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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
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ブラックボックスな広告業界は透明化できる? 広告主と広告メディアを直に繋ぐプラットフォームが築く新常識

売り手と買い手の双方から報酬を得る言葉に、「両手取引」や「両手仲介」というものがある。これら利益が相反する可能性をもつ取引は不動産業界やM&A分野で使用されるケースが多いが、広告業界でも長らく議論されてきた。最近では、日本政府による「デジタル広告市場の競争評価」という報告書(2021年4月27日)で、次のように記載されている。

 

「一部のプラットフォーム事業者はバイサイドとセルサイドのサービスを両方提供しており、広告主のために広告枠(メディア)を探す立場と、パブリッシャーのためにメディア上の広告枠を埋める広告を探す立場を兼ねており、構造上、一方の利益のために他方の利益を犠牲にする等の利益相反になる可能性がある」

    

つまり広告主はできるだけ安く・効率のいい広告を広告メディアに掲載したいと考え、広告メディアはできるだけ高く広告枠を埋めたいと願っている。一方の有利な条件が、もう一方にとって不利な条件の取引となるのだが、広告代理店がこうした相反する思惑をもつ二者間の仲介を行うケースも少なくない。さらにいうと、広告費が上がることで、仲介する広告代理店の収益も上がるため、構造的な歪みを抱えているともいえる。

 

そうしたことから、広告に関わる数値やレポートなど、広告業界全体における「透明性の向上」が改善策の1つであることに異論の余地はない。しかし、昨今の東京五輪事業における〝騒動〟等も鑑みると、先に記したデジタル広告のみならず、従来型の広告分野においても解決した議論であるとは言い切れない。こうした構造的な課題を解決に導くためには、個別の事例や企業を批判するよりも、ディスラプター(既存のものを瓦解・革新させるイノベーター的存在)の登場を待ったほうが早いのかもしれない。

 

前置きが長くなったが、本稿で紹介する株式会社ビズパは、そんなディスラプターになる可能性をもつベンチャー企業であり、広告プラットフォームである。

 

「広告業界のブラックボックスを透明化したい」と語る代表取締役CEOの石井俊之氏が始めた、広告の検索・比較・検討、そして見積もりや発注がワンストップで行える「BIZPA」とは何か。発展の途上にあるという広告プラットフォームの現在位置や可能性、未来像を石井氏に聞いた。

自社に適した広告メディアが「検索」で探せるBIZPA

2019年11月にベータ版が立ち上げられ、2020年8月に正式版としてリリースされたBIZPAは、端的に言えば、看板やデジタルサイネージ、新聞・雑誌・フリーペーパーなどの紙媒体、タクシー・電車などの交通広告、WEB広告などの広告メディア情報がまとめられたプラットフォームだ。

 

低単価かつ小ロットの商品も含め、多彩な広告メディアが集約されており、「オフライン広告を含めて、スタートアップ企業や中小企業であっても自社に合った広告を効率的に探し出すことができます」と石井氏は話す。

 

最大のポイントは、従来は広告代理店経由でないと出合えなかったような広告の情報にダイレクトにたどりつけることにあるという。

 

「広告業界におけるAmazonや楽天みたいなものに近いと考えています。BIZPAのなかで、ターゲットや地域名などで検索すると、自社の要件に合った 広告商品が表示されるイメージ。たとえば富裕層で検索すると、富裕層向けの専門誌が出てきたり、空港ラウンジのサイネージだったり、医師向けの会報誌だったりが出てくるようになっています」

 

広告を探したい広告主企業は、会員登録を済ませたうえで、気になった広告商品の媒体資料やグラフデータ、広告費を見ることができることに加えて、見積もり依頼を送るなどのメディア側とダイレクトにやりとりをすることも可能になっている。そのメリットについて石井氏はこう語る。

 

「数千〜数万円程度のオフライン広告でも、中小企業やスタートアップ企業にとっては最適な集客ツールになる可能性を十分に持っています。でも、そういった小さな案件は情報として見つかりづらかったり、既存の広告代理店が積極的に扱いたがるかというと、そうでもなかったりするケースが多いと感じています」

 

もちろん、広告メディア側としても、数千〜数万円の枠を埋めるためだけに過大なリソースを割くわけにもいかない。結果として、本当にニーズがあるかどうかとは関係ないところで、広告を埋める作業をしてしまっている。もしかしたら、そのせいで媒体としての広告効果が過小評価されていく可能性すらもある。

 

「そうした需要と供給がうまく噛み合わないなかで、BIZPAのようなプラットフォームは、無駄なコストや時間をかけない最適化されたマッチングの実現に資すると考えています」

立ち上げから約2年で2万超の広告メディアが掲載

2022年11月の取材時点で、BIZPAには約2万件の広告メディアが掲載されている。2020年8月に正式運営を始めたことを考えると急成長しているようにも見える。

 

ここまで掲載数を増やすことができた要因を石井氏に聞くと、「コロナ禍によってオンライン商談に対する抵抗感が軽減したことや、イニシャルコストやランニングコストがかからない成果報酬型のモデルであること」を挙げつつも、「登山でいえば、まだまだ山に登り始めたところ」と言う。というのも、同社が目指しているのは、日本中の広告メディアを掲載することを目指しているからだ。それはなぜか。

 

「実は、BIZPAの立ち上げ当初から、僕たちには広告業界の経験者がいません。そこでBIZPAを立ち上げるにあたって、広告代理店の経験者に話を聞いたところ、『いかに大きいクライアントを見つけるかがカギ』ということを異口同音に言われました。もともと僕は、B to Bマーケットプレイスの運営事業をしてきた経験を持っていて、そのノウハウを応用しようと考えていたので〝いかに単価の高い案件を取るか〟という発想自体がナンセンスだと感じました」

 

同社がプラットフォーマーとして目指しているのは〝N対N〟の世界。マッチングの数が積み上がっていくことで、必然とデータベースができていく。それによって、これまででは考えられないほど、効率よく広告メディアと広告主が出合えるようになる。すなわち、いかに精度の高いデータベースを構築できるかが、プラットフォーマーとしての成否を分けると考えているのである。石井氏は続ける。

 

「だからこそ、日本中の広告メディアを掲載することが重要なのです。そのデータベースというのは、数千というレベルの数字ではまったく意味がありません」

 

たとえば1,000件のデータがあったとすると、1人が動くだけで0.X%も動いてしまう世界で、簡単に外れ値が出てしまうという。

 

「当然、将来的にはAIによるリコメンド機能などを入れていきたいと考えていますが、現在のところでは教師データと呼ばれる機械学習のためのデータがまだまだ足りていない段階なので、とにかく使い勝手やユーザビリティを上げていって、いかに使ってもらうかだと思っています。いずれにしても、5年以内を目処に、日本中の広告を掲載することを目標としています」

プラットフォーマーとしての役割は、悪いものは悪いと伝えること!?

ただし、1つ1つの案件の〝大小〟にはこだわっていない理由は、マッチングの数を増やしたいからだけではない。「広告代理店さんの存在価値を否定するつもりはまったくありませんが……」と前置きをしたうえで、思いがあると石井氏は話す。

 

「会社の利益や自身の成績のために、自社の利益を最優先させようとするのは当然のことなのですが、それが行き過ぎてしまうと、『効果があるもの』よりも『利益が取れるもの』を優先するインセンティブが働いてしまう。きちんと付加価値をつけて効果があるものになっていれば問題はないのですが、そうではない話もよく聞きます」

 

たとえばある駅前看板の広告料が、A社を通すと1,800万円で、B社を通すと2,300万円だったという。その価格差は500万円。微差というには大きすぎる金額に見える。

 

「もちろんケースによって異なると思いますが、そうした価格差が生まれる要因の1つは、業界全体が多重構造化しているから。たまたま相談した相手が階層として下のほうで、上流に相談が行くごとに100万円ずつ足していって500万円に積み上がっただけ、ということもあります。やはり情報が不透明であるほどこうしたことは起きやすいのではないでしょうか。誰が見ても同じような価格で、同じような取引ができるようにしてあげること、ここにプラットフォーマーとしての役目があると考えています」

一方で、BIZPAには広告探しを無料で相談できるメディアプランナーによるサポートサービスもある。ある意味、広告代理店と同じ轍を踏むのではないかと勘ぐってしまうが、石井氏はこう説明する。

 

「BIZPAではメディアの媒体資料や費用などを載せてはいるものの、やはりそれだけでは不慣れな事業者さんには判断つきづらいものです。特に媒体資料はメディアのポジショントーク的なものになるので、読み解くスキルが必要なケースもありますので、メディアプランナーによる無料サポートも行っています。ただ、弊社のプランナーは成果報酬があるわけでもなければ、営業目標的な数字も持っていません。加えて、あくまで弊社の基本はAmazonなんかと同じで、検索機能やカテゴリー、ランキングなどから、自分で探してねというスタンスです。僕らが儲かる、儲からないというところは、プランニングに関してはあまりなくて、むしろプラットフォーマーとしての役割は、悪いものは悪いと伝えること。そうした判断軸、Amazonでいうとレビュー機能みたいなものも、今後は入れていければと思っています」

5年以内に日本中の広告をすべて掲載したい

最後に、BIZPAが目指しているものについて、石井氏は語る。

 

「やや繰り返しになりますが、僕らとしては、最適な集客スタイルが見つかるツールになれればいいと思っています。そのためにも、5年以内に日本中の広告をすべて掲載させていただく必要があると考えています」

 

それに加えて、ゆくゆくは特に中小企業が抱えている集客に関する課題であるクリエイティブとメディアプランニングの2つについても、BIZPAが貢献できるような体制を整えていきたいという。

 

「いまはまだできていませんが、メディアの検討から入稿までを一気通貫でサポートできるといいなと青写真を描いています」

 

たとえばフリーペーパーに載せる広告クリエイティブがあったときであれば、どういうキャッチコピーにしてどんなデザインにするかというところを、過去のデータやAIを活用してインターネット上だけで解決していくような世界だ。

 

「もちろん一足飛びにすべてが自動化できるわけではありません。特にクリエイティブの部分は、まだまだ人間の力も強いですので、クリエイターと広告主のマッチングもしていきたいです。近年は独立してフリーランサーとして活躍される方も多いので、余計なコストを省いた適正価格での受発注もしやすいと思います。プランニングも同じです。いくつかの情報を打ち込むことで、最適解がポンッとリコメンドされるようなところを目指したいです」

石井 俊之

Toshiyuki Ishii

株式会社ビズパ CEO

1975年生まれ、千葉県出身。中央大学法学部卒業後、住宅メーカーの営業職に就く。2000年に株式会社ラクーンに転職し、取締役副社長や子会社社長などを歴任。2016年には東証一部上場も経験。その後、2018年に同社を退職し、株式会社ビズパを創業。中小企業・スタートアップ向け広告プラットフォーム「ビズパ」の開発・運営をしている。テクノロジーの力で広告をもっと簡単に、もっとスマートにすることで中小企業の集客課題の解決するため、日々奮闘中。

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  • 公式Facebookページ

取材:遠藤由次郎

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