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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

変わるファッションモデル・タレント! 「AIモデル」が個性を発揮する時代で起こること

見た目は、ほぼ人間。そんなAIが登場し、ファッションモデルとしての職務を果たす。さらにこの秋、伊藤園が「お~いお茶 カテキン緑茶」のリニューアル発売に際し、テレビCMにAIのモデルを起用。これは、日本初の試みとして話題になった。

 

私たちはAIがまとうファッションや紹介する商品に魅了され、購買行動をする。そんな昔に描いていたような未来像が、すでにビジネスにおいて実装されはじめている。

 

今回話をお伺いしたのは、AIで生成したAIモデルやAIタレントを活用して、ビジネスシーンにおける新しい価値創出に取り組むAI model株式会社の技術最高責任者・中山佑樹氏。AIモデルの可能性や進化はどれほどのものなのか、そして、リアルなモデルやタレントとの共存はどのような形で繰り広げられていくのか。深堀りして話を伺った。

購買につながる機会損失をAIモデルが救う

AIで生成したモデルやタレントにより、経済活動を成り立たせるサービスを提供する「AI model(エーアイモデル)」。完全に同じ形態の企業はまだなく、業界においてはパイオニア的な存在である。

「いわゆる『バーチャルヒューマン』をAIで作る技術を持つ企業や、AI以外で『バーチャルヒューマン』を作り提供する企業など、いち部分では近しい領域を手がける会社はあります。が、AIで生成したファッションモデルでクリエイティブまで含んだ提案や課題解決をしているのは私たちだけではないでしょうか」(中山氏、以下同)

サービス立ち上げの動機は、創業者であるCEO・谷口大季氏が制作会社を経営していた際、モデル撮影に多くの課題を感じたことだった。とくに「ささげ撮影」とも呼ばれる「撮影」「採寸」「原稿」作業が中心となるECサイト撮影は、クライアント・制作会社・モデルと、三者三様に工数的に大変な部分が多くある。それに輪をかけ、コロナ禍の到来。ECサイトの需要が高まり撮影のボリュームが増え、数をさばききれないという課題があった。そこで最新の技術を使ったソリューションはないかと生み出されたのが、AI model。

 

「ビジネス上の課題解決のためにAIを利用しているので『プロダクトアクト』というよりは、『マーケットイン』の観点から生まれたサービスです。クライアントからの相談の切り口はさまざまですが、コストや工数の部分でリアルモデルの起用だとなかなか実現が難しい場合も、AIモデルなら可能性が広がります」

 

ローンチから、1年半。これまでの事例では、三越伊勢丹、ライトオン、東京ガールズコレクションなど、アパレル系企業との取り組みが中心であったが、この秋には先述の通り伊藤園が商品のテレビCMで日本初でAIモデルを起用するなど、アパレル系のECサイト以外にも、いろいろな領域のビジネスへと展開をしている最中だ。

 

「例えばECサイトでアパレル商品を販売する際、コストやタイミングの問題でモデルアサインが叶わないことも多い。モデルが着た状態で商品を見せられないと、売上の機会損失にも繋がります。そういったことをなくしたり、叶わないクリエイティブを実現させるのが、AIモデルのミッションです。」

 

同社がSNSやECサイトで行った実証実験では、AIモデルを採用した画像は、商品画像のみのときと比べてページ離脱率が下がり、クリック率や購入率はおよそ2倍になったという。やはり物単体の画像よりも、モデルが着用している画像のほうが見る側がイメージしやすく、売上につながるというのだ。

同社は撮影スタジオも運営しているため、AIに着用させる商品を受け取りさえすれば、トルソーに着せて撮影をし、それをAIモデルに着せた状態にして画像納品するまでを、ワンストップで行える。導入企業の声としては、工数やコストを削減できたと非常に評価が高い。さらに、タレントやモデル界で俗に言われる「競合縛り」を気にする必要もないため、契約まわりも非常にスムーズに進行するというメリットも。

とはいえ、AIが人間のようにリアルに洋服を着こなすことができるのだろうか。その技術とは? 技術面の話を聞いた。

倫理観を担保すべくルールを設けるのが課題

実際にひとが着てないものを、あたかもひとが着用したように撮影するのは難しくないのだろうか。

 

「基本的にはモデル生成に関して既存のサービスは使っておらず、完全にオリジナルでシステムを組んで、複数技術を組み合わせて対応しています」

 

ポーズや表情の再現性も、気になるところだ。

 

「リアルなモデル撮影のフローをベースにしたいろいろなアプローチでのAIモデルの生成方法があるため、ヘアメイクや演出も含めた対応が万事可能。基本的にはできないことはほぼありません」

 

表情のコントロールも、もちろんできる。となると人物像設定は、もはや自在だ。年齢、属性、特徴の要望をクライアントから引き出し、それに沿った「専属モデル」をAIで生成する。それを実現させるにはAIまかせでは難しく、直感的な部分やクリエイティブな領域は人間がコントロールしつつ、AIの生成システムに託すという。

「といっても、生成する際に実在する人の顔をベースにすることはないです。完全にゼロからひとりのAIモデルを作っていくことになります」

 

ここがこれからの業界の課題感にもつながる部分だ、と中山氏は語る。

 

「私たちのサービスは、生成AIと『バーチャルヒューマン』の2カテゴリーにまたがっています。生成AIと一括りにしても、例えばChatGPTと私たちのサービスは全く別物です。ですがAIの問題は、いいも悪いも一律で語られる部分があるのも事実。だからこそ、ルールの精緻化がすごく重要なミッションだと思っています。AIでバーチャルヒューマンであるとかAIで人物を設定することに関して一定の基準を設け、高い倫理観をもって整備する必要があると思っています」

 

中でも問題になりやすいのが、実在している人と「似てしまった」場合。確かにこれは、ナーバスな問題。

 

「そこに対しては、法的な基準と倫理的な基準があります。私たちのサービスでいうと、法的な部分は弁護士から見解書をもって担保できて提供しているのですが、それとは別に倫理的な基準での整備が今後、より必要になると思います。例えば必ず一定の基準を経て、類似性がないかどうかのチェックをかけていく。もちろん限界はある中で、これを実施すべきだと思っています。現時点では社内で類似性の細かいチェックなどルールを敷いていますが、業界において一般化されるべきでしょう」

 

今後AIモデルが浸透していくことを鑑みると、ルールの整備化をすることでリアルのモデルやタレントとの線引きや共存も可能になっていく、と中山氏は語る。

タレントやモデルの仕事はAIに代替できるのか

効率性やコストダウンの観点から、AIのモデルは今後ニーズが高まる成長市場であることは間違いないが、そうなるとリアルな人物との線引きは?

 

「リアルのモデルさんやタレントさんの領域を、AIモデルが全て代替できるかというと、そうではありません。実在する人物には、個人のキャラクターや背負っているライフスタイルがある。イメージキャラクターとして起用される場合は、そういうものも含めて効果が出ることはすごく大きいと思っていますし、そこに対してAIで全てを代替できることはあり得ないと思っています」

 

AIモデルとリアルモデルは、お互いの得意分野を住み分けて共存していくという。例えばボリュームの多いECサイトの撮影などの労働集約的な部分はAIで代替していきつつ、よりクリエイティブでありモデルの空気感やライフスタイルが重要視される部分は、リアルモデルをアサインする。それが、当たり前になる時代がやってくるのかもしれない。

 

「リアルモデルでコストや事情的に実現できない場合でもAIモデルなら叶えられるといった、クリエイターをサポートするツールになっていくのかなと思っています。さらにAIで生成したモデルにインスタのアカウントを持たせるなどしてキャラクター設定をしていくなどで、より踏み込んだ職務に挑戦できることも」

 

AIモデルの可能性は広く、リアルモデルの年齢を自在に設定することもできる。

 

「モデルという職業ではどうしても年齢というハードルがあります。そこに着目した取り組みです。実在するモデルさんの若い頃の姿や年齢を重ねた姿をAIで生成し、ギャランティ自体はそのモデルさんにお支払いする。そういった形でも、AIモデルと実在のモデルが連携できる可能性があります」

 

現在テスト中であるというこういった取り組みが、どんどん実装されていくのが楽しみだ。

2030年のバーチャルヒューマンは飽和点を迎える

人間と、ほぼ見分けがつかない。ここまで来た2023年のバーチャルヒューマンだが、7年後はどのように進化していくのだろうか。中山氏の見解を伺った。

 

「私も代表もSF好きでして、こういった話は楽しいですね。公式サイトのTOPのメッセージにある『AI modelは電気羊の夢を見るのか?』は、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』をもじっていたり。少し先の未来は、バーチャルヒューマンが人格や権利をもったりする時代が来るとおもしろいですよね」

 

さらに現在は「AI時代の過渡期」と、中山氏は語る。

 

「7年後の2030年が、AI市場にとっていい未来になるか悪い未来になるか。現在はその分岐点に来ていると思います。AIを悪用すれば、いろんな業界を駆逐していくような未来というのもありえると思います。人間の仕事を助けたり、人間の良さを引き出せたりするAIの存在は、すごく理想的な未来にも繋がる。私たちのサービスは、そこに関しての責任感が大いにあると思っています」

 

2030年ごろまでにはAIの技術的な発展の飽和点が一度来るのではないか、と予想しているという中山氏。

 

「携帯電話もすばらしいレベルで加速しましたが、現在はそこまで新しい技術も搭載されなくなってきました。それと同じようにAIの進化もどこかで飽和点を迎えるのかな、と思います。AIの発達速度がかなり速いので、2030年を迎えるまでに少し鈍化していくのでは。そのタイミングでAI技術が普及し一般化して、だれもが当たり前にAIを使う時代はもうすぐそこなのでは」

 

クリエイティブ制作の現場では「実在モデルさん? AIモデルさん?」などという会話が普通に繰り広げられている、そんな未来もそこまで遠くはないのかもしれない。

中山佑樹

Yuki Nakayama

AI model株式会社 CTO

慶應義塾大学卒業後、大手広告制作会社でプロデューサーとして勤務。その後、WEBディレクターやプロジェクトマネージャーとして複数社での勤務を経て、現在、AI model株式会社のCTOとしてAI/システムの開発統括を行う。

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