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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「動くスマホ」のテスラに衝撃!「移動のDX」でガッチリ縦割りな自動車産業に挑むスマートドライブ

バスやタクシーに宅配便、また保険会社など車両に関わる事業者間で、関心を集める企業がある。車両をはじめとする移動データを活用することで、車両管理・運用の効率化を図る「スマートドライブ」だ。代表取締役である北川烈氏は2013年の大学院在学中に創業し、様々な移動データを収集・分析、活用することでサービスを生み出してきた。創業から8年が経った今、導入数は700社超。事業会社や金融機関からはこれまでに約30億円を資金調達するなど、業界の域を超え存在感を強めている。EV車や自動運転など変革が求められる自動車業界だが、スマートドライブは業界の未来をどう照らすか? サービスへの想いと今後を北川氏に伺った。

事故3割減、排気ガス2割減の効果も

車両の位置や速度、ルート、安全運転レベル、ガソリンの減り具合……。スマートドライブはそうした移動にまつわる様々なデータをプラットフォームに集め、活用することでサービスへと展開するBtoB企業だ。データはAI機能のついたドライブレコーダーやシガーソケットに指すデバイス、またETC2.0などからも集計する。クライアントは大きく2つに分かれる。

一つはタクシーや運送会社、営業車やメンテナンス車両といった法人車両を使っている企業「フリートオペレーター」だ。こうした企業は、これまで日々の仕事を紙の運転日報に記入するなどアナログな車両管理がほとんどで、ペーパーレス化や効率化に繋がっている。さらに便利なのが、車が今どこにいる? ルートの効率はいいか? など車両をリアルタイムで把握し、さらに、運転終了後直ぐに、安全運転だったかどうか? 稼働率がどうなったか? を確認することができる点だ。

 

「そもそも全く把握できてなかったものが可視化できて、管理が格段にラクになりました! という声を多くいただいています。実際クライアントさんのなかには、導入前に比べて事故が3割減ったり、排気ガス排出量が2割減ったケースもあります」

 

オプションで、業種や業態に合わせて、個々にカスタムしたダッシュボード(データがグラフィカルに表示されたもの)を提供し、好評を得ているとのことだ。

もう一つのクライアントが、車両を使っている事業者に向けてビジネスをする企業「アセットオーナー」だ。自動車メーカーや保険会社、リース会社などが該当する。これらの企業は、自社の車両や保険、リースなどを提供した後に、その車両の動き、使われ方は見えにくく、把握しにくいのが実情だ。そこでスマートドライブの車両データが、サービスの改善につながったり、新規サービスの立ち上げなどに役立つのだ。

 

「保険会社と移動のデータを繋いで安全運転の診断アルゴリズムに基づいて保険料が安くなるようなサービスを開発したり、移動ルートから新店舗をオープンする場所を選定したりと、取り組みは様々です。ただ、自前でやると1年以上かかるものが、うちのデータを活用すると1週間でできる、なんてこともよくあり、研究開発にかかるコストの削減になっています」

ハードとソフトでは合理的なものが違う

自動車産業はその歴史や財閥などが絡み合って現体制ができているという意味では、アナログ領域を代表するような業界といえる。大きな壁になっているのが、“縦のつながり”、系列だ。自動車メーカーと部品メーカーの間柄はもちろん、保険会社やレンタカーも、下請けやその下の孫請けまでが系列企業で成り立っている。北川氏はこんな見方をする。

 

「車1台を作るのには約3万点の部品が必要で、1つでも欠けると完成しません。そこで確実に合う部品が納品されることを重視した結果、系列化してきたところがあって、その意味では合理的です。かたや、ソフトウェアの世界は同業他社問わずあらゆるところから集めたデータを組み合わせ、繋いでいかないと、正確な分析や効率的な活用はできません。オープンに横のつながりを広げていく方が、ソフトウェア業界では合理的なのです」

そんな対極ともいえる業界に飛び込んだのが同社だ。北川氏は初期の頃には、その違いに衝撃を受けたという。

 

「確実にバリューがあるのに、『自前でやります』『うち専用で作ってくれるならやります』という声が大多数でしたね。それが、トヨタさんが系列外と提携したのがターニングポイントになり、ここ3年くらいで業界の考え方が変わりつつあります。またコロナ禍では研究開発費が抑えられたことで、既存のものを共有しながらうまく活用して新しいものを作っていこう、という気運が高まりました」

 

車の未来を表す「CASE(※)」の世界観がますます近づいてきた今、日本発の自動車業界のソフトウェアメーカーとして、同社はグローバルを目指す。

 

※Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリングとサービス)、Electric(電動化)の頭文字をとったもの

8年前にテスラに衝撃を受けて。移動で社会が変わる

自動車業界のアナログ体制を変えていく。北川氏のその原動力になっているのは、移動データが様々な社会課題を解決する、という信条だ。データ分析の研究をしていた学生時代、西海岸に就職した知人を訪ねたアメリカ西海岸で、初めてそのことを目の当たりにした。

 

「8年前ですらGoogleのキャンパス内では既に自動運転が走っていましたし、テスラの電気自動車もリリースされていました。テスラの車はボンネットが空で、もう車ではなく“動くスマホ”のように感じました。自動運転が普及すれば車の形が今のままである必要がなくなるし、会議室が動いたら通勤の概念がなくなる。移動が変わると社会が変わる、ということに感銘を受けました」

 

移動データにまつわる様々なデータが繋がるプラットフォームが完成すれば、そうした移動の未来が少しでも早く実現するはず。そんな思いから、北川氏が大学院在学中に起業した会社がスマートドライブの出発点になった。

移動データがあらゆるものと繋がる未来

移動データを活用すれば、移動にまつわる様々な “負”を減らすことができる。渋滞や事故はもちろん、近年注目されている排気ガスの排出量もそうだ。同社のサービスでは、リアルタイムで運転を分析し、より燃費が良くなる運転方法を提示することも可能で、業種にもよるがこれによりCO2排出量が約2割減るという試算もできているという。またEV車両に切り替えたくても、コストや効率性を危惧する事業者は多く、彼らには移動データから最適な切り替え手法を提案する。「全体の1割をこのEV(車種)に切り替えるなら問題ない」といったことだ。全産業のなかでも移動で排出されるCO2は全体の4割近くに上ると言われているなかで、北川氏は「移動を最適化して最適なエネルギーマネジメントをしていくことには社会的な意義がある」と言う。

「将来的には全ての車両がEV車に切り替わり、エネルギーを運ぶビークルになっていくと思っていて。例えば、車のバッテリーが余っていたら家(の電力)に充電してあげるとか、もしくは地方の自宅で発電した電力を出社に合わせて都心のオフィスに車が運ぶ、といったことです。それも、充電した電気は再生可能エネルギーで発電されたものか? 、それをどこに運ぶと不足を補えるか? など送電や蓄電のコストを踏まえてトータルで管理する必要がある。そこまでを僕らが率先してやっていきたいですね」

同社では既に保険会社と移動のデータを繋いでいるが今後は、事故が起きた際にどちらがぶつかったのかという過失割合のようなものを自動で分析し連携したり、車が壊れそうな時期を予測して整備工場と連携するといったことも可能になるという。その先にあるのは、あらゆるものと移動のデータが繋がった世界だ。北川氏の視線は、自動車業界の枠組みを軽々と越え、未来の社会へと注がれている。

北川 烈

Retsu Kitagawa

株式会社スマートドライブ 代表取締役

慶應大学商学部卒業、東京大学大学院在学中の2013年10月に株式会社スマートドライブを創業し、代表取締役に就任。自動車をはじめとした移動体から集めるセンサーデータを解析するプラットフォームを展開し、データを活用した新しい自動車保険の開発や、車両の管理、物流向けのソリューションなどの事業を行う。アクサ、Foxconn、住友商事、ソニーなどの事業会社及びゴールドマンサックスや産業革新機構といった金融投資家から総額約30億円を調達。移動の進化を後押しできるよう、技術開発や様々な企業との事業提携を進めている。

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