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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「人を巻き込む仕組みを作って一緒に運営」スポーツメンタルコーチのオンラインコミュニティ術

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オンライン診療やオンラインカウンセリングなど、昨今は医療面においても非対面で行われるケースが珍しくない。新型コロナが追い風となって、そのニーズはより高まったように思われるが、スポーツメンタルコーチングもそのうちのひとつだ。

 

スポーツメンタルコーチングとは、アスリートが最大限のパフォーマンスを発揮できるように潜在能力を引き出す、スポーツに特化したコーチングだ。

 

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会代理表理事の鈴木颯人氏は、様々な国際大会でスポーツメンタルコーチを努めた。コロナ禍でオンラインコーチングを余儀なくされた鈴木氏が感じた、オンラインにおける心のサポートの課題と、コミュニケーションの手法などについて話を聞いた。

鈴木 颯人

Hayato Suzuki

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理表理事 プロ・スポーツメンタルコーチ

1983年、イギリス生まれの東京育ち。脳と心の仕組みを学びながら、勝負所で力を発揮させるメソッドを構築。金メダリストから学生アスリートまで、野球、サッカー、水泳、柔道、サーフィン、競輪、卓球など、競技・プロアマ・有名無名を問わず、そのコーチングによってパフォーマンスを激変させるアスリート、チームを輩出。著書に『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』(KADOKAWA)、『弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉』(三五館シンシャ)などを持つ。

選手の心をどうサポートする? コロナ禍での国際大会

ひとつのメダルを目指して世界を舞台に戦うアスリートは、タフなメンタルが必要とされる。プレッシャーをどう乗り越えるかだけではなく、スポンサーの経営状態や監督の判断など実力主義ではまかり通らない周囲の影響に、どれだけブレずに自分を保てるかなども重要だ。

 

鈴木氏は「相手や周辺環境をコントロールできなくても、自分自身のメンタルを整えることで乗り越えていける」と話す。一般的なコーチングは行動変容をさせることが目的なため「DO」にアプローチをする手法だが、鈴木氏が提唱しているのは「BE(心のあり方)」にアプローチするというもの。

 

「DOからアプローチすると、それがやるべきことだと頭では分かっていても、心と体が一致しない葛藤が生じます。本質を見据えたアプローチをしないと、行動がついていかないんです。種をまいて水をあげたら植物が育つわけではなく、まずは土(心)をしっかり耕さないといけないのと同じ」と鈴木氏。

 

心の土壌を整えることで、高いパフォーマンスを発揮できるようになるメソッドで、鈴木氏はこれまでに世界チャンピオン8名、日本チャンピオン13名を輩出している。

 

「2020年4月の緊急事態宣言をきっかけに全選手完全オンラインに切り替えました。ですが通信環境に阻害されて、引き出しかけた本音が引っ込んでしまったり、ミスコミュニケーションが起きているかどうかすら、判別つかなかったりと苦戦しました。心という目には見えないものを取り扱っていますが、視覚的情報から心を読み取っていることも多いので、限られた情報からどう読み取るかを工夫しました」

 

アスリートは集中しているため雑談などはなく、淡々と心のうちを話すことが多いという。そのため、情報は画面越しに見える相手の部屋の様子や生活音などから拾っていった。たとえば、環境音が大きい場合は心理的にも落ち着かない状態など、そこから心理的情報をキャッチアップし、その人にフィットしたコミュニケーションを心がけたという。

 

「とはいえ、オフラインの方が圧倒的情報量があるので、そのレベル感にオンラインコーチングを持っていくためにどうすべきかは課題でした。テキストでのやりとりも、絵文字や記号を意識的に使うなど、気持ちを表現する工夫は欠かせません」

鈴木氏はコロナ以前から、スポーツメンタルを学べるオンラインコミュニティ「Space」を運営している。場所や時間を問わず、即時的に繋がれるオンラインならではの良さを感じる反面、やはりここでもリアルの重要さが浮き彫りになる出来事があったという。

 

「オフラインと同じ感覚で接していると、相手に冷たい印象を与えかねないのが、テキストコミュニケーション」と、鈴木氏。いつでも気軽に送れる便利さがある一方で、言葉の意図が不明瞭だったり、想定外の受け取り方をされたりと、結果的にコミュニケーションの総量が増えることが多い。テキストは、コミュニケーションの主体にはなれなかった。

 

「テキストでエビデンスを残し、電話で補足するなど、オンラインとオフラインのどちらもうまく織り交ぜながらハイブリッド運用していくことが、オンライン上で正しく伝えるコツなのかなと思います」

オンライン上でも快適なコミュニティを醸成するには

「リアルが一番正しく伝わる」と語る鈴木氏だが、どのようにして健全なオンラインコミュニティを醸成していったのだろうか。

 

「オンラインは“繋がりすぎる問題”があると思います。たとえば、Facebookでグループを立ち上げて運営しても、タイムラインには不要な情報も流れます。その結果、目的と違う情報に繋がってしまい、コミュニティ活動に集中できなくなります。ですからSNSを介さないオウンドコミュニティをつくることが、まず大切。

 

そして、情報量が多いこの時代で、情報量を制限することも重要です。Spaceでは週1回の少ない頻度でコンテンツを投稿しているのですが、運営側が情報量をコントロールすることで、その情報がより貴重に感じるようになります」

 

また、新規会員と既存会員で分断が起きないよう、オンラインコミュニティの心理的安全性の担保にも力を入れている。

 

「新規会員にはインターン生のサポートがありまして、その方のプロフィールを作成するお手伝いをします。その際にヒアリングした内容から興味関心が近い既存会員を繋げて、積極的にメンバーとの接点を増やすんです。こういうことを重ねてメンバー間の交流を深めていき、熱量が高まったタイミングでイベントを立ててコミュニティを盛り上げます。また、インターン生だけでなく、会員からもコミュニティ運営やマネジメントを手伝ってもらうこともしていて、当事者意識を持ってもらうようにしています」

オンラインコミュニティに入会するのは勇気がいるが、人を巻き込む仕組みを作り、さらには一緒に運営してもらうことで、主体的なコミュニケーションを促しているようだ。

 

「現在100名ほどの会員に参加してもらっていますが、私だけでオンラインコミュニティを回すことはできません。オンラインコミュニケーションは齟齬が発生しやすい分、リアルより丁寧なやりとりが必要とされます。だからこそ、自分一人でやろうとせずに、積極的に周りを頼っていくことが大切だと思います。

 

その際に、『フラットな組織文化』や『ひとり一人が経営判断する』など、星野リゾートのマネジメントの考え方を共通言語にしています。私が思い描いているマネジメントを具体的に伝えることで、より質の高いコミュニティになってきました。おかげさまで、コンテンツ制作など重要な仕事に専念できるようになったので、周囲を巻き込みながら運営していくことが、オンラインでは大切なことなんだと思います」

 

フラットな組織が特徴の星野リゾート。日本企業であまり見ない体制だが、ここを踏襲しているという。自立したコミュニティを目指している。

 

情報量はリアルに劣るオンライン。だからこそ、積極的にお互いを知ろうとする姿勢、伝えようとする意思が相手に伝わった時、オンラインでも活発なコミュニケーションを生み出せるのかもしれない。

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取材:藤田佳奈美

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