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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

なぜ数千万円の輸入中古車が動画で売れるのか? YouTube「ロペライオチャンネル」の戦略を聞いた

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オンラインショッピングが身近になったとはいえ、高額商品についてはやはり自分の目で確かめたいもの。そんな認識をあっさりと覆してくれるのが、輸入中古車専門店ロペライオがYouTubeで配信する「ロペライオチャンネル」だ。内容は毎回社員が商品である輸入車を試乗しレポートするもので、チャンネル登録者数はおよそ20万人、総PV数は1.1億回を超える人気ぶり。驚くべきは、フェラーリやランボルギーニといった数千万クラスの高級車が、この動画を通して売れているという。一体なぜか? ロペライオチャンネルの仕掛け人であり、今も全ての回のディレクションを行う同社の川久保翼氏に、同チャンネルへの想いや仕掛けについて伺った。

川久保 翼

Tsubasa Kawakubo

株式会社ロペライオ 取締役
クリエイティブ事業部 部長

ロペライオ販売トップセールスを経て営業本部長任される。2013年にロペライオチャンネルを開設し営業本部長の立場で車を紹介。現在はクリエイティブ事業部部長として動画をメインに企画から編集まで行う。

マイナス面も隠さず伝えたら信頼が生まれた

ロペライオチャンネルの内容はいたってシンプルだ。スーツに白手袋といったフォーマルな装いの男性2人が、毎回様々な車を試乗しながらだいたい40〜60分間でレポートする。オプションや機能や乗り心地、またちょっとした不具合まで、あらゆることを確認しながら、テンポよく会話が進んでいく。情報量は満載ながら、会話自体はカジュアルで、彼らの視点も庶民的。まるで車好きの友人の話を聞いているようで、購入する気がなくとも見入ってしまう。これまでにアップされた動画は350本以上。その初回から現在に至るまで大切にしているのが、「敷居を下げ」て「ありのままを伝える」ことだと川久保氏は言う。

 

「輸入車、ましてや中古車には、維持費が高い、燃費が悪い、壊れやすい、値段が高い、お金持ちの人しか買えない、などといったネガティブなイメージがありますよね。そこをいかに自然体で、ありのままを伝えられるか?にこだわっています」

例えばこんな発言だ。「5,000万!高いですね〜家が買えちゃいますねぇ」「この車、1リッターあたりなんと3キロしか走らないんです(笑)」「ヘッドライト、なぜか曇ってきちゃいました」。こうした“ぶっちゃけ”トークが頻出する。過去には、運転中に煙が出たこともあったが、あえてカットしなかったというから、気持ちの良いくらいの徹底ぶりだ。通常、こうしたマイナス面を店舗は言及したがらない。ゆえに、「ロペライオチャンネルで紹介された車種が売れなくなった」と他の販売店からクレームが入ったこともあった。また、商品なのに営業マンが乗り回しているのはどうか、と叩かれたのも一度や二度ではない。

 

「でも、僕たちがお伝えしていることは全て真実なんです。また、それらは輸入車を買うために必要な知識だと思います。とはいえ、なるべく細かいフォローもしています。壊れやすいですが、こういう場合はいくらくらいで修理できますとか、対処法も具体的に説明しています」

 

そんな個性的なコンテンツが面白がられ、シェアされるようになり、今ではそれが店舗の「信頼」になっている。

圧倒的な情報量の動画で来店が不要に

ロペライオが扱う車は、500万円〜高いものでは5億円。アンケートによると、購入者の9割は動画を見て購入を決めているという。一般的なYouTubeの人気動画は10〜20代向けが多く、ユーザーは若い世代のイメージがあるが、ロペライオチャンネルのファンは35〜60歳で男性が90%。驚くことに、近年では来店せずに購入する方が増えているという。

 

「これまでは動画で興味をもって来店されて契約、というのが主流でしたが、2018年頃から動画を見てそのまま購入される方が増え、今では来店せずに購入される方は全体の3〜4割になっています。『来店する必要ってありますか?(ないですよね)』とお客様の方から言っていただけて。私も驚きなのですが、これまでに40台ほど買ってくださっていても、一度もお会いしたことのない方もいらっしゃるんです」

中古車はコンディションや程度もまちまちなので、通常は試乗して確認しなければならない。そこを同社では、来店時にお客様がチェックすること全てを動画でカバーしているため、オンライン上で販売が完結する。

 

2016年には、全商品を紹介する「ロペライオ・ショッピングチャンネル」も開設。こちらは、ターンテーブルに乗った車の画像に合わせて、オプションや傷などの情報がテロップで淡々と流れるという、より販売にフォーカスしたものだ。これにより、どの商品でもリモート購入が可能になった。

 

こうして今では社名から「あの動画のお店ね」と言ってもらえるまでになったが、開始当時の想いを川久保氏は振り返る。もともと輸入車業界は、情報発信に関しては国産業界より遅れをとっており、遠隔で確認できる情報量が少なかったり、情報開示のルールもほとんど存在しなかった。

 

「私たちはそこにずっと違和感を抱いていて。業界の未来を見据えたときに、できるだけ全てをオープンにしていくべきだと信じてきました。2005年頃にスマホが普及し始めて中古車販売の広告が雑誌からネットへと変わった時、すぐさま自社サイトの構築に力を入れました」

 

当時、TV番組で取り上げられたことも大きな契機となった。『とんねるずのみなさんのおかげでした』という人気お笑い番組で、芸人さんが実際に車を購入する企画に、販売店として起用されたのだ。HPのアクセスは数万PVから数百万PVに。社内でWeb投資への機運が一気に高まり、その流れで2013年に始めたのがロペライオチャンネルだった。

 

「当時はブログの全盛期。まだユーチューバーもいないばかりか、YouTubeは英語のコンテンツがほとんどで“よくわからないもの”という印象で。動画配信をやっている同業他社が日本では他にいなかったので、会社のブランディングと認知拡大のために一度トライしてみようとなったんです。それで車を売ることになるとは、当時は思ってもみませんでしたね」

査定・買取りも完全オンライン

状態が良く人気の中古車を販売するには、当然それらを仕入れる必要がある。通常、車の売却を考えているオーナーは、複数業者に相見積もりを取るケースが多い。そこでロペライオの強みになるのが、やはりオンラインでの査定・買取りだ。

 

査定はリモートで完結する。オーナーは、LINEで車の写真と車検証データを送るだけ。それを元にロペライオからは金額が提示され、相違なければ契約成立。地方に住んでいる人には来店不要でありがたいし、そうでなくとも、査定から買取りまでがとにかく早い。だが、高額な値段を遠隔で決めてしまい、トラブルになることはないのだろうか。

 

「車検証データがあれば、盗難歴や走行距離のチェックはできます。事故車か否かはお客さんの申告次第になりますが、納車後に発覚した場合は減額になることも伝えているので、みなさんそこは隠さずに伝えてくれます。そこにも、おそらく“動画のロペライオ”という信頼が作用していると思います」

 

希望車種を効率よく入手するために、ロペライオチャンネルでは、動画の冒頭に「今月の買取り強化」メーカーを告知している。また、オーナーが買取り契約をする条件として、「ロペライオチャンネルで紹介してほしい」といったリクエストもあるという。動画の視聴者層は、顧客であり買取り顧客でもあるのだ。

輸入車はバブルの時代へ

コロナ禍では工場の生産休止から世界的な半導体不足となり、今もなお多くの製品の供給を遅らせている。その影響がもっとも深刻なのが、自動車業界だ。新車はなかなか納入されず、特に輸入車は2〜3年待ちということも多い。

 

「“中古車バブル”がきていて、この流れはしばらく続くと思います。新車が入手できない代わりに中古車のニーズが伸び、価格がどんどんつり上がっています。新車の数倍するといった、従来では考えられない価格で売れている中古車も多いです。そんななか、私たちは在庫をもつ専門店としての強みを生かして、時代のニーズに応えていきたいです」

 

そんななか、今後同社が力を入れていくのがライブコマース事業だ。実験的に行った配信では、30分のライブ配信中にフェラーリが成約となった。

 

「偶然にも、同じ車を新車で納車待ちの方だったんです。チャットでやりとりして金額をお伝えし、その場で契約が決まりました。これには可能性を感じましたね。まだ手探りではありますが、今後は配信本数を増やしていく予定です」

 

オンラインは遠隔で便利、というだけではない。良いことも悪いことも包み隠さず、また隅々まで網羅したオンラインでの情報提示は、対面に勝ることがある。それを証明する好事例だ。

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取材:池尾優

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