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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

占い・ショッピング・海外料理教室…「オンライン旅行」の進化が止まらない。HISに聞いた体験ツアーの最前線

かつて年間2,000万人を超えていた日本の海外渡航者数。しかし、コロナ禍で日常が一転。未だ海外旅行への自粛ムードは続いている。そんな中で旅行会社HISはどのような手を打ったのか。事業の活路を見出したのが「オンライン体験ツアー」だ。2020年4月にサービス開始後、2021年6月末で体験者数10万人を突破。ツアーコースは常時1,300以上のラインナップを誇り、ショッピングや食事、占い、スキルシェアなど多彩なコンテンツを揃えており、既存の体験ツアーとは様子が異なる。その魅力や立ち上げ背景、今後の展望について、HISオンラインエクスペリエンス本部長の八幡正昭氏に伺った。

八幡 正昭

HIS オンラインエクスペリエンス本部 本部長

1996年HIS入社。営業、所長経験を経て、2009年より統括としてインドへ赴任、事業の拡大に取り組む。その後、企画・Web事業業務を経て、2015年より統括としてアメリカへ赴任。2020年9月より現職。

アメリカでのオンライン授業普及がサービス発想のきっかけに

HISの「オンライン体験ツアー」のサービスが開始されたのは、2020年4月。日本では最初の緊急事態宣言が発令されたタイミングで、新型コロナウイルス感染拡大初期と言える。仕掛け人である八幡氏は、アメリカ法人在籍中だった。現地でいち早く新型コロナウイルス感染拡大を目の当たりにした。それと同時に、オンライン普及のスピード感にも驚いたという。

 

「ニューヨークでは2020年3月にロックダウンが実施され、学校も登校不可に。Zoomを利用したオンライン授業が、想像以上のスピードで拡大していきました。オンラインでのコミュニケーションが急速に広がるのを見て、弊社でもオンラインを使ったビジネスはできないかと考えるようになりました」

 

日本からアメリカへの渡航者が0になったHIS。窮地に立たされた中で、スタッフや取引先への雇用を生み出す必要性があった。しかし、実際にどの程度需要があるかは未知数。そこで、4月中旬から5月にかけての約1ヶ月半、無料でサービスを提供した。すると6,000名もの参加者が集まり、9割が5つ星をつけるという高評価が得られたのだ。

 

「アメリカに行きたくなった。コロナが収まったら行きたいという前向きなコメントが寄せられました」

 

クチコミなどからヒントを集め様々な角度から検証。これらを経て、6月以降に有料の事業化へ。金額設定も社内でアンケートを取り、映画やライブコマース事業と比較して購入したくなる金額感を探った。結果、500円〜6,000円程度の比較的手を出しやすい金額設定が実現。実際の海外旅行を考えた時に、この金額感は魅力的だ。苦労した点でいうと、サービス開始当初は日本ではZoomが定着する前だったため、操作説明や環境整備などに時間を要したそうだ。

旅行地ではなく現地ガイドのファンが誕生

こうして生まれたのが、HISの現地スタッフやガイドが生配信で世界の旅行地をリポートしてくれる「オンライン体験ツアー」。テーマやエリア、日程などからツアーを選定でき、自宅から世界各地の観光地を堪能できる。経験豊富な知識を持ったガイドとリアルタイムで繋がり、「ケニア・ナイロビ国立公園サファリライブツアー」や「世界一周ライブツアー」などを選択。実際に現地に行くよりも、金額・日程(時間)的にも低いハードルで楽しめるのが魅力だ。

サービス開始時は、画像や資料を使ったセミナー形式だったが、顧客のクチコミやスタッフのアイデアを反映してライブでのリモートトラベルや料理教室・占いといったスキルシェアなどのコースが誕生していった。ユーザーの7割は女性で、年代は30-50歳代が70%を占める。

 

「61カ国以上ある海外支店を横に繋いだ世界一周旅行など、HISならではの持続性あるサービス開発を重視しています。よく海外での横展開は大変だったのではと聞かれるのですが、その観点での苦労は全くありませんでした。スピード感のある社風と、各現地法人で顧客がいなくなった危機感から生まれたチャレンジ精神が寄与したのかもしれません」

 

旅行にリアルで行けなくなったからという理由はもちろん、アメリカに元々興味がなかったがオンラインで参加できる障壁の低さから参加し、関心を持つきっかけにもなっているそう。

 

「想定外だったのは、ガイドのファンが生まれたこと」

 

現地のガイドとのコミュニケーションから、ガイド目当てでのコース購入を行う顧客も多いのだ。

90分で世界一周、新規の顧客接点創出にも寄与

購入者数10万人を超え、年間を通して人気のあったツアーは世界一周旅行。リアルで行くには約2週間、40-50万円以上かかるが、オンラインであれば90分で完結する。世界3大瀑布やサファリツアー、ウユニ塩湖などリアルではハードルの高い旅行が人気だ。

 

「5カ国同時ライブ中継し、各国の最も美しい場所を効率よく回れます。ガイドとのチャットで双方向コミュニケーションも楽しめます」

 

今後はコロナ禍が明けた後も、オンライン体験ツアーで旅行先を選定する世界観を想定している。店頭、パンフレットといった従来の旅行の選び方に、新たな手法が加わるのだ。またオンライン体験ツアーは新規の顧客開拓にも繋がると八幡氏は語る。

 

「今までHISがリーチしていたのは、元々海外旅行に行きたい顧客のみ。しかし日本のパスポート保有率は約22%で、海外旅行に行けない方・関心がない方も多く存在します。オンライン体験ツアーでは既存とは全く異なる層にビジネスを提供できる。今までの旅行事業とは別物の新しい収益手段として育てていこうと考えています」

スキルシェアやライブコマースなど他業種展開に発展

また最近人気が高まっているのが、スキルシェア分野やライブコマース分野のツアー。インドの有名占い師ラブさんによるバーチャル占星術・手相占いは、クチコミ評価が400件以上と圧倒的な支持を得ている。その他にも、ディーン&デルーカのハワイ限定グッズを実際に購入できるバーチャルショッピングなど、旅行業に囚われない市場展開が可能になった。

 

「緊急事態宣言が続く中で在宅率が高まり、お金や時間の使い方が変わっていてきていると感じています。オンラインでの観光だけではなく料理や占い、語学学習、生産者とのコミュニケーションなど、学習意欲を満たすコンテンツがおうち時間の使い方にマッチしてきているのではないでしょうか」

更にHISが他社との差別化のために開発したのが、オリジナルのライブ配信サービス「Port」だ。ガイドが持つ撮影用スマートフォンを参加者が遠隔でカメラ操作することができ、好きな角度やタイミングでカメラのシャッターを押せる。シャッターを押した画像は自分のデバイスにダウンロードできるので、実際に現地にいるかのように観光が楽しめるのだ。またGoogleマップとの連携により気に入ったお店をピン止めができ、旅行の計画に活用もできる。

 

「お客さまへの体験価値の差別化として、Portなら、一味違う顧客体験を提供できるのでは」

 

よりパーソナルな観光が楽しめるので、少人数やプライベート向けの利用がおすすめ。また現地の生産者やお客さん同士のコミュニケーション活発化によるコミュニティ創出も見込んでいる。お客さん同士で企画した商品を、HISのプラットフォーム内で販売することも挑戦していきたいとも語る。

 

今後のオンライン体験ツアーの目標は、5年以内に100万人の利用者を掲げている。そのために見据えているのは多言語化による海外市場への進出だ。「各国の支店には現地のスタッフも多いので、今のコンテンツを各国の市場に合うコンテンツに変換し、多言語化を進めていきたいです」。コロナ禍から生まれたオンライン体験ツアーは、HISの新たな戦略へと成長を遂げている最中だ。

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