ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

クラウドファンディングの市場規模は1,841億円、プロジェクト支援専門家も誕生。鍵を握るのは、人の心を突き動かすコンテンツ制作

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資金調達・PR・テストマーケティングの新手法として、地位を確立しつつあるクラウドファンディング(以下CF)。矢野経済研究所によれば、2020年度国内CF市場規模は、新規プロジェクト支援額ベースで1,841億円。前年度比17.6%増と成長が著しい。

 

そんな中、プロジェクトを起案する実行者たちを悩ませるのは、自らの商品やサービスの積極的なアピール方法だ。いかに支援者の心を掴むかがCF成功を大きく左右するため、魅力・優位性・想いをどういった形で伝えるのかが大きな課題となっている。

 

ニューワールド株式会社はそこに着目し、応援購入サイト「マクアケ」と資本業務提携を結び、プロジェクトページ制作代行サービスを展開しはじめた。代表の井手康博氏に事業に至るまでの経緯と今後の展望を伺った。

井手 康博

ニューワールド株式会社 代表取締役社長

1990年生まれ、福岡出身。学生時代に中国に留学し、2012年帰国。テレビと買い物をつなぐメディア「imanee(アイマニ)」を立ち上げ、2013年11月に当社創業、代表取締役に就任。事業ピボットなどを行い、2016年には現在のものづくり業界に参入。2017年2月には日本ブランドに特化したライフスタイル雑貨のEC「CRAFT STORE(クラフトストア)」を立ち上げる。これまで全国のものづくり企業800社以上を回り、「日本ブランドを世界No.1にする。」というビジョンを掲げ、ものづくり企業の国内外におけるオンライン流通支援を行う。

ものづくり領域で、映像と買い物を繋ぐ体験を

大学時代から起業を志していた井手氏は、大学卒業を待たずに単身中国へ。インターネット規制が強い中国の環境に身を置いたことで、日本のインターネット事業に着目するようになったという。帰国後、広告代理店でwebマーケティングを本格的に学び、2013年にニューワールド株式会社を設立。ファッションメディア「アイマニ」を立ち上げた。

 

「映像と買い物を繋ぐというコンセプトを元に、メディア・EC事業を手がけていました。単に商品登録しただけでは売れにくい商品も、リッチコンテンツである動画を加えることでコト・ストーリー消費を生むことができるのでは、と。動画の可能性を模索する中で注目したのが、日本のものづくり領域。工芸品は職人の技術・苦労・物語を知ってこそ価値が伝わります」

 

工芸品は高価なものが多く、オンラインでの購入ハードルが高い。それを動画コンテンツで解消しようと考えたのだ。実際に職人の元を訪れると、工場見学をさせてくれるなど大きな歓迎を受けたという。職人の課題に、自分たちのノウハウを活かしたい。こうして伝統工芸の従事者と連携したEコマース「CRAFT STORE」が始まった。特集記事や動画コンテンツを通して、工芸品ができるまでのストーリーや職人の思いを消費者に伝える。派生して、年に数回ある大きな展示会で、新商品発表を行うための動画制作も担うようになった。

 

「現地でものづくりの全工程を取材し、動画コンテンツを制作します。ものづくりの技術を現場で理解しながらEC事業を展開できたことは、弊社にとっても大きなメリットでした」

CF活用でリスクを抑えて新商品開発

ものづくり企業や職人らと深い連携を取りながらEC事業や動画制作を進めるうち、CFに関する相談が増加したと言う。CFは2000年代にアメリカでIndiegogoやKickstarterが開設されたことを皮切りに、日本でもCAMPFIRE・マクアケ・READYFORなど次々とサービスが誕生。コロナ禍を受け、飲食店や医療従事者支援の文脈で存在を知った消費者も多いだろう。インターネットを通じて様々な支援者から資金を調達できる他、新商品のテストマーケティングとしても活用できるため、ものづくり業界でも注目を集めていた。

 

「新商品は在庫リスクを抱える上、開発コストがかかります。この費用を補助金・融資で賄うのが一般的でしたが、承認を得られなければ、新商品開発を断念することもあり得ます。CFを利用すれば、コントロールの効きにくい補助金・融資に頼ることなく、リスクを抑えて資金調達とテストマーケティングを実施できるのです」

 

CFは支援者が実行者の想いや物語に共感すると、支援・拡散に広がりやすいのが特徴的だ。いかに多くの人の心を突き動かすコンテンツを制作できるか、クリエイティブが鍵を握る。そこでニューワールド株式会社は、蓄積してきた動画・記事制作ノウハウをCFのプロジェクトページ制作に転用することを決意。応援購入サイト「マクアケ」を運営する株式会社マクアケと資本業務提携を締結、CF支援事業がスタートした。

「マクアケは数ある国内のCFサービスの中で、日本のものづくり・地方創生プロジェクトに力を入れています。今まで我々が築いてきた全国の職人たちとの独自ネットワークを活用しサポートすることで、一緒に市場を推進していこうとお話しさせていただきました」

 

CFを実施したいブランドの商品背景や工程過程を、丁寧に取材・撮影・ライティング。支援者が共感しやすいコンテンツ制作を担う。CF支援を通すことで、ものづくり企業や職人たちからは様々な反応があったと言う。

 

「まず、短期間で数百万もの売上が生まれるオンラインならではの集客力に驚かれます。加えて、『頑張ってください』『応援しています』など、ユーザーの声が直接届くことに対してものすごく喜んでくださる。インターネットサービスを生業にしている弊社からすると、ユーザーの声に触れられることは日常的。しかし職人の方々は今まで、問屋を挟んで商売を行なってきたため、顧客をリアルに感じられる体験が少なかったんです。こういったところに喜びを感じていただけることは、我々にとって意外でした」

この経験は、今まで職人から一方通行だった商品開発工程にも影響を与えた。顧客の声を商品開発に反映したり、顧客参加型のプロジェクトが生まれたりしているのだ。より顧客の姿を立体感持って捉え、反応を直に知ることで、ものづくり業界に顧客視点での商品開発手法が加わった。

海外CF支援で日本のものづくりを世界へ

 「日本ブランドを世界 No.1 にする」ビジョンを掲げるニューワールド株式会社。国内CFだけでなく、IndiegogoやKickstarterなど、海外CFサービスへの展開支援にも力を入れている。世界中から支援者が集まる海外CFサービスであれば、世界への販売戦略を練ることができるからだ。

 

「自社の商品が、どの国の消費者にどのくらいニーズがあるのか知ることができます。例えば、キッチン鋏のプロジェクトでは、アメリカ・カナダ・ドイツが他国よりも需要があることが分かりました。ライフスタイルにフィットする商品だったのでしょう。スピード感を持ち精度高く、どの国で商品の流通可能性が高いか検証できる。これは、日本ブランドを世界展開するのに大きく役立ちます」

 

中国滞在経験も活かし、今後は中国マーケットへの参入も視野に入れているという。

最後に、様々なインターネット事業に携わってきた井手氏が捉える、オンラインの価値について伺った。

 

「オンラインは、物理的な距離を超越できる。お店に行かないと商品を手に取ることができなかった小売業にとって、これは大きな変化です。新潟の会社が福岡の顧客を持ったり、岐阜の会社がアメリカの顧客を持ったり。だからこそ、CFを利用したテストマーケティングに留まらず、その先の一次流通まで繋げるサポートを実施することを心がけています」

 

オンラインの向こう側は、世界中の消費者が待つ。CFにより企業の世界展開が容易くなったことは間違い無いだろう。日本のものづくり企業の商品を、世界に届けるために何が支援できるのか。井手氏の挑戦はまだ始まったばかりだ。

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取材:齋藤優里花

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