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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

ここ1年で受講者が10倍! 人気オンライン授業「カレー大學」で学べること

新型コロナウイルスの影響によって一気に定着した感のあるオンライン学習。手法はeラーニングやリアルなオンライン授業などさまざまだ。ここに、コロナ以前に比べると受講者が10倍になったという講座がある。

 

カレーを「歴史」「社会学」「商品学」などのカテゴリーに分けて体系的に学び、ビジネスで通用する知識を身に着けることができる、カレー大學の講座がそれだ。趣味や楽しみだけではなく、カレーでビジネスをする人や、プロの料理人に向けた本格的なカリキュラムが開講されている。当初はWEB講座と呼ばれる、eラーニングのみであったが、現在ではニーズに合わせて授業形態を変化させ、インタラクティブな授業も始まっているという。

 

日本のカレー研究の第一人者であり、カレー大學学長の井上岳久氏に、受講者の裾野を拡大し続けているカレー大學の講座と、その根底にあるカレー業界への想いを聞いた。

井上 岳久

TAKAHISA INOUE

株式会社カレー総合研究所代表 カレー大學学長

1968年生まれ。横濱カレーミュージアム・プロデューサーを経て、現在は、株式会社カレー総合研究所代表。カレー大學学長。カレー研究の第1人者として、カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなどカレー全般に精通している。スープカレーや湘南カレー、スパイスカレーなどの仕掛人でもあり、数多くの商品開発を手掛けている。飲食店や町おこしに対するコンサルティングも行っている。

カレー好きだったから選んだ道ではない

井上氏のカレーとの出会いは、商社の食品部門勤めから、アミューズメント業界に転職したところから始まる。この会社で運営を始めたのが、「横濱カレーミュージアム(2007年閉館)」だ。カレーの博物館を作ろうとした当時、この会社には食品に詳しい者がいなかった。そのため、食品部門での経験があった井上氏に白羽の矢が立ったのだ。

 

「もともとカレーが大好きでしたが、カレーを職業にできると思っていませんでしたので、意図してこの道に来たわけではありません」と井上氏は話す。しかし、偶然とはいえプロデューサーという役職に就き、「カレーミュージアムを繁栄させるためには、カレーを知らなければならない」という想いから、24時間365日カレー漬けの生活が始まる。

 

そこからは、カレーを求めて全国各地のみならず、世界を飛び回った。歴史や食文化、トレンドなどを追い続けた。カレーの歴史に詳しい大学教授を訪ねたり、カレーの食べ歩きをしている人を訪ね、教えを請うた。調理については、カレーミュージアム内の名店の厨房に入って学んだ。そうこうしているうちに、第三者から吸収するものが無くなっていることに気が付いた。

 

「ふと気がついたら、自分よりカレー全般に詳しい人がいなくなっていて、カレーの専門家になっていました。メディアに出たり、本も20冊ほど出版しました。どこかに、カレーの神様みたいな人がいて、カレー業界に手繰り寄せられた感じですね」

 

こうして、2006年に独立し、カレー総合研究所を立ち上げた。

カレーを作れても説明できる人がいないという課題

実はカレーはダウントレンドにあった。従来、大手メーカーは子供向けのカレーを中心に商品を展開していた。しかし、近年の少子高齢化の影響を受けて、カレーの需要が下火となっていたのだ。ここに新たな息吹を吹き込み、トレンドを生み出していったのが井上氏だ。スープカレーやカレー鍋など、大人をターゲットにしたカレーの文化を作っていった。

 

時を同じくして、全国では食を切り口とした町おこしが盛んに行われていた。モチーフを決めて、当該地域の飲食店が揃って、そのモチーフを作るというものだ。さまざまなモチーフがあるが、どの店でも作ることができるカレーは特に人気があり、全国で100あまりの自治体が町おこしのモチーフとしていた。

 

井上氏はこうした自治体から専門家として呼ばれ、意見を求められることが多かった。

 

「でも多くの自治体が苦戦しているんですよ。話を聞いてみると、皆さんカレーを食べたことがあっても、説明ができない。カレーはどんな定義で、どんな種類があって、どんな体系になっているのか。質問しても答えられない方が多いんです」

 

井上氏は、この作り手の姿勢に疑問を抱いた。カレーを商売にするのであれば、それでは駄目だ。どういったスパイスが使われているのか、どういった特性のカレーが売れるのか、カレーのことを知り尽くしていなければいけないはずだ、と。こうした状況を目の当たりして、「これでは失敗してしまうのではないか」と懸念を抱いた。「この状況は、無免許で車を運転して、事故を起こしているようなものだ」。しかし、カレーを体系的に学ぶ場所はなかった。そこで、井上氏自身が、カレー大學を立ち上げることにしたのだ。

コロナの影響で飲食店経営者も受講するように

これまでの経緯から、カレーを体系的に学び知識を深めることが、ビジネスとしての成功につながるのではないかと井上氏は考えた。

 

始まりは地方在住者にも考慮した、WEB講座と呼ばれている、オンデマンドのeラーニングからだった。5時間ほどのカリキュラムを作成し、配信をはじめた。カレー大學で学ぶことによって、最低限ビジネス展開できる知識を身に着けてもらうことが狙いであった。しかし、2014年当時は、eラーニングの認知度も低く、どれほど営業をかけても反響がほとんどなかった。

 

しかし、せっかく創り上げたカリキュラムでもあり、井上氏から直接教わりたいという声も多かったことから、通学講座を開講した。この通学講座には、大手食品メーカーの社員や、飲食産業からの受講者が多く集まった。また地方からも、町おこしを盛り上げたいという有志が多く受講していた。

 

そんな中、新型コロナウイルスの影響によって、社会の中でインターネットを利用した対話や学習の機会が急増し、オンライン学習のハードルも一気に下がった。この影響は、カレー大學の受講者の様相をも変化させた。

 

まず、これまで受講しづらいという声が多かった飲食店経営者が、時間に縛られることなく学習できるWEB講座を受講するようになった。また、受講者の居住エリアも広がり、気軽に受講する者も増えたという。その人数は、新型コロナウイルスの影響が出る以前の10倍に及んでいるという。さらに通学講座は、オンライン授業形式に変わり、大学院でもインタラクティブな講座が開講されている。

新学部『レトルトカレー開発講座』も視野に

日本人は元来、アレンジが得意なのだという。寿司は東南アジアに起源を持ち、天ぷらも本来はオランダから来たものだ。いずれも日本人が自分たちの好みに合わせて、アレンジを加え、今では和食として世界に知られるようになった。

 

カレーも、インドもしくは欧風のイギリスにルーツを持つが、日本のカレーは独自の進化を続けている。日本人がもともと持っているアレンジ魂に加え、カレーが持つ五味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)を味わう舌を持っていることがその理由だ。この日本人の気質と舌を満足させ、複雑な味の組み合わせを生み出すことができるが故に、カレーは日本人を引き付けてやまない。

 

また、コロナ禍において、カレーが飲食店の救世主ともなってもいるという。カレーの需要はランチにあり、テイクアウトとの親和性も高い。売り上げ増加のために、カレーをメニューに取り入れる飲食店も増えているという。こうした飲食店の経営者がカレー大學で学び始めており、裾野は今も広がり続けている。

 

それ故に井上氏は、「カレー大學で学ぶことで、ビジネスの成功の確率を高めてほしい」という。「そのために、オンラインでの『飲食店の繁盛店講座』や『レトルトカレー開発講座』などの学部も増やしていきたい」とも語る。

 

「受講者に、カレーをビジネスで使えるところまで学んでもらうことによって、カレー業界に貢献していきたいですね。カレー業界のさらなる人材育成に貢献していきたいと思っています」。カレーの神様に呼ばれた男・井上氏の想いは留まる所を知らない。

 

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