proctorioの公正な試験を支える不審行動検知サービスを日本でも提供できないかというところから検討が始まりました」(柴田氏)

 

AIが不正行為のデータを集積し、それを元に効率的かつ精度の高い不審行動の検知が可能になる。こういったサービスは日本での運用例はまだ少なく、新しい試みだと言える。スマートフォン普及以後は、カンニングの主流といえばやはりスマホの不正利用だ。試験会場では万全のスマホ対策がなされているものの、近年のセンター試験でも不正使用は発覚しており、根絶はなかなか難しい。また、オンライン受験が増えたここ10年では、試験によっては替え玉受験が横行していたケースもあり、試験管理者を悩ませ続けてきた。

 

「欧米諸国に比べて、日本はオンライン試験の普及では遅れをとってきました。Proctorioは、欧米を中心とした教育機関で既に採用されており、1日およそ25万件のテストが実施されています。海外では人が監視するタイプが主流ですが、私たちが提供するサービスは人を介さずAIが監視するのが特徴です」(柴田氏)

具体的には、まずは受験者のパソコンにアプリケーションをインストールしてもらう。WEBカメラで身分証と受験者の顔を撮影した後、ブラウザでの試験がスタート。試験中、受験者はWEBカメラによって常時記録され、受験者のPCデスクトップ画面やPCが認識する音も記録。受験者の顔や身体の動きから、AIが不自然な動きや疑わしい行動を自動検知し、記録。試験後、試験管理者は、AIが疑わしいと判断した赤いアラート表示部分の画像や音声、PCデスクトップ画面の記録を確認することができる。不正かどうかは、それらを見て最終的に人が判断する流れだ。

印象的なのは、専門的なソフトという点では意外にもシンプルなユーザーインターフェースだ。操作画面・方法は一目で分かりやすく、専門的な知識なども要らない。例えば、受験中のタイムラインは基本緑で表示されるが、AIが不審行動を検知するとその時刻部分のみ表示は赤に。試験管理者はこの赤い部分をクリックし重点的に見ていけば良い。その汎用性の高さからも、様々な機関での活用が期待される。

不審行動検知システムの利用が、不正の抑止力にも

では、実際にどんな行動が不審行動のポイントになるのだろうか。柴田氏によると、不審行動のポイントは「テストごとに設定できる」という。これはほんの一例だが、受験者以外の人物の顔が映る、顔を横に向ける、などが不審行動に挙げられる。それらの不審行動のポイントがメニュー化されていて、運用側は都度選択できる。

AIが選定した疑わしい者だけを検証する方法は、これまで受験者全員を監視していた従来のプロセスを考えると、その手間が減るのは一目瞭然。志願者の多い大学入試では、5万人に上る受験者を監視しなければならないこともある。ただ、大学側が最も価値を感じている点はもう一つある、と柴田氏は続ける。

 

「不審行動を検知するシステムを導入しているということ自体が、不正の抑止に繋がる。そこにもっとも大きな効果があるのでは?とおっしゃって頂くことも多いですね。ただし、どのような行動が不正とみなされるのか受験者が不安にならないよう、明確に示すことが大切です。」(柴田氏)

ニューノーマル時代の学びのあり方

本サービスは、2021年度中の本格運用を予定している。大学や専門学校などの教育機関をはじめ、人材開発・採用や昇格アセスメントなどを行う企業、またアセスメントを行う事業者等に向けて提供される。

 

「すぐにでも運用したい」といった感想も寄せられているという。受験者にとっては場所に縛られずに試験が受けられ、開催者側にとっても公正な試験を実施できる。こうした試験のあり方は、感染症流行の有無にかわらず、これからの学び方のスタンダードになっていくだろう。この他にも同社は、ニューノーマル時代の教育の環境作りに挑戦中だ。

 

「あらゆるデバイスやネットワークを通じて学びのビッグデータを構築し、年齢問わず社会を支える人に対して、学びの個別最適化を測るサービスをこれからも提供していきたいです」(柴田氏)

 

同社では、“いつでもどこでも学べる環境を”“一人ひとりにパーソナライズされた学びを” “「教室」をもっと対話・創造の場へ” “一人ひとりの学びを「価値」に” “世界中の誰もが教育にアクセスできるように”の5つのステートメントを基軸に、オンライン試験の作成や配信、また大学や企業に向けたオンライン事業サービスの提供も予定しているとのこと。これらの革新的な取り組みは、新たな働き方・学び方を実現させるだけでなく、創造性に富んだ人材育成にも寄与するはずだ。

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取材:上沼祐樹

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