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「肉体と頭脳を連携させる仕事が生き残る」ソフトウェアテスト自動化ツール開発者が見据える2030年

いまやソフトウェアやアプリケーションは次々と新しいものが登場し、既存のものも使いやすいように適宜アップデートされていく。ユーザーである私たちは何気なくそれを操作しているが、ちょっとした瞬間に「あれ、先に進まない」などとつまずくことがないのは、何度もテストが繰り返された上でリリースされているからこそ。今回ピックアップするのは、そんなテスト作業を格段に効率化させるテスト自動化ツールについて。

 

株式会社MagicPodによるテスト自動化ツール「MagicPod(マジックポッド)」は、AI技術を導入することで、より多様で複雑になりつつあるソフトウェアの動作確認を自動化できるというもの。同社CEO・伊藤 望氏に、サービスが生み出す価値やこれからの時代のAIと人間の共創についてなどの話を聞いた。

無制限でテストできるからこそ、より質の高い製品へ

ソフトウェアの品質保持のためには、リリース前の動作確認のテスト作業が欠かせない。さらに不具合の発見が開発フェーズの後半になるほど修正コストが上がるため、いかに早く効率良くエラーを抽出して解決するかが、ソフトウェアの質を上げるカギとなる。

 

MagicPodは面倒なインストール作業なしで、クラウドの端末やブラウザを使ってすぐにテスト作成を始められるツール。テスト対象のアプリケーションから要素を選ぶと自動テストを作成でき、UIに変更があればAIが自動でスクリプトを修正。テスト作成からメンテナンスまでを、シンプルで直感的なUIに沿ってノーコードで生成できる。「プログラミングができなくても使いやすい」と、ソフトウェア業界では話題のサービスだ。

「動作確認は、細かい作業の連続です。ボタンを押してエラーが出ないか、画面に出ている金額が合っているか……。操作しながら目視して、を繰り返しています。このテストの作業が、実は開発工程の3割を占めると言われているんですね。エンジニアによる手作業でのチェックは時間がかかるし、非効率なことも多い。こういった部分を自動化するのが、私たちの技術です」(伊藤氏、以下同)


MagicPodでは、操作画面をクリックしていくことで、簡単にテストを作成することができ、何度でもテストを実行することができる。汎用性が高いSaaSだからこそ、業種を問わずさまざまな企業で導入されている。

 

「ローンチして6年になりますが、最初は機能不足なども多くユーザーの要望をなかなか満たせませんでした。試行錯誤を繰り返し、最近ではスタートアップを中心に多くの企業に導入いただけるようになりました」

 

導入した会社の声には、「1〜2人日費やしていたものが自動化され、手動で行う作業も含めて3時間程度になった(株式会社ノハナ)」「リグレッションテストを16時間→2時間に短縮、テストの98%を自動化したチームも(LINE Fukuoka株式会社)」「以前は8〜16時間かかっていた作業が半分に削減できた(株式会社ミクシィ)」などがあり、その数字を追うだけでも、業務が格段に効率化されていることがうかがえる。

 

現在では数多くの自動テストツールがリリースされる中、MagicPodの最大の特徴は、モバイルアプリとウェブアプリの両方に対応していること。ノーコードで操作ができるため初心者でも使いやすく、上級者向けの機能も併載していたりと柔軟にいろんなことができる設計になっている。

さらにテストを実行することで課金されるのではなく、いわゆる「回し放題」。一定予算の中で、毎日のようにテストが実行できるのも魅力だ。

 

 「せっかく自動化しても、テストのたびに課金が必要だとテスト回数を節約することに繋がる。『いかにテストを多くできるか』というユーザーのニーズをフォローしているのも支持されている理由かなと思います」

 

とはいえ当然、AIによる自動テストだけでは全ての不具合を見つけられない。自動化テストにより生まれた時間を、エンジニアの手と目でいろんなパターンを試し、実ユーザーの使用フローに沿った使い勝手のよさを追求する時間に変換できる。これが、より質の高いソフトウェアの実装へと繋がる。AIと人間がそれぞれの頭脳を棲み分けできている、最たる例といえよう。

AIの進化の果てに頭脳と肉体を連携した仕事が残る?

さらなるAIの進化に伴い、人間が担う領域も変化していくだろう。2030年の時点は、どうなっているのか。伊藤氏の予測を伺った。

 

「ChatGPTの登場もそうですが、少し前までは考えられなかったようなことをAIができるようになりましたね。2030年においては、AIの進化がかなり進むのではと思います。とはいえChatGPTが書いた記事は、画一的でおもしろみに欠けることもあったり。現状レベルのChatGPTだけでは、それほど物事は効率化されないのではという気もします」

 

そういった中で私たちが新しく学ぶべきは、「AIを理解し」「AIに指示できる」スキル。ただそれは「人間がAIに指示する」という構図があってこそ成り立つが、AIが人間と同じぐらい賢くなり、はたまた立場が逆転すれば必要なくなる。まるで映画のようなそんな未来はやってくるのだろうか。

 

「結局人間の脳も物質にすぎないと考えると、AIとの違いは有機物か無機物かくらいなのかもしれません。脳に意識が宿っているような気がしていますが、単なるいち物理現象だと考えれば、何らかの形で脳を模倣できる日も近いのかも。現に脳の仕組みもどんどん解明されてきていますし」

 

人間とAIが同等になれば、AIが全部プログラムをかけるようになる。それが不具合を作らないものだとしたら、少なくとも今のようなテストツールの存在意義は変わる。ソフトウェアという概念がなくなることもあり得る。となると、私たち人間はもっとITリテラシーを高めるべきなのか?

 

「ITでできることが全部AIに置き換われば、逆にIT知識は必要なくなりますよね。そうなると、AIが担えない『肉体と頭脳を連携させる』仕事が生き残るのでしょうし。だからといって今からITには手を出さないでいいのかというと、それは違う。やはり当面はいろんなITスキルを身につけることが重要で、ITやAIのコンセプトを理解していることの意味は大きいかと思います」

違う領域同士がより円滑に仕事ができるツールの提供を

AIの進化に沿って、そのときの市場に価値を与える製品をリアルタイムで提供しつづけたいという伊藤氏。これからのサービスへの展望について聞いてみた。

 

「現在のMagicPodは、プログラムを書かずノーコードでテストを自動化できるのですが、プログラムを書いて自動化したいというエンジニアの方も一定数います。ノーコードだと制限されることも多く、コードで指示すると柔軟にできることも多いためです。だからこそ今後目指したいのは、コードもノーコードもどちらにも対応できるツール。コードで作ったものをノーコードで見直すこともできるし、ノーコードで作ったものをコードで修正もできる。そういうものを開発できたら」

 

プログラマーとノンプログラマーが共同作業できるものを一つのツールでまかなえるようになったら、チーム内がより円滑にまわっていきそうだ。より、クリエイティブなことに頭を切り替えられる。

 

時代の先端を行くAI技術を最大限に駆使するサービスにより、異なる性格のものが共創する。そうして、より働きやすい世界へ。そんな視点で新しく創出されるサービスに、期待が高まるばかりだ。

伊藤 望

Nozomi Ito

株式会社MagicPod CEO

AIテスト自動化プラットフォーム「MagicPod」のCEO。「日本Seleniumユーザーコミュニティ」設立、「Selenium実践入門」執筆、国際カンファレンス講演、「SeleniumConf」日本初開催など、長年テスト自動化の普及に努めてきた、日本におけるテスト自動化の第一人者。趣味は自動化・仕組化。

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