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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

学校斡旋が9割「高卒就職」を改善!学生・企業を直接繋ぐ「アッテミー」

スタートアップの道を進む者たちは、“失敗の専門家”でもある。世の中の課題解決に挑むも、そう簡単には扉は開かない。それでは、どうすべきか……。現在進行形の彼らの挑戦を追う企画。

 

高齢化に伴う人材不足が深刻化する今、解決の糸口として企業が注目し始めているのが、高卒生の採用だ。そんななか、昨今の高卒就職の可能性を広げるのに一役かっているウェブのプラットフォームがある。高校生が学校を介さずに就職活動を展開できる〈アッテミー〉だ。高卒就職の根深い問題に長年向き合い、2019年12月に同事業を立ち上げた、株式会社アッテミー代表の吉田優子氏に話を伺った。

吉田 優子

Yuko Yoshida

株式会社アッテミー 代表

1985年生まれ。大学卒業後、楽天(株)で楽天市場事業での業務を経て、公立高校の進路指導の現場を学ぶ目的で一般財団法人大阪労働協会に入職。2014年に高卒就職を希望する高校生の進路指導サポート業を開始し、2019年に株式会社アッテミー設立。

株式会社アッテミー 代表 吉田優子

高卒就職を取り巻く課題

〈アッテミー〉は、高校生が志望企業を検索しエントリーできるマッチングプラットフォーム。いわゆる“求人サイト”だが、その特徴に触れるには、まずは高卒就職の仕組みを知っておく必要がある。前提として、高卒就職には3つの方法がある。しかし、9割以上の高校生は、そのうち1つの方法に頼っている。大阪の公立校の進路指導室に勤務していた前職の頃、吉田さんはこの事実に出会う。

 

「学校推薦を受けて就活する『学校斡旋』と、学校を介さずに就活する『自己開拓』や『縁故就職』がありますが、ほとんどが『学校斡旋』を選びますし、保護者や担任の先生ですら、他の選択肢を知らないというケースも多いです」

学校斡旋の流れは、ハローワークを通じて学校の進路指導室に届いた高卒求人情報に対して、生徒は学校の推薦状を添えて応募書類を送る、というものだ。確かに、何か問題が起きた場合に、ハローワークや学校に間に入ってもらえるといった安心感は大きい。しかし問題は学校斡旋に付随する制度にあると吉田さんは指摘。

「同時期に1社しか応募できない『1人1社制』が基本です。また、1件の求人に対して学校から1名しか応募できないルールもあります。成績などをもとに校内選考をかけ、順位の高い生徒から志望先を選びます」

 

これらにより内定後の辞退がほぼ無いのは学校・企業側ともに利点だが、生徒側の自由はかなり少ない印象。志望先のみならず「情報や期間も限定されている」と吉田さんは声を強める。

「生徒は先生と一緒に求人情報が書かれた求人票を見ていきますが、これが文字のみが書かれたA4用紙2枚の簡素なもの。さらに、志望先を決めるのに与えられた期間は約1ヶ月。求人情報の解禁から1ヶ月で生徒はたった1社の応募先を決めなければなりません」

 

60年以上変わらないこの制度について、吉田さんは「短期間に確実に進路を保障していくには良い仕組み」と認めつつも、一方では高卒就職の問題の原因になっているとも言う。

行政のバックアップで追い風が吹いた

高校生が自由に仕事を選べる仕組みを作りたい。また、高校生が自ら進路を選べる能力を養いたい。そんな思いから、吉田さんは〈アッテミー〉を創業。この世界に飛び込んだ2013年から法人化までは6年かかった。

 

「就職指導の非常勤講師で、かつ女性で妊娠・出産と重なったこともあり、ボランティア活動のような扱いを受けました。対法人やビジネスプランコンテストでも、なかなかビジネスとして受け取ってもらえず、法人化までは悔しい思いをしましたね」

女性起業家応援プロジェクトLED関西

そんな彼女に転機が訪れる。2019年1月に近畿経済産業局主催で行われた「女性起業家応援プロジェクトLED関西」で、見事ファイナリストに選ばれた。

 

「大阪府、信用金庫さん、民間企業さん計18社にご支援いただき、各社との繋がりもでき、それが結果アッテミーの法人化に繋がりました。本当にありがたい出来事でした」

 

実は吉田さん、2013年に始めた学校での進路指導の仕事を、〈アッテミー〉を立ち上げた今も変わらず続けている。受賞は、この地道な活動がようやく認められた結果とも言える。

 

「学校斡旋以外の選択肢や様々な学び方・働き方があることを、やっぱり現場で直接届けたい。もちろんビジネスとして、契約をお願いする法人の方にも日々説明していることですが、業界全体を変えるには、高校生側の意識も変わる必要があると思っているんです」

また、大阪府では、この1年で高卒就職に注目が集まりつつある。もともと同府は高卒就職を希望する生徒数と、高卒求人を出す企業数がともに全国2位ということもあり、一人一社制の見直しが図られることになったのだ。さらに、近年関西ではスタートアップ支援がますます盛り上がりをみせている。資金調達やビジネスコンテスト、他のスタートアップと繋がる機会も年々増えている。これら全てが〈アッテミー〉の追い風になった。

目指すのは定着できる就職先との出会い

〈アッテミー〉の強みは、高校生が学校を介さずに就活できる求人情報。高校生は、学校斡旋と並行して利用することができる。そんなマッチング機能に加えて、高校生のインターンシップ制度を重視しているのもポイントだ。

 

「基本的に、掲載企業さんには高校生のインターンシップや最低でも職場見学の受け入れをお願いしています。コロナ禍で今年の稼働は難航しましたが、“定着できる就職先との出会い”を生むためにも、今後醸成していきたい部分です」

 

とはいえ、同システムの利用に魅力を感じつつも、長年のやり方を変えられない企業も多いと吉田さんは話す。その多くは企業側の意識だと言う。

定着できる就職先との出会い

「これまで学校斡旋で良い人材を採用できている企業においては、学校との縁が切れることに不安を感じたり、学校を介さない採用活動は違反では?と慎重になりがちです。かたや、これまで高卒求人を出していない企業さんと話せば、大卒の方が優秀だ、という学歴の概念にぶつかる。『いやいや高校生も』と説得を繰り返すなかでどれほど理解していただけるか、という日が今も続いています」

「大卒でないと社会で活躍できない?」原点になった疑問

吉田さん自らは公立の進学校出身で、東京の大学に進学し、大手企業に就職した。高卒就職には無縁に思える吉田さんがこの業界に飛び込んだのはなぜか。原点は、高校時代に遡る。

 

「どうしてこの国では、有名な大学を出て大手企業に入ることが幸せな生き方とされているんだろう?と疑問を感じながら高校時代を過ごしました」

 

その後、2009年に大学卒業とともに楽天株式会社に入社。配属先は、日本最大級のオンライン通販サイト「楽天市場」の運営。そこでの出会いが人生を変える。

 

「ネットショップのオーナーさん達とやりとりするなかで、最終学歴が中卒や大学中退の方や専業主婦の方が、パソコン一台で何千万と売り上げを獲得していく様を見て、これからの時代、多様な生き方・働き方が可能になるのを感じたんです。改めて、偏差値に当てはめるだけの高校の進路指導を変えたい、と。そんな思いに駆られて退職し、高卒就職の世界に飛び込みました」

 

そんなかつての彼女が描いた高卒就職の在り方は、このコロナ禍で広がりを見せている。〈アッテミー〉では、2020年5月には高校生とその保護者に向けた「LINE個別相談」をスタート。吉田さんをはじめ元進路指導担当教師らに、子どもの進路について無料で相談することができる。続いて8月には、YouTubeを通して参加できる会社説明会「オンラインEXPO」を開催。全国の高校生が誰でも登録不要で参加できるとあって、就職先決定前の生徒と企業・採用担当者との出会いの機会が減るなか、貴重な機会となった。

 

「全国の高校生と保護者の相談に直接対応できるようになったのは、オンラインを活用して非常に良かった点。このような仕組みは、今後どんどん生かしていきたいです」

 

またコロナ禍では、大学が休校になりオンライン授業に代わるなか、休学や中退を選ぶ大学生は増えた。同様に、高校生の意識にも変化が起きていると吉田さんは強調する。

 

「奨学金を借りて目的なく大学へ行くくらいなら、すぐ働いてしまおう。並行して、大卒の資格を通信で取るのもアリだな、とか。学び方や働き方への意識が非常に変わってきています。10代から働くという選択肢が、前向きで、新しい進路選択という価値観に変わる時代がいよいよやってきたなと思います」

 

多様な生き方・働き方がますます尊重される社会に。吉田さんの夢が現実となる日は近そうだ。

  • 公式Facebookページ

取材:池尾優

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