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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

イスラエル開発の「タグ付け自動化ツール」日本のEC出店者がこぞって利用する理由

インターネットで買えないものはないと言える世の中になって久しい。さらに2020年からのコロナ禍によってEC市場の裾野はより広がり、消費者の心理的ハードルは限りなく低くなった。一方、EC出店者・販売者やその扱い商品数の増加によって過当競争が生まれている。そのため、自社の商品を見つけてもらうための策を手当たり次第に講じる事業者も出てきて、消費者がほしい商品と出合いづらくなるという悪循環につながっている。消費者(ユーザー)の購買体験の質を高めるためにも、検索性や商品の見つけやすさの改善は、昨今のEC市場やマーケットプレイスの最重要課題なのである。

そうした状況下で存在感を増しているのが、イスラエルに開発拠点を持つLISUTO株式会社のタグ付け自動化ツール「AIタッガー®」だ。

 

「マーケットプレイスにおいてユーザーが商品と出合う方法は、大きく分けて『キーワード検索』『絞り込み』『サジェスト機能』の3つがあります。そのいずれにおいても有効で、今後さらに重要度が増していくと予想されている〝タグ付け〟を人工知能でもって自動で行うのが『AIタッガー』となります」

そう語るのは、LISUTOの創業者であり、CEOのニール・プラテック氏だ。「狙うは世界」と意気込みを語る日本生まれのイスラエル人・プラテック氏と、同社の立ち上げからほどなくしてジョインした営業マネージャーの矢頭潤一氏に、利用者が増加中の「AIタッガー」について聞いた。

楽天市場とYahoo!ショッピングの公式ツールでもある特許取得済みの技術

マーケットプレイスやECモールにおける検索性、ECサイト内でのSEOとも言うべき対策で欠かせないものがある。総合ショッピングモールの「楽天市場」であれば、商品属性(旧・タグID)であり、Yahoo!ショッピングであればブランドコードやスペックと呼ばれるような項目だ。LISUTOでは、それらを総称して「タグ」と呼び、先端技術の雄として知られるイスラエルで開発した「AIタッガー」というAI(人工知能)による自動登録のサービスを展開している。

 

「AIタッガーが出来たのは2019年です。現在は楽天市場とYahoo!ショッピングの公式ツールとして認められているもので、日本では特許も取得済みです。端的に言えばAIを使ってタグ付けをする、というシンプルなコンセプト。ただ、このタグ付けは事業者のみなさんが本当に困っているところでして、ありがたいことに利用店舗さんはどんどん増えていて、現在は2,000店舗を超えるようなところまで来ています」(矢頭氏)

 

「AI技術を用いた特許を取得済みの自動化ツール」と聞くと、資金力のある一部の大きな店舗にしか使えないのではないかと感じる人もいるかもしれない。しかし矢頭氏は、「それは間違った認識です」と強調する。

 

「だいたい利用者の7〜8割は中小企業や個人事業のみなさんです。AIタッガーの料金体系は、最安で月々5,000円です。そうした利用しやすさも相まって、使っていただいている店舗さんのジャンルは、実に多種多様です。インテリアもあればセカンドハンドもあればホームセンターもある。もちろんファッション分野も日用品も、ふるさと納税を扱っているようなところまで、あらゆるジャンルの方々に選んでもらっています」

では、なぜタグ付けと呼ばれる作業において、AIによる自動化が有効なのか。「当然、手作業で行うことは可能ですし、扱う商品数が両手で数えられるほどであれば、数時間で終えられると思います」と前置きをしたうえで、矢頭氏はこう続ける。

 

「インスタグラムに置き換えて見るとわかりやすいかもしれません。画像を投稿しても、誰からも〝いいね〟が押されない……。それって、ハッシュタグを付けたんですか? みたいな状況です。このハッシュタグをつけるのって、人の作業でやろうと思ったら面倒ですよね」

 

たとえばファッション分野であれば、3色3サイズを展開するスウェットジャケットがあったとする。すると、3色×3サイズの9商品ということになり、仮に1,000商品を扱っている店舗であれば、9,000という商品数になってしまう。

 

「商品の単位のことをSKU(Stock Keeping Unit)(※)とも呼びますが、その1つ1つにタグ付けをしていくという作業をしなくてはなりません。これは、なかなか人の手でやるのは面倒です。仮に外注しようものなら、人件費だけで大きな金銭的負担になってきます。そこで費用的にも労力的にも負担の少ない我々が提供するAIタッガーの出番となるわけです。もちろん機械が自動でやるので、スピードも人間がやるよりも圧倒的に速くなります」

 

※SKU(Stock Keeping Unit)とは小売り業界で利用される品目の最小単位のこと

AIタッガーが急成長している背景に、楽天市場の〝改革〟がある!?

「AIタッガー」の利用数は、2023年になって大きく伸びているという。その最大の要因は、楽天市場における〝大きな仕様変更〟が現在進行形で行われているからだ。プラテック氏は次のように説明する。

 

「楽天さんが公開している資料の中にもある通りですが、楽天市場では商品の〝発見されやすさ(≒探しやすさ)〟に難がありました。それを2023年4月からスタートした『SKUプロジェクト』を通じて、改善していくということが明確に示されています。このSKUプロジェクトは、我々の解釈も加えると、すべての商品をきちんと構造化しましょうということです。それによって、ユーザー(消費者)が本当にほしい商品と出合えるようになるからです。しかし問題は、その作業を誰がやるかです。先ほど、矢頭からも説明した通り、人の手でやるとなると、それは本当に大変ですので、AIによって自然言語とデータを構造化する『AIタッガー』がいまこそ活躍するときが来たというわけです」

なぜ今になって楽天市場は、商品データの構造化に取り組んでいるのか。もちろん検索機能等の最適化や改善によってユーザーの購買意欲の向上が目的であるからにほかならない。EC業界ではよく知られているように、この構造化を徹底しているのがAmazon(アマゾン)であり、一般的に楽天市場やYahoo!ショッピングなどに比べて商品の探しやすさに一日の長があると言われていることも無関係ではないだろう。プラテック氏はこう続ける。

 

「Amazonはあらかじめ用意されたASINというカタログに紐づけて出品するという仕組みになっていて、消費者目線からすると、非常に商品が見つけやすいんですね。ただ、その一方で出店者側の目線からすると、商品だけが目立つ形になってしまい、自分たち販売者の特徴や売りを消費者にアピールすることができないようになっています。要は、商品ごとの価格競争になってしまうということです」

 

同じパソコンを買うのでも、個人の販売者さんから買うのと、大手家電量販店から買うのでは、人によって安心感が大きく異なることもあるが、そうした店舗による差別化がAmazonではしづらい面がある。商品の構造化を徹底しているがために、出店者や店舗の個性がトレードオフの状態になっているからだ。言い換えると、楽天やYahoo!ショッピングなど、Amazon以外のECモールでは出店者の特徴や売りを前面に出した、自由度の高い出品ができるということ。

 

「ただ、その自由度の高さは特徴であり、売りでもあったのですが、ルールがフリーであることで、検索結果等にも影響が及び、消費者の購買意欲を削ぐところまで精度が落ちてしまったところに問題が発生していました。ですから、今までどおり、自分たちの好きなように書いてOKであるかわりに、商品データの構造化に寄与する〝タグ(商品属性)の登録はお願いします〟ということになったわけです」

2019年、越境EC向けのサービスから「ピボットした」

実は、プラテック氏が率いるLISUTOは、2019年以前は商品情報を言語で登録するだけで、AIによって各国の言語に自動翻訳できるサービスを提供していたという。

 

「それはたとえば日本の出店者であれば、日本語で商品情報を登録すれば、楽天などの日本のモールだけでなく、欧米で使われているeBayやAmazonにも自動で出品できるようなプラットフォームでした」

 

しかし、その事業を進める中で感じたのが、各国のドメスティックなマーケットプレイスにおける商品検索の精度のほうが、より大きなボトルネックであり、ニーズがあるということ。加えて、当然ながら導入ハードルも低い。そうした理由から戦略を変えたという経緯があるのだ。

 

「とはいえ、構造化されていない自然言語のデータを構造化するという技術のコアな部分は同じです。弊社の技術責任者であるパベルは、もともとeBayで商品の構造化に関わる技術の責任者だった人間でもあるので、彼が持つ豊富な知識と経験を掛け合わせることで開発してきました」

生成系AIの急速な発展が「脅威ではない」と胸を張る訳

LISUTOが提供するAIタッガーは、単にAIの技術を使っているだけではない。だからこそ、生成系AIが急速に普及してきた昨今の変化に対しても、大きな焦りはない。

 

「もちろん弊社の強みはAIの技術にありますが、それだけではなくて、英語で〝タクソノミー〟におけるデータベースとナレッジベースがすごくあるんです。AIで単に処理するのではなく、マーケットプライスごとの細かなカテゴリー分類の違いにも精度高く対応できる力を持っています。特許を取っているという意味だけでなく、この組み合わせこそが我々の強みであり、他社が真似できないところだというふうに考えています。ですから、今後は日本でシェアを確保した後には、サービスをグローバルに広げていく展望を持っています」

 

それは、本記事で何度も名前にあがってきた楽天市場やYahoo!ショッピング、eBayだけにとどまらない。すでに構造化が進んでいるAmazonにおいても、D2Cを含めた自社サイトのSEOの最適化においてもソリューションを提供できると、プラテック氏は野心を燃やす。

ニール・プラテック

Nir Platek

LISUTO株式会社 代表取締役社長

東京生まれのイスラエル人。イスラエルでベンチャーキャピタルを設立後、イスラエルのBluetoothのパイオニア企業であるButterfly Communicationsなど複数のスタートアップに出資。1999年に再来日したのち、高級中古ブランド品を販売するECモールeLADYを立ち上げる。2017年にLISUTO株式会社を創業。テルアビブ大学元経済学講師、イスラエル弁護士連合会の会員弁護士でもある。

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