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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

導入戸数2%に止まる日本のスマートホーム。今の課題と10年後の標準になる可能性は?

インターネットやIoTの広がりとともに世に浸透してきた“スマート”を冠するモノ。なかでも家そのものをスマート化したスマートホームは、全ての人にとって身近な未来と言える。そんな昨今の日本のスマートホームの導入に一役かっているアプリがある。「SpaceCore(スペース・コア)」というスマートホームサービスだ。提供するのは不動産DXを推し進める、不動産テックコンサルタントのアクセルラボ。同社が掲げるのは“本当に使える”スマートホームの提供というが、一体どんな部分が“本当に使える”のか? 改めてスマートホームの利点をおさらいしながら、スマートホームのあるべき姿について、アクセルラボの代表取締役の小暮学氏に話を伺った。

スマートホームサービスの鍵は“汎用性”にあり

まずはスマートホームについておさらいしてみたい。スマートホームとは、家具や家電などをインターネットに接続することで、居住者の利便性を向上するもの。入居者は鍵や照明、エアコン、お風呂の給湯器などデバイスと呼ばれるものをスマートフォン上で遠隔で操作できる。オフィスでは実験的に様々なデバイスを導入し、かつ自らスマートホームに暮らす小暮氏にとって、スマートホームは「ないと困る存在」だ。

 

「家にいる時間って、実はとても長いです。リモートワークの方はもちろん、通勤する方でも帰宅後から朝の出発まで最低10〜12時間は居る。スマートホームはそうした在宅時間を快適にするために、家そのものにソフトウェアを入れていく、という考え方です」

アクセルラボが、スマートホームのプラットフォームの開発を始めたのは8年ほど前。不動産デベロッパーをバックボーンにもつ同社では、当時、自社物件を差別化する目的でスマートホームを自社物件に導入。それが思わぬ反響を呼び、他社物件にも提供できるスマートホームサービス「SpaceCore」の開発へ繋がっていった。SpaceCoreの特徴は、様々な物件、デバイスに対応する汎用性の高さにあると小暮氏は話す。

 

「あらゆる機器につなぎこめるように、オープンなシステムにしています。現在つなげるものは鍵だけでも3、4社のデバイスの選択肢があり、全て合わせると20以上のデバイスと連携しています」

 

SpaceCoreを操作するアプリを開くと、ユーザーは家の中の現状を瞬時に知ることができる。例えば、現在の部屋の温度・湿度・照度や、玄関の鍵の状態(LOCKED/UNLOCKED)、照明、テレビ、床暖房、エアコンの状態(全てON/OFF)など、連携している全てのデバイスの状態が一画面に表示される。ユーザーはこのページから全デバイスの管理ができるが、こうした一括管理こそが、スマートホームの“本当の利便性”だと小暮氏は言う。

 

「そもそも家のUI (ユーザーインターフェース)、UX(ユーザーエクスペリエンス)は独特で、かつ様々なデバイスをまたいでいます。家の管理は、例えば就寝時のように、鍵を閉めて、お風呂の給湯器をOFFにして、カーテンを閉めて、電気を消す、などと一連のタスクが発生することが多く、一つだけ動いてもUXはさほど良くなりません。様々なデバイスを一つのプラットフォームにつなぎこむことによって、本当に使えるサービスになります」

従来のスマートホームでは、鍵は鍵のアプリ、お風呂はお風呂のアプリ、と個々に管理するのが前提だったが、確かにそれでは個々に操作する時間と労力がかかるし、どれかを忘れてしまう可能性もある。さらに加えて、一つのプラットフォームで管理することで、できることの幅はぐんと広がる。例えば、玄関のセンサーとカメラと鍵を組み合わせることで、「子供が帰宅した瞬間に、外出中の母親に通知が入るようにする」といったことが可能になるのだ。

満足度はつなぎこむデバイス数に比例

居住者がスマートホームに期待するのは、何より住み心地の良さだろう。例えばそれは、住んでいて快適、安心できる、健康になった、家族の絆が深まった、子育てが楽になった、ペットを遠隔から世話することができる…といった生活が変化した体験として現れる。ただし、単にスマートホームを導入するだけでそうした利便性が得られるわけではないのだという。

「世界的にもスマートホーム化が進むアメリカでは、プラットフォームにつなぎこむデバイスが多ければ多いほどお客さんの満足度が上がる、ということが調査で明らかになっています。また、我々が日本で実施したアンケート調査でも同じ結果が出ています」

 

アメリカでは現在、スマートホームのプラットフォーマー大手4社が、スマートホームの導入を牽引している。プラットフォームに多数の家電やデバイスをつなぎこみ、ルールエンジンやAIに学習させながら、家をオートメーション化していく。使えば使うほど、精度の高い自動化が実現できるようになるのだ。

デバイス数を増やし一元管理するのが重要。と同時に、日本でなかなかスマートホーム化が進んでこなかった理由もここにある。日本のスマートホームの普及率は全体の2%に満たない。その理由のなかでも大きいのは、従来のスマートホームやデバイスの大半が、メーカーの枠を越えた相関性がなかったことにある。「同じメーカーのものしか繋げない」というクローズドな世界観では、やはりユーザーの満足度が上がらないのは、先述の調査結果からも明白だ。しかし、そういった環境も最近はよくなりつつある。他社のデバイスとの連携が可能なデバイスもかなり増えたと小暮氏は言う。

 

「大前提として、居住者としては、家電は個々の希望に合ったものを、自由に選べたほうが良いですよね。やはりアメリカのように、家電メーカーではなく、プラットフォーマーがスマートホームを牽引する立ち位置になると、そうした世界観がどんどん醸成されていくのではと思います」

 

インフラが整っていないという環境面の問題についても、「ここ3年でやっと整ってきた」というのが小暮氏の感触だ。どの家庭にもWi-Fiがひかれ、デバイスを使う上で不可欠な通信プロトコルもチップの精度が上がり、離れた場所でも電波が届きやすく、またバッテリーの消費も抑えられるようになった。

高いMAUを周辺サービスに活用

SpaceCoreが面白いのは、スマートホーム以外の周辺サービスが充実していることだ。例えば、家事代行やクリーニングや収納などの暮らしに役立つサービスと連携しており、必要な時にすぐにアプリから申し込める。また、完全無人で宅配物の受け取りができるスマート宅配ボックスとの連携、さらには賃貸マンションに住んでいる場合は、マンションの管理組合とのやりとりを行うことも可能だ。エレベーター修理のお知らせや一斉清掃のお知らせなどの、これまで掲示板で告知されていた内容にアプリからアクセスできる。こうした家と外をシームレスにつなぐサービスが機能するのも、遠隔操作が必要なスマートホームのシステム基板があってこそ。加えて、「SpaceCoreの高いMAU(※)がポイント」だと小暮氏は続ける。※MAUとはMonthly Active Usersの略で、Webサイトやアプリ、各種オンラインサービスの月間ユーザー数のこと。

 

「SpaceCoreのMAUは67%と、アプリのなかでは非常に高い数値。これはTwitterを超えるほどのアクティブ・ユーザー数です。生活に密着しているアプリと言えます。アプリのプッシュ通知の開封率もとても高いので、様々なサービスや管理組合さんとのやりとりと親和性が高く、事業者さん入居者さんの双方に喜ばれています」

5〜10年でスマートホームは標準装備に

持ち家では、コロナ禍で在宅時間が増えたことで問い合わせが倍増したという。また賃貸でも、特に地方の空室が多い物件では、先行投資として検討する物件オーナーも増えている。スマートホーム化のニーズは高く、それに伴って家賃も上げられるからだ。近い将来、日本のスマートホームはどうなっていくのか?小暮氏に予想してもらった。

 

「今後5〜10年をかけて、日本でもスマートホームは間違いなく一般化していくでしょう。アメリカでは2,000万世帯にスマートホームが普及していますが、これは関東一都三県と同じくらいの世帯数にあたります。世界中のあらゆるシンクタンクの調査でも我々の調査でも、もう2035年には、マーケットは世界中に広まっていることが予想されています。アメリカ同様日本でも、スマートホームのプラットフォームはおそらく数社に集約されていくと思います。私たちはその内のひとつになり、スマートホーム化を推し進めていきたいです」

スマートホームの未来を考える上では、「ウォシュレット」の例がわかりやすい、と小暮氏は続ける。

 

「ウォシュレットは市場を獲得するのにかなり苦戦して、15年ほどかかりました。最初10年間は伸び悩みましたが、10年経ち、認知度が徐々に高まり、トイレにコンセントを設置するのが標準装備になりました。そこで一気に普及したのです。日本でスマートホーム事業が始まり、現在10年経ったところです。現在の普及率は2%とまだ低いですが、ここ数年で環境が整ってきていますので、今後5年くらいかけてぐっと伸びて行くと思います。まずは、スマートホームが新築物件に標準装備として入っているような世界になるでしょうね」

 

スマートホームの認知が高まれば、新築に加えて、賃貸物件にも普及していく。そうなれば、前者はもちろん、後者の居住者も「家を購入するときはスマートホームが良い」となるだろう。一度経験してしまったら、“ないと困る”のがスマートホームだからだ。そうした未来の住環境が実現する時、スマートホームそのものだけでなく、プラットフォームも欠かせないものになっているだろう。

小暮 学

Manabu Kogure

アクセルラボ 代表取締役

1976年生まれ。不動産投資会社営業職を経て、2004年、27歳で株式会社インヴァランスを設立。総合デベロッパーとして東京都内の投資用マンションにおけるリーディングカンパニーへと成長させる。2017年、アクセルラボ設立。空間とテクノロジーの融合を掲げ、スマートホームサービスなど様々な事業を展開。AI・IoT分野の海外スタートアップへの投資も積極的に行っている。

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