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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

2日間でPV数は6万超!オンライン開催「建築フェス」の成功法

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リアルイベントが軒並み中止になった2020年。代わりに盛んになったのがオンライン開催だが、実際に内容とオンラインの特性を掛け合わせ生かすのは難しい。そこで一つの例として参考にしたいのが、2020年10月に開催されたオンラインイベントの成功例「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪)2020 (英語名称OPEN HOUSE OSAKA)」だ。2014 年に始まり6度目となった今回は、初のバーチャル開催に踏み切った結果、来場者数は予想を大きく上回った。初回より識者委員として同フェスに関わり、現在は実行委員会事務局長を務める高岡伸一氏に、昨年の開催を振り返ってもらった。

高岡 伸一

shinichi takaoka

生きた建築ミュージアム大阪 実行委員会事務局長
近畿大学准教授

建築設計、近現代建築史、まちづくり等を横断的に研究。建築家としても歴史的建築物の再生設計に関わる。主に大阪を対象に、近代から高度経済成長期に建てられた建築の再評価と利活用について、歴史と設計の両面から探求するとともに、建築の価値を活かした都市再生や地域活性化にも取り組む。

“ごちゃごちゃした”大阪の街と建築フェス

公式Webサイトによると、イケフェス大阪は「毎年秋の週末に大阪の魅力的な建築を一斉に無料公開する日本最大級の建築イベント」。そもそも大阪にはどんな建築があるのか。高岡氏に尋ねると、大阪の中心部には「近代建築と呼ばれる明治以降から昭和初期までに建てられた歴史的な建築物が多く残っている」と言う。

「全国的にいえることですが、近代以降の建築において地域別の特徴というのは特にありません。ただ一つ挙げるなら、特に淀屋橋や北浜など大阪の中心部には、歩いて回れる範囲に見るべき建築が集まっています。それらは京都や奈良のようにある時代の建築が集まり街並みを形成しているのではなく、明治の洋風建築や木造の町家、高度経済成長期のオフィスビル、バブル期のビル建築、そして近年のタワマンまで、各時代の建築がモザイク状に建っているんです」

大阪はよく「ごちゃごちゃした街並み」と言われるが、見方を変えれば各時代の多様な建築が集まっているということ。町歩きをしながら建築を通して時代を辿れるという点では、フェスの特徴とうまく噛み合っている。実は、街の優れた建築物を無料公開する同様のフェスは世界中で開催されている。高岡氏はロンドンのそれに参加した際に、大阪でもやりたいと思った。

撮影:西岡潔

 

「英語ではOPEN HOUSEと呼ばれ、市民に建築のデザインや都市への関心をもってもらうことを目的に1992年にロンドンで生まれました。今は欧米中心に世界中の都市で行われていますが、特にロンドンはケタ違い。約800軒が一斉に無料公開され、2日間に25万人が訪れます」

 

国内の開催地も増えつつあるが、参加物件数・内容ともに突出するイケフェス大阪は、シーンを牽引する存在だ。

建築の空間体験はオンラインで可能か?

実際にOPEN HOUSE LONDONに参加した高岡氏は圧倒された。世界中の建築ファンが参加することで、市民も自分の街の魅力を見直す。そんな良い循環が生まれ、街全体が盛り上がる。また住宅建築では、実際の住民が自慢げに内部を案内してくれて、オープンで協力的な市民の姿勢にも驚いた。

シティ・ホール(ロンドン市庁舎)議場の様子

 

「建築の魅力は実際に足を運んで空間を体験するに限る。それに勝る体験はないと感じました。これを大阪でも活用したい!と思い、大阪市のまちづくりを担う都市整備局に提案したのが、イケフェス大阪(OPEN HOUSE OSAKA)開催へと繋がりました」

 

初年度は55件の建築の協力を得て開催。2016年に民間主体の運営に切り替わってからも数は増え、2019年には169件の建築が参加し、2日間の来場者はのべ5万人となった。2020年に余儀なくされたオンラインへのシフトチェンジは、まさにイベント自体が成長過程にあった矢先のことだった。

バーチャル開催の恩恵

ところがいざオンラインで開催すると、あらゆる心配をよそに、予想以上の反響があった。計2日間でPV数は6万7277。そのまま訪問者数として換算はできないが、2019年の5万人にも匹敵する数字だ。誰もがどこからでもアクセスできるというメリットは当然あるが、加えて、リアル開催では難しかったコンテンツが可能になったからではないかと高岡氏は指摘する。

 

「一つは住宅建築です。これまではプライバシーの問題で、無料公開に参加いただくのはなかなかハードルが高かった。それが動画であればということで、昨年は都住創(コーポラティブハウスの名建築)をはじめとする住宅建築にも手を挙げてもらえて、住民の方が内部を案内するムービーを制作・公開しました」

 

同様の流れで、設計事務所の内部を公開する企画「セッケイロード」も、ムービーの公開に切り替えたところ、参加事務所が増えた。これには、「社風や職場の雰囲気がよくわかった」といった、建築の学生や同業者からの反響が大きかったと言う。これらを通して高岡さんが気づいたのは、建物を作る人や組織などの裏側を紹介していく重要性だ。今後は建築家のアトリエや工事現場の公開にも力を入れていきたいと話す。

 

また、リアルで訪れるのが難しい場所も盛り上がった。とりわけ再生回数が多かったのは大阪市中央公会堂だ。市内を代表する近代建築ゆえ、こちらは予想通りではあるが、やはりここまでの手応えはオンラインならではと言う。

 

「一般の方にも人気の高い建築ですが、いわゆる貸会場施設のため、最も見るべき集会室の内部については、普段は見学が難しいのです。加えて、市の施設で利用料が驚くほど破格というのもあり、1年前には予約が埋まっている状態。リアルではハードルが高い場所ほど、オンラインで人気のコンテンツになるのでしょう」

建築×オンラインによる都市再生

オンライン開催を通じては、海外との嬉しい繋がりもあったと高岡氏は話す。

 

「OPEN HOUSE Worldwideという国際組織がありまして、大阪含め世界40数都市が加わっています。2020年は各地のオープンハウスイベントが軒並みオンライン開催になるなか、合同で開催してはどうか?という案が上がり、11/14・15の2日間でOPEN HOUSE Worldwideフェスがオンラインで開催されました」

 

48時間で40数都市の様々な建築が無料公開されるとあり、サイトには世界中の建築ファンが集まった。これまでは現地に足を運ばなければできなかった体験が、今や一度に異なる都市の建築を、それも好きなだけ見ることができる。オンラインが歴史的建築物等にもたらすものは大きいと高岡氏は話す。

 

「インスタなどのSNSブームとも合間って、戦前の近代建築に対する社会的な関心・価値は、ここ20年で割と定着しました。当時の建物が無くなるペースは明らかにスローダウンしています。一方で、戦後、特に高度経済成長期の昭和30〜40年代の建物に対する評価は社会的にはまだ低く、猛スピードで取り壊されているのが現状です」

 

大阪の建築を点で捉えるのではなく、面で捉えるのなら、どの時代の建築が欠けても都市の魅力は減ってしまう。建築×オンラインの掛け合わせが生む、新たな可能性に今後も期待したい。

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取材:池尾優

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