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ENILNO いろんなオンラインの向こう側

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ポストコロナ社会において「オンライン」は必要不可欠なものとなった。
これからどのようにオンラインと向き合うのか、各企業や団体の取り入れ方を学ぶ。

DXと人材育成を考える。「DX時代に求められる人材育成とは」

現在、日本企業の重要課題のひとつとして挙げられる「DX推進」。経済産業省らが優れたデジタル活用を行う企業を選定する「DX銘柄(旧「攻めのIT経営銘柄」含む)」に2019年・2020年・2023年に選定された大日本印刷株式会社(以下、DNP)でDX推進をリードする金沢貴人氏と、ITシステム活用のためのDXプラットフォームを開発・提供するテックタッチ株式会社の代表取締役・井無田仲氏が対談した。日本企業におけるDXのあり方、そしてDXと人材育成について熱く語り合う様子をレポートする。

他社製品の積極導入により、現場のリアル課題を解決

印刷分野にとどまらない、デジタルを活用した新サービスを続々と創出するDNP。社内のDX推進にあたっては自社開発のシステムだけではなく、他社製品も積極的に導入している。創業5年のスタートアップ企業であるテックタッチが提供するサービス「テックタッチ」もそのひとつだ。このサービスは各業種のITシステムへの実装が可能で、リアルタイムにデジタルガイドを表示させ、ユーザーの操作を画面上でダイレクトにサポートするものだ。

 

テックタッチ・井無田氏(以下、井無田)「DNPさんはクラウドリフトやSaaSを活用しながら新しい形のICT業務を推進しており、金沢さんは新規事業に関わるABセンター長として『攻めのDX』を、情報システム本部にて『守りのDX』を両方担当されている。その両面で少しでもお手伝いをさせていただけるというのは、私たちとしても、とてもやりがいがあります」

 

DNPの常務執行役員である金沢氏は、新規事業の創出やDXを推進するABセンター長と情報システム本部を兼任し、同社内のDX推進の立役者的存在。「テックタッチ」製品を、現場に早々に採用した理由は。

DNP・金沢氏(以下、金沢)「DX推進の一環で新規事業を創出するにあたり、既存事業もどんどんモデルを変えるべき状況に置かれていました。デジタル進化のスピードも、ますます速くなっている。そういった中で、開発スキルを持つ人材に、新しい事業の創出などの『攻めのDX』で競争領域に注力してもらうために、非競争領域には他社製品も積極的に導入しないと間に合わない。とはいえ、いざ他社製品を導入してみると、浸透させるのがなかなか難しい。情報システム部門の限られた人材を非競争領域の開発に従事させられない、という懸念がありつつも、社内DXは進めていかねばならない。なんとかリスクなく遂行できる術はないかと探していたところ『テックタッチ』の存在を知りました」

 

「テックタッチ」は、システムの入力方法や利用案内がリアルタイムで画面上に自動ガイダンスされる仕組み。これなら操作に慣れていない人でも使いこなせるうえ、使う頻度が低く、習熟しにくいシステムでも、利用者である社員がスムーズに活用しやすい。「テックタッチ」導入によって情報システム部門の問い合わせ対応も減り、現場の作業効率が格段に上がったという。

 

社内DXでの導入後、自社製品のUI/UX改善につながるソリューションであり、よりユーザフレンドリーなものへアップデートできるという気づきにも繋がった。実際に、2023年5月には、DNPが開発した教員向けの「DNP学びのプラットフォーム リアテンダント®(クラウド版)」に「テックタッチ」が採用された。

DXを進めるために、重要なのは「人材のチカラ」

日本企業がDXを進めていく上で一番大切なことは「DX人材の裾野を広げること」だと金沢氏は語る。

 

金沢「デジタルの分野は、かなり進化が激しいですよね。AIの概念は、つい2年前と今で、もはや全く違う。こうした進化に『ひと』が追従できるか、という問題が生じます。だからこそDX人材の裾野を、より広げていかないと。それが、これからのビジネスを左右すると考えます」

 

そのためにDNPは、DX人材を育成するバックアップ体制を充実させている。ITスキル標準に基づいて教育体制を体系立てて、入社後はレベルに応じてステップアップできるような教育体制を整えたり、『ICTプロフェッショナル制度』としてプロジェクトマネージャー等への手当を手厚くしたり、研修と処遇の制度を整えている。最近では、移動時間などのスキマをうまく活用できるよう、動画コンテンツで最新のデジタル技術を聴講できる研修プログラムを導入している。

 

金沢「“ながら聞き”で英会話を習得するように『DX知識のシャワー』を浴びるイメージですよね」

 

その上でDNPは、人材を「ICT人材」と「DX人材」と二つに棲み分けている。ICT人材は、デジタル技術を活用してサービスやシステムの企画・設計・開発・運用保守をする人材。一方でDX人材は、デジタル技術を活用して営業・企画・製造などの変革をする人材だ。

 

金沢「人材スキルを明確にして両面からアプローチして育成することで、技術者にとどまらず、営業・企画・製造においてもデジタル技術の理解が上がり、『攻めのDX』と『守りのDX』の両面で、より活性化させています」

 

いくらデジタルが進化しても、ひとが進化しなければDXは立ちゆかない。だからこそDNPにおけるデジタル人材のバックアップ制度しかり、ITの活用レベルを底上げするテックタッチ製品しかり、私たち企業人がデジタルを包括していくべき時代だといえる。

金沢氏と井無田氏が考える「2030年のDXはこうなる」

「AIの概念は、つい2年前と今で、もはや全く違う」という金沢氏の言葉通り、これからDXのあり方もどんどん変わっていくであろう。様々な分野のルールや大前提が変わると言われる、遠くない未来の2030年には、日本企業におけるDXはどのように変化していくのだろうか。2人の考えを聞いた。


金沢「2030年、想像がつかないですが……。さらに国内がベースではなく、グローバルスタンダードを狙うような会社でなければ生き残れなくなっているでしょうね。そうなると『日本企業におけるDX』という概念が、その頃はもうなくなっているのかもしれない。『デジタルでトランスフォーメーション』という考え方ではなく、『“何とか”でトランスフォーメーション』といった全く違う概念が生まれてきていて、そこに対応しないと生き残っていけないのでしょう。もはや現代の『DX』という響きにさえ、そんなふうに感じることもあります」

井無田「一人ひとりの変革、そして技術革新のスピードがものすごく速い時代。私たちのようなスタートアップ企業は、当然ながら最新の技術をキャッチアップしていかないとならない立場にあります。7年後の2030年は、今とは全然違う世界になっていると思いますが、想像がつきません。SaaSのインターフェースも、かなり変わっているのだろうなと。既存のプレイヤーの大変革みたいなことが、既存産業にもIT産業にも吹き荒れるんでしょうね。

経営していくのがますます難しい時代になり、今でいう『データドリブン経営』が『AIドリブン経営』や、『他の領域ドリブンの経営』に変わるのかもしれない。今までの常識では計りきれないような全然違う“経営の核”が生まれてくる可能性もあります。そのスピードに私たちは追いついていかなければならないと痛感しています」

 

DXが叫ばれはじめ、それが“あたりまえ”のものとなり、さらに違う姿へと形を変えてゆく。進化が甚だしいデジタルの世界だからこそ、企業における人材はそれに追いつき・追い越していくためのリスキリングを怠らないようにする必要がありそうだ。

金沢貴人

Takahito Kanazawa

大日本印刷株式会社 常務執行役員/ABセンター長 教育ビジネス本部 担当/情報システム本部 担当/情報セキュリティ委員長/技術・研究開発本部 ICT統括室 担当

1984年青山学院大理工学部卒、同年大日本印刷株式会社入社。2004年ビジネスフォーム事業部製造本部蕨工場長、IPS事業部システム開発本部長、DNPデータテクノ社長を経て、18年に情報システム本部長、22年に常務執行役員 ABセンター長、情報システム本部担当に就任。

井無田 仲

Naka Imuta

テックタッチ株式会社 代表取締役/慶應義塾大学法学部、コロンビア大学MBA卒

2003年から2011年までドイツ証券、新生銀行にて企業の資金調達/M&A助言業務に従事後、ユナイテッド社で事業責任者、米国子会社代表などを歴任し大規模サービスの開発・グロースなどを手がける。「ITリテラシーがいらなくなる、フラットな世界を作りたい」という思いで、2018年にテックタッチ株式会社を創業。

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