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最新AIで迷子が見つかり、酔っ払いによるトラブルも回避。高齢化する警備員を助け、安心・安全を実現する警備システム

行動認識AIを独自に開発し、AIを用いた警備システムを提供するアジラ。警備において、AIはどのように活用され、我々の暮らしに安心・安全をもたらすのか。新たな技術を用いた新時代の警備について、株式会社アジラの取締役CTOである若狭政啓氏に話を伺った。

「警備において、課題はたくさんあります。求人をかけてもなかなか人が集まらず、人手不足は恒常的な課題です。警備に当たる人が高齢化しているということも挙げられます」と語るのは株式会社アジラの取締役CTOである若狭氏。

 

実際、警察庁生活安全局生活安全企画課が発表した「令和3年度における警備業の概況」を見ると、警備員の構成比率は65歳以上が全体の32%と約3分の1を占めている。警備業者や警備員数自体は増えているが、それに呼応するように高齢化が進んでいる。確かに多くの商業施設やオフィスビルで警備員の方々を目にする機会はあるが、屈強な若年層が多数集まっているという様子を目にすることは少ない。さらに少子化によって若年層の労働力人口自体は今後も減り続けることは容易に想像ができる。

病院での転倒も繁華街での酔っ払いも、AIが検出

そんな課題を打破するのが、AIを用いた警備システム「アジラ」だ。2022年1月のリリースだが、わずか1年半足らずで大型商業施設やオフィスビルだけでなく、病院や大学など幅広い施設に導入が拡大している。キヤノンマーケティングジャパン株式会社と資本業務提携契約も締結した。

「特定の業種を問わず、多様な施設に導入されているのがアジラの特徴です」と若狭氏が語るように、新宿区歌舞伎町に新しくできた「東急歌舞伎町タワー」や川崎市にある「ラ チッタデッラ」などの商業施設のみならず、オフィスビル、レジデンスにも導入されている。直近では東京都杉並区の河北総合病院に試験導入された。さらに立命館大学大阪いばらきキャンパス(写真)へも本格導入されたばかり。国内の大学では初めての試みで、不特定多数の人々が出入りする大学のキャンパスで、リアルタイムで転倒や立入禁止区域への侵入を検知、防犯に役立てる狙いがある。

アジラを導入すると、防犯カメラの映像からAIが、異常な行動や不審な行動を検知してくれる。具体的に検知する行動としては転倒や卒倒、ケンカや破壊行動、さらには千鳥足やふらつき、長時間の滞留などだ。酔っぱらってふらついた末に倒れ、そのまま寝入ってしまう……。都会の繁華街では少なくないそんな行動だが、場所によってはその後の交通事故などに繋がる危険性もある。そうなる前にAIが検知、通報してくれるのだ。

既存の防犯カメラにAI警備の仕組みを組み込めるのも、アジラの特徴のひとつ。導入に当たって防犯カメラを刷新する必要はなく、初期コストの負担が少ないのをセールスポイントとしている。サーバー1台で最大50台分のカメラ映像を解析できるため、大規模な施設では運用コストも安価に抑えられるメリットがある。

 

アジラを導入すると、24時間365日フル稼働でモニタリングを続けてくれる。各カメラ画角における通常行動をAIが自律学習し、学習した通常行動から逸脱した動きを「違和感」として検知する。こうした異常行動を検知した場合には、PCのポップアップだけでなく、メールやパトライトなどにも即時に通知がくるシステムだ。

「時代とともに防犯カメラの設置台数は増えています。さらに防犯システムも進化しています。ただそれを活用する人材が足りていない。そもそも人間の力だけで防犯カメラを見続けたり、施設内を見張り続けたりするのにも限界があります。ヒューマンエラーを少なくするという意味でも、AIを使った警備システムは、警備の“質”も向上させます」(若狭氏、以下同)。

AIが監視するのは、“顔”ではなく……

そもそも防犯カメラをAI化するとはどういうことか。アジラがベースとしているのは行動認識AIで、高性能な「行動検知」を実現しているのが特徴だ。

 

「アジラは映像から瞬時に人間の骨格を検出し、その姿勢などから行動を検知します。例えば寝そべった状態のままの骨格が5秒以上動かないと、転倒と検知されます」。

 

さらに自律学習機能を有し、AIが自動的に学習するため、人の手を借りることなく精度の向上が可能だ。実証実験の評価では、異常・不振行動の9割以上が検知されるという結果が出ている。

 

加えてこうした行動検知AIには、まったく別の側面のメリットもある。防犯カメラ自体、時代の移ろいとともに増加しているというのは先述の通りだが、それによって巻き起こるのが「監視社会になるのでは」という議論だ。

 

若狭氏は「弊社の目指しているのは、監視社会ではありません。安心・安全な空間を実現するための技術で、全社員内でもAIに関する倫理基準を共有しています」と語る。さらに同社では第三者を中心とした有識者会議の設立を検討し、プライバシーや倫理面などの議論を深めていく。

もちろん防犯カメラやAIによって得られたデータを閲覧できるのは、管理者・契約者のみだ。さらにアジラはローカルで完結するネットワークでの利用が可能であり、外部への映像流出リスクを低減している。

 

こうしたアジラ・施設側の認識や環境もさることながら、施設利用者側、すなわち防犯カメラに映る側にも、AI警備は心理的ハードルを下げてくれる。というのも、アジラを導入した場合、防犯カメラで分析されるのは骨格を基準とした行動であるからだ。多くの人にとってパーソナルな要素の強い“顔”を認識されるよりも、“骨格”を認識されるほうが、抵抗感は少ないだろう。さらに万一画像が流出しても、解析画像は骨格の構造を示したもので、個人の特定がしづらいものだ。

AIによって、事件・事故が未然に防げる

順調に増えつつあるAI警備システム「アジラ」だが、実際に導入することで、その場の課題が浮き彫りになるケースも少なくない。

 

場所・業種によって検知される行動や時間などはかなり違うと若狭氏は言う。例えば飲食店が多い夜の商業施設では夜間帯に飲酒によるふらつきなどが多く検出される。一方で例えばそれまで違法駐車、長時間の逗留などが多いエリアもAIが検出してくれる。

 

「さらに『転倒』という動作ひとつでも、場所によってパターンが異なったりします。商業施設では突然バタンと転ぶケースが多いのですが、工場になると熱中症などによって、ヨロヨロと倒れるような転倒が多くなります」。

 

AIによって課題が浮き彫りになることで、管理者側は先回りして対策を立てることができる。若狭氏が一例としてあげてくれた商業施設では、不審な行動が多く検知されるスポットがあったという。調べてみると、若い世代の親向けのショップの前で、子どもたちが遊びやすい空間となっていた。

 

ただそこは本来の遊び場ではなく、手すりを乗り越えて落ちる危険もある場所だった。施設側はそこでは子どもたちが遊ばないよう、インテリアを変更するなどの対策を立てたという。将来的に起こりうる落下事故をAIによって先回りして対策することで、安全が確保されたケースと言えよう。

 

「これまで防犯カメラは、何かが起こったときに後から記録映像として見直す役目が中心でした。AI警備システムを導入することで、何かが起こる前に対処する、起こる前に防ぐという役目を果たすことができます」。

迷子捜索から新規顧客へのアプローチまで

こうした行動認知AIは、単発の違和感行動の検出だけでなく、個人の特定も可能にする。アジラの行動認識AIは、性別はもちろん、年齢も割り出すという。

 

この技術は、商業施設などで迷子捜索をサポートする「迷子検索機能」として搭載されている。施設内で迷子の捜索が出ると、身長130センチ以下の子どもが単独で行動しているパターンを、迷子の可能性としてAIが検出してくれるのだ。同様にAIは白杖をつく人や車椅子に乗った人も検出する。

 

さらには歩き方の特徴などから個人も判別でき、トラッキングも可能だ。この技術は防犯にも応用され、例えば万引き常習犯の検知などにも役立つことが期待されている。

 

そのほか例えばビジネスシーンでの活用方法としては、カメラの映像のみで、リアル店舗においての新規ユーザーの判別に利用するなど、さまざまな可能性を秘めている。

 

「行動認知AIは、安心・安全な社会の実現をサポートするとともに、新たな便利さにも繋がっていければと思っています。行動認知AIが割り出すデータは本当に多彩で、さまざまな活用方法があります。今後さらに細分化したサービスを提供できればと考えています」と語る若狭氏。行動認識AIにおいて世界有数の技術を持つスタートアップは、今後さらなる展開を見据えている。

若狭 政啓

Masahiro Wakasa

株式会社アジラ 執行役員CTO

東京工業大学大学院を修了後、日揮株式会社にて、海外建設プロジェクトでプラント設計IT業務に従事。その後、株式会社アジラに参画し、行動認識AIに関する概念実証や製品開発プロジェクトを担当する。2022年、同社の執行役員CTOに就任。現在もAI技術を駆使した商品開発や新技術の研究開発に力を注ぐ。AIと人間研究をベースとした「Human Science AI 研究チーム」立ち上げ発起人でもある。

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