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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

ご老人が子供たちからITを学ぶ、姫島の「ITアイランド構想」の効果

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大分県の北東部に位置する島・姫島。国東半島の先端に位置しており、大分空港から車で40分、フェリーで20分ほど。車えびの養殖が盛んなだけでなく、近海で水揚げされるカレイやタコが美味しい。また、「姫島車えびのしゃぶしゃぶ」や、うどんに鯛の姿煮がのった「鯛めん」が名物料理となっている。島の面積は6.99キロ平方メートル、人口2,000人弱。最盛期は4,000人を超えていたが、今は減少傾向に。2040年には1,000人程度になると推計されており、そういった背景から、大分県と姫島村で「姫島ITアイランド構想」を実施している。コワーキングスペースによるIT企業の招聘や教育への注力、そして超小型モビリティも導入など、積極的に運用している。IT化されていく島の現状をうかがった。

姫島ITアイランド構想

「離島を舞台にした新しい雇用の形を創り、地元の活力を高めたい」という大分県と姫島村の想いから生まれたプロジェクト。ITアイランド構想には、大きく分けて2つの取り組みがある。先ずIT企業を誘致したりIT人材を呼び込むことで「離島×IT」の可能性を広げる取り組み。次に未来のIT人財の育成・創出・定着を目指す取り組みである。

様々なITに取り組む「姫島ITアイランド構想」

IT企業や人材を県内外から呼び込み、ITによる地域課題の解決、そして、新たな雇用の場と活力の創造を目指す同構想。また、もともと小学校だった建物を改装し、「姫島ITアイランドセンター」としたオフィスには、すでに2社のIT企業が入居している。東京を本社とするシステム開発企業、株式会社ブレーンネットと株式会社Ruby開発が2017年から入っており、2社で12人ほどが姫島のオフィスで働いている。姫島に進出を検討しているIT企業や、フリーランスがお試しで利用できるよう、コワーキングスペースを整備。開発合宿・キャンプ、小中学生向けのプログラミング教室の開催等でも利用可能。そのほか、役場による移住サポート、県外へのWEB上での情報発信、ITで島の課題を解決する実証実験など、取り組みは様々だ。

姫島村役場水産・観光商工課主事補・桜井綾子氏が現状を話してくれた。

 

「船の運航や診療所など、姫島での仕事のほとんどを役場が対応しており、公務員以外の仕事の選択肢があまりありませんでした。そんななかで、IT企業の皆様がいらっしゃったのは非常に画期的。コロナが落ち着いたらどんどん企業さんを募集して、姫島の人がUターンできるような環境を整え、姫島で暮らしていただきたいですね。現在1箇所のフリーのWi-Fiスポットも今後、増やす予定です。あと4社入居できる部屋がありますね」(桜井)

 

島のIT人材育成に向け、教育についても力を入れていることが、大分県の姫島ITアイランド構想担当の高倉圭司氏のお話から理解できた。

 

「村と連携して、人材育成に取り組んでいます。姫島村では、小・中学校の生徒1人1台タブレット端末を配備して、プログラミング教育やタブレットを使った学習が行われています。いま、GIGAスクール構想で、全国の学校でタブレット整備やICT化が進んでいると思いますが、姫島では2019年度内に配備が完了しています。

 

そのほか、遠隔操作ロボット「アバター」を使った遠隔授業等にも取り組んでいます。

 

例えば、去年などは東京・上野にある東京国立博物館に協力をいただき、博物館に置かれたロボットを、遠く離れた姫島の学校から操作して、国立博物館の中を見て回ったり、職員さんの話を聞いたりなども行いました。

 

島の子供たちに、ITに興味を持ってもらえればと思っています。また、高校進学や就職などで、島の外に出たとしても、戻って来たいと思ったときに雇用の場の一つとして、ITの雇用を育てていかなければならないと考えています。」(高倉)

他にも、コロナ禍においての“学び”取り組みが行われている。代表的なのは、ジオパークとのオンラインジオガイドツアーだ。利用者には事前に姫島の体験キットをお送りし、Zoomを使ってガイドを実施する。T・プラン株式会社(姫島エコツーリズム推進協議会)の伊井誉思香氏が教えてくれた。

 

「例えば、蝶々(アサギマダラ)の模型を作れるようなクラフトキットを事前にユーザーに発送します。その後、オンラインでつないで一緒にクラフトを作り、私たち島民が車に乗って実際に蝶々がいるところをガイドするんです。オンライン上では、ジオパークやアサギマダラを守る会の方が、その生態を詳しく紹介してくれるんです。アサギマダラに関する専門知識をここまで深堀して知れるシーンはそうないこともあって、評判は上々でした」(伊井)

島民に認められた超小型モビリティでの移動

島内の移動はどうするか。電車やタクシーがない島において、レンタカーが重要。ただし、ここにもアイデアが盛り込まれており、見た目も可愛い超小型モビリティーが導入されている。伊井さんが詳しく教えてくれた。

 

「姫島エコツーリズム推進協議会は、“環境にやさしいサスティナブルな観光モデル”を、まず姫島で創りあげ、それを世界に発信していく団体。太陽光で充電した電気自動車のレンタル事業が主な取り組みです。姫島での導入背景としては、島内を観光でまわる際に、自転車か徒歩しか選択肢がありませんでした。またローカルバスもありますが、1~2時間に1本程度で観光には向いていません。移動手段を増やすのがまず課題でした。また、地球温暖化の影響で、今にも海面上昇の影響を受けそうな地域があります。姫島もあと4m上昇すると、ほとんどが水に浸かってしまいます。地球温暖化にも注目し、通常のレンタカーではなく電気自動車にしました。少子高齢化という問題もあって、若者が島に残って働くための雇用の場の一つになればと考え、姫島エコツーリズム推進協議会を2014年に設立しました。弊社を中心に、姫島の土産店、介護施設、女将の会などでいま、5つほどの企業(や団体)で成り立っています」(伊井)

現在、姫島には15台の電気自動車がある。1人乗りから7人乗りまで、年間約1,000組ほどの観光客が利用するという。4人乗り、7人乗りのグリスロ(グリーンスローモビリティ)は、ゴルフカートの形で横のカバーをまくりあげるとオープンカー仕様に。時速18kmしか出ないので、年齢問わず負担のないスピード感となっている。車高は低く設定されているので、お年寄りから子供までが利用できる。

 

導入当時、島民からは「値段が高い」「1年くらいでつぶれるのでは」といった心配の声をもらったそうだが、使用機会が増えてきていることで、いまでは島の盛り上げに貢献していると感謝の声も。基本的に島外の人向けだったサービではあるが、冬場やお客さんの少ない時期には、島の人に月貸しを展開。観光のお客さんからも「ゴーカート感覚で島をまわれて面白い!」と評判のようである。

 

「エコツーリズム推進協議会の構成員の中には介護団体が含まれており、昼間のお散歩用に7人乗りのグリスロを使っていただいたことがあります。おじいちゃんおばあちゃんたちも、乗っていて楽しかったという感想をいただいています。普通のリーフのような車然とした電気自動車ではなく、姫島でおもしろい車に乗れるよ、と皆さん楽しんでくれています」(伊井)

 

同サービスは、2021年4月から新たに多種多様な車両が導入される予定である。トヨタの2人乗りのコンパクトカーなどがその候補だ。

 

充電サイトは、姫島エコツーリズムにある太陽光ガレージの『青空コンセント』と、姫島村役場にひとつずつ設置されている。今後は、乗り捨て利用でも、全自動で車が戻ってくる装置を想定しているようだ。民家のガレージも利用の視野に入っている。

子供たちから情報得てお年寄りもIT化

改めて、オンラインについて現地の目線で語ってくれた。高倉氏は、オンラインが充実したからこそオフラインが重要という。

 

「オンラインは距離の壁を超えてくれます。出社しなくても意外と世の中がまわることが、このコロナ禍で実感できた人も少なくないかと思います。そういう意味では、(住む場所に限らず)地方にいながらでも、仕事はできることがわかりました。我々、地方に人を呼び込む立場としては、オンラインの魅力を磨く(通信環境やオフィスを整える)だけでなく、「住みたい」と思ってもらえるオフラインの価値、魅力を磨いていないといけなくなってきていると感じています。」(高倉)

 

伊井氏は、オンライン利用の具体的な目標を語ってくれた。

 

「オンラインというのは、情報発信の場だと考えます。今の時代、情報を予めほとんど出してしまったほうが、答え合わせをしにその場に足を運ぶと考えられています。今後は更に姫島の情報発信をしないと、と思っています。また、いろんなIT企業がいらっしゃったことで、電気自動車の音声ナビや全自動化など、IoT活用の事業が現実的になってきました。車を中心に島の価値を高めていきたいです」(伊井)

 

桜井氏は、島ならではお年寄りと子供の交流を教えてくれた。

 

「コロナで観光客が少なくなったことは残念ですが、オンラインが身近になり、ある意味姫島のことを知っていただくきっかけにもなりました。それは、離島であるという欠点をも補うものです。東京の博物館を子供がリモートで見学しているわけですから、他の離島でもできますし、そうなると都会や田舎という壁がなくなるのではないでしょうか。また、最初はIT用語についてお年寄りには難しそうだったのですが、子供たちとの交流から情報を得ることが多く、わりと受け入れられたという景色もありました」

姫島の人口は2,032人(2019年1月時点)。主要な施設や店舗に行こうと思えば、すべてフェリー乗り場徒歩圏内にあるのでアクセスしやすい。U・Iターンの奨励金をはじめ、就業奨励金、結婚祝い金なども充実しているのも特徴だ。待機児童数は0名で、保育所や幼稚園が無料で利用でき、中学生までの医療費も無料。島内の巡回バスは無料で使える。移住にも適した島と言えるだろう。新潟から移住した伊井氏は、この4年間で多くの人と知り合ったという。

 

「島民のなかにも“このままではまずい”“もっと改善していきたい”と、島のことを真剣に考える人がいます。そんな彼らと一緒に仕事をするのは、本当に楽しいです」(伊井)

 

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取材:池尾優

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