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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

「高品質を低価格で」教育のユニクロ化を目指す塾。料金が不透明な学習塾の仕組みにNOを

2020年の創業以来、2年で45教室を設けるなど、急成長している都内の個別指導塾がある。個別指導「コノ塾」だ。都立高校受験をターゲットに、質の高い教育を低価格で実現する背景には、適所でデジタルをスマートに活用するメソッドがあった。学習塾におけるデジタル化のメリットと目指す未来について、共同創業者である田辺理氏、高勇人氏に話を聞いた。

ブラックボックス化する教育にアンチテーゼ、「高品質を低価格で」

教育、特に学習塾代というのは案外ブラックボックスだったりする。もちろんそれぞれの塾のホームページなどに料金表が掲載されていたりもするし、体験入学や問い合わせ時にも説明があったりもする。ただしいざ入塾してみると、春・夏・冬といった休暇ごとの講習代が別途必要なのはもちろん、「〇〇対策講座」「〇〇強化講座」といった選択制の授業に追加費用が発生したり、模擬や定例テストを受ける費用が追加で生じるなど、なにかと予想外にかさんでいく。それに対し親は、わが子が少しでも明るい未来を歩めるように……と、つい課金してしまうシステムが出来上がっている。

「そもそも、スーパーに行って値段が不明瞭な物を買う人はいません。また後から『追加でいくらかかります』と言われて納得する人も少ないでしょう。でも学習塾というのは不思議とそれが成り立ってしまっている業界なんです」と語るのは、都内で個別指導塾「コノ塾」を展開している株式会社コノセルの共同創業者である田辺理CEOだ。

 

「現在、教育現場においては人材が不足しています。特に良い先生というのは足りておらず、だからこそ経済的に裕福な親は、より教育に投資し、子供に良い教育を受けさせようとします。けれどもそれが本当に望ましい状況なのでしょうか。教育というのは、望む誰もが一定レベル以上受けられるというのが望ましいと私たちは考えていますし、それが社会の安定につながっていくと思っています」(田辺氏)

 

だからこそコノ塾は「教育のユニクロ化」を目指している。すなわち、より高品質なものを低価格で提供する教育だ。同社のホームページをのぞくと、その姿勢は明確にわかる。一番目立つところに月謝が明記されているのだ。

 

同社が提供するのは、進学型の個別指導で都立高校を目指す生徒向けのコース。その費用は5科目すべての個別指導を含めて月額2万6,400円(税込)だ。文部科学省が2年に一度実施している子供の学習費調査の「学年(年齢)別、所在市町村の人口規模(学科)別の学習費支出状況」によると、人口100万人以上の都市にある公立中学校の生徒の学習塾費は、年間41万4,000円となっている。月額にすると3万4,500円となり、コノ塾の月謝は大都市の平均支出から比べて8,000円以上割安だ。

 

さらに一対一の個別指導塾は複数の生徒がひとつの教室で学ぶ集団塾に比べて割高で、家賃の高い都内になるほどその傾向は顕著だ。都内で個別指導塾に通う生徒の支出額と比すると、コノ塾はさらに割安感がある。

多彩なメリットがあるデジタル教材を活用

高品質な教育を低価格で実現するために、コノ塾ではDXを推進している。それも生徒の指導など「人が介在する価値の高い部分」にはしっかり人的資源を配し、それ以外の仕事を積極的にシステム化することで低価格を実現している。

 

田辺氏自身、以前はリクルートが提供する「スタディサプリ」の事業責任者などを歴任しており、もともとデジタル学習には広い知見があった。コノ塾ではデジタル教材を活用し、生徒はまず要点動画を見て学び、講師はその後のフォローアップ部分を担当する。

「コノセル社内に専門の部署があり、デジタル教材の作り込みは内製化しています。そこは最も大事な業務であり、弊社の強みでもあると認識しています。デジタル教材を活用することで最初のインプットの時点で質が保証されていますし、また実際授業で使ってみて運用しにくいとなれば、すぐに改訂できるのもデジタル教材の強みだと思います」(田辺氏)

 

 

授業の質の担保以外にも、デジタル教材のメリットは少なくない。

 

「動画学習では映像や音声で学習ができます。特に英語などは耳で聞く方が向いていたりします。また中には読むのが苦手で、音声で学習するほうが得意という生徒もいます。デジタル教材には多角的に学習できるというメリットもあます」(田辺氏)

ペーパーレスだからこそミスや負担は減る

デジタル教材だけでなく、学習をサポートする体制もデジタル化している。コノ塾では学習履歴を「見える化」する独自のアプリを活用している。入塾してから受験まで、すべての授業での進捗度や間違った問題、宿題の定着率などをデータで把握しているのだ。

 

「よく他の学習塾で目にするのが、生徒の過去の成績などが紙でファイルされた個別カルテがずらっと並んだ光景です。コノ塾ではこうした紙の資料は一切なく、どの生徒がどれだけ学習したか、すべてデータで蓄積されています。生徒の学習記録が一目見てわかるので講師目線でも楽ですし、人の記憶に頼ることもないので、間違えもありません」(高勇人氏)

 

コノ塾で徹底しているのはデジタルツールを活用することによる「見える化」だ。生徒の学習履歴以外にも、例えば教室長・講師の業務も「見える化」を徹底することにより、教室長・講師の負担を軽減している。

 

例えば講師として採用した後には、講師向けのガイダンス動画で、生徒への教え方を学べる。他塾に多く見られるような日報や報告書などペーパーワークを省き、時給の発生しない業務が長く続くような、業務のブラック化を防いでいる。ひいてはそれが人材不足の教育現場において、長く働いてくれる良い人材の確保にもつながっているという。

リアルな場の重要性とリスクヘッジ

一方で、リアルな場を重要視しており、どの拠点もオンラインではなく通塾スタイルを採用している。

 

 

 

「リアルにはリアルの良さがあります。もともと勉強が大好きだという子は少ない。家では集中できない生徒でも、集中できる空間として教室の役割があります。さらに生徒がつまずいたとき、同じ空間にいて信頼関係が築けている講師が学習をサポートする役割は大きいです」(田辺氏)

 

ちなみに教室は20数席がパーテーションで区切られたスタイルになっている。個別指導とはいえ、生徒と講師が二人だけで過ごすことはない構造だ。さらにはリスクヘッジのため、教室にウェブカメラを設置し、常時録画も行っている。先日、大手学習塾で講師が逮捕される事件が起き、保護者や塾業界関係者を震撼させた。事件自体もさることながら、学習塾の環境が、外部の目が遮断された、閉ざされた空間であったことに衝撃を受けた保護者も少なくないだろう。そうしたリスクに対しても、コノ塾ではデジタルを活用して対応している。

大きな教育市場に向け、確固たる目標を掲げて認知拡大を目指す

コノ塾は2021年の2校からスタートし、2022年は17校、2023年は45校と急速に事業を拡大している。

支持を集めている背景には、デジタル化による低コスト化のほか、そのコンセプトのわかりやすさもあるだろう。コノ塾は小学5年生から通えるが、ターゲットは都立高校受験。3教科受験が一般的な私立高校受験に対し、都立高校は5科目すべての試験がある。さらにペーパーテストが重視される私立高校に対し、都立高校は通常の授業の成績が反映された内申点も重要だ。多くの個別指導塾では授業でわからない点をサポートする補習が中心だが、コノ塾は5科目の内申点対策と受験対策の両方ができる「進学型の個別指導塾」をうたっている。

「私立中学受験が過熱しているという報道もありますが、それは都内の局地的なものです。さらに現在は個別指導塾のニーズが高まっていて、その点でもコノ塾は市場とマッチしています」(田辺氏)

 

一方で5科目すべてを学べるスタイルに対し、「単科で通えないのか」という声はないのか尋ねてみた。

 

「そうしたご意見はゼロではありません。ただしよく話を聞いてみると、保護者の方も5教科すべてが学べるなら、それに越したことはないと考えている方が大多数です。『単科で……』という声は、やはりコスト的なことを考えて出てくる意見だと思います。その点コノ塾は5教科すべて学習でき、コストも抑えられる。『5教科すべてでこの値段ですか』と再確認される保護者の方もいらっしゃいます」(高氏)

 

「生徒にとっても、苦手な教科だけを塾で学習するのは、学習がつらいものになってしまいます。5教科まんべんなくやることで、得意な教科をやってほめられる体験もできます」(田辺氏)

 

コノ塾は今後さらに校舎数を増やし、事業拡大を目指すのかと尋ねてみると、開校数などの目標値は特に設定してはいないとのこと。

 

「ただ、手ごろな価格で誰もがいい教育を受けられる世の中にしたいという大きな目標があり、そのためにサービス認知を広げていきたいと思っています。価格の透明性はもちろん、デジタル化によりスムーズに学習ができるということを証明していきたい。それが今後の教育界のスタンダードとなるように、未来を手繰り寄せていきたいと思っています」(田辺氏)

田辺理

Satoru Tanabe

株式会社コノセル Co-founder、CEO

日本政策投資銀行、米国留学(UC Berkeley MBA)、BCGを経てQuipperに入社。同社にてスタディサプリの事業責任者、グローバルでのプロダクト責任者等を歴任。2020年1月、株式会社コノセルを共同創業。

高勇人

Hayato Taka

マーケティング

P&G、Amazonなどを経てコノセルへ入社。コノセルにおけるマーケティング全域を統括。

  • 公式Facebookページ

取材:松岡絵里

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