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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
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IoT搭載のスマートコーヒーメーカー「GINA」が、あえて全自動にしない理由

美味しいコーヒーを自分で淹れたい。コーヒー好きなら、誰もがそう思うこと。近年では在宅ニーズの高まりにより、自宅でコーヒーを淹れる機会が増えた、という人も多いと思う。そんなコーヒー好きの間だけでなく、バリスタや飲食店オーナー、またITガジェットの文脈でも注目を浴びているのが、IoT技術を搭載したスマートコーヒーメーカー「GINA」だ。IoTとはモノ自体がインターネットに繋がる技術のこと。プロも認める味を生み出すために、IoTをどう活用しているのか?「GINA」の企画から輸入代理、国内のマーケティングまでを担う、株式会社ウェルリッチの志渡澤和樹氏に話を聞いた。

志渡澤和樹

Kazuki Shidozawa

株式会社ウェルリッチ 取締役

大学卒業後、大手医療機器メーカーの営業職に就職。2005年に渡英し大学院(MBA)修了。現地マーケティング企業を経て医薬品開発関連会社の社長秘書に。その後、ファンドを受け、レストランベンチャーを設立。2017年に帰国し現職。3児の父。

世界大会チャンピオンと同じ味も再現可能

「美味しいコーヒー」と聞いて、何をイメージするだろうか?浅煎り?深煎り?それともアメリカン? 普段はホットだけれど、暑い日ならコールドブリュー(水出し)が頭に浮かぶことだってあるかもしれない。そう、コーヒーにひとつの「正解」はない。嗜好性がものすごく高いからだ。そんな、それぞれのその時々の正解に合ったコーヒーを作る、という願いを叶えてくれるのが「GINA」だ。GINAではハンドドリップ、フレンチプレス、コールドドリップの3つの方法で抽出できる。なかでも味のコントロールが難しいのが、ハンドドリップかもしれない。

ハンドドリップで淹れたことのある人ならわかると思うが、安定して同じ味を出すのは難しい。これは、豆の挽き方や分量、お湯の温度や分量、また豆の蒸らし時間など様々な要因が味を左右するため。なかでも、味に大きく影響し、かつコントロールしにくいのが、ドリッパーに入れた豆を蒸らす工程なのだと志渡澤氏は言う。そこをGINAでは、ドリッパー下部に設けられた調整バルブを完全に閉めることで、ドリッパー内は一時的に浸漬状態となり、均一な蒸らしを安定的に行うことができると言う。

「規定の分量の豆とお湯を用意したら、誰でも安定した蒸らしからスタートできる。蒸らしの再現性が高ければ、好みの味に一気に近づける。これまでは豆全体を均一に蒸らすためにちょこちょこお湯をかけなければならず、これには“プロでも高い技術が必要”というのがバリスタ界の常識だったのです」

World of Coffee

2018年にブラジルで開催されたコーヒーの世界大会では、そんなGINAの再現性の高さが世に知れ渡ることになった。抽出技術部門(フィルターコーヒー)で優勝した日本人バリスタ(スイス代表)の深堀絵美さんが、決勝大会で使ったのがGINAだった。その翌年、GINAの展示会に彼女を招くと、またも驚くことがあったと志渡澤氏は話す。

 

「展示会ではGINAでコーヒーを抽出して振舞うイベントをやりましたが、彼女が淹れたコーヒーを真似して僕や社員が淹れても、本当に同じ味になるんですよ。ハンドドリップの再現性が限りなく高いことを実感しましたね」

ハンドドリップを可視化する

もう一つ大きなGINAの特徴は、コーヒーの味を決める要因をアプリで管理できることだ。豆やお湯を入れた瞬間に、台座に内臓された自動計量器が重さを測り、その数値データがBluetoothによって端末のアプリに転送・表示され、豆とお湯の比率などの計算式も瞬時に提示される。毎回の抽出結果は自動的にアプリに記録されるから、味の比較や調整もしやすい。

例えば、ハンドドリップは豆の量1に対してお湯15程度(豆や個々の意見によって多少違う)というのが基本のレシピになるが、それよりも薄め/濃いめが良い、といった嗜好の幅が出てきたときに、効率よく自分好みの味に近づけられる。これにより“今飲みたい味・淹れ方”が再現しやすくなるのはもちろん、飲食店ではトレーニングにも有効活用できる、と志渡澤氏は新たなニーズを指摘する。

 

「これまでコーヒーの淹れ方を教えるには、教える人の主観や方法論によるところが大きかったのが、数値に基づいてロジカルに学べるようになりました。今自分が何をやっているか?を可視化できるので、誰でも同じ抽出を再現することが容易になったのです」

スロベニアの技術力から生まれた機能美

GINAを開発したのは、スロベニアのスタートアップメーカー「GOAT STORY」。長らくロンドンでレストランを経営をしていた志渡澤氏は、2015年にフランクフルトの見本市で出会った彼らの考えに深く共感したと言う。

 

「イギリスでも日本でも、大型モールやチェーン店がどんどん増え、北から南まで同じ店と商品が並んでいるのは、まるで“金太郎飴”のようだと思っていて。どこを切っても同じ顔が出てくる。生き方や思考が多様化している時代において、危機感と同時に潜在需要を感じていました。そんな多様化するニーズに合った一杯を作れるコーヒーメーカーとしてGINAを日本国内でもリリースできることになって嬉しく思いました」

 

GINAは、インテリアに溶け込む洗練されたデザインも魅力的。これには、GINAの開発チームが既存の調理家電に抱いていた疑問が出発点になっている。近年でこそ日本国内でもハイエンドな家電ブランドが浸透してきたものの、ほんの数年前まで「家電は機能やスペックに重きが置かれ、あくまで消費するモノとして捉えられていた」と志渡澤氏は言う。GOAT STORYでは、そんな既存の業界に違和感を抱き、機能以上の付加価値のある商品軸に、早い段階から取り組んできた。

 

ちなみにGOAT STORYの故郷・スロベニアは、イタリアやオーストリアに隣接したヨーロッパの小国だ。人口は200万人ほど(札幌の人口と同程度)。あまりイメージはないかもしれないが、志渡澤氏曰く実は「ものづくりが強い」国。歴史的に人件費の安さと真面目な国民性から、工業製品の下請け工場が多く、品質の高い部品を製造してきたのだという。発注元は、ドイツの車やイタリアの家電といった有名なメーカーも多い。GINAの性能と機能美には、そんな高い技術力が根底にある。

テクノロジーから守るべきもの

こうしたテクノロジーを活用したGINA は“最先端のスマートコーヒーメーカー”と称されることもあるが、志渡澤氏が高く評価しているのは「全自動ではない」ことだ。

 

「あえて全自動にはせず、ハンドメイドの部分を大事にしている。人が行う部分を補完し、クオリティを高めるためにIoTといった技術を活用している。そこまで機械でやってしまうと、結局“金太郎飴”になってしまう」

 

様々なものがオートメーション化し、コロナ禍では非接触な世界へのパラダイムシフトが起こるなか、IoTのニーズは加速している。データの相互伝達により、細分化されたサービスが適切なタイミングで提供される。例えば、毎朝食べているジャムが無くなりそうになったら、冷蔵庫が感知し、自動で注文し、翌朝には配達される、といった具合に。そういった安定や安心の価値が強くなる時代において、志渡澤氏はあることを危惧していると言う。

 

「平準化やコストダウンのような、そこから生まれる新たな価値もありますが、一方で人間がやるべき部分までをテクノロジーが支配してしまう可能性もあります。それが、僕たちが最も大事にしたい“ハンドメイドの価値”の部分です。一杯のコーヒーを淹れるのに伴う、試行錯誤をする体験や意思決定、またその過程で得られる感情があるというのは、とても豊かなこと。それらをテクノロジーにお任せして失ってしまうのは、とても勿体無いことです」

 

2021年中には、Goat Storyから新たに、ハンドミルと電動ミルがドッキングしたミルがローンチ予定だ。ますます多様化するコーヒーのニーズに合わせた、今後も斬新なアイデアに期待したい。

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  • 公式Facebookページ

取材:池尾優

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