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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「AI普及後も残る仕事をしたい」IT企業でキャリアを積んだ76世代の選択

「その企画は新しいか、その企画は自分にとって楽しいか、その企画は誰を幸せにするのか」――社会人向けオンライン学習サービス「Schoo」のプロダクト企画部門責任者を務める松本尚哉氏のプロフィールには、そんな文面が綴られている。ミクシィ、はてな、クックパッドといった先鋭のIT企業で数々の新サービスを開発してきた松本氏はいま、オンラインを利用した学びをどう見ているのか。そしてオンライン学習サービス「Schoo」の未来は。

76世代のキャリア変遷、その根幹にあるもの

IT業界に通じている人の多くが、「76世代」というワードに触れた経験があるはずだ。IT業界では、1975~1978年生まれの世代に起業家や多くの優秀なエンジニアが登場、この世代を称して「76世代」と呼んでいる。2ちゃんねる開設者の西村博之氏、ミクシィ創業者の笠原健治氏などがその代表格だ。

 

現在Schooのプロダクト企画部門責任者を務める松本氏もまさに76世代。同氏はミクシィ、はてな、クックパッドなど、時代を切り拓いてきた企業で新サービスを提供してきた。

 

ただキャリアのスタートはユニークだ。大学は東京芸術大学に進学、美術史を学んだという。そして進路に選んだのは、映画業界。大学時代にワークショップなどで出会ったWEBの制作会社で、映画サイト・メルマガのサービス開発に携わった。ただしこの事業はうまくいかず、組織は解体してしまう。

 

「時期的に2001年頃です。1999年にiモードが始まって普及しだした頃で、徐々に映画よりもWEBの可能性に引き込まれていきました。映画に限らず、さまざまなコンテンツがオンラインを通して大きく世に広がっていく時代でした」

 

その後、株式会社ケイブでモバイル向け情報サイトの企画・運営、モバイルゲームの企画・開発ディレクションを担当した。

 

「その時期、日本でもさまざまなSNSが立ち上がって、盛り上がっていた。各携帯キャリアからもコミュニティー要素を重視する傾向がすごく増えていきました」

 

コミュニティーを作るならいっそその中心へ……と、松本氏は2008年に株式会社ミクシィに入社。日本における初の大規模SNSの開発に携わり、SNSのコア機能の開発、プラットフォーム開発、開発マネジメントを手がけた。このキャリアは「自身の節目になった」と語る。

 

「コミュニティー、コンテンツ、そしてプロダクト。この3つが自分のキャリアの根幹にあります。その3つの組み合わせで、その時々自分がやりたいこと、やるべきことを選んできたという感じです」

 

その後、株式会社はてなでは、はてなブログとはてなブログMediaの事業責任者を務める。さらにその後のクックパッドでは、「クックパッドマート」のマーケティング、サービスグロースを担当した。

 

「それまではインターネット上の、いわばバーチャルの世界での活動が中心でしたが、『クックパッドマート』は違いました。生活そのものに深くかかわるようなサービスで、自社で流通網を創り、生鮮食品を安価で届けられるよう様々な改善を加えていきました。商品を保管する冷蔵庫をどうするかなど、フィジカルな課題もクリアしていく必要もありました」

AIが普及した後も残る仕事をしたかった

こうした松本氏のキャリアは、今現在のスクーでの業務に反映されている。「Schoo」は「一生学べる学校」をテーマに、デジタルスキル、ビジネス力、デザイン、テクノロジー、リベラルアーツなど約20カテゴリ、8,000本という多岐の授業を動画配信しているサービスだ。コミュニティーとコンテンツとプロダクトがバランスよく成立、キャリアを包括できる良きチャレンジができると感じたのが、スクーに参画した理由だと松本氏は語る。

「AIが普及していくにつれ、仕事が減っていくという予測があります。そんな中、自分たちの生活に何が残るかを考えたとき、その中で残るものを仕事にしたいと思いました。学びというのは人生を変え、そして社会を変える原動力です。社会が大きく変化していく今だからこそ、学びはこれからも生活の中で価値を増していくと思います」

 

松本氏はまた、学びのおもしろさは一過性のものではないとも語る。「リスキリング」という言葉に代表されるように、特にコロナ禍では学びの重要性は強調され、後押しされた。ただしコロナ禍を経てもその傾向は変わらず、むしろ学びの価値は今後さらに増していくと考えている。

 

「AIが台頭し、DXがうたわれる今、時代が大きく変わろうとしています。働き方や仕事の仕方はもちろんのこと、仕事への向き合い方や日々の生活にいたるまで、私たちの意識も大きく変えていかなければならないと思います」

コロナ禍以降、一層の高まりを見せる「タイパ志向」

スクーは2011年創業と、eラーニング界では先駆けとして知られる存在だ。現在の会員登録者数は100万人を突破し、講師との双方向性を体験できる生放送授業と、いつでもどこでも学べる録画授業の形式で学びを深めることができ、幅広いジャンルの学びを提供している。AIやDXといったキーワードが加速度的に世に広まっているなか、タイムリーにキャッチアップした動画授業が多いのも特徴だ。

 

例えば「その作業はAIにやらせてみよう」というコースの授業には、「ChatGPTにデータ分析を助けてもらおう」「AIに長時間セミナー動画を要約してもらおう」などのコンテンツが並ぶ。受講者は法人、個人のそれぞれが存在するが、その属性に大きな差はないと松本氏は指摘する。

 

「個人でも法人でも、仕事の中でいかせる力、スキルアップを考えている方にご利用いただいています。時代とともに、受講者の方々のステータスも上がっていくので、そうした状況に合わせたコンテンツ制作に取り組んでいます」

 

スピード感あるコンテンツ制作の裏側には、松本氏を筆頭にスクーに携わる人々自身の学びもある。各コンテンツの講師が授業をシリーズ化することもあれば、講師が講師を呼んで新たなコンテンツが制作される機会も少なくない。さらに講師の先生が関わったものなど、社内で本がまわし読みされることも少なくないという。

 

ちなみに2023年の人気授業のTOP10において、個人受講/法人の研修受講の人気授業第1位はそれぞれ「仕事を『短くやる』5つの習慣」と「ビッグデータ 基礎理解と企業の活用事例」。個人受講ではAIで業務を効率化する方法をハンズオン形式で学ぶ入門授業が上位に多くランクインしている。

 

AIを使いこなすためのプロンプトに関連する授業や、ITパスポートの取得に向けた学習など、AIに正しい指示を行い、意思決定をすることの重要性を意識した授業のニーズも高まっている。人気第1位が「時短術」の授業であることも合わせて、コロナ禍以降、「タイパ志向」は一層の高まりを見せている。

ゼミ形式も。広がるeラーニングの可能性

学びを身近にしたいと考えるSchooでは、生放送の授業は無料会員登録だけで参加できるシステムを採用している。ライブ授業ではチャットから講師に直接質問ができ、他ユーザーの質問やコメントを見ることで学びの質も高まる。

 

こうしたシステムが功を奏し、法人向けオンライン研修サービス「Schoo for Business」の累計導入企業社数は3,500社を突破、会員登録者数も100万人を超えた。(2024年12月時点)

「生放送や録画だけでなく、今後はゼミ形式の授業も採り入れていきたいと思っています。インタラクションの交流の中で授業を受けることで、他の生徒から刺激を受けながら、より密度の高い学びが期待できると思っています」

 

その第一弾が2024年1月に開講した「キャリア形成ゼミ」。キャリアに関する専門知識を持つSchoo講師による体系的な授業(全6回)と、国家資格「キャリアコンサルタント」を持つ専任カウンセラーらによるマンツーマンカウンセリング(最大5回)を組み合わせたもので、受講生の「次の10年間のキャリアプラン」を明確にしていくものだ。

「オンラインでの学びの可能性はまだまだあると思っています。学ぶ意欲のある方はもちろん、その意識を持たない方にどう入口を作っていくかという課題もあるし、学び続ける仕組みを作ることも重要です。スクーではやるべきこと、やれることは数多くあると感じています」

松本尚哉

Naoya Matsumoto

株式会社Schoo プロダクト企画部門責任者

モバイルコンテンツ/モバイルゲームの企画開発、SNS「mixi」のサービス企画/プラットフォーム開発を経て2013年はてな入社。2014年より「はてなブログ」「はてなブログMedia」事業責任者。2019年「クックパッドマート」マーケティング責任者、2022年「フィナンシェ」プロダクトマネジメント責任者を経て、2023年Schoo入社。現在はプロダクト企画部門責任者を務める。

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