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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

『“なくてはならぬ”をつくる』。空きスペースを駐車場化するakippaのビジネス哲学と駐車場の未来

駐車場のシェアリングサービス〈akippa〉は、今や関西を代表するスタートアップ企業だ。サービス開始から現在までに受けた資金調達は計約35億円。提携や投資を持ちかける企業は絶えない。高卒で元サッカー選手、24歳でakippaの前身の会社を立ち上げるなど、そのユニークな経歴が注目されることも多い、代表取締役社長CEOの金谷元気氏に話を伺った。

金谷元気

GENKI KANAYA

akippa株式会社 代表取締役社長CEO

1984年大阪府出身。高校卒業後、関西サッカーリーグでサッカー選手としてプレーし22歳で引退。24歳で株式会社ギャラクシーエージェンシー(現:akippa株式会社)を創業。2014年に事業の路線を変更し、駐車場をスマホで予約&決済できるサービス「akippa」開始。著書に『高卒IT』。

市場が拡大し続けるシンプルな仕組み

車に乗る人にとってはもうお馴染みともいえる〈akippa〉は、駐車場シェアリングサービス。スマホで駐車場を30日前から予約・決済できるサービスだ。都心部では場所によっては駐車料金がコインパーキングに比べて2割ほど安いのも特徴で、都市部や混雑が予想される時期やイベントにおいては、とくに重宝されている。かたや駐車場オーナーにとっても、空きスペースが収益を生み出す場所に生まれ変わるため、メリットは大きいと金谷氏は話す。

「従来のコインパーキングを始めるには数百万の機器投資が必要でした。それをスマホに置き換えたakippaでは、1円もかけずに空きスペースを駐車場にできる。これまでニーズはあるが元が取れない、という理由で駐車場化できなかった場所でも、無理なく始められるのです」

 

金谷氏曰く、akippaは「積み上がりモデル」。駐車場とユーザーを増やしていけば、その掛け合わせで売り上げは自然と増えるシンプルな仕組み。とはいえ、2020年の成長速度は著しく、10月には累計駐車場拠点数4万箇所を達成。その大きな理由について、金谷氏はこう述べる。

 

「損保ジャパンさんと共同開発した駐車場シェア保険の適応が、2020年6月から始まりました。駐車場内の事故に対して、自動車保険の適用外だとしても、同保険でカバーすることができます。(※)これによりオーナーさんの安心感が増え、個人宅の駐車場が右肩上がりに増えています」

 

シェアリングエコノミーについての調査データからトラブルや事故時の対応に不安を感じているオーナーが多いことが判明し、それが保険の開発に繋がった。そんな原因に対して確実に打ち手を打つ姿勢も、高成長の土台になっている。

 

経営理念「“なくてはならぬ”をつくる」ができるまで

その高成長ぶりからは意外だが、金谷氏のこれまでは紆余曲折の連続と言える。高校卒業後、社会人サッカーの関西リーグでプレーしていた選手時代に話は遡る。アルバイトで生計を立ててはいたが、バイト先での失敗が多くお金がなかった。

 

「雨が降っていたデートの帰り道、財布に200円しか入っていなくて。彼女の分と合わせて600円の電車賃が必要でした。そこで100円ショップで買った傘を“1本300円”と書いて売りました。自分でお金を生む面白さに気づいたのはその時です」

 

その後サッカーを引退し、24歳でakippa株式会社の前身となる株式会社ギャラクシーエージェンシーを設立。携帯電話の代理店や求人サイトの運営等を行うも、事業に対する理念を見つけられずにいた。数字だけを追った攻めた営業に対してクレームは絶えず、「自分たちがやっていることは世の中のためになってない」とつくづく感じていたという。また、資金繰りも大変で、借金をして社員の給料を払うこともあった。2013年のある日、金谷氏が帰宅すると電気が止まっていた。

 

「電気の有難みを痛感するとともに、電気のように必要不可欠なものを作りたいと思い、経営理念を『“なくてはならぬ”をつくる』にしました。“なくてはならぬ”とは、世の中の困りごと解決につながるサービスだと考え、早速、世の中の困りごとを全社員で壁に200個書き出してみたんです。その一つが、コインパーキングは現地に行って初めて満車と知るため困る、というものでした。一方自社で実地調査をしてみると、月極や個人宅などに遊休地が結構多いことがわかって。それらをスマホで予約・決済して使えるサービスとして、akippaが誕生しました」

失敗は当たり前。ビジネスはタイムアップのない試合

昔から、あれこれ考える前にまずは行動に移してきた金谷氏。身体を使って体得していく姿勢は、アスリートのそれそのもの。

 

「これまで大きな失敗の経験はありません。なぜなら日々失敗ありきなんです。10個中上手くいくのは1つぐらいだと思っていて。その1つだけ残して勝ちパターン化する、というのを地道に続けています」

 

そんな失敗を恐れない同氏の強さはどこにあるのだろう。

 

「サッカーに例えると、ビジネスではシュート数ではなくゴール数が全て。タイムアップがなく得点が決まるまでシュートを打てるので、こんな楽な競技はありませんね。それをシンプルに捉えているので、シュートを外したことで落ち込んだりはしません」

 

そんな金谷氏のストレートな人間性に魅了される人は多い。事業のシード期であった2012年に資金出資をいただいたジャフコなどは、良い例だ。

 

「当時は経営が苦しく、どの銀行もベンチャーキャピタルも相手にしてくれないなか、ジャフコさんだけは僕の中身を見てくださり『何かやりそうですね』と、6500万円の出資をいただけました。これで会社が延命できて、今の我々があります」

 

サービス開始後の2014年12月には、社内のモチベーションを上げるために出場したIVS Launch Pad(日本最高峰のベンチャープレゼンバトルとも言われる)で見事優勝。akippaの名が一気に世に知れ渡った。その際も、優勝の理由を「人より多く練習しただけ」と300回以上練習したことを明かした。そんな同氏が事業において大事にしているのは、人間力と実行力だ。

 

「もちろん思考力は必要ですが、それだけでは勝てません。人としてどうあるべきか、それをいかに実行するかという部分で、僕はやっぱり人間力と実行力では負けないと思います。まずは自分たちがホスピタリティをもって“GIVE”をしていく。これを続けていけば、逆に与えてもらうことも自ずとあるのかなと思います」

トレンドはデジタルからサステナブルへ

コロナ禍では、一時期外出やイベントでの需要は減ったものの、東京では通勤・通学目的での駐車場利用がコロナ感染拡大前の4倍になるなど、新しいakippaのニーズは増えた。結果、2020年10月以降は前年を上回る売り上げを達成。また、インバウンドの旅行者の減少で大打撃を受けたホテルが駐車場を貸し出すことで新たな収益源としてakippaを導入する事例もある。こんな“困りごと”の多い時代において、akippaの存在意義がますます見直されている。

 

同社が掲げる今後の指標は、2030年までに「全世界で駐車場シェアを拡大」というもの。その上で、2040年までに「世界ナンバーワンのモビリティプラットフォーム」を目指す。

 

「今のトレンドはデジタルですが、次はサステナブル。ガソリン車が電気自動車に移行していく今後20年で、駐車場はその役割を変えていくでしょう。akippaの駐車場にも充電スポットを置いて、充電シェアと駐車場シェアの機能を掛け合わせていきます。その後の自動運転の時代には、駐車場は乗合場所にもなります。ユーザーのマッチングもakippaで行えば、自ずと自動運転時代のモビリティプラットフォームの中心になれると思います」

 

当取材の直前(2020年12月)には、日本政府が「2030年前半のガソリン車の販売禁止」を打ち出した。同社が見据える未来とその歩幅はあっている。今後、同社はいかに時代に貢献できるか?その社会的価値は大きい。

 

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