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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

無人決済店舗「TOUCH TO GO」。最先端システムが目指すものは「母親でも使えるもの」

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無人決済店舗「TOUCH TO GO」(タッチトゥーゴー)が高輪ゲートウェイ駅でオープンしてから1年が経った。お客さんが商品を手に取るとカメラ等がリアルタイム認識し、支払いは出口付近の決済エリアに立つだけで、ディスプレイに商品と金額が表示される。手に取った商品がお客さんのカバンに入っていても表示されるという。オンラインシステムがなせる技だ。

 

目的は省人化。小売店舗の労働力不足と、それに伴う地方の買い物難民を解消するために開発された。奇しくも新型コロナウイルスの感染拡大とほぼ同じタイミングでの開業となり、人との交流や接点を控える動きとリンクした。フードチェーン店やスキー場などでも導入されたほか(無人オーダー決済システム“TTG-MONSTAR”を導入)、今春からは大手コンビニエンスストア・ファミリーマートと業務提携し、無人決済コンビニエンスストアを展開していく。

 

無人決済システムは、今後の世の中をどう変えていくのだろうか。株式会社TOUCH TO GO代表取締役社長の阿久津智紀氏に話を聞いた。

阿久津 智紀

TOMOKI AKUTSU

株式会社 TOUCH TO GO 代表取締役

1982年生まれ。2004年専修大学法学部卒業後、JR東日本へ入社。駅ナカコンビニNEWDAYSの店長や、青森でのシードル工房事業、ポイント統合事業の担当などを経て、ベンチャー企業との連携など、新規事業の開発に携わる。JR東日本スタートアップ株式会社とサインポスト株式会社から生み出したカーブアウトスタートアップとして2019年、株式会社TOUCH TO GOを立ち上げる。

便利な買い物の背景にある、現場の深刻なマンパワー不足

24時間営業で、ワンオペまたは数名常駐の店員。普段我々が当たり前のように利用しているコンビニエンスストアをはじめとする小売店舗だが、その便利さの裏には「店員がトイレに行けない」「人が足りない時期が偏っている」など、深刻な人手不足問題が常時蔓延していた。

 

阿久津氏自身も駅ナカコンビニNEWDAYSの店長の経験があったことから、「小売サービス業において、人がいなくてもまわるように自動化・システム化したい」と感じていた。そこで画像認識の研究をしていたサインポストと協業し、2017年に本事業を展開。JR大宮駅やJR赤羽駅で無人決済システムの実証実験を重ねた後、高輪ゲートウェイ店をオープンした。

 

ターゲットは、オフィスや病院など人の出入りが制限的なマイクロマーケット。都市部では飽和状態のコンビニ市場だが、たとえば人口が少ない地方だとライフラインとして欠かせないのに、複数人雇用すると赤字になってしまう現状がある。そのようなマイクロマーケットに物販やサービスの機能をシステムとして提供していく。

 

「TOUCH TO GOはレジ打ちなど人がやらなくてもいいことをシステムに任せられますから、省人化にもなりますし、効率が良いと思います。商品をよりたくさん売ることや、商品の見せ方を工夫・改善することなどの業務に人が時間を割くことができる」

 

マイクロマーケットに照準を合わせたのにも理由が。ホームセンターやスーパーなどの大型店舗だと、人の動きが多様になるため、実はシステムに任せるより人がやった方が早いという。全てをシステム化するのではなく、人が本来追求すべき部分に専念できるよう、システムと人の役割を棲み分けている。

“フツウ”の買い物体験と同じを目指した理由

無人オーダー決済端末「TTG-MONSTAR」を導入したハンバーガーショップ「R・ベッカーズ 田町店」の無人レジ。

 

「システム化」「無人決済」と聞くと、いくら便利とはいえデジタル化に不慣れな年配者などアナログ世代からの抵抗感がありそうだ。ところがTOUCH TO GOが目指すのは、“フツウ”の買い物体験と同じであること。

 

「基本的には『自分の母親でも使えるものにしよう』をシステム側のモットーにしています。だからいつもの買い物と同じ。難しいことや特別なことはないので、ご年配の方にもお使いいただけています」

 

具体的な動作は、入店して商品を手にとって、明細を確認して、交通系ICなどでタッチするだけ。スマホで専用アプリをダウンロードして立ち上げたり、QRコードをかざしたりするなど、日常の買い物にない動きは一切ない。あくまでもレジが無人なだけだ。

そのため、高輪ゲートウェイ店も一般的な小売店と同じ売り上げと客単価だという。

 

「一般的な小売店と違いを出そうとしたり、特徴付けたりすると、ご年配の方はもとより、多くの人が日常的に使いづらくなってしまう。新しいシステムでも、慣れ親しんだ買い物体験を守ることが大切だと思っています」

無人店舗、イレギュラー発生時はどうする?

無人だとイレギュラーが発生した時はどう対応するのか。

 

「たとえば万引きなどの犯罪行為は、決済が済んでいない商品を持って店を出ようとしても、ゲートが開かないようになっています。そこを強行突破されたら、店内のカメラの映像を警察に提出するという、普通のコンビニと何ら変わりはありません」

 

また、TOUCH TO GOの決済正解率は90~95%を推移。完璧に間違いが起きないわけではないが、それは人も同じだ。ヒューマンエラーに比べてシステムのミス発生率の確率は遥かに低い。

 

「たとえば親子で来店し、それぞれ違う商品を手に取り、店内で親が子を抱っこしてしまうとシステムの判断がつきづらくなるというケースはありました。そのような場合はアラートが出るので、お客様ご自身で商品の情報を修正いただけるようになっています」

 

また、呼び出しボタンを押せばコールセンターにもつながり、バックヤードにはスタッフもいる。

TOUCH TO GOはこれからの小売業の世界をどう変える?

新型コロナウイルスの影響で浮き彫りになった、小売業の課題感はふたつある。ひとつは感染リスク対策、もうひとつはマーケットの変化だ。それに対して、TOUCH TO GOはどうソリューションを提供するのだろうか。

 

「小売業は従業員の感染リスクが高いですし、感染したら店内を消毒しなければならない。また、リモートワークの普及でドル箱だった都心部の店舗がガラ空きになり、今まで厳しかったロードサイド店や住宅街で収益を上げ始めています。TOUCH TO GOができることは、従業員とお客様の非対面、従業員不足になりがちな郊外への展開です。人がいなくても、既存の売り上げを維持できる仕組みづくりに役立ててもらえればと思います」

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取材:藤田佳奈美

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