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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

グローバルサイトを7カ国語に。海外展開が急速に進むマルコメのWeb戦略

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2019年までの“インバウンドブーム”が記憶に新しいように、近年、日本の観光や文化は世界的な注目を集めている。最近のアンケート調査(日本政策投資銀行・日本交通公社による共同実施)では、日本が「コロナが終息したら行きたい旅行先」の1位にランクイン。今後期待されるトラベルバブルの文脈でも関心が寄せられている。それに伴い、日本食の世界的な認知も加速。日本の味噌の代名詞といえる「マルコメ」も、今や世界45カ国で販売され、オンラインでの売り上げも年々伸びている。同社は2020年、グローバルサイトを7ヶ国語の多言語サイトへリニューアルし、国外へのさらなる広がりが期待される。そのリニューアルの担当者でもあり、海外展開を統括する、マルコメ株式会社海外事業課の榊原光芳氏に話を伺った。

榊原 光芳

Mio Sakakibara

マルコメ株式会社 海外事業課

2011年マルコメ株式会社に入社。2012年より海外営業として東南アジア、オセアニア、欧州担当を経て2016年に英国駐在。帰国後は欧州担当として現在に至る。学生時代から海外文化に興味があり、高校時代にスイス、大学時代は英国ケント大学へ短期留学。営業活動の傍ら、オウンドメディアの翻訳や海外向けの映像制作などを通じて日本の発酵文化の啓発活動に従事。

日本の味噌から世界の“MISO”へ

「和食」がユネスコ世界無形文化遺産に登録されたのは2013年。それを機に、日本食は急速に世界に広まった。海外の日本食レストラン数は2019年に15万店(外務省調べで156,308店)を超え、マルコメでは2007年にロサンゼルス工場を竣工し、現在はタイと韓国をあわせて3カ国に販売拠点をもつ。これまでおよそ10年間、海外市場を見てきた榊原氏も「味噌の輸出量は年々増えていて、味噌の引き合いはここ数年でかなり増えた印象です」と話す。

「初めは“知られざる日本の調味料”としてメディア等で取り上げられていたところから、日本食レストランの普及とともに一般家庭へと広がり、最近では健康食といった認識も広がりつつあります」

マルコメでは、アメリカなら「Miso&Easy」というポップなパッケージの液みそが人気なように、現地の顧客に合わせた商品開発や、味噌セミナーなどの啓蒙活動を通して、言語や文化の障壁を乗り越えながら販路を広げている。また、タイや中国では糀甘酒や大豆のお肉が販売されており、味噌以外の商品展開も進んでいる。

 

しかし、「まだまだ課題は多い」と榊原氏は言う。売れ行きは上り調子だが、味噌の本質は伝わっていないのでは?という疑念は今もある。なぜ定食には味噌汁がついてくるのか?味噌が身体に良いのはなぜか?味噌汁を美味しく作るには?ダシとはなにか?といったことだ。衝撃を受けたという、こんな出来事を教えてくれた。

 

「各国の飲食店で食べる味噌汁は、本来のものでない場合が多数ありました。なかでもダシの入っていないものを食べた時は、ただの“しょっぱい汁”になっていて。さらにショックだったのは、それを『美味しい』と言って食べていらっしゃる方がたくさんいたのです」

言葉のニュアンスを重視したグローバルHP

味噌の魅力を正しく伝えたい。多くの現場を訪れるなかで、榊原氏はそんな想いを強めていく。そんな時、グローバルHPのリニューアル計画が浮上する。当時から、アメリカと韓国はそれぞれホームページをもっており、タイではFacebookの発信に注力するなど、各国の現地法人が独自の手法で顧客とのコミュニケーションを行っていた。

 

「それぞれ手を尽くしていただいていましたが、マルコメの歴史や企業理念、また味噌以外の商品といった全体を伝えきれてはいませんでした。そういった背景や本質を理解していただいて初めて、マルコメの商品をお届けする意味が出てくると思っていて。実際輸入の際には様々な業者が間に入りますし、その意味でも物理的・精神的に、各国のお客様との距離を感じていたのです」

 

そこで、グローバルサイトを各国のコミュニケーションの基軸にすべく、刷新のタイミングで導入したのが、「WOVN.io」だ。WOVN.ioは精度の高いAIと翻訳会社のプロフェッショナル人材を併用する翻訳サービス。日本語、英語、タイ語、韓国語に加えて、売上規模の大きい中国、現地企業とパートナー契約を結んでいるフランス、ドイツの7カ国語から開始した。

 

「日本語のニュアンスには、どうしても伝わりにくい部分があります。マルコメの理念を伝えるときに、翻訳によってニュアンスや意味合いが変わってしまうことのないように、言葉をもっとも重視しました。WOVN.ioさんにはそこを理解していただけています。今後は継続して翻訳の精度を上げていきながら、対応言語を適宜増やしていく予定です」

 

コンテンツとして重視したのは、「フードカルチャー」のページを新設したことだ。味噌の原料である大豆や糀について、また味噌の種類など、基本的な事柄を噛み砕いて紹介している。WOVN.ioによると、2020年12月の多言語公開後、海外からのアクセス数は137%増加。特にこのページへのアクセスが増加しているというから、滑り出しは好調だ。閲覧層は、25歳〜34歳が4割強と多く、次いで18歳〜24歳が2割強。ECやSNSサイトからの流入が多く、普段からこれらのオンラインサービスに慣れ親しんでいる世代という意味でも納得だ。

「対応言語7カ国以外では、スペインやインド、ロシアからのアクセスも見受けられます。今後は、各国のEC販売サイトやSNSなどからこのホームページに誘導するような仕組みを作っていく予定です」

コロナ禍で生まれた新たな需要

リニューアル後の動員数や滞在時間が瞬時にカウントできるように、消費者の反応がすぐに見られるのも、オンラインの魅力の一つ。コロナ禍のオンライン展開は、その手応えが大きかったと榊原氏。特に、ドイツでは現地パートナーと計画しAmazonの定期的なプロモーションに参加してきたが、2020年10月のプロモーションは、圧倒的な反響があったと話す。

 

「『サイバーマンデー』や『ブラックフライデー』に合わせて広告を打ったら、売り上げとレビュー数が劇的に増えました。現地で人気のカップスープを差し置いて、即席味噌汁が1位になったりして。それも一過性ではなく継続的に伸びたので、多くの方がリピートしてくださったのだと思います」

 

また、中国では昨今話題のKOL(キーオピニオンリーダー=影響力の高い人物)によるライブコマースを試験的に行ったが、「店頭では考えられない数量が数十秒で売れることもあった」と同氏は驚きを表す。韓国では現地法人が、同国で影響力のあるECサイト「クーパン」内に作り込んだページを設け、レビュー・購入数を共に伸ばしている。

 

「コロナ禍ではお家時間が増え、自炊に飽きた、といった声があちこちで上がりました。そんな時に、自宅で簡単に作れる“エキゾチックな新食材”として、マルコメの味噌に目が向いたのかもしれません」

ヒトにも環境にもやさしい、持続可能な食材として

しかし、コロナ禍で生まれているのはそういった巣ごもり需要だけではない。多くの人が衣食住を見直したことで、味噌や味噌の原料である大豆や糀の可能性が、健康面や持続可能性の観点からも大きな注目を浴びている。榊原氏は、トレンドのキーワードは「発酵」だと言う。

 

「世界一とも称されるデンマークのレストラン『Noma』では、自作の発酵ラボで日本の発酵技術を使った独自メニューを生み出していたり、その発酵技術についての本を出していたりします。コロナ禍を経てヴィーガンレストランとして生まれ変わったニューヨークのミシュラン三ツ星レストラン『Eleven Madison Park』では、持続可能な食として発酵を取り入れています。また、急成長を遂げている代替肉に塩糀を使うスタートアップ企業も現れました。世界の星付きレストランが日本の発酵技術に注目しています」

 

糀と大豆を発酵させて作る味噌。米糀を発酵させて作るシュガーフリーの糀甘酒、そして代替肉としての大豆のお肉。これらの食材は、グルテンフリーでシュガーフリー、そして100%植物性のヴィーガン食であることも忘れてはいけない。「味噌メーカーならではの発酵技術、米糀や大豆に対する知見を活かして、健康にも環境にもやさしい食の未来を提案していきます」と榊原氏。健康や地球環境への意識がますます高まる今後、マルコメの商品は各国の様々な課題に貢献していきそうだ。

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取材:池尾優

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