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フォロー数だけしか見ていない、経営者と現場のズレ…中小企業のSNS運用がうまくいかない特徴

SNSマーケティングの必要性が声高に叫ばれて久しい。一方でそれを万全に活用できている企業は決して多くない。ことリソースに限りがある中小企業ではなおさらだ。そんな中小企業向けSNSマーケティングの極意を、書籍「99%の経営者は知らない 中小企業のための正しいSNSマーケティング」を上梓した富田竜介氏に伺った。

いまや大多数の企業がSNSを活用したマーケティングを行う時代になっている。企業向けにSNSアカウントの運用代行を行うTaTap代表の富田竜介氏が上梓した書籍「99%の経営者は知らない 中小企業のための正しいSNSマーケティング」には、企業の約94%が、直近1年でSNSマーケティングに関する予算を削減しなかったと記してある。

 

一方で現場を知る富田氏は言う。「支援させていただいている中小企業に関して、SNSを使ったマーケティングがうまく活用できていないポイントはなんだろうと考えたとき、業種は違っても、皆同じような課題を持っています。それを解決するヒントになればと今回の書籍を出版するに至りました」

 

だからこそ執筆に当たっては、実はそこまで大きな苦労はなかったという。これまで現場で感じてきた課題とその解決策をまとめるという作業で、すでに知見が蓄積されているからこそ、執筆作業は比較的スムーズだったと語る。

 

一方でこの書籍ならではの特徴も。「他のSNSマーケティングの本は事例がメインになることが多いのですが、本作には事例やノウハウは入れていません。SNSはアルゴリズムの変化などの影響を受けるため変化が早く、すぐに情報が古くなることがあります。事例を盛り込むと、1年程度で古い内容になってしまう可能性があるのです。本書はそうした事例について触れるのではなく、その前の企業として組織戦略を中心に書いています。だから長いスパンで活用できる書籍になっていると思います」(富田竜介氏、以下同)。

中小企業のSNSマーケティングにおける課題とは

それでは実際、中小企業がSNSマーケティングをうまく活用できていない課題には、どのようなものがあるのだろうか。

 

「最も多いケースとしては、やはりフォロワー数など数字を追い求めてしまうことです。まず数に目がいきがちですが、その数が本当に売り上げに結びつくのか、効果があるのかという検証は必要です。フォロワー数が多いのに、売り上げが伸び悩むというケースは少なくありません」

 

さらには多くの企業が目指す「バズり」に関しても富田氏は警笛を鳴らす。バズらせることを狙う企業は少なくないが、SNSでバズらせることはそう簡単なことではなく、さらにバズることによって炎上するリスクも伴う。

 

「狙ってバズらせることは非常に難しく、そこを狙っていくよりも、むしろ地道に積み重ねていくことが重要です。SNS運用には中長期的な施策が必要だと考えています」

 

そもそもSNSはユーザーとの関係構築の場であり、短期間でファンを集める場所ではないと富田氏は指摘する。さらに言えばSNSアカウントを開設してからユーザーに認知してもらうためには、それなりの時間が必要とも。少なくとも月単位ではなく年単位で考えるべきことであり、まずはコツコツと投稿を重ねて存在を知ってもらうことが必須だという。

 

一方で本書では、SNSマーケティングを中長期的な施策として実行することはメリットもあると記されている。時間をかけてアカウントを育ててファンを得ることで、ファンが次なるファンを呼び込んでくれるのだ。

 

「コロナ禍を経て、SNS上で参考にするアカウントの傾向が変わってきています。以前はインフルエンサーや有名な方の投稿に目が留まっていた方も、今はそれらを宣伝だと区別するようになっている。それよりも直近はもっと身近な人、家族や友人など顔の見える範囲の人の意見を参考にしている方が増えています」

 

SNSというツールは日々進化しつつも、一方で顔が見える範囲の口コミの強さは健在だという。

SNS運用において最も大切なものとは

一方で気になるのは、こうしたSNSマーケティングの場において、成功を収めている企業のこと。SNSに強い人材をそろえ、うまく戦略を練り、施策を考え……というところは重要だが、最も重要なところは別にあると富田氏は言う。

 

「大切なのはSNS運用の担当者が自社の商品に愛を持っているかということ。例えば商品についたコメントに対し、ひとつひとつ丁寧に対応するなど、担当者はSNSを通じたコミュニケーションがうまくできることが重要です。それにはやはり、自社の商品に対して熱量を持っている担当者の存在が欠かせません」

 

SNS上でも大切なのは、やはりコミュニケーション力。その基礎となるのは愛情や熱量といったものだと富田氏は指摘する。いわゆる「中の人」の想いがあってこそのSNSマーケティングなのだ。

 

「さらに組織レベルで言うと、SNSマーケティングがうまくいっている企業は、SNSの可能性を信じ切れていると思います。SNSを始めたはいいけれど、効果が見えづらいことはよくあります。定量的なデータをすぐに求めるのではなく、SNSの可能性を信じてコツコツと続けられる企業が成果を出しています」

 

こうした成功企業の多くは、顧客の視点を重視しているのも特徴だという。どのような投稿によって購入に至ったのか、また自身のSNSで拡散しようと思ったかなどを、購入者に対するアンケートやオフラインでのヒアリングの場を設け、丁寧に聞き出しているケースが少なくない。

 

富田氏はこうした一連の流れを「SNS売れする4つのフェーズ」として提案している。戦略的に、そして丁寧にフェーズごとに進めることにより、「SNS売れ」を実現できるとしている。

経営層の采配とリソースを確保する重要性

こうしたSNS活用の背景に関して、リソースが限られた中小企業では、経営層の采配も重要なポイントだと富田氏は語る。

 

「早くからSNSに触れてきた担当者世代に対し、SNSに無知な経営者が早急に成果を求めるなど、経営層と現場のずれが生じているケースは多々あります」

 

例えば経営者はフォロワー数を増やしたいと考え、プレゼントキャンペーンの実施を促す。ただし現場の担当者は、自分たちの商品やサービスはそうした一過性のキャンペーンには向かず、単にプレゼント目当てのフォロワーが増えるだけで、売上にはつながらないと考えているケースなどだ。

 

「経営層がSNSを勉強し、その重要性を認識してSNS運用に臨むか、もしくは現場の担当者を信頼して任せきるか。経営層の意思決定が大きく影響する中小企業の場合、そのどちらかがうまくいくケースに思えます」

 

さらにはリソースを確保することも重要だと富田氏は指摘する。人材が限られている中小企業だと、広報担当者がSNS運用も兼務していることが多いが、基本的に専任担当者を置くことが望ましいという。

 

ただしリソースの不足する中小企業だけにそれが難しく、支援会社に依頼をするケースも少なくない。その場合も支援会社に丸投げするのではなく、SNS運用の目的やビジョンを共有し、リードする姿勢が大切だという。

SNSマーケティング、今後の可能性は

SNSの発達に伴い、時にマーケティングの将来性や伸びしろについて疑問を投げかける人もいる。しかし富田氏自身、SNSはまだ成長の過程にあり、将来性も高く、さらに今からでも取り組む価値が十分にあると考えている。SNS市場は2027年には今の1.7倍になるとしている調査報告もある(サイバー・バス/2022年デジタルインファクトによるソーシャルメディアマーケティング市場動向調査)。

 

さらには例えばYouTubeでもショート動画に注目が集まるといった新たな展開も生まれている。

 

「現状、優良なコンテンツを生み出せるクリエイターの奪い合いになっています。すでに飽和状態と言われているプラットフォームでも、まだまだ違った活用法はある。SNSマーケティングを始めるのに今からでは遅すぎるということはなく、これからも可能性を秘めているのです」

富田竜介

Ryusuke Tomita

株式会社TaTap 代表取締役

広告代理店と事業主4社経験後、SNSを活用したマーケティング支援企業を創業。企業向けSNSアカウント運用代行を行う。大手企業にて社内研修セミナーやSNS内製化などを手がける。幻冬舎から「99%の経営者は知らない 中小企業のための正しいSNSマーケティング」を出版。

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