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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

オンラインで悲しみを共有する「スマート葬儀」。故人を偲ぶ新しいカタチに

新型コロナウイルスの蔓延により、世界中がパンデミックに直面し、混沌の時代へ。そんな最中、コロナで亡くなった方を見送ることができないばかりか、参列者が集うことも憚られ、葬儀のあり方が見直された。

 

ライフエンディングテクノロジーズが運営する「スマート葬儀」は、故人をオンラインで偲ぶ新しい葬儀の形式として、2020年4月にサービスを開始。葬儀や法要の様子がオンラインで配信され、画面を通して参列することができる。葬儀におけるオンラインの是非や、リアルでしかできない部分へのカバーなど、気になることは多い。クイックに時流とニーズを捉え葬儀業界に風穴をあけた、同社取締役の冨安達也氏に話を聞いた。

冨安 達也

TATSUYA TOMIYASU

ライフエンディングテクノロジーズ株式会社 取締役

18歳よりセレモニーディレクターとして葬祭業に従事。葬儀業界10年以上1,000人以上の「おくりびと」として活動。厚生労働省認定「一級葬祭ディレクター」最年少取得者。終活アドバイザー。

コロナ以前からニーズがあったオンライン葬儀

「困りごとを解決するのがサービス業の原点」と語る冨安氏。コロナ以前から、体が不自由な高齢者や遠方在住のビジネスパーソンなど、葬儀に参列したくても困難な人たちはこれまでも一定数いたという。

 

女優の岡江久美子氏やコメディアンの志村けん氏が、コロナによる肺炎で亡くなったときも、家族の対面はおろか、葬儀も執り行えず、遺骨となって遺族の元に帰っていたことは記憶に新しい。最期の時に立ち会えない無念さは、耐えがたい。

冨安氏には「どんな状況に置かれている人たちでも、大切な人を偲ぶ時間の共有を叶えたい」という思いがあった中、コロナに後押しされる形で「スマート葬儀」は実現した。

 

「いかなる状況でも参列できる手段として、オンライン葬儀のニーズはもともとありました。そこに輪をかけてコロナがやってきた。どの葬儀会社も未知のウイルスで警戒心が強まり、コロナで亡くなった方の受け入れ先がないという状況ができてしまったんです。葬儀を執り行うにしても参列者による密は不可避。葬儀会社もご遺族も、全員が困っていた。リモートワークが導入される中、葬儀もリモートに対応すべくローンチに至ったんです」

 

当初の予定より2ヶ月早くローンチする形で始まったスマート葬儀。コロナ禍における“ありなし”の指標がまだない中で、専門家監修のもと葬儀会社やスタッフへのコロナ対策のガイドラインも早急に作成。まだ誰もコロナ禍における正解を持っていない状況を打破し、万全の環境で実現した。

オンライン葬儀でもドライにならないワケ

サービスを開始すると、思った以上に反響があり、毎週のようにオンライン葬儀が執り行われている月もあるという。

 

利用者の多くは、高齢者を身内に抱えている家族。オンラインに不慣れな高齢者もクリックひとつで繋がれるシンプルなUIだが、高齢者の多くはひとりで参列はしない。

 

「同居されているご家族と一緒に、リモートで葬儀に参列していただくことを推奨しています。リアルでもオンラインでも、葬儀で大切なのは、遺された人たちとの時間の共有。ひとつの画面を家族みんなで見ることで、機械的になりかねないオンライン葬儀で、悲しみを分かち合うことができると思います」

また、遺族だけリアルな葬儀に参列し、ほかの参列者はオンラインで対応するケースも。その際、現場との温度差が生じたり、一方的な配信になったりしないよう、喪主によるオンライン参列者の巻き込みを行っている。

 

「喪主様には葬儀が始まる前に、画面越しに積極的に話しかけてもらうようにしています。オンラインで配信を見るだけだと、形骸化したり、形式的になったりしがちですから。ただ、全員と話すのは難しいですね。でもそれはオフラインの葬儀でも同じなので、オンライン葬儀特有の課題ではないと思っています」

 

一般的な葬儀だと焼香をあげて故人を弔うが、オンラインでは焼香の代わりにお手合わせによる合掌をアナウンスする。大切なのは、従来の形式をオンラインで再現することよりも、送る側の気持ちの整理や共有ができる仕組みをつくること。実際に焼香があげられなくても、画面越しに合掌することで、気持ちの面はクリアになった。

新たに誕生? オンライン葬儀のマナー

一方で、オンラインで参列する側の振る舞い方も気になるところ。リモートワークが普及すると、オンラインマナーのようなものが誕生したが、オンラインの葬儀でも、オンライン特有のお作法が生まれたのだろうか。冨安氏は次のように話す。

 

「オンラインとオフラインで切り分けることなく、緊張感を持って参列いただきたいです。たとえば、当たり前のようですが、時間通りに参列すること。喪服を着用すること。ご自宅からの参列によって、どうしても気が緩んでしまいがちですが、繋がっている先は式場なんだということを忘れないでほしいです」

 

葬儀中に見せた姿は、最後まで遺族に印象が残ってしまうもの。オンラインだろうと、遺族からも見られていることを意識して参列したい。

アナログな葬儀業界にDX推進で変革をもたらす

このように、オンラインでの葬儀のあり方を提案し続けてきた冨安氏。もともと葬儀屋の現場を担当していたが、「ご遺族の意見を聞いてスピード感をもってやっていくことで、現在のサービスに行き着いた」と話す。

 

「冠婚葬祭は地場産業。参列者に品物を振る舞ったり、地域特有の送り出し方があったり、葬儀にも地域性が出るんです。オンラインでもなるべく個々の形にあった葬儀を実現するよう努めました。それに伴い、記帳や香典もオンラインで完結するシステムもつくりました。葬儀業界はアナログですから、いまだにキャッシュレス化が進んでいなかった。繰り返しになりますが、葬儀システムのオンライン化の是非を問うことより、大切なのは気持ちや時間の共有ができているかどうかです」

便利で効率的になることは悪ではない。本質的なことを見失わなければ、オンラインだろうとリアルだろうと、故人を偲ぶ形式に正解はないのかもしれない。

 

最後に、コロナが終息することで、今後もオンラインでの葬儀は手段として残るのか聞いた。

 

「オンラインの葬儀が主流として台頭していくとは思っていません。どちらかといえば、リアルに叶うものはないと思っています。ただ、オフラインが主流ではあるけれど、葬式特有のアナログなツールや雑務なんかはデジタル化するなど、上手く棲み分けられたらいいですよね。そうすることで、葬儀会社が本来費やすべき、ご遺族に向き合ってもらう時間が増えればいいなと思っています」

  • 公式Facebookページ

取材:藤田佳奈美

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