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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「ごちられたら、ごちり返す」「行けないけど払う」。誰かを想う食のギフトサービスで日本の寄付文化が変わる

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コロナ禍で飲食店が苦戦を強いられる中、話題となっているアプリがある。指定した飲食店に先払いができる「さきめし」だ。その他にも、ギフトサービス「ごちめし」や社食サービス「びずめし」などを展開するGigi株式会社。代表取締役の今井了介氏は、安室奈美恵さんの『Hero』やTEE『ベイビー・アイラブユー』など数々の名曲を生み出してきた音楽プロデューサーでもある。異例の経歴ながら、フードテック企業を立ち上げに至った経緯とは。そして各サービスの魅力と展望を伺った。

今井 了介

Ryosuke Imai

Gigi株式会社 代表取締役社長

作曲家・音楽プロデューサー。14組のアーティストが一堂に会し東京オリンピックに向けて歌われたコカ・コーラ社の公式ソング『Colorful』(2021年7月リリース)の総合プロデューサー。安室奈美恵『Hero』や、TEE/シェネル『Baby I Love You』なども手掛ける。作家・プロデューサーのエージェンシー(有)タイニーボイスプロダクションを創業・主宰。同社所属作家のBTSへの楽曲提供は、アメリカビルボードチャートでも一位を獲得 。東京・LA・シンガポールに拠点を構え、ワールドワイドに活躍中。

北海道帯広にある定食屋「結」の“ゴチメシ”をオンラインで全国へ

2013年、北海道帯広の定食屋「結(ゆい)」で生まれた“ゴチメシ”という文化。来店客が代金を多めに支払うことで、地元の学生が地産のうどんやそば、カレーなどの料理を無料でいただける仕組みである。先に来たお客さんの“気持ち”が、食事代が支払えない“誰か”をサポートするというもの。SNSでも話題になったこの取り組みを見て、今井氏は「ごちめし」のアプリ開発を思いついたという。

 

「イタリアにある、“サスペンデッド・コーヒー”という習慣を思い出しました。自分のエスプレッソ代と合わせて誰かのエスプレッソ代を払うというもの。少し多めに払うだけで、誰かの食事と、飲食店を支援できます。この仕組みをオンライン上で実現すれば、全国の飲食店支援が叶うのではないかと考えました」

 

とはいえ、今井氏は音楽プロデューサーである。長年活躍の場を持ちながらも、なぜ未経験の飲食業界で、スタートアップ企業を立ち上げるに至ったのだろうか。そこには、日本が直面した災害が影響していた。

 

「東日本大震災で地域の被害を目の当たりにして、音楽では直接的な支援ができないことが歯痒かった。衣食住の分野において、何かできることはないかと考えるようになりました。中でも、日本食は世界的に評価されています。文化を守りたいという想いもありました」

 

2019年末、“ごちめし”がリリースされる。登録されている飲食店をアプリ内で決済すると、誰かに“食事を贈る”ことができるサービスだ。友達や家族、知り合いへのギフトに。住所を知らなくとも、メールやLINEで送付可能。チケット購入から最大180日間使えるため、相手のスケジュールを確認する必要もない。“ごちる”(食事を贈る側)人が代金の10%を手数料として支払い、“ごちられる”(食事を贈られる側)人は無料で利用できる。そして飲食店にも負担はない点も特長だ。

「今までは、飲食店の予約サイトなどはお店から手数料を取るのが基本。以前からこのビジネスモデルに疑問を抱いていました。タクシーの配車アプリでユーザーが手数料を支払うように、便利さを享受する側が手数料を払うべきではないかと」

 

飲食店を支援したい。ならば、飲食店からは手数料を取らない。これが他の飲食サービスとの差別化にも繋がっている。利他的な事業ではあるが、収益化も重視する。福祉事業は採算度外視、という思考では結局サービス継続が困難だからだ。

 

「ごちめし」の効果検証時、面白いデータが得られた。“ごちられた”人の約半数が、誰かに“ごちる”のだという。海外でも、ギフトされると自分もギフトしたくなる傾向にある。人に何かをプレゼントすることで、幸福度が上がるという研究結果もあるという。誰かの善意を受けると、自分も誰かに返したくなる。そんな思いやりの循環が行われているのだ。

8万人が利用する、コロナ禍の飲食店支援サービス「さきめし」

「ごちめし」が始まった直後、コロナ禍の世の中に。アプリ内で決済できるシステムフローを活用して、食事代を先払いする「さきめし」をリリースした。“今は行けないけれど、なんとか好きな飲食店を応援したい”という消費者の声に応えるために生まれたものだ。同サービスは、サントリーから1億円の協賛金を受けたことでも注目された。

 

「登録ユーザーは3.5万人、非登録ユーザーも合わせると約8万人の方に利用していただいています。導入店舗は、全国で1万6千店舗。経済的な支援はもちろん喜ばれましたが、お客様からのメッセージで涙される飲食業の方もいました。“もうお店を閉めようかと考えていたが、もう一度頑張ろうと思えた”という声もいただいています。さきめしを通して、応援が目に見える形で伝わるのです」

サービスは先払い制のため、後々お店に利益が出ないのではないか?と疑問に思う方もいるだろう。しかし実際にお店に訪れると、先払いした金額以上の注文をする人が多いという。さきめしでお店に行けなくても飲食店を支援できる上、お店に行くきっかけにも繋がる。結果、友達を連れて行ったりプラスで注文したりするというのだ。人の温もりが可視化される瞬間だ。帯広の定食屋やイタリアのコーヒーショップでは、リアルな場だけで人の温もりが交換されたが、同サービスではオンラインを通したリアルな温もりを感じることができる。

企業や自治体との連携で地域の小売店支援に進化

「ごちめし」「さきめし」は個人に対するサービスだが、企業向けサービスもある。それが「びずめし」。契約した企業が社員に、飲食店を社食として利用してもらうというもの。オフィスエリアはもちろん、社員の居住エリアにも展開可能。ニューノーマル時代の勤務体系に対応する。「ごちめし」「さきめし」と違い、継続的に飲食店に人を送客する仕組みにもなる。

 

「企業にとっては、地元の飲食店への貢献につながります。地域活性化への思いが強い経営者と連携していきたい」

 

更に、自治体との協働も盛んだ。奈良県生駒市・浜松市・広島市・郡山市などで「さきめし」キャンペーンを実施。利用金額に市が30%を上乗せした、お得なプレミアムチケットを利用できる。生駒市では飲食店だけでなく、呉服屋や本屋、美容室、ドラッグストアなど小売店全てを対象に。158店舗が参加する街ぐるみの取り組みとなっている。

 

「驚くことに、1週間で3,000万円以上の売上がありました。この成功事例をきっかけに、美容室やスパマッサージなどのビューティー領域との相性の良さも実感しています」

SDGs思考で、日本の寄付文化を醸成したい

「ごちめし」は、子供食堂の課題解決と支援にも繋がる。子供食堂は、親世代がお金と食材を持ち寄って料理を提供する形がスタンダード。これでは手間暇がかかるため、段々と規模が縮小するなど継続性が課題だ。衛生管理が十分とは言えないケースもある。そこで「ごちめし」では、子供たちが飲食店にご飯を食べにいけるサービスを提供する。

 

「ふるさと納税で子供食堂を支援するケースもあります。自治体初、ふるさと納税を活用した「こども食堂」運営の茨城県境町では、令和2年度に2,800万円のふるさと納税がありました。こども食堂は、子供に美味しいご飯を食べてもらうだけでなく、孤食問題の解決にもつながります」

 

様々な形で広がりを見せている食事のギフトサービス。今井氏は、どんな未来を掲げているのだろうか。

 

「奪い合うのではなく、与え合う寄付文化を日本でももっと常識にしたい。日本の現在の寄付経済は0.1兆円。一方、ギフト市場は10兆円とポテンシャルがあります。お中元など“贈る”習慣もある。ごちめしやさきめし、びずめしを通して、社会をみんなで良くして行くサイクルを創出できたら」

 

持続可能性のある寄付文化を醸成する。今井氏の挑戦は、まだ始まったばかりだ。

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取材:齋藤優里花

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