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オンラインと今。

ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

家庭内で安心してランドセルを試して選ぶ。オンとオフをつなぐ「ランドセル試着アプリ」

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昨今のランドセルは色、デザイン、機能ともに多岐に渡っており、ランドセル売り場は、まさに百花繚乱の様相を呈している。親子は小学校入学の1年程前から、じっくりと時間をかけて数多の中からお気に入りのランドセルを選ぶ。購入は両家の祖父母と子どもの両親が一緒に行うなど、ランドセル選びそのものが、家族の一大イベントとなっていることも。

こうした背景を受け、株式会社セイバンでは親子が楽しみながら、満足のいく一本を選ぶための「ランドセル試着アプリ」を、2021年にリリースした。同社のランドセル事業部販売促進グループ長である、日高洋氏にランドセルの今と未来について話を聞いた。

日高 洋

HIROSHI HIDAKA

株式会社セイバン ランドセル事業部販売促進グループ長

メーカーで各種システムを開発するシステムエンジニアとして、ビジネスマンのキャリアをスタート。大手電気機器メーカーでファンマーケティングやデジタルマーケティングに従事。その後、ベンチャー企業などでの業務経験を経て、現在は、株式会社セイバンで販売宣伝部門を統括。KDDIとの「IoTみまもりサービス」の実証実験や、ランドセル試着アプリ「TRY SEIBAN」などのデジタルを活用した事業展開を手掛ける。

ビフォーコロナからのアイデアを形に

昨今、試着アプリ市場は、衣類や眼鏡、ヘアスタイルなどさまざまなジャンルに広がりつつある。ランドセル試着アプリ「TRY SEIBAN」もその一つだ。使い方はいたってシンプルで、子どもの写真を取り込み、身長などの基本情報を入れるだけで、さまざまな角度から子どもがランドセルを背負った姿を確認できる。その試着姿の画像は、遠方にいる祖父母などにも送ることも。

 

そんなランドセル選びには課題がある。主役である子ども自身は、鏡を見てもランドセルを背負った全身像を確認することは難しい。なにより未就学の子どもにとって、試着としていくつものランドセルを背負うことは労力を要す。また親としても、6年間背負い続ける高額なランドセル選びには力が入る。親子共に思い入れのあるランドセルだからこそ、選択には時間が必要だ。

 

日高氏は、こうしたランドセル選びにまつわる親子の負担を緩和し、親子で楽しくランドセルを選べる試着アプリを構想していた。このアプリの開発を一気に加速させたのは、新型コロナウイルスだった。毎年3月はランドセル選びの始まる時期だが、2020年4月は初の緊急事態宣言が発令され、店舗も閉店することに。結果的に販売本数が減ることはなかったが、店頭で家族が時間をかけてランドセルをじっくり選んで購入するという、従来型のランドセル選びのスタイルは変更を余儀なくされた。こうした変化がコロナ前に構想していたランドセル試着アプリ開発をさらに推し進め、2021年度のリリースに至った。

ユーザーインターフェースを重視したアプリに

開発では使いやすく、便利なアプリを目指した。それ故に、ユーザビリティにおいては、「言わずに感覚として理解してもらう部分にこだわった」と日高氏は話す。ユーザーファーストを考え、試着アプリという本来の意義を失わないように、IDやパスワードによる顧客情報の収集も行っていない。操作性を重視し、ユーザーがこれまで他のアプリで体得してきたインターフェースを分析し、自社のアプリにも反映させた。

 

アプリ化のメリットは様々だ。複数のランドセルをアプリで試して候補を絞り、実際に店頭で試着して購入したり、先に店頭でモデルを決めてから、最終的に自宅でアプリを用いてじっくりと色を決めるなど、ユーザーの好きなタイミングで商品に接することができる。また現在、セイバンの直営店では新型コロナウイルスに配慮し、店頭での試着は45分間の予約制をとっている。従来は店頭に2~3時間ほど滞在していたユーザーも、限られた時間の中で、スマートにランドセルを選択できるように変化しつつある。これには、試着アプリやインターネットなどを活用した、ユーザー側の事前リサーチ力の向上も影響している。こうしたユーザー側の変化は、これまでメーカーが率先して取り組んできたデジタルコミュニケーションを開花させる契機ともなっている。

 

また、試着画面には商品名とカラーも記載されているため、店頭に祖父母のみが来店してランドセルを購入する場合でも、希望する商品を間違うことなく指定できることもアプリ化の効果の一つだ。

 

 

 

レガシーにデジタルをかけ合わせる未来

日高氏の取組みは、アプリ開発だけに留まらない。2019年にはKDDI株式会社との共同で、IoT技術の活用による、子どもの見守りサービスである「IoTみまもりサービス」を開発し、実証実験を行っている。

 

これは、専用のIoT端末に内蔵されたセンサーによって、子どもの位置情報が保護者宛に定期的に報告されるというもの。端末はランドセルの前ポケットに入れて使用することができる。ランドセルメーカーと通信事業が協働するユニークな試みだ。現状、サービス化はなされていないが、今後もランドセルという子どもが日々を共にするツールを活用した、子どもの安心・安全を守る取組には期待が寄せられている。

また、日高氏は「ドラえもんのアニメのような世界がもうそこまで来ているのではないか」と語り、音声機能が搭載され掛け算の九九を諳んじるランドセルや健康管理を行うランドセルなど、可能性は無限だという。デジタルコミュニケーションを得意とする同氏にとっては、「ランドセルというレガシーにおいて、どうデジタルを使いこなすか」が一つの大きなテーマである。デジタルの可能性を検討していくと、ランドセルはスクールバックにしてスクールバックにあらず。アフターコロナにおいては、スマートウォッチにように、子どもの健やかな成長をサポートするデジタルツールとして更なる進化を遂げる可能性も秘めている。

教科書と想いを運ぶランドセル

もうひとつ、日高氏が仕掛けているデジタルコミュニケーションに、「天使のはねアンバサダー」がある。2021年度より始まった取組みで、2022年4月入学予定の子どもと保護者が対象。10組のアンバサダーがInstagramやTwitterを利用して、試着アプリやランドセル選びについて発信しており、ダイレクトメッセージで質問がくることもある。ランドセル選びにおける情報収集のフィールドは、インターネット全体に広がっていることをうかがい知ることができる。ユーザーと良い関係をつくるのも、デジタルコミュニケーションの特長のひとつだ。

 

ランドセルは時代に合わせた改善が図られている。教科書の大型化に伴い、ランドセルのサイズが大きくなった。タブレット学習のための、タブレット収納スペースが設けられたものもある。

 

しかし、ランドセルはただ学用品を運ぶためだけにある鞄(かばん)ではない。子どもの健やかな成長を願う家族の想いと、成長を続ける子ども自身の想いが重なり合い、6年間の軌跡を刻むものである。ランドセルは「おめでとう」「ありがとう」の言葉に支えられた特別な鞄だ。レガシーとデジタルの間で、ランドセルはこれからも子どもたちのために進化し続ける。

 

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取材:大原康子

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